【完結】涅マユリ(偽)が第4次に召喚されたヨ   作:妖怪もやし

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 8話 バーサーカーのマスターとの問答

 倉庫街やホテル傍の街中での戦いの翌日。

 私は寺の庭に結界を張り鬼道の練習をしていたが、少々難航していた。

 

「うーむ…詠唱破棄がどうもうまくいかないネ」

 

 低レベルの鬼道なら詠唱破棄での使用が可能だが、50番台から先は詠唱をしなければ失敗してしまう。本来のマユリ様なら高レベルの鬼道の詠唱破棄もできそうだがネ。やはり私は劣化マユリということか。とはいえ、マユリ様の特徴の一つである謎アイテムの作成や使用は原作通りにできるようだ。これは助かるネ。

 昨日から特殊機能満載のカプセルを作り出し、バーサーカーのマスターをその中で休ませて身体を治療しているところだヨ。早く彼の身体から刻印虫を取り除いてやりたいところだが、それはある目的が終了してからだネ。

 しかし、詠唱破棄が苦手という欠点は実戦で不利になりそうだネ。敵はこちらがオサレな詠唱を唱えるまでの間、悠長に待ってはくれないだろうし。白哉が良く使用する六杖光牢は相手の動きを止めることが出来る有用な技なので、これだけは詠唱破棄で使用できるようにしておきたいところだヨ。

 

「マユリ様」

「どうしたんだネ、ネム」

「バーサーカーのマスターがもうすぐ目を覚まします」

「分かった。すぐに向かうヨ」

 

 ネムと共にカプセルに向かう。数分後、彼は目を覚ました。

 

「…な、ここは何処だ…!お前、お前はキャスターか!」

「いかにも。初めましてだネ、バーサーカーのマスターくん」

「俺を放せ!変なカプセルに閉じ込めやがって……」

「そう言われて放すと思うかネ?まあ少し落ち着き給えヨ」

「これが落ち着いていられるか!来い、バーサーカー!…なぜ呼び出せない!?」

 

 バーサーカーのマスターは非常に興奮しているようだった。まあ気が付けば得体のしれない連中に捕らわれていたら、そうなるのも無理はないネ。彼は私に罵声を浴びせながらバーサーカーを呼ぼうとしたが、それは失敗に終わる。これも私特製のご都合アイテムの効力の一つだヨ。私が許可しない限り、彼は自分のサーヴァントを呼ぶことができなくなっている。

 

「無駄だヨ。ここではバーサーカーを呼び出すことはできない」

「くっ…!…俺をどうする気だ」

「まあ、まずは落ち着いて自己紹介といこうじゃないか。初めまして。私はキャスター…真名は明かせないがネ。こちらはマスターのネムだヨ」

「よろしくお願いします」

 

 律儀にネムが頭を下げるのを見て、彼は混乱したような顔をした。

 

「…令呪が刻まれてるってことは、本当にその子がマスターなのか…。なぜそれを俺に教える?マスターを隠しておいた方が有利だろうに」

「君の信頼を得る為と思ってくれたまえ」

「…いきなり拘束しておいて信頼も何もないだろう」

「確かにそうだネ」

 

 会話をしているうちに、バーサーカーのマスターは少しずつ落ち着きを取り戻してきたようだ。

 

「…さっきも聞いたが、お前らは俺を捕えてどうする気だ?殺す気ならとっくにやってるだろ」

「その通り。我々に君を殺す気はないヨ。むしろ協力関係を築きたいと考えている」

「協力か…。上からの物言いだな。断れば殺すってコトか?」

「そこまではしないヨ。断ってもその辺に君を解放するだけで、殺しはしない。それに、君は断りはしないさ。私との共闘は君にとっても大きなメリットを生むことになるからネ」

「俺のメリット?アンタと組むメリットは具体的に何があるんだ」

「間桐桜の救出と、臓硯の捕獲だ」

 

 私の言葉を聞いた彼は絶句した。暫く無言の時が続き、絞り出すように声を出した。

 

「…なぜ、桜ちゃんとあの爺のことを知っている?」

「その装置には相手の記憶を読み取る機能があってネ。それで君の記憶を読み、目的も把握したのさ」

 

 嘘である。本当は原作知識があるから事情を知っているだけだ。まあそういう機能もつけようと思えばつけられるけどネ。

 

「記憶を読んだだと…?キャスターってヤツは何でもアリだな…」

「それほどでもあるヨ」

「…桜ちゃんを…救出…。だが、そんなことが本当にできるというのか?」

「君一人では無理だろうが、私と組めば可能だヨ。私が様々な術を操り、便利な道具を所有していることはもう分かっただろう?間桐桜を助け出し、彼女を利用する老人も始末してあげるヨ」

