Fate/GravePatron   作:和泉キョーカ

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◆アーチャー
真名:東郷平八郎
性別:男性
筋力:B 耐久:C+ 敏捷:C 魔力:E 幸運:C 宝具:EX
スキル:対魔力D、単独行動B+、追い風の航海者A、天孫の勅令B、沈黙の提督A
宝具:『皇国の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ』
→魔力消費と結界の展開範囲の関係から限定顕現しかできなかった『砲撃』という概念を広義化し、凝縮された狭い範囲内に『大日本帝国海軍』の全艦艇を出現させ、攻撃させる宝具。どうやら計画書のみに終わった艦艇も含まれているようだ。


皆が皆酔い潰れる島 -Ⅰ

 数分後、白衣の女性は尻餅をついて大仰に両腕を振り、降参の意を示していた。

「ままま待ちましょう! ね! 少々貴方がたの力を見くびっていました! 停戦しましょう! こうなっては私共には為す術がありません! 降参しますぅ!」

 困惑の表情でランサーがズーハオの方を瞥すると、ズーハオも眉根を寄せて難しい表情をしていた。そこで、ランサーは槍の穂先を女性の喉元にあてがいながら、独断で問い掛けた。

「お姉さん、名前は? サーヴァント? それともマスター?」

「わ、私はロベルタ! ロベルタ・ラディッシュですとも! キャスターのマスターです!」

 そう言って、ロベルタと名乗った白衣の女性は右手の黒い革手袋を外し、手の甲に刻まれたシーソーのような形状をした令呪をランサーとズーハオに見せた。この命の聖杯戦争にマスターとして参加する魔術師の令呪は、サーヴァント召喚時に形状が変化することでも有名だ。喚び出した英霊の特徴を意匠として色濃く映し出す令呪は、ある種他のマスターに見せてはいけないデメリットの宝庫でもある。目の前の白衣の女性――ロベルタは、その令呪を堂々とランサーたちに突き付けてきたのだ。

「……どうする? ズーちゃん。」

 ランサーが問いかけると、ズーハオは少し考えを巡らせた後にロベルタに言い放った。

「お前のサーヴァントを見せろ。」

「も、もちろんもちろん!」

 ロベルタが「キャスター!」と声高に呼ぶと、先程の金髪の幼女が地面からゾンビのように這って現れた。先程の自分自身の血溜まりから首のちぎれたぬいぐるみを拾い上げ、小走りでロベルタの横に寄って来る。

「私たちも今苦戦している相手がいるんですよぉ! いえ、貴方がたの実力を見くびっていたのは本当に確かです! 事実です! だからこそ貴方がたのご助力をお願いしたい! 貴方がたならあの暴れ馬を倒せるはずですよ!」

「暴れ馬ぁ?」

「最後に残ったライダーですよ! 呪術師(キャスター)程度の実力ではあれは倒せませんってぇ!」

 ランサーが再びズーハオの方を見ると、彼もまた大溜息をついて肩をすくめていた。

「……どうやら、本当にサーヴァントに恵まれなかっただけと見える。ランサー、最大限の警戒はしつつ、一時共闘とするぞ。」

「オッケー!」

 その返答を聞いたロベルタは、キラキラと瞳を輝かせて飛び上がり、ズーハオの手を取って激しく上下に振り回した。

「ありがとうございますぅ! いやぁ寛大な心の持ち主で本当に良かったですよぉ!!」

 ズーハオは怪訝な表情でその手を振り払い、ランサーを置いてその場から離れようとする。そのすれ違いざま、ランサーと精神の会話を試みる。

『下手な演技だな。』

『ホントにね。』

「ロベルタとやら、そのライダーの特徴や戦法を教えろ。ついてこい。」

「あっ! はいはい今すぐぅ!」

 大股で夜のセントラルパークを横断するズーハオの背を、ひょこひょことした足取りで追いかけるロベルタ。その場に置き去りにされた金髪の幼女――キャスターは、ぼんやりとした虚ろな眼でランサーを終始見上げていた。脳裏に先程のキャスターの戦法が浮かんだランサーは少し悪寒に襲われながらも膝を折り、キャスターと目線を合わせて話しかける。

