【完結】涅マユリ(偽)が第4次に召喚されたヨ   作:妖怪もやし

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15話 聖杯戦争の決着

side 衛宮切嗣

 

 

 

 キャスターの召喚した赤ん坊のような生物が破裂し、紫色の粉末が散布される。

 

 やはり、キャスターお得意の魔術か…?

 だが、並みの魔術では、セイバーやアーチャーやランサーには通じないはず。

 ならば、マスターを狙っているのか?

 

 そんな僕の予想とは裏腹に、サーヴァントたちは苦しみ始める。

 一体、何が起こっている?

 

 

 

「苦労したヨ。 キャスターが聖杯戦争を勝ち抜くには、まず、理(ことわり)を変えなければいけなかった」

 

 

 

 キャスターは、玉座に座ったままで、歌うように言葉を綴る。

 ヤツの独演会に付き合っていられるか。

 そう考えたのは、僕だけでは無かったようだ。

 僕が銃弾を放ったのと、遠坂時臣が宝石魔術を放ったのはほぼ同時だった。

 

 

「縛道の八十一 断空」

 

 

 だが、それは両方とも防がれる。

 ヤツの傍に寄り添う、マスターの女の手によって。

 

 

「人が話している時に、銃や魔術を放つのはやめてほしいものだネ。 見事な鬼道だ。 助かったヨ、ネム。 …ああ、名を言ってしまったネ。 まあ、構わないか。 この聖杯戦争は今夜で終わるのだから」

 

 

 ネム。

 それがあのマスターの名前か。

 キャスターは、名を知られても痛くも痒くもないといった様子で、言葉を続ける。

 

 

「キャスターの魔術は、本来ならばセイバー、ランサー、アーチャーの三騎士には通じない。 いわば、聖杯戦争の参加者の半分に、絶対的に不利ということだ。 だから私は、令呪を三画も切る羽目になったのだヨ。 この聖杯戦争のシステムを作った者は、キャスターに勝たせる気が無かったと見えるネ。 不公平な話だヨ」

 

 

 

 令呪を三画…だと…。

 それが真実ならば、ヤツは…。

 

 

 僕の疑問を察したかのように、ヤツは着物をめくり腕を出して見せる。

 そこには複数の令呪があった。

 三画の令呪の消費など、問題が無いと言えるような残数だ。

 

 

 全てが繋がった。

 アイリが行方不明になった酒盛りの日、僕は神父を始末した。

 それに乗じ、ヤツは余剰令呪を神父から奪い取り、我が物としていたのだ。

 おそらく、アイリを攫ったのも、奪った令呪と関係があるのだろう。

 

 

 だが、なぜサーヴァントであるヤツの腕に令呪がある…?

 まさか…。

 

 

 

「察しが良いネ、衛宮切嗣。 キミが考えている通りだヨ」

 

 

 

 歯噛みして悔しがる僕の思考を読んだかのように、キャスターが言う。

 いや、実際にこのキャスターは思考が読めるのかもしれない。

 

 

 本拠地を明かし。

 僕の切り札である起源弾を知っていて。

 間桐家を襲撃し。

 僕の神父の始末にも便乗して利益を得る。

 そして、今宵の遠坂邸で行われた、残った全ての勢力が潰し合った末に、最高のタイミングで美味しい所をとりにきた。

 

 

 全てが、この男の手のひらの上のような錯覚さえ覚える。

 こいつは…。

 このキャスターは、何なんだ?

 

 

 

「マスター……これは…毒…です…。 警戒を…」

 

 

 セイバーが膝をつく。

 

 

 

「お…のれ……。 道化に…敗れるとは…。」

 

 

 

 胸部を貫かれ、既に重症だったアーチャーも、執念虚しく消滅した。

 最後までセイバーを見つめていたが、何か特別な思いでもあったのだろうか。

 既に知る由もないが。

 

 

「セイ…バー…。 …すまない、決着は……」

 

 

 そして、アーチャーの攻撃で致命傷を負っていたランサーも、無念そうに消滅した。

 最後まで騎士道とやらに拘り、アーチャーへの不意打ちにも罪悪感を抱き、セイバーとの一騎打ちをしたがっていた男。

 僕からすれば理解不能の哀れな男だった。

 