 

 私の言葉を黙って聞いていた彼は、大きく息を吐きだすと最後の確認をするようにこちらを見た。

 

「…お前らにとって、桜ちゃんを助けるメリットは何だ?」

「人道的に見ても、彼女の受けている状況は余りに悲惨だからネ。助けたいというのが人情だろう。私は慈悲深いからネ」

「…」

 

 ネムが何か言いたげに見ているが黙殺する。

 

「…と、まあ助けたいというのもそうだが、彼女の義理の祖父であるあの男を捕えたいというのも本音だヨ。あの男の使用して居る特殊な術を研究したい。キャスターとは研究好きだからネ」

「……」

 

 私の言ったことを咀嚼するように彼は視線を落とす。

 

「…確かに、お前は色々な術を持っている。俺とバーサーカーだけでやるよりは可能性が高い、か…」

「ああ。君の身体の消耗も激しい。あのバーサーカーはアーチャーには相性が良いようだが、仮にアーチャーを倒しても私を含む5基のサーヴァントを相手に勝ち抜くことは困難だろう。その前に君の身体が持たない」

「チッ…そうかもな…」

 

 吐き捨てるようにしながらも、彼は渋々頷いた。自分の身体が大きなダメージを受けていることは彼自身が自覚していたのだろう。

 

「…最後の確認だ。桜ちゃんを必ず救出しろ。あのジジイは研究材料にでも何でもしてくれて構わないから、桜ちゃんだけは幸せにしてやりたい」

「約束しよう」

「…そうか。…なら、お前の提案を呑むことにする」

「よし。これで協力関係は成立だネ」

 

 カプセルを操作し、彼の拘束を解く。

 

「ふぅ…やっと解放してくれたか」

「今ならバーサーカーの召喚も可能だヨ。まあ、ここで私をだまし討ちするより間桐桜の救出を最優先するのが得策だろうけどネ」

「ああ、分かってるよ。今更攻撃を仕掛けたりはしない」

 

 彼は本当に私に仕掛ける気はないようだ。うむ、利口で素晴らしいネ。

 

「それは何よりだ。まあ食事にでもしたまえ。今この寺の坊主に運ばせるヨ」

 

 手を叩くと、別室から坊主がやってきて、私たちが居る広い和室の隅にあるテーブルに料理を並べ始める。刻印虫が刻まれ、身体を病んでいる彼でも食べやすいように考慮された料理を予め作っておいたのだ。自分で自分の優しさにほれぼれしてしまうヨ。

 

「…いや、呑気にメシなんか食ってる場合じゃない。協力するって決めたなら、一刻も早く桜ちゃんを…」

「その前に君の体がもたないと言っただろう?体力の回復は必要だヨ。私の料理には回復効果があるから今の君でも食べられる。間桐桜の保護の成功確率を少しでも上げることは、君にとっても悪いことじゃないと思うけどネ」

「……分かった」

 

 渋々といったようすでテーブルに座る雁夜。

 

「…しかし、お前はこの寺の坊主を部下みたいに使ってるが、洗脳でもしてんのか?酷いことをする奴だな…」

「なに、彼らの身体に副作用などは残らないから安心したまえ」

「洗脳してることは否定しないのかよ…」

 

 溜息をつきながらも、彼は食事を始めるのであった。

 よしよし。彼の協力も取り付けられたし順調だネ。あと警戒するべきは、セイバー陣営の強襲かネ。セイバー陣営が再びケイネスに攻撃を仕掛ける可能性もあるし、ライダー陣営が何かをしでかす可能性もある。アーチャーことギルガメッシュは愉快犯的な面があるので行動が予想し辛いし、彼に十分警戒をしないといけないネ。

 

「やれやれ、やることが沢山あって困ってしまうネ」

 

 溜息を一つつき、料理にがっつく彼に声をかける。

 

「予定では今夜間桐邸を襲撃するつもりだ。十分栄養をとり、英気を養っておいてくれたまえ」

「今夜か…」

「ああ。私の計算だと、今晩には君の体が戦えるほどに回復する時間だ。覚悟はできているだろうネ?」

「当たり前だ…!」

 

 臓硯との戦いに改めて覚悟を決めなおしたのだろうか。彼の顔が引き締まる。

 

「君のバーサーカーに暴れて貰い、その隙に私が間桐桜を救出し臓硯を捕える。君のサーヴァントの活躍には期待しているヨ」

「…ああ、分かってるさ」

 

 彼は自分に気合を入れるように頷き、再び料理を食べ始めるのであった。 

 

つづく




4/25 後半の文章を一部修正しました
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