真名:繝上Ρ繝シ繝峨?繝輔ぅ繝ェ繝??繧ケ繝サ繝ゥ繝エ繧ッ繝ゥ繝輔ヨ
性別:女性?
筋力:E 耐久:D 敏捷:B+ 幸運:D 魔力:EX+ 宝具:EX
スキル:陣地作成C、道具作成B+、鬆伜沺螟悶?逕溷多EX++、逾樊?ァA+など
宝具:『???』
その切断面は焼け爛れ、血液すらも流れず広がらず焦げて止まっていた。
「わしらを憐れむかい、ガキんちょ。」
ウォッチャーの目の前には、上半身と下半身を切り離されたひとつの女性の惨死体と、消えかけるサーヴァントがいた。アーチャー、東郷平八郎。全身を無数の鉄の杭で貫かれ、中空に掲げられた状態で目下に立つウォッチャーを見つめるその老提督を、ウォッチャーは感情の窺い知れぬ瞳で見上げた。
「アーチャー殿。貴方様は、何故戦場を所望なさったので御座いますか? エーレントラウト殿――貴方様のマスター殿に『やれ』と命じられたからに御座いますか?」
「あぁ? ……っはは、んなもん決まってらァ。わしらはなぁ、戦争ってもんが好きだったのさ。マスターにしたってわしにしたってそうだ。戦争の後で……ボロボロになった戦場が再生していくその様を見るのが好きだったのさ。人間の泥臭さ、生き汚さが思う存分見られるからな。そういうのを見るのが、堪らなく好きだった。」
身体の大半が黄金の粒となって魔力に還っていく中、アーチャーはウォッチャーに向かってそれなら、と問い返す。
「お前さんは何のためにこの戦争の行く末を見ているんだ?」
「――面白いから、に御座います。」
そう言ってにっこりと笑う。人間が己の野望を、欲望を、切望を叶えんがために他者を蹴落とし、殺し、排除する。その姿を見ているのが何ともいじらしく可愛らしい、愛おしいと感じるのだ。そう、ウォッチャーは語った。
「似た者同士だな。」
アーチャーもにかっと笑う。
「――後悔はないぜ。戦場が再生していく様を見るのが好きなんだ。こんなに平和で……穏やかな日の本の海が見れただけで、わしはこの時代に召喚された意味があった。」
水平線の彼方から昇り行く黎明の光に目を細めながら、アーチャーは広大な東京湾を眺める。
「ガキんちょ、後の奴らにも尋ねて回れや。」
「と、言いますると?」
「決まってんだろ? 戦う理由だよ。わしは人の意地汚さが大好きだからよぉ、他の奴らが何を思って勝ちたいと思っているのかが知りたくて仕方ねぇんだ。全部、全部が終わって――お前も座に戻ったら、一から百まできちんと聞くからな。」
「ははは、此れは困りまするなぁ。既に残っている英霊も極僅か。激戦の最中に聞き回れる物でも御座いませぬでしょう?」
「何とかしろよ、エクストラクラス! サーヴァントの名折れだぜぇ?」
ほぼ頭部しか残っていない身体で、アーチャーはそういえば、と最後の質問をウォッチャーに投げかける。
「お前、真名何て言うんだ?」
「ホーガンに御座いますが。」
「真名だよ、真名。座に登録された方。」
「――……。」
その名を聞いた瞬間、アーチャーの表情は驚愕一色に塗り潰される。しかしすぐに顔をくしゃっと笑顔に歪め、一言を残して日本の朝日と共にサーヴァントとしての今世の生涯を全うし終わったのだった。
「ホーガンって……そういうことかよ。はは、そいつぁウォッチャーに選ばれるわけだぜ……。……それじゃあな、小さな大将軍様。」
その宝具は、ライダーと霊脈を直接繋ぎ合わせ、無限の魔力消費を可能とする物の筈だった。しかし今この状況にあっては、その宝具も大した意味は持たない。既に限界まで使用した魔力をライダーに補充したところで、良くて万全な状態まで回復する程度。それでもライダーは