 

 これで、アーチャーとランサーが退場し、残ったサーヴァントは二名。

 キャスターが告げた『卍解』という言葉。

 恐らく、あれがヤツの宝具なのだろう。

 効果は、広範囲に猛毒を散布すること。

 魔術の能力でケイネスや遠坂時臣に劣る僕に影響がないことから、サーヴァントだけに効果がある毒のようだ。

 令呪を消費してルールを捻じ曲げることで、ヤツは対魔力を持つ三騎士にも、毒が通用する状態になっている。

 

 

 これだけを見ると、この戦い、完全にキャスターの勝利という構図が出来上がってしまっている。

 …まだだ。

 僕はこの聖杯戦争に勝利し、世界から争いを取り除く覚悟で参戦した。

 潔く、敗北を認めるわけにはいかない。

 最後まで、泥臭く足掻いてやる。

 

 

 サーヴァントだけに効く毒を散布する。

 マスターは傷つけないのは、ヤツの美学か、油断か。

 確かに、美しく、スマートな戦い方だ。

 反吐が出る。

 だが、そのやり方には感謝しなければいけないかもしれないな。

 お陰で僕は自由に動け、サーヴァントに指示を出せるのだから。

 

 

 

 

「令呪を二画使用して命ずる。 セイバー、最大火力で宝具を放て」

 

 

 僕の命令に、セイバーが頷く。

 身体を蝕み続ける毒に耐え、身体に力を込めて立ち上がり。

 全ての力を込めて、渾身の一撃が放たれた。

 

 

  

『エクスカリバー(約束された勝利の剣)ーーー!!!!!』

 

 

 

 閃光が走る。

 遠坂邸に巨大な穴が開き、付近の住宅街は倒壊していく。

 その光の中で、聖杯戦争のことなど何も知らぬであろう人々が、無残にも死んでいく。

 …すまない……。

 許してくれとは言わない。

 言えるわけがない。

 

 

 

 セイバーの渾身の一撃が放たれた跡には、何も残って居なかった。

 昨日まで平和な日々を過ごしていた住民が暮らしていた家々も。

 勝利を確信したかのように、玉座に腰かけていたキャスターも。

 そのマスターも。

 

 

 

「う…ぐ…。」

 

 

 宝具を放ち終えたと同時に、セイバーが膝をつく。

 ヤツの毒に、ついに身体が耐えきれなくなったのだ。

 

 

 計画通りだ。

 令呪でセイバーを回復させてから、宝具を撃つという手段もあった。

 だが、僕はあえて重傷を負わせたままで、宝具を使用させた。

 ヤツを始末し、僕だけが聖杯で願いを叶えることができるように。

 

 

「そんな…。 私は…祖国…の…救済を……。 私…は…。」

 

 

 

 彼女が虚空に伸ばした手が、粒子となって消えていく。

 セイバーは絶望の表情を浮かべ、涙を流しながら、退場した。

 不覚にも、彼女の最期に同情しそうになったが、その気持ちを振り払う。

 僕にその権利はない。

 

 

 

 …終わった…。

 

 

 

 

 そして。

 僕の前に、聖杯が現れた。

 

 

 勝った。

 キャスターは、あの一撃で死滅したのだ。

 あの謎の魔術を使うネムとかいうマスターも、セイバーの宝具で死んだのだろう。

 聖杯戦争は、終わった…。

 

 

 頭の中に、謎の声が響き渡る。

 聖杯戦争の勝利者に向けられる、何を願うか、という問いだろう。

 僕は迷いなく、その答えを告げた。

 

 

 …出来ない!?

 僕の悲願である、争いの無い世界は、聖杯をもってしても実現不可能だというのか?