「厄介なマスターを持っちゃったもんだねぇ、君もさ。」

 しかし、桜色の小振りでかわいらしい唇を震わせてキャスターから放たれた言葉は、おおよそ人類には早すぎる言語だった。

「……蜷帙°繧芽ヲ九l縺ー縺昴≧隕九∴繧九?縺九b縺励l縺ェ縺?↑縲」

「えっ!? え、えぇ? ごめん、もう一回言って?」

 ノイズまみれのその発言に耳を疑い、再度コミュニケーションを図る。

「縺ゥ縺?○縺雁燕縺ァ縺ッ逅?ァ縺吶i縺ァ縺阪s縲り◇縺崎ソ斐@縺ヲ繧ら┌鬧?□縲」

 やはり、キャスターが発するのは言語と言うにはあまりにもおぞましすぎる怪文だった。

「……莉墓婿縺ョ縺ェ縺?・エ繧√?らァ√?蟇帛、ァ縺輔↓諢溯ャ昴@縺溘∪縺医h蜃。諢壹a縲 ……ランサー、あなた、強い?」

「……えっ? あ、あぁうん、僕は強いよ! 大丈夫だって、キャスター如きじゃ達成できないような勝利も思いのままさ!」

「……螳溷鴨縺ョ菴弱>蠑ア閠?⊇縺ゥ閾ェ繧峨r蠑キ縺丞密莨昴@繧医≧縺ィ縺吶k繧ゅ?縺?縺ェ縲 ……たよりに、してる……。」

 小さなボリュームの声でそうとだけランサーに伝えると、足音もなく遠く離れたロベルタとズーハオを追いかけて走り出すキャスター。ランサーはその背中を見つめながら肩に担いだ槍の位置を楽な場所に転がし、首を捻る。

「……はぁ、きな臭いなぁ……。」

 キャスターが横を通り過ぎた際にちらと見えた光景を思い出しながら、ランサーは溜息を吐き、困り顔で笑った。

「……何でキャスターにも同じ令呪がある(・・・・・・・・・・・・・・・・)んだよ……。」

 

 その三日後、ランサーは夜のタイムズスクエアのド真ん中で仁王立ちを決め込んでいた。目の前をびゅんびゅんと飛び交うタクシーや自家用車、バス。そしてしきりに摩天楼を見上げる観光客と目的地が頭に叩き込まれているがゆえにひたすら前方だけを見つめて早足で進んでいくニューヨーカーたちの大波の中、ランサーはその時を待つ。

 やがて、上空に魔力源体を察知したランサーは大きく身体を捻り、その右手に長槍を出現させる。突然刃物を虚空から取り出したランサーに周囲の人間は悲鳴を上げながら慌てふためき、蜘蛛の子を散らすように方々へ逃げ駆けていき、ランサーを中心とする半径二十メートル圏内はランサーただ一人のみとなった。それでも遠巻きに携帯電話で動画を撮影してしまうのは現代人の病だろうか。

 ――刹那。ランサーの頭上でニューイヤーカウントダウンの花火に勝る光を放ちながら魔力の爆風が弾け、街を往くすべての人、モノに吹き荒んだ。コンクリートがひび割れて陥没するのも構わずに中空へ跳躍したランサーは、魔力爆発の原因の一端を担った自身の槍をキャッチし、そこにいた青年――最後の『ライダー』と衝突する。

「……ヒュウ! 随分とまたかわいこちゃんと戦うことになっちまったなァ! オレかわいい女の子と剣をぶつけんの嫌なんだけどなァ!!」

 右手に刺突剣(レイピア)、左手に鳥銃(マスケット)を装備し、鳶色の髪を持つ見るからに軽薄そうなその青年、すなわちライダーは、ランサーと一合ぶつかり合うや否やタイムズスクエアの車道に着地し、そうフランス訛りの英語で軽口を飛ばした。

