【完結】涅マユリ(偽)が第4次に召喚されたヨ 作:妖怪もやし
「■■■■■■!!」
「くっ…!」
バーサーカーは奇声を上げながらまっしぐらにセイバーに襲い掛かる。対応しようとするセイバーだが、ランサーとの戦いでの負傷があるので上手く戦えないようだネ。
で、その負傷を負わせたランサーが颯爽と助太刀に入る。マッチポンプとも見える光景だネ。
「悪ふざけはよして貰おうか、バーサーカー。セイバーには先約があってな」
「なにをしているランサー。私はそのような指示など出していないぞ」
「セイバーは、この私めが必ずや討ち果たしてみせます!どうかこのまま戦わせてください、我が主よ!」
マスターの当然ともいえる指摘に、セイバーとの一騎打ちに執着するような返答をするランサー。マスターとしては腹を立ててもおかしくない発言だが、ここで彼の口調に変化が生じた。
「…5分だ。それでバーサーカーを仕留めるか、撤退に追い込めぬのならば我が命令に従って貰うぞ」
ほほう。ここは令呪を使わずにおく方針にしたようだネ。先ほどの私とアーチャーの問答から、この聖杯戦争には疑惑が生じ始めている。故に原作とはやり方を変え、令呪の温存を考えたのだろう。ランサー陣営の令呪を消費させられなかったことは、できれば今後の戦略において吉としたいところだネ。
「5分…。ハッ、ありがたき幸せ」
「ランサー…」
「聞いての通りだセイバー。ヤツが来るぞ、構えろ!」
「…ああ!」
マスターの承認を得たことで、ランサーはより張り切ってセイバーとの共闘に挑む。バーサーカーはよく健闘しているが、二体一という状況では流石に劣勢といったところのようだネ。
さて、彼のマスターさんはどうしてるだろうネ。憎き時臣のサーヴァントを撤退に追い込んだことで彼の溜飲はある程度下がっているはず。この第二ラウンドが始まったこと自体が予想外の筈だ。セイバーとランサーの両名を相手取ることとなり、自らのサーヴァントが敗死する可能性が高まってきた以上、これ以上の戦いは望まないだろう。
「む?」
「どうやら撤退するようだネ」
ライダーが目を見開き、私が口にしたようにバーサーカーはその場で姿を消した。同時にネムにある命令を下す。バーサーカーのマスターは戦いの影響で疲労しきっているだろうからネ。仕掛けるなら今だろう。
「…5分以内か。まあ上出来といったところか」
「我が主よ…。戦いを許可頂き、感謝します」
「首級を上げてくれればなお良かったのだがな」
良い雰囲気のランサー陣営に水を差すように、道化じみた仕草で拍手をしながら彼らに近づく。この行為には、私に注目を集めることで、裏で動くネムの存在を気づかれないようにしたいという意図もあるネ。
「いやいや、見事な闘いぶりだったネ」
「…キャスターか。先ほどはアーチャーの乱入で水入りとなったが、続きをさせて貰う」
そんな私に槍の切っ先を向けるランサー。一戦、いや二戦交えたばかりだと言うのに元気なものだネ。
「おっかないネ。でも、今日はここらで終わりとしようじゃないか」
「なに…?」
「そもそも、この聖杯戦争には根本的に問題が発生している。これ以上の戦いは無意味だと思うヨ。違うかネ?ランサーのマスターよ」
「…キャスター、貴様はどこまで知っている?」
ランサーのマスターからの疑いの視線を感じる。彼は居場所を特定されないように魔術を使っているので、どこからかは分からないけどネ。涅流便利アイテムを使えばサーチも可能かもしれないが、今は止めておこう。
「貴様とアーチャーが語ったことが真実か確かめるべく周囲を探ってみたが…アサシンの存在を感じた。ヤツが生きているというのは間違いないようだ」
彼は自らがランサーに与えた5分の戦闘時間内に、アサシンの気配の残滓のようなものを探り取ったようだ。切嗣たちのことに触れていないのを見ると、彼らはケイネスの探知から上手く逃れたようだネ。
「ほう、この短い時間に潜伏に長けたアサシンの所在をつかみ取るとは優秀だネ」
「侮ってもらっては困るな。この程度のことは一流のマスターならできて当然というものだ。…もっとも、それもできぬ未熟者もこの聖杯戦争には混じっているようだが」