 

 

 争いがない世界を作るには、人類が死滅するか、人の思想そのものを作り変えるしかない。

 そして、その両方は、聖杯で叶えられる願いを越えている。

 それが聖杯の答えだった。

 

 

 ふざけるな。

 できないというのなら、万能の願望器などと名乗るな。

 何の為に、僕は、今まで…。

 この手を、血で染め続けた結末が、これなのか…

 これでは、僕が先ほどセイバーに宝具を撃たせて奪った者たちの犠牲が…。

 僕…は…。

 

 

 

「ふざけるな…。 ふざけるな! バカヤロォォォ!」

 

 

 絶望し、叫び、打ちひしがれる僕に、聖杯はしつこく願いを聞いてくる。

 もう、どうでも良い。

 そんな投げやりな気持ちになりかける中、僕はアイリとイリヤの事を想い…顔を横に振った。

 そうだ、僕はいざとなれば、あの二人も…。

 なら、僕の願いは…。

 

 

 

「…可能な限り、人が不幸にならない、争う事が少ない世界を、聖杯の力で作ってくれ」

 

 

 

 僕の願いは、叶えられた。

 完全燃焼とは言い切れない。

 だが、終わった…。

 敗退し、僕がこれまで殺してきた人々が無駄死にになるよりかは、遥かに良い。

 

 

 

 

 

「いやいや、見事な一撃だったネ。 感服したヨ。 心からの称賛を送るヨ。 聖杯戦争の勝利、おめでとう。」

 

 

 

 

 

 …。

 ………。

 

 

 

「さて、勝者である君に、アイリスフィールは返還しよう。 ついでに、君の愛しい娘の救出にも手を貸すヨ。 なに、遠慮はいらないヨ。 私は女性には優しいんだヨ。」

 

 

 

 僕は目を疑った。

 退場したはずのキャスターが、マスターと共に平然と僕の眼前に居たからだ。

 

 

 

「さて、呆けていないで、戦後処理に移ろうか。 時間は有限なのだからネ。」

 

 

 もう、次の段階に進もうとしているキャスター。

 何なんだ、こいつは…。

 なぜ、生きている…。

 なぜ、僕の事情を全て知っているかのように振る舞っている…。

 

 

 …どうせ、令呪を使ったか、僕には理解できない魔術を使ったのだろう。

 癪だから、もう、「なん…だと…」とは言わないでおく、か…。

 

 

 僕はヤツに背を向け、ある場所に向かう。

 セイバーの宝具で倒壊した住宅街は、一言で表すならば、死屍累々だ。

 手を合わせ、黙祷する。

 こんなこと、なんの償いにもならない、自己満足だ。

 だが、それでも、今の僕にできることはこれしか思い浮かばなかった。

 

 

「…ぅ…。」

 

 

 目を疑った。

 死体の山の中で、かすかに動いている少年がいた。

 あわてて彼にかけよる。

 

 重傷を負ってはいるが、まだ生きている。

 すぐに処置を施せば、命は助かり、後遺症も残らないだろう。

 

 

「おや、良かったネ。 衛宮切嗣。 その少年が生きていてくれて。」

 

 

 キャスターの言葉に、僕は恥を忍んで頭を下げた。

 遠坂邸の周辺が倒壊した現状では、どの病院もマトモに機能していないだろう。

 大嫌いな相手だが、ヤツならば、この少年を治せるはずだ。

 

 

「頼む、キャスター…。 この子を、助けてくれ…。」

 

「ああ、いいとも。 私は子供には優しいんだヨ。」

 

 

 彼をキャスターに渡すとき、この少年の持ち物らしき物が零れ落ちた。

 苗字はかすれて読めないが、士郎という名前だと知ることはできた。

 僕は両親を失った彼を養子として引き取り、衛宮士郎と名乗らせることを決意した。

 …彼の親を殺した僕が、彼の親代わりを気取る、か。

 僕は本当に偽善者だな。

 

 

 

「自虐している暇はないヨ。 さぁ、善は急げだ。 アインツベルンの本家に向かうとしようか。」

 

「…いきましょう、切嗣。 ここは彼らを当てにするしかないわ。」

 

「分かっているさ、アイリ…。」

 

 

 アイリは、キャスターのいう通り、傷一つない状態で返却された。

 聖杯の願いがかなえられたのに、なぜアイリは生きているのかも謎だ。

 だが、今は素直に、妻とまた無事に会えたことを喜ぶとするか。

 

 そして、取り返しにいかなくては。

 僕とアイリの娘である、イリヤスフィールを。

 

