真名:ウィリアム・マーシャル
性別:男性
筋力:B 耐久:A 敏捷:A+ 幸運:A 魔力:D 宝具:C
スキル:対魔力D、騎乗A、戦闘続行B+、魔力放出D、カリスマC、黄金律B+、無窮の武練C、決闘王A、獅子心王の先駆けB
宝具:『???』
ソニックブームが巻き起こるほどの速度でメイジーの手から投擲されたハンドハチェットを得物の騎乗槍で容易く弾き飛ばすと、『ウィリアム・マーシャル』と名乗った老練な雰囲気のサーヴァントは、おもむろに前へと歩みだす。
「待て、そこな女子よ。私はまだそなたの名を聞いてはいない。我が名はウィリアム・マーシャル。イングランドに名高き決闘王である。ゆえに私はそなたの名を聞きたい。決闘は互いに名を名乗ってからと――。」
「グウウウゥゥアァッッ!!!」
マーシャルの言葉を遮るように吼え猛ると、メイジーは両手にプラスキーアックスを握り締めてマーシャル目掛けて突進した。
「やれやれ、元気のよい子供は好ましいが、礼儀はきちんと学ばねばならんぞ女子よ。」
「旦那ァ、あんま堅ッ苦しいのやめてくださいよぉ? アタシらただでさえあの野蛮人どもに『点数』負けてんスからぁ。サクッと終わらせちゃってくださいよぉ。」
続いてガスの中から現れたガスマスクのサーヴァントにそう言われるも、マーシャルは意に介したような素振りすら見せず、突撃してくるメイジーに対して左腕に装備した大盾を構えた。
「チッ、偏屈ジジィめ。そんじゃアタシはぁ~……。」
ガスマスクのサーヴァントは意地悪い笑い声を漏らすとまたガスの霧の中へと消えていく。直後、ゾーエとアロイジウスの背後からガスマスクのサーヴァントの女声が聞こえてきた。
「――こっちを!」
「盟友!」
アロイジウスに名を呼ばれるが早いか、ゾーエはその場で身を屈めて前転、ガスマスクのサーヴァントから距離を取った。
「シャルル! 戦闘準備!」
「仕方がないな……。」
噛み合わない歯車が回るような笑い声をあげるガスマスクのサーヴァントの前に、ダルタニャンが姿を現す。その服装はいつものパーカー姿から要所に甲冑を纏った戦闘形態へと変わっている。
「……その戦闘スタイル、お前はキャスターか?」
「キヒヒヒ! さぁてねぇ。キャスターかもしれないしバーサーカーかもしれない。アサシンかもしれないしアーチャーかもしれない!」
「四択問題は大抵三番目に答えがあるって知ってたか。」
ダルタニャンのその言葉にびくりと身を揺らすも、ガスマスクのサーヴァントは再び高笑いをして逆にダルタニャンに問いかけた。
「それじゃあ、アンタは何なんだよぉ。甲冑姿ってんなら三騎士ってのも十分あり得るからねぇ!」
「真名、ダルタニャン。セイバーのサーヴァントだ。」
「なんだよぉ……簡単に真名打ち明けちゃって。お前も騎士道って奴を馬鹿みたいに貫いてんのぉ? やぁねぇ、これだから大昔の連中は。つーかダルタニャン? ははぁ! アンタもフランスのサーヴァントなのかぁ。さしずめマーシャルのジジィのお話は何度も聞いたんじゃないのぉ?」
「あぁ。何度も聞いた。イングランドの獅子心王、幻想と現実の狭間を生きたリチャード一世に仕えたテンプル騎士団の決闘王。そんな人物と戦える日が来るとは思ってもいなかった。」
「おいおい! アンタの前にいるのは今アタシだよぉ? あんま無視されると泣いちゃうよ? イィ~ンイィ~ン……ってなぁ。」
直後、ガスマスクのサーヴァントの眉間にダルタニャンのマスケット銃から放たれた弾丸が捻じ込まれていた。その衝撃で上体を仰け反らすも、すぐさま腰をゴキゴキと鳴らしながらダルタニャンを見据えるガスマスクのサーヴァント。
「いいねぇ……やっぱ正々堂々なんて今のご時世には合わないよねぇ!」
ガスマスクのサーヴァントがぱちりと指を鳴らすと、どこからともなく漂い始めた甘ったるい香りを持った藤色のガスが一同を覆い囲み始め、やがてゾーエ達の呼吸器官へとなだれ込み始めた。
「かは――ッ!!?」
直後、鼻や口、目の端からボタボタと血を垂らしながら、ゾーエはアスファルトの上に倒れ伏してしまう。
