【完結】涅マユリ(偽)が第4次に召喚されたヨ   作:妖怪もやし

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 9話 憂う者と笑う者

side 時臣

 

 英雄王ギルガメッシュ。

 最強のサーヴァントを引き当てたと喜んだのが、今では遠い昔のように思える。まさか我らの企てを平然と暴露するとは。最悪のサーヴァントを引いたのではないかとすら感じてしまう。

 かの英雄王は、戦闘力だけで言えば、過去3度を含めた聖杯戦争でも最強と断言できる。だが、ここまでコントロール不可能な男だったとは…。せめてあの正体不明のキャスターが余計なことさえ言わなければ、いくら英雄王といえど暴露するような真似はしなかっただろうに。つくづくあのキャスターが憎い。ヤツの真名が分からないのも苛立ちを加速させる要因だ。

 倉庫街での戦いの際に、令呪一画を使用して撤退させたのは完全に判断ミスだった。どうせ令呪を使うならば、英雄王の宝具をもってランサー陣営を始末させれば良かったのだ。キャスターの暴露と、バーサーカーの予想以上の戦闘力に気が動転していた。あの時にもっと正常な判断がとれていればと、悔やまれてならない。

 私と教会の陰謀の証拠を残さぬよう、綺礼には教会からの脱出を命じた。本人が居なくなっていれば、アーチボルトといえど事の追及は難しいだろうと判断したのだ。だが…。

 

「やはり脱出は難しいか…」

「はい。努力しておりますがアーチボルトの使い魔の監視が予想より多く…申し訳ありません」

「…いや、お前はよくやっている。気にするな」

 

 結果はこの通り、ことごとく失敗していた。アーチボルトが放った使い魔が、四六時中教会と遠坂家を監視しており、綺礼の脱出は非常に困難となっていた。使い魔の迎撃はしているが、倒すたびに新たな使い魔が押し寄せてくる。時計塔屈指の実力者だけあり、使い魔の質や製造速度は私以上かもしれん。それに、アーチボルトだけでなく、他の陣営のマスターも、監視のために教会付近に使い魔を放っているようだ。これでは、仮にアーチボルトの全ての使い魔を退けたとしても、綺礼の脱出は難しい。

 …それにしても、綺礼の謝罪が上っ面だけのものに聞こえるのは気のせいだろうか?

 我らの陰謀が時計塔などに知れ渡れば、ヤツも破滅するというのに、やる気が全く感じられない。

 自分の弟子だが何を考えているかさっぱり分からない。

 

「…確認するが、お前のアサシンの失われた数は確かに15騎なのだな?」

「はい、間違いありません」

「英雄王との戦闘で失ったのが1騎。寺に放ち迎撃されたのが3騎。そしてアーチボルトとランサーとの戦いで失われたのが10騎…。やはり1騎足りん。どうなっている?」

 

 疑問を口にしながらも、脳裏に最悪の可能性が思い浮かぶ。百貌のハサンのうち1騎が捕えられ、教会への追及の証拠として利用されているというケース。大いにあり得る。

 それを想像しながらも、有効な手を打てない現状がもどかしくてたまらない。こんなことになるのならば、素直に英雄王の力をもって正面から戦っておけば良かった。今更言っても後の祭りだと分かっているのだが、IFの未来を想像してしまう自分が歯がゆくてならなかった。

 

 

 

 

side ケイネス

 

「他の陣営は動く様子はなしか…」

「そのようです、マスター」

「ふむ。まあ、聖杯戦争の存続自体が危ぶまれているのだ。当然といえるだろうな」

 

 特上のワインを口にしながら、ソファーに座りなおす。極東の田舎町だが、一番評判の良いホテルを選んだだけはある。ワインの味は素晴らしいものだし、ソファーの座り心地もなかなか良い。勿論、飲む前にワインに毒などが含まれていないよう調査済みである。

 

「ランサーよ、あの夜のお前の働きは私の想像以上のものだった。改めて称賛しよう。実に見事だ。お前の腕と機転の良さに感謝する」

「…! 恐縮です、我が主よ」

「アサシンを1騎捕まえてくれるとはな…。これで教会の悪事を暴く証拠となる」

 

 愉悦に笑みを浮かべる。ホテルの傍でセイバー陣営の雇った下衆な魔術師と戦ったとき、アサシン陣営が襲撃を仕掛けてきた。その時にランサーは1騎を捕虜としてくれたのだ。そのアサシンは、ホテルの一室に用意した魔術の檻に閉じ込めてある。脱出も自害も、令呪での撤退もできぬようにした特別製の檻だ。

 

「…少々屈辱的ではあるが、あのキャスターは良い仕事をしてくれた。ヤツが居なければ教会とアーチャー陣営の卑劣な策は見抜けず、踊らされていただろう」

「…」

「しかし、あのキャスターの真名が全く分からんというのは謎だ。日本刀らしきものを使っていたが、冬木の聖杯戦争では東洋のサーヴァントは呼べぬはず。となると剣術にも通じている技術者や芸術家、発明家ということになるが…」

 

 ワインをテーブルにおき、しばし考える。いくつか候補はあるが断定できない。あの悪趣味な仮面が有力な手掛かりになりそうではあるが…。

 

「まあ、キャスターの真名については一度おいておくとしよう」

 

 再びワインを飲みなおし、話を切り替える。

 

「この聖杯戦争、私の予想通りに進めば遠坂は終わりだ。神聖な聖杯戦争を八百長で汚したのだからな。遠坂と組んだこの街の魔術教会も破滅する。それを暴いた私の名声はさらに高まるということだ」

「はっ、仰る通りかと」

「…まあ、そうなるでしょうね」

 

 忠犬のように同意するランサーと、無関心を隠そうともせず返事するソラウ。

 ソラウの気がランサーに逸れているのは認めざるを得ない。だが、この戦いが終われば、ソラウも私の事を高く評価するだろう。ランサーは聖杯戦争が終われば退場する。所詮呪いの黒子による効果など一過性の病のようなものだ。

 

「ふふ…。勝ったぞソラウ、ランサー。この戦い、我々の勝利だ」

 

 私はワインを手に優雅にソファーから立ち上がり、窓に近づき美しい夜景を見下ろしながら笑みを浮かべるのであった。

 

つづく




フラグじゃないです。
先のこと全然考えてないんで、ケイネスや時臣がどうなるかは作者にも分かりません。
師匠リスペクトでライブ感で書いてます。
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