真名:Funasaka
性別:男性
筋力:C+ 耐久:A 敏捷:B+ 幸運:A++ 魔力:E 宝具:D+
スキル:対魔力D、心眼(真)B、戦闘続行A+、狂化EX、玉砕精神A、無窮の武練B、平和の礎A+
宝具:『英霊の絶叫(じゅんこくけっぷう)』
→アンガウルの戦いにおいて戦死していった無数の同胞の無念と怨恨、願いで構成された自らの霊基を最大出力で暴走させ、無数の武器が墓標のように地に突き刺さった荒野のような固有結界を生み出す宝具。この内部ではFunasakaは大抵の要因では決して死せず、無限に供給される武器・弾薬で敵を追い詰める。
遠景見やる荘厳な富士、日本の某所に存在する白昼の平穏な町で、とても穏やかとは言えない事態が起ころうとしていた。
手榴弾が巻き起こす爆風は容赦なく防御力の薄そうな軍服を着るバーサーカーの皮膚を焦がすが、バーサーカーはそんなこともお構いなく文字通り耳まで裂けた不気味な笑顔を浮かべたまま手にした純黒の刃を持つ日本刀を構えてセイバーめがけて突撃してくる。
「カッハハハハハアアアァァーーーッッ!!!!」
それとは打って変わって真剣な面持ちのまま手に握る嵐を以てバーサーカーと残像すら視認できる亜音速の剣戟を繰り広げるセイバー。数十合の斬り合いの後、バーサーカーが一切の予備動作無く放ったミドルキックがセイバーの肩口に直撃した。数メートル後退したセイバーへと手榴弾を四つ投擲し、それが爆発すると同時に彼は愉悦混じりの絶叫を上げる。
「
「なッ……!?」
セイバーにとって聞きなれたそれに近似したその短い詠唱によって、バーサーカーの両の手中に九九式小銃が一挺ずつ出現する。ボルトアクションの小銃をリロードすることもせず、一発撃っては捨て、また一挺召喚して一発撃って捨てる。その繰り返しを延々としかし高速で繰り返し、セイバーを足止めするバーサーカー。
「ガウウウゥゥアアアアァァァッッッ!!!!???」
直後、悪鬼の咆哮を轟かせ、バーサーカーの身体を起点にその眼窩に燃え上がる炎と同じ深紅の魔力が爆発する。途端にアスファルトは亀甲のようにひび割れて落ち窪み、周囲の建物の窓ガラスは粉々に破砕され、中には外壁すら崩壊する箇所もあった。セイバーはその重圧を得物をひと振るい、毅然とそれに立ち向かって仁王立ちで構える。
「セイバー、あまり民間人を巻き込むなよ!」
「わかっています、クロウ。」
命の聖杯の真相をレイラから聞いたクロウにはそれが真実か虚構かもわからなかったが、とにかく何の罪のない人間を殺すことだけはあってはならないとセイバーに命令する。しかし、その思考を見透かしたかのように目の前で脱力してゆらゆらと上体を揺らすバーサーカーは異形の笑みをクロウに見せた。
「カッハハァ……! いい心がけじゃねぇか、坊主ぅ……。でもそいつぁ『決闘』の考えだぜ。今起きてんのは『戦争』さァ。再三言われてんじゃねぇの? 無辜の人間が死なねぇ戦争なんざ!! 古今東西どこにだってありゃあしねぇんだよォ!!!! でもそれこそが正しい在り方なのさァ!! カーーーッハハハハ!!!」
「お前その服……大日本帝国陸軍だろ!? こんな奴が俺たちの時代を作ったってのか……?」
「おうともよ、オレたちが戦禍の黒煙からこの蒼空を護ったのさ!」
そう人差し指を天蓋へと突き立てるバーサーカーの表情は曇りなく輝いていた。しかしその直後、三日月形に裂けた口を真一文字に結び、憎々し気な言葉を吐き捨てる。