私の称賛を当然のように受け止め、厭味ったらしい口調で教え子を馬鹿にする先生。ぐっと唇を噛みしめる黒髪の青年の姿が目に入ったが、そのことには触れずに話を進める。
「情報の共有がしたいということなら、今この場でも良いのだが…日と場所を改めてというのはどうかネ?」
「…まあ良いだろう。今晩の戦いは水が入りすぎた」
「決まりだネ。私は柳洞寺という大きな寺を本拠地としている。良ければ近いうちにでも尋ねてきてくれたまえ。ライダーやセイバーのマスターも、来てくれるなら歓迎するヨ」
「…!?」
この言葉は、各陣営のすべての者に衝撃が走ったようだった。ライダーのマスターはポカンと口を開け、ライダーは興味深い獲物を見つけたかのようににんまりとしている。ランサーは疑いに眉を顰め、セイバーは傍に立つ銀髪の女性と目を合わせ合い困惑を露わにしている。
「では今宵は解散といこうか。また会う日を楽しみにしているヨ、サーヴァントの諸君も、マスターの諸君もネ」
困惑と警戒が支配した場に背を向け、私はさっさとその場を離れるのであった。警戒はしていたが、追撃してくるサーヴァントは無し。追手として使い魔が放たれていたようだったが放置した。どのみち柳洞寺の結界内に入れば使い魔は消滅する。そういうふうに陣地作成を整えておいたからネ。
「戻っていたようだネ、ネム」
「はい、マユリ様。ご命令通りこの男を確保いたしました」
別ルートから帰還していたネムと、柳洞寺の一室にて再会する。彼女の言う通り、庭の一画にはバーサーカーのマスターが意識を失った状態で転がされていた。縛道で動きを封じ、口元から零れ落ちる気味の悪い蟲を眺める。この蟲共も研究材料として使えそうだネ。
「さて、彼が目を覚まし次第すぐに交渉といこうかネ」
「自らの陣営に拉致した状態で行われる会話は、交渉ではなく脅迫というのでは?」
「何を言うのかネ?慈悲深きこの私が、脅迫という下衆な行為をするはずがないだろう」
「…仰る通りです。失礼いたしました、マユリ様」
「分かれば良いんだヨ」
side ウェイバー
「ああもう、何を考えてんだあの変態仮面は!」
「まさか自らの拠点を明かすとは!あっぱれな道化ではないか!」
「笑ってる場合か!」
僕は馬鹿笑いをする自分のサーヴァントを睨みつけたが、コイツは僕の感情などどこ吹く風というように現状を楽しんでいるようだ。全く、その呑気さが羨ましい…。
あの不気味なキャスターが去った後、それぞれの陣営は自然と解散ということになった。セイバーもランサーも消耗しているこの状況だ。戦いをしかけることも考えたが…どうも気が引けてしまった。ライダーの不興を買うのを恐れたのもあるが、聖杯戦争の続行そのものが疑わしくなったからだ。キャスターとアーチャーの会話だけなら信憑性は薄かったが、ケイネスがアサシンは生きてると断言したからには間違いないのだろう。アイツの言い分に腹はたったが、実力自体は確かだからな。
ただ、去っていくセイバーの後ろ姿に激しい怒りと焦りのようなものを感じたのは気のせいではないだろう。この聖杯戦争の存続を危ぶんでいるのだろうが、あれには鬼気迫るような迫力があった…。
キャスターの動向を探るために使い魔を放っておいたが、柳洞寺の範囲内で消滅してしまった。流石に必要以上の情報は与えてくれないようだ。柳洞寺付近で使い魔が消されたと言うことは、ヤツが言ったようにあの寺が拠点というのはブラフでは無いのかもしれない。あるいは、ブラフでは無いと思わせる為に柳洞寺で使い魔を消し、その後まんまと別の拠点に移動している可能性もある。疑い始めたらきりがない。
「しかし、どうするのだ小僧。このままでは聖杯戦争は最悪の場合、不正が発覚したことで中止となるぞ。貴様が嫌うあのケイネスとやらが黙っていまいだろうからな」
「だよなぁ…」
このライダーは能天気のようでありながら鋭い指摘をしてくるからタチが悪い。どうするのだ、と言われても困ってしまう。結局、その日は名案らしい案も浮かばずにそのまま眠りに落ちたのであった。
つづく