 

 

side ケイネス・エルメロイ・アーチボルト

 

 

「くそっ…くそっ…。 くそがぁぁぁ!!!」

 

 

 私は、らしくもない罵声を挙げながら、遠坂邸から撤退していた。

 片腕を失い、激痛にうめきながらも、セイバーの一撃に対応することができたのは奇跡といっていい。

 あの威力を、私の水銀で防ぐことは不可能。

 なので、遠坂邸の床に水銀で大穴を開け、地下に隠れることで難を逃れたのだ。

 

 

 

「私が…この私が、敗退だと…。 ランサーがやられたことはどうでも良いが…この腕…。 ぐ、ぅぅぅ…。」

 

 

 再び、血反吐を吐いて蹲る。

 まずは身体を治さなくては…。

 私は今にも倒れそうな身体を引きずるように、ホテルへの道を急いだ。

 

 

 ホテルに戻った私は、手術を受けて命を取り留めた。

 町の一部が倒壊して多くの死傷者が出たことにより、大混乱となっていたが、ホテルに常勤している医師が処置をしてくれた。

 腕を失ったことで足りなくなった血液も、輸血をすることで賄うことができた。

 …魔術師でない者の世話になるとは、な。

 

 

 翌日。

 なぜこんな重傷を負ったのか、警察から事情聴取を受けた。

 だが、日本語がうまく分からない、典型的な外国人のふりをして英語で対応し続けていると、警察は諦めて帰っていった。

 多くの死者が出たことで、私一人に構っている時間も無かったのだろう。

 

 

 ホテルの病室に、一人の女性が入室する。

 

 

「ケイネス…。」

 

「ソラウ、か…。」

 

 

 最も見られたくない相手に、無様な姿を見られてしまった。

 今の私は、さぞかし惨めで、滑稽だろう。

 私は…この程度の存在だったのか。

 天才と称され、あらゆる戦いに勝利してきた。

 勝てない相手など、この世に居ないつもりだった。

 だが、所詮、井の中の蛙だったということなのか…。

 

 

「…君が、ランサーに惹かれるのも分かる。 私は…さぞや情けないだろう。 婚約の解消でもするか? …君には、その権利がある。」

 

 

 自虐的な笑みを浮かべながら、そう告げる。

 そんな私を、彼女は静かに抱きしめた。

 

 

「…ランサーなんて、もうどうでも良いのよ。 私は、この状況に至って初めて、自分の気持ちを理解したわ。 本当は、とっくの昔から、貴方を愛していたっていうことに。 ケイネス、ともに生きていきましょう。」

 

「ソラ…ウ…。」

 

 

 涙を浮かべながらそう告げる彼女に、私は言葉を詰まらせる。

 やがて、私も静かに、彼女を抱きしめ返した。

 

 

 

 

side 遠坂時臣

 

 

「ぐ…はぁっ……。 この…私が…。」

 

 

 身体中が痛い。

 セイバーの一撃により、私は身体の半分を失っていた。

 致命傷だ。

 こうして生きていること自体、信じられない。

 いや、生きているといえるかどうか、怪しいところだ。

 私の命は、もうじき尽き果てるのだから。

 

 

 

「死にたく…ない…。 葵…。 凛…。 …さく…ら…。」

 

 

 見苦しい、ありふれた断末魔だ。

 優雅たれ…。

 その言葉は、私にはふさわしくなかったようだ。

 

 最期に思い浮かぶのは、桜の顔。

 桜には…申し訳ないことをした。

 間桐の家で、あんな仕打ちを受けていたというのに。

 私は、それを知った後も、間桐雁夜を罵倒し、殺した。

 彼が恩人だと、心の奥底では理解していたのに、彼を見下し、その命を奪ったのだ。

 

 根源にもたどり着けず、娘を救った恩人を殺めて。

 この末路が、一人寂しく死んでいくこと、か。

 私には…ふさわしいな。

 

 

 

 

「…お父さん。」

 

 

 

 これは…幻覚か?

