一話
通学路の途中、見覚えのある二人を見かけた。あれは...
「よう、明久。マイ」
「あ、ラグナ!」
「ノエル、ラムダ、ニュー!おはようみんな!」
この一見、いや実際馬鹿なこの男は吉井明久。小学生の頃からの付き合いでこいつの馬鹿正直な優しさには何度も救われてきた。
女の方は夏目マイ。ちょいと訳ありで去年から明久と二人暮らしをしている。こいつも小学生の頃からの付き合いだ。
「それにしてもどんなもんなんだろうな?Fクラスって?」
「相当ひどい設備ってのは聞いたけど、どうだろうね」
俺たちが通う文月学園は一年の終わりに次の一年で勉強するクラスの振り分け試験というものがある。AからFまでの六クラスがありAから順にいい設備になっているらしい。
「......ごめんなさい、わたしのせいで」
「気にすんなって何度もいったろラムダ」
実はその試験当日ラムダが高熱を出して倒れるというアクシデントがあった。俺を含めた3人はラムダ1人Fクラスにさせるくらいならと(再試験もないため欠席=強制にFクラス)そのまま欠席し看病していた。
「...ありがとう。マイの方は大丈夫だった?」
「うん、私の方は明久が看病してくれてたから」
てことは今ここにいるやつら全員Fクラスか。まあ、知ってる顔があるだけでも気楽にやれるわな。
「おはよう、お前たち。遅刻ギリギリだぞ」
「うす、すんません」
「鉄、西村先生おはようございます」
「鉄人先生おはよー!」
「ニュー!?」
「それいっちゃだめ!」
「...すみません先生」
今鉄人と呼ばれたこのでかい強面の先生は西村先生。まあこのごつい見た目からほとんどの生徒から鉄人と呼ばれている。俺が尊敬している数少ない人間の1人だ。
「はあ、まあいい。とりあえず受けとれ」
そういって封筒を俺たちに渡してくる。
「これなんですか?」
「その封筒のなかにお前達の所属クラスが書いてある紙が入っている。欠席したお前たちは既に決まっているがまあ形式状のようなものだが。」
面倒なことをするもんだな。合格発表みたいに張りだしゃいいものを。
さて、Fクラスにたどり着いた訳だが。
「「「「なにこれ?」」」」
「...廃墟?」
そう言いたくなるのも無理はない。俺たちの目の前に有るのは明らかに今にも潰れそうな廃墟の一角にしかみえないFクラスの教室だ。
「まさかここまでとはな」
「ほんと、これは酷いよね」
「と、とりあえず入りましょうよ!中はもう少しましかも知れませんよ?」
ガララっ
「ニューしってるよ!これおんぼろ屋敷ってやつだよね?」
「...この場合おんぼろ教室」
ガタがきそうな、いや既にガタがきているであろう教室を見てのニューの発言はまさにぴったりとしかいいようがない。
「机がちゃぶ台、椅子の替わりに座布団...これはすごいね。悪い意味で。」
「マイ、大丈夫?これじゃまた体壊すんじゃない?」
「私よりもノエル達が心配だよ...」
確かにこれはあいつらが心配になるな。妙に埃っぽいというか。しかも窓が割れて風が思いっきり入ってきてるな。
「よう、やっときたかお前ら」
その声の主は本来此処にはいないはずの...
「雄二!?」
「坂本、なんでお前がここにいるんだ?お前なら余裕でAクラスだろうが」
こいつは坂本雄二。以前は悪鬼羅刹とかいう中二病くさい異名を持ち暴れていたらしい。元々は神童と呼ばれる程の天才的な頭脳を持ってたらしいが...まあ、何かがあったんだろうな。そこらへんはまだ一年そこらの中の俺たちじゃどうともいえないな。
「いや、色々あってな。まあ一応クラスの代表だから覚えとけよ?」
「...まあ、よろしく頼むわ」
何か妙だな。
「「「異端者発見!!」」」
「うお!?」
「ちょちょちょ、なになになに!!??」
なんだこのドラクエかなんかの雑魚でいそうなやつらは?
「我らはFFF団!男は哀に生きるもの!そのように女子を侍らせるなど言語道断!有罪!死刑執行!総員、構え!」
そういうとFFF団とやらはカッターを構えはじめる。こいつら、ようは俺と明久がノエル達と一緒に行動してるのが面白くねぇってか?