「だが――そこに秩序やしきたりなんざありはしなかった!! 護るべき一国のために正気はとうにかなぐり捨て、誉れも誇りも泥水に溶かして飲み干した!! 愛すべき家族のため、崇敬する天皇大帝様の御為、お前たち未来の若者たちの平穏のために、オレたちはオレたちの正義を為した!! オレたちの正義にそぐう愚昧の輩は、虫ケラのごとく一片の容赦も許さず踏みにじった!!! たったひとつの、正否すら曖昧な正義のために多くの同胞が無惨に苦しんで死んでいった!! その結果の日々を生きるお前に、オレたちを否定する権利があるか!!?」
「これもひとつの……正義の形。」
呟くセイバーを前に、バーサーカーの魔力は燃え上がる灼焔となって膨れ上がっていく。
狂気と恐怖が支配する戦場にあってたったひとつだけ、自軍の兵士たちを奮い立たせた言葉があるとするならばそう、『正義』であった。正義のために戦い、正義のために死ぬ。醜く上塗りされた誇りはそれを勲とし、自らを正義の兵であると信じることで命を奪うその行為を正当化しようとした。そうせねば、次の瞬間には気が狂ってしまいそうだから。
「その正義は……本当に
バーサーカーと相対する戦争の惨状すら目にしたこともない青年は、真っ直ぐな瞳でバーサーカーに問いかける。バーサーカーは自嘲気味にせせら笑った。
「知らねぇよ、そんなもん。」
セイバーの至近距離から試製一型機関短銃を乱射しながら、バーサーカーは言葉を続ける。
「言ってんだろ。オレたちにとっちゃ正しいか正しくないかなんてさほど問題じゃなかったのさ。補給もねぇ。食料もねぇ。退路もねぇ。そんな状態でもオレたちはまだ『人間』でいたかった。だから口々に、まるで念仏みてぇに唱えていたのさ。」
セイバーの嵐を日本刀で斬り払い、バーサーカーは叫ぶ。
「正義のために!!」
九九式小銃を撃っては捨て、撃っては捨て、叫ぶ。
「正義のために!!!」
一気に十数個の手榴弾のピンを抜き、それらを抱えたままセイバーめがけて突進し、叫ぶ。
「正義のためにッ!!!!」
手榴弾の爆風と深紅の魔力が放つ圧に圧され、セイバーはクロウが下がっていた場所まで後退してしまう。しかしその硝煙をも振り払い、灰褐色の靄の中を狂猪が如く猛進してくるバーサーカーは、虚無すら感じる真黒の刃をセイバーの首元目掛けて振り抜いた。
「セイギノタメニイイイイィィィッッ!!!!!」
「――令呪を以て我が肉体に命ずる!!」
間一髪、セイバーとバーサーカーの間にクロウが割って入り。体勢の崩れたセイバーの首筋に迫っていた日本刀を強化されたその右腕で食い止めた。しかし暴走気味の魔力を孕んだ一刀は、クロウの腕に骨に至りかけるほど深く抉り込む。
「クロウ!」
「ぐぅ……っ!」
苦悶の唸り声をあげながら、バーサーカーの鳩尾を蹴り飛ばし、距離を取らせる。セイバーが至近距離にいることにより、クロウの体内の鞘が腕の傷を癒していくのを確認すると、手刀で傍目に映っていた道路標識を根元から切断し、その支柱を握った手の人差し指でトントンと叩く。魔術刻印のような模様を道路標識全体に奔らせると、クロウはそれを音高く振るい、バーサーカーと正面から対峙した。
「クロウ、あまり死にすぎるとそのうち正気を保てなくなりますよ。」
「心配ありがとうよ、セイバー。でもお前ひとりに任せきりにはできねぇんだ。」
クロウの脳裏には、いつぞやかのパリ市内でのゾーエ、ライダー組との戦闘が浮かんでいた。あの時、クロウは『セイバー』に向かって「任せっぱなしにする」と言ってしまった。
「聖杯戦争ってのは、マスターがあれこれ指示してサーヴァントがその通りに動く。そういうもんだって思ってた。でも違ったんだ。マスターとサーヴァントは一緒に戦う戦友だ。それを『アイツ』は教えてくれた。未熟で泥臭い、
最後のその一言に、セイバーは無意識のうちに手にした嵐を強く握りしめていた。そんなセイバーを見たクロウは優しく微笑み、その胸当てに自らの左拳を軽く打ち付けた。
「またか、って思ったろ。」
「え――?」