その一歩はレンガで舗装された遊歩道を容易く粉砕し、その速度はコーニッシュの眉根をほんの少し歪ませる程のそれであった。しかしそれでも、キャスターの両手から放たれる舌のような物体が何度もライダーの肉体を穿って行くのを防ぐことはできなかった。防げてはいなかったが、宝具の影響によりその傷は舌が抜かれると同時に一瞬にして癒えていた。
「……縺ェ繧峨?迚吶r謚倥▲縺ヲ縺励∪縺医?濶ッ縺??」
キャスターが何かをこぼすのと同時に、キャスターの掌にぱっくりと開いた口から青白い炎が舌を伝って放たれ、それが直撃するや否やライダーが手に持っていたレイピアが瞬時に蒸発してしまった。勿論ライダーの腕も融解したが、それでも腕だけならば宝具の力で再生する。
「剣がなくても――。」
それでもライダーは前へ前へ、キャスター目掛けて猪突猛進する。
「銃がなくても――!」
鋼のように固く握ったその拳を振りかぶり、キャスターへと飛び掛かる。
「オレには――
既に破却されたその契約を律義に守り続ける伊達男の拳は、しかして硬質化したキャスターの舌を砕き、虚空からのたうち回る触手を破り、キャスターの顔面へと迫る。――が。
「ぐっ……え?」
それは届かない。冷ややかな視線を送るキャスターの眼前で、ライダーの動きは止まっていた。その肩口には、三角柱状のシリンジが突き刺さっていた。コーニッシュがその頂部に取り付けられたスイッチを親指で押し込むと同時に、シリンジ内に貯蓄されていた夜空のような色の液体がライダーの体内に流れ込んでいく。
「綺麗事では事態は変えられませんよォ……?」
空になったシリンジを引き抜き、サイバーパンク風の戦闘形態へと変身していたコーニッシュは哄笑する。
がくりと膝をつき、困惑の表情でキャスターとコーニッシュを見上げるライダーの身は、既に魔力へと還元されかかっていた。だが、宙へと舞い上がっていく金色の粒子を捕食するようにシリンジを刺された肩口から夜空色の魔力の奔流が放出され、ライダーの肉体を覆い包み始めた。直後、ライダーの全身を形容しがたい嫌悪感と激痛が奔った。
「がッ――あああああアアアァァぁぁぁーーーアっっ!!!??」
その場に倒れて転げ回るライダーを見て呵々大笑するコーニッシュは、絶望の表情で硬直するゾーエに向かって意地悪気に忠告する。
「勝てると思いました? 『私のライダーなら次へと繋いでくれる』――そう思いましたかァ? ふふ、ふふふふ……アハーッハッハッハッハ!!!! 良いですねェ、良いですよォその甘っちょろい考え!! でもその楽観的思考は確実に貴方の命を喰らいますよォ?」
びくびくと痙攣していたライダーは、夜空色の魔力を纏いながら非生命的に起き上がり、踵を返してゾーエとズーハオ、ランサーに向かって歩み寄り始めた。途中転げ落ちていた
「ライ……。」
ずどん、と音を立てて、マスケットが火を噴く。しかしそれはゾーエの頭部ではなく、ゾーエを庇うように前へ出たランサーの槍によって弾かれる。
「どこまで英雄の矜持を踏みにじれば気が済むんだ、お前は!!」
激昂するランサーに対し、コーニッシュはまるでタガが外れたかのようにその場で笑い転げ、地団駄を踏みながらランサーの問いに答える。
「英雄の矜持ィ? ハーーーッハハハハッ!!! 何を仰いますやらァ!! ありませんよそんなもの!! 私は一介の医者ですよォ? 医者に英雄の心境なぞ理解できる筈もなく!! 増して!! そんな非効率的かつ計画遂行の妨げになり得る物を看過するなど――ッ!!」