「ラグナをいじめるの?ふーん。じゃあニューが相手してあげるよ」
「待てニュー。ノエル、ラムダ。ちょっとこいつつれて下がっててくれ」
「は、はい!」
「...やり過ぎないでね。」
「言われなくてもわかってる。さてお前ら、先に構えたのはそっちだからな。覚悟しとけよ。」
「ふん!命乞いならむ」
バキ!
「ぶほ!」
ふん。だいぶ手加減してやったのにパンチ一発か。まあ、こんなもんだろ。
「さあ、どうする?もっとやろうか?」
「「「「すみませんでした!」」」」
はぁ、朝から疲れる。
「なんじゃ、騒がしいかと思ったらお主らか」
「・・・・・・廊下まで聞こえてきた」
「ん?おお、土屋に・秀吉か」
「ラグナよ、一瞬間が空いたのはわしの気のせいか?」
こいつらは土屋康太と木下秀吉。土屋は普段から女子をカメラで撮影したりしてるわりに否定するからムッツリーニという酷いあだなをつけられている。
秀吉はそっくりな双子の姉貴がいるんだがそいつか秀吉か今でも一瞬わからなくなるからな。男子から告白されまくってるらしく最近では小学生にまで告白されとか。
「・・・・・・」
「ムッツリーニ、もしマイのパンツ撮ろうとしたら、わかるよね?」
「・・・・・・そんなことしない」
「え!ちょ、スカートめくれてた!?」
「マイ、大丈夫だから!確認しようとしないで!」
「......土屋のおもうつぼ」
「ラグナ~、ニューのみる?」
「とりあえず、お前らいっぺん黙れ!」
「はぁ!?戦争をしかけるだと!」
その後、HRで自己紹介を終えた後(担任の先生は妙にいい声した地味なおっさんだった)坂本は試験召喚戦争、試召戦争をEクラスに仕掛けることを持ちかけてきやがった。
「ああ、そうだ。ラグナ、明久。お前らのつれをこのクラスに置いておくことが出きるか?」
「そ、それは...」
確かに、あいつらの事を考えるとそうするしかなさそうだな。
試験召喚戦争。それはこの学園独自のシステム、試験召喚獣システムに大きく関係している。まずここの学園のテストは問題数、得点に制限がなく時間以内なら可能な限り解いて点数を獲得することができる。そしてその点数がオカルトと科学が融合して生まれた偶然の産物、召喚獣の体力や攻撃力にそのまま換算される。そしてその召喚獣を操りクラス単位で戦う事を試召戦争という。
「でもさ、ラグナ達ならともかく僕とか他のクラスの連中でどうやって戦うのさ?足手纏いもいいとこだよ」
「いや、明久。お前も十分過ぎるほどな戦力だ。ラグナとお前は観察処分者だろ?まあ誤解からきてるものだとはいえそれのおかげで何度も召喚獣を操っているわけだ。その操作能力を俺は買ってるんだよ」
観察処分者てのはようは悪いことしたから、学園のために雑用やれよ?て感じだ。俺と明久は去年不良どもに絡まれてたノエル達を助けたさいにどういうわけか俺たちが自分から襲いかかっていたという風に話が伝わりそんな処分をうけた。まあ、俺たちの事をよく知ってる先生たちから弁護があったおかげでそこまできつい作業はさせられてないがな。
内容は召喚獣を使っての肉体労働。召喚獣が受けた疲労やダメージが幾らか操作してる俺たちに返ってくるというやつだ。
「まあ、お前が俺らを買ってくれてるのはいいとしよう。」
「ああ、まずはEクラスを攻めて最終的にはAクラスを」
がっ!