「……マスター……。」

 その言葉に、ランサーは唇をわなわなと震わせる。その意識の奥から、遠隔地で戦闘の様子を見守るズーハオの返答が返ってきた。

『女と言われるのは慣れているだろう、そこまで怒ることも――。』

「かわいいだってぇ!!!」

 しかしズーハオの予想とは真逆に、ランサーは瞳をきらきらと輝かせて声を張り上げた。

『……は?』

「いやぁ! 照れちゃうなぁっ! かわいいだなんてそんな……まぁ確かに僕は主様も認める美少女……もとい美少年だけどっ! 改めて言われちゃうと恥ずかしいよぅ!!」

 顔を赤らめて身をくねらせるランサーの対応にズーハオはおろか、対面するライダーですら呆気に取られていた。

「あっ! でもでも、褒めても何も出ないし、だからと言ってオニーサンに手加減するつもりはないからねっ!」

『おい、その猫を被った態度をやめろ。鳥肌が立つ。』

 しかし、そのズーハオの命令にランサーからの返答はなく。

「ヘッ……上等だぜお嬢ちゃん! 我が名はライダー! 騎手の座の英霊である! 騎士道に則りいざ尋常に――勝負ッ!!」

「我がクラスはランサー! 一戦で二十と七の首級を狩りしこの鋭槍の錆となるが良い!!」

 しかしてここに、騎士道と武士道の正面衝突が巻き起こった。

 

 場所は変わり、タイムズスクエアからやや離れたブライアント公園。タイムズスクエアで奇妙なことが起こっていると耳にした地元民や観光客がこぞって公園から離れていったため、青々とした芝生を踏む者は誰もいなかった。そう、キャスターとロベルタ以外は。

「……さぁて、ここまでは計画通りでしょうか。ふっふっふ……いやぁ上手く事が運んでくれて嬉しい限りですねぇキャスター!?」

「縺ゅ∪繧翫?縺励c縺弱☆縺弱k縺ェ繧ュ繝」繧ケ繧ソ繝シ縲 縺薙%縺ァ螂エ繧峨↓縺薙■繧峨?諤晄ヱ縺碁愆隕九@縺ヲ縺ッ謚倩ァ偵?險育判縺梧ーエ豕。縺ォ蟶ー縺吶? ……わかってる?」

「わかってますよぉ! あちらさんが猪突猛進型だってのは既に分析済みですとも!! まんまと我々の計画に乗ってくれて万々歳、ですねぇ!!」

「……。」

 キャスターは呆れたように眉根を下げると、ノイズまみれの声で何かをロベルタに伝える。

「縺昴l繧医j繧ゅ?∽サ翫?縺輔▲縺輔→莠九r驕九?縺槭? 螳晏?繧剃スソ縺医?√く繝」繧ケ繧ソ繝シ縲 ……いくよ。」

「はいはい喜んでェ!! それじゃあ行きますよキャスター!」

 その掛け声に応じたキャスターがぽろぽろと紡ぎ始めた人類が使用するあらゆる言語と大きく乖離した詠唱に合わせ、キャスターの足下にどす黒い泥のような闇が沈殿していく。その闇が大地に浸透していき、やがて薄氷が割れていくように地に亀裂が生じ始めた。

「……それでは私もっ! ふふ……死とは神が我ら人類が助長しすぎないようにと与えたもうたリミッター! それを突破してこそっ! 医学の真の到達点……神聖存在へと至る道が開くというものォ!!! さァ!! 我が呼び声に応じて来たれ、超越者の軍団よォ!!!」

 白衣をはためかせ、ロベルタの狂気に彩られた呪いの言葉がニューヨークの夜空に吸い込まれていく。キャスターの闇が入れた地面のひび割れから腐敗した人間の手首が突出するのを確認すると、ロベルタはひときわ邪悪な笑顔を浮かべ、キャスターと共に彼女の宝具が持つ真名(・・・・・・・・・・)を謳った。

 

「パレードのお時間ですよォ!!!! 『全ての死に祝福あれ(ブラッド・シェイク)』ゥ!!!」

「縺オ繧薙$繧九> 繧?縺舌k縺?↑縺オ 縺上→縺?k縺 繧九k縺?∴ 縺?′ 縺オ縺ェ縺舌k 縺オ縺溘$繧……『繧ッ繝医ぇ繝ォ繝慕(びよんど・ざ・)・櫁ゥア菴鍋ウサ隕玖◇骭イ(りーぷ)』。」

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