「そこ、マでに、シテ、おきナ――!」
しかし、コーニッシュの発言は何者かに遮られる。誰あろう、ふらふらと自身の頭を押さえながらその場に立つライダーであった。
「――おや、まだ理性があったなんて。少々想定外でしたね。まぁ無駄な抵抗です。すぐに狂暴化しますよ。」
「あァ――オレも、ずッと抑えテル、こトは、デきナさそウ、だ――。」
だからこそ、とライダーはランサーの元まで歩み寄り、その双肩をしかと掴んだ。その瞬間、ランサーの全身を暖かな感覚が奔り抜ける。
「『私のライダーなら次に繋いでくれる』――のさ。お嬢ちゃん、オレのマスターを……頼んだぜ。」
「ライダー……っ!」
ゾーエの涙混じりの呼び声に、ライダーは快活に笑って手を振る。
「あぁ。お前の――マスターだけのライダーだ。誰にもオレの誇りは、誓いは渡さない。楽しかったぜ、マスター……。『
他者と霊脈を接続させるその宝具は、ライダーのそれ同様に効果がない物と思われた。キャスターとコーニッシュがその場で膝をついた事実さえ無ければ。
「こいつ……我々の魔力すら吸収しているのか!!」
動揺のあまり人語が飛び出したキャスターの推察通り、今のランサーは霊脈を通してキャスターとコーニッシュの魔力をも奪い取っていた。再び正気を失い襲い掛かってきたライダーに対し、ひとつ息を吐いて槍の刃を展開させ、その心臓を勢いよく突き刺して仕留める。
「怒り吼えろ、『人間無骨』。」
今度こそ黄金の粒となって消えていくライダーを見送り、ランサーは十字槍を肩に担ぎ、キャスターとコーニッシュへと近付きながらズーハオへ向かって声をかける。
「ズーちゃん、なるべく強い結界で自分とゾーエちゃんを守ってあげてよ。少し熱くなるからさ。」
聞いただけで鳥肌が立つほどぞっとする声を聞いたズーハオは自身とゾーエを囲むように懐から取り出した宝石を撒き、詠唱を開始した。それを見届けると、ランサーはコーニッシュに質問する。
「ねぇ、英雄って何をすれば英雄って呼ばれると思う?」
「っく――!」
余裕のない表情で立ち上がろうとするコーニッシュ。一歩、また一歩と二人に歩み寄る度に、ランサーの足下からは赫灼と輝く火焔が広がり、周囲を炎上させ始める。燃え盛る遊歩道の上で立ち止まるランサーの身にも、いつの間にか火焔が噴き出していた。
「僕はね、英雄って言うのは、誰かの憧れになれるようなことをした人がなるものだと思うんだ。」
ゾーエの方をちらと振り向き、すぐにコーニッシュへ視線を戻す。
「英雄が生きた証は、誰かの心の中で消えない灯火をともす。その灯火が、人生の行き先を導くんだ。」
十字槍を勢いよく天へ掲げた途端、その十字の刃から火焔が迸り、周囲一帯を盛大に燃え上がらせた。さながらに地獄絵図と化したバッテリーパークは、ランサーの心象風景を再現せんと業火を波及させていく。
「ライダー、ありがとう。君のことはこの身朽ち果てるその一瞬まで忘れはしないよ。
――我が目前の仇敵を燃やし尽くせ、憎しみのままに燃え上がれ! この憎しみは三千世界をも喰らい呑み込む灼熱のされ
ランサーが死の間際に目にしたものは、炎の中で崩落する寺院だった。中に逃げ込んだ誰よりも愛する主人を守り切れずして死する己を、ランサーは憎んだ。主人の意志を理解しきれずして主人を葬らんと刃を向けたあの男を憎んだ。その怨嗟の叫びは炎の渦となり、主人の首を取らんと屋内に雪崩れ込もうとした兵士たちを追い返したと言う。
今、その火の粉はたったひとりの友人のために舞い上がる。
「お前を――僕は絶対に許さない!!!」