そして、その背中を今度は力強く平手で叩く。
「安心しな。俺が憧れた魔術使いは、お前をそんな風にないがしろに扱ったりしなかっただろ。」
「……。」
「行くぜ、
クロウが突き出した拳に、セイバーも笑顔で応じる。
「――はい!」
そうは言えど、七つのクラスの中でも純粋な攻撃力だけで言えばトップクラスであるバーサーカーに対して、生身ひとつのクロウが善戦などできるはずもなく。セイバーの思慮通り、クロウは何度も死ぬことになった。それでもクロウは下がらない。
「我が身に命ずる!」
死ぬ度にリセットされるがゆえに何度でも令呪を用いて自らの体躯にサーヴァントとも渡り合えるだけの身体能力と反射神経を付与し、道路標識を大槍のように振り回して死の痛みをものともせず、セイバーと共にバーサーカーを着実に追い詰めていく。
「テメェも充分狂ってやがるなァ、小僧!! お前もなかなか『得点』高そうだぜェ!!」
「その『得点』ってのが何なのかは知らねぇが……退かねぇなら力づくで突破させてもらうぜ!」
「ヘッ……そんじゃァ、せいぜいオレたちの『戦場』から生きて帰って、自伝のひとつでも書いてみるんだなァ!!?」
そう不敵に笑い、バーサーカーはクロウの心臓に九九式小銃を撃ちこみ、セイバーを蹴り飛ばす。直後、己の左胸を拳で叩くと、バーサーカーは声高に叫んだ。
「我らが生涯に意味など不要ず! 無数の屍は、故国の魂を成していた!! ――『
墓場が、広がっていた。否、墓標に見えたそれはひとつひとつが地面に突き立てられた小銃や機関銃、狙撃銃、軍刀や打刀、短刀で、果ては折れた戦車の滑腔砲や刺突爆雷までもが地に突き刺さっていた。ただただ広い、地平線の先まで広がるその荒野は、無数の武器で埋め尽くされていた。時折稲光が奔る黒雲に覆われたその荒野の中に、バーサーカーは呆然と立ち尽くしていた。
「……見ろよ。」
やがてぽつりと、バーサーカーは死から蘇ったクロウに呟くように語り掛ける。
「これが成れの果てだ。全部……全部オレたちだ。」
手を広げ、黒鉄色の墓標を示して見せながらせせら笑う。その眼窩に、その口端に揺らめく深紅の炎は、哀しみを表すかのように勢いを弱めていた。
「魂の残影。誇りの燃えカス。醜悪であったと後世に蔑まれた正義の、終着点。」
「あなたたちは――。」
立ち上がろうとするクロウに肩を貸していたセイバーが、異形の正義に向かって口を開くが、その口はすぐに閉ざされてしまった。
「――いや。戦場に希望なんてない、か。」
「よくわかってんじゃねェの、女。オレたちは希望なんぞのために戦ってはいなかったさ。目の前にいる青目の連中をひとりでも多く地獄に堕とす。ただ、
突如、バーサーカーの隣に突き刺さっていた小銃がひとりでに地から抜き取られ、宙に浮いた。その銃口がクロウへと向けられた瞬間、セイバーが即座に動いて銃弾を斬り捨てる。
「けどなァ、小僧。」
その英霊の
「『純情一途な農村出身者の多い我がアンガウル守備隊の如きは、真に祖国に殉ずるその気持ちに嘘は無かった』。『彼らは、青春の花を開かせることなく穢れのない心と体を祖国に捧げ』。」
お前たちは、こうなるなと。
「こう『願いながら逝ったのである』。」
狂戦士のクラスを与えられてもなお理性を持って会話ができるほど高潔かつ強靭な精神を持ったその兵士は、千と二百の同胞の願いを胸に今再びの命に与えられた使命を完遂せんと、銃を握る。
「――『われわれのこの死を平和の礎として、日本よ家族よ、幸せであってくれ』ぇっ――!」
二万と数千の絶望を前に散華した桜の花々の遺志は深紅の焔を闘志と共に燃え上がらせ、眼前の敵目掛けて疾駆する。
「カハハハハッ!! 行くぜ小僧、オレに、オレたちにクール・ジャパンの生き様を見せてくれよォ!!!」