 いや、違う。

 我が娘、桜が目の前にいる。

 

 

 桜の髪の色は、変わり果てている。

 私の娘だったころの笑顔は消え失せ、無表情だ。

 彼女をこう変えてしまったのは間桐だが、その間桐に桜を渡したのは私だ。

 私に、すべての責任がある。

 

 

 彼女に、私は何といえばいい?

 抱きしめてやることさえ、あと数分で命が尽きる私にはできない。

 その資格もない。

 父親であることよりも、魔術師であることを選んだ私には。

 

 

「ねぇ、お父さん。 …私のこと、愛していますか?」

 

 

 血反吐を吐く私。

 これがおそらく、最後の言葉だろう。

 ならば、今だけは、本心を語ろう。

 魔術師ではなく、父親として。

 

 

「桜、私はお前を愛している。 …詫びても…グッ…許されないが…すまなかった、桜…。」

 

「…。」

 

「愛して、いるんだ…。 信じてくれ…。」

 

「…ありがとう、お父さん。 私も…」

 

 

 その先の言葉を聞くことはできなかった。

 私は、生命力の限界を超え、息絶えたのだから。

 

 

 

 

 

 

side ウェイバー・ベルベット

 

 

 …何だったんだ、僕のしてきたことは。

 ケイネスから聖遺物を盗んで召喚をして、ヤツを見返すために、勇んで聖杯戦争に参加したが。

 自分の呼び出したサーヴァントを制御できず、ずっと振り回されて。

 虚勢を張り、ほかのマスターに噛み付き続けるが、相手にもされず。

 

 

 そして、冬木大橋の戦いでは、僕の魔力が足りないせいでライダーは負けた。

 僕の、せいだ…。

 そのあとは、アーチャーを相手に命乞いをした。

 

 

 助けてくれ。

 なんでもするから、命だけはとらないでくれ。

 僕は必死に、そう主張した。

 その時、初めて自分の矮小さを理解した。

 

 

 その時の、アーチャーの視線が忘れられない。

 ゴミを見るような目つき。

 はは、そうだよな。

 僕なんて、所詮はこんなものだったんだ。

 

 

 帰ろう…。

 僕の祖国へ…。

 マッケンジー夫妻の記憶操作もやめ、彼らに謝罪しようとしたが、止められた。

 楽しい時間を過ごさせてもらった、と。

 やめてくれ…。

 僕には、もったいない言葉だ。

 

 

 空港で、最も会いたくない男と出会った。

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトだ。

 片腕を失い、そばには婚約者である女性が付き添っている。

 

 

 そういえば、僕は聖杯戦争の結末がどうなったのか知らない。

 遠坂邸が崩壊し、周囲の住宅街が破壊され、多くの死傷者が出たとニュースで報道されていたが…。

 ケイネスが勝った…というわけではなさそうだ。

 なら、アーチャーかキャスターかセイバーか?

 …まぁ、敗北者である僕には、どうでも良いことだ。

 

 

 僕はケイネスと目線を合わせる勇気もなく、その場を通り過ぎようとする。

 そんな僕に、彼は声をかけてきた。

 嫌味でも言うつもりだろうか。

 

 

「…私の聖遺物を盗んだ件、忘れていないだろうな。」

 

「うっ…」

 

 

 その通りだ。

 返す言葉もない僕に、ケイネスは言葉を続ける。

 

 

「私のもとで、貴様は様々なことを学ぶべきだ。 熱心に取り組み、良い指導者になれたなら、聖遺物の件は不問としてやろう。」

 

「僕が、指導者に…?」

 

「気づいていないのか? 貴様には、その素質がある。 貴様の論文にも、見るべきところはあった。 …ああ、今更だが、謝罪しておく。 貴様の論文を笑いものにしたこと、すまなかったな。」

 

 

 

 信じられない。

 あのプライドが高く、魔術師の歴史が浅い家系を見下しているケイネスが、僕に頭を下げた。

 

 

 

「ぼ、僕は…。」

 

「返事は即答でなくていい。 さて、目的は同じだろう。 帰るぞ、我らが祖国にな。」

 

「…ああ、わかったよ。 ケイネス…先生。」

 

 

 飛行機が離陸する。

 僕らの聖杯戦争は、これにて、幕を閉じた。

 

 

 

 つづく

 

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