「おい、なんのつもりだ?」
「ら、ラグナ!?」
全く、笑えねえこと言いやがる。つい胸ぐら掴んじまったじゃねえか
「おい、坂本。お前、それが俺にとってノエル達とジン達をはかりにかけろと言ってるのと同じだとはおもわないのか?」
「そ、そっか。Aクラスにはジン君たちが」
「それにそれを聞けばあいつらもまともに戦えなくなるぞ。弥生や七谷もいるんだしな」
「そこらへんは大丈夫だ。別にAクラスの設備は奪わない」
全く、問題はそこだけじゃねえんだよ。
「いいか?他にも問題はあるんだよ。設備はどうにかするとしても勝算がまずない。負けましたじゃ済まねえんだよ。てめえ、ジン達を舐めてんじゃねえのか?」
「それ、どういうこと?ジン君達を舐めてるって?」
「一年しか付き合いがないとはいえ曲がりなりにもジンにハザマと同じクラスだったんだ。あいつらの成績の高さは知ってるはずた。おまけに学年首席の霧島、次席の姫路までいるんだ。Fクラスのばか連中じゃお前の盾にもなりゃしねえよ」
「そんなことはわかってる。まともな戦争で今の俺たちに勝算なんてない、戦いかたは考えてあるさ」
「.......そうか、まあいい。とりあえずまずはEクラスの設備を奪うってわけでいいのか?」
「まあな。しかしお前関係ないやつだったら気にしないのか?」
聞かれるまでもない。
「当たり前だ。そこまで俺はお人好しじゃねえよ」
そして、昼休み。あの後坂本は俺や明久達をばか連中に紹介し戦争を仕掛けることを宣言した。幼なじみ連中と坂本、秀吉、土屋で作戦会議兼昼飯を食いに屋上に来たんだが......
「ねえツバキ!この卵焼き私が作ったんだけど食べてみて!」
「そうなの?じゃあおひとつ。!?美味しい!ノエル、料理上手くなってきたじゃない。」
「ありがとう、ラムダお姉ちゃんに教えてもらってたから少しずつだけど良くなってきたんだよ。」
「ねえねえ、ノエルん!私にもちょうだい!」
全くなんでこんなことになってるんだか。
「おやおや、どうしたんですかラグナくん?あまり食事が進んでないようですが。」
「大丈夫だとは思うが具合が優れないなら休んでおいた方がいいんじゃないのかい?兄さんはすぐ無茶をするからね」
「あのなあ、なんでお前らも一緒に飯くってんだよ」
どういうわけか屋上にAクラスのジンにハザマ、弥生に七谷まで来やがって作戦会議どころじゃなくなっちまった。
「なんでって、以前から私たちここよく使ってたじゃないですか?」
「大方、試召戦争の作戦会議でもしようとしてたんだろ?だがEクラス相手なら楽勝じゃないのかい?雑魚はFクラスの連中と大差ないだろうしそんなやつらなら兄さんや明久1人でも余裕で倒せるはずさ」
「なんでそれを。いや、他のクラスはもう自習の連絡がいってるだろうからそれでか」
「ああ、まあね。そうだ明久。今後また料理を教えて欲しいんだがいいかい?」
「うん、いいよ。どうしたの、また弥生さんに作ってあげるの?」
「この間君に教えられた料理を作ったらツバキに喜ばれてね。それでまたなにかをと思って」
「ああ、でしたら明久くん。出来ればまた私にも御教授お願い出来ませんか?実は今朝マコトさんの機嫌を損ねてしまいまして、どうにかしたいと。」
「それはいいけど、何があったの?」
「いやーそれが起こされた際に寝ぼけてあの立派なものを掴んでしまって。」
「顔がちょっと腫れてると思ったらそういうことかよ。そういや今朝七谷から電話があったとかノエル達が言ってたがそんときか。」
「ええ。まあ、痛み以上にすばらしい感触だったので役得でしたがね」
バキ!
「ごはっ!」
「なにいってんのさ!もう!」
そういって切れながら戻って行く七谷。しかし見事な蹴りだったな。
「だ、大丈夫ハザマくん?」
「え、ええ。これくらいなんともないですよ。マコトさんとはラグナくんとジンくんたち程ではないですが長い付き合いですので。夜はもう少し素直なんですがねぇ」
あ
「おい、ハザマ。」
「ん?なんですかラグナくん」
「歯、くいしばっとけ」
「......おやおや、なんだか嫌な予感がしますねぇ。デシャブというやつでしょうか。」
「このばか!」
ぎゃあああああああ!!!!
まあ色々カオスな展開はあったが飯も終わりいよいよ戦争が始まる。とりあえず腹ごなしに暴れさせてもらうか!
「あ、お前ら先に補給試験な」
「「「「「「先に言え!」」」」」」
観覧頂いた方、ありがとうございます。原作からかなり綺麗になったハザマやジン。ハザマとマコトはバカテス原作の明久と島田さんのようなケンカップルなイメージでかいています。ちょっと危ないワードが飛び出したりしていますがそこらへんについては活動報告で話そうと思います。ではまた。