「盟友、しっかりしろ!」
両の眼窩に宿るアメジストの魔眼の影響で毒ガスの効果を受けないアロイジウスが、ゾーエを抱きかかえて道の端へと連れていく。
「僕様の目に触れろ! 僕様の魔眼ならそれを治せる!」
言われるがままにゾーエがアロイジウスの左目をそっと手で覆うと、段々と呼吸も落ち着き、出血も止まり始める。
「甘い香りのするガスだというのに、毒性はとんでもなく強いな……。盟友はここで休んでいるんだ。あのガスマスクは僕様とシャルルに任せて。」
その言葉にゾーエが頷くのを確認すると、アロイジウスはにこりと笑って立ち上がる。しかしその顔には既に笑顔はなく、親友を甚振った者に対する怒りと憎しみに溢れていた。
「アーレルスマイアーが求める学問、その過程で祖が会得した秘術をお見せしようじゃあないか!」
次の瞬間、アロイジウスはサーヴァントと同等の速度でガスマスクのサーヴァントに肉薄していた。
絶え間なく火花を散らしながらマーシャルと一対一の戦闘を続行しているメイジーだったが、その戦法はバーサーカーらしくプラスキーアックスを力任せに縦横無尽に振るうだけの至極単純な物だった。
「女子よ、再び尋ねよう。そなたの名は何という?」
「立ち塞がる狼さんに名乗る名は無いッ!!」
「なんと雄偉な言葉か。さすが年端も行かぬ女子と言えど英霊の座に刻まれるだけの英傑。このウィリアム・マーシャル、深く感銘を受けたぞ女子よ! ならばこれよりは最早尋ねまい! 私に勝って見せよ!!」
しかし、メイジーが野獣の如き咆哮を轟かせながら大上段から振り下ろしたプラスキーアックスがマーシャルの騎乗槍に食い込むのを見ると、マーシャルは手の中で騎乗槍を捻り、プラスキーアックスを遥か彼方へと投げ飛ばしてしまう。
咄嗟にバックステップで距離を取りつつケープの内側からハンドハチェットを二振り取り出し、マーシャル目掛けて投擲する。それを盾で防いだマーシャルが次に見たのは、ケープの中から二挺の猟銃を取り出すメイジーの姿だった。
「何ッ――!」
その魔力の銃撃をもろに甲冑の防御が薄い部分に受け、喀血する決闘王。
「所詮子供と無意識に抜かっていたか……。ならば!」
音高くアスファルトを踏み鳴らすと、マーシャルを起点として暴風が吹き荒れる。
「魔力放出スキル……。なるほど、狼さんはそういう時代の狼さんなのですね。ならばむしろ狩りやすい!」
そう言うが早いか、メイジーの手元に再びケープからプラスキーアックスがぼとりと落ちて収まり、それを下段に構えながらメイジーはマーシャルの懐目掛けて猛進する。その刃を防がんとマーシャルが盾を構えた瞬間。
「――『
「ッ!!?」
マーシャルの盾に直撃したのはメイジーのプラスキーアックスではなく、深紅色の長槍による宝具級の一撃だった。それを弾いた反動で胴体に隙が生まれ、そこへ吸い寄せられるようにプラスキーアックスの刃が首元へ食い込む。
「がァっ!!」
騎乗槍を地へ突き刺し、勢いよく飛び散る血飛沫を右手で抑え込むと、マーシャルはその朱槍を投げた人物の姿を捉えた。
「おぬし……。」
それは誰あろう、アロイジウスであった。
「びっくりしたか? アーレルスマイアーの野望は人類の英霊化。それに至る過程で得た秘術こそ、魔術師にサーヴァントの力の断片を搭載させる『
アロイジウスが解説を終えると、再びメイジーが吼え猛り、手にしたプラスキーアックスで今度こそマーシャルの命を刈り取らんとアスファルトを踏み抜いて飛び上がった。
しかしマーシャルはまたしても魔力を突風の如く放出させ、上空にいたメイジーの姿勢を崩す。逃げ場がないまま落下するメイジーの腹部を、マーシャルは左手で素早く引き抜いた騎乗槍を以て深々と貫通させる。
「ひぐ……っ!」
瞳孔が全開になった瞳でマーシャルを見呆け、喉の奥から大量の血液を噴き出すと、そのままだらりと脱力して動かなくなったメイジーを横へ放り捨て、マーシャルはおもむろに立ち上がる。
「素晴らしき強者であった……が、所詮は子供。戦場に出るには幼過ぎたな。それはそこな魔術師も同じだぞ、英霊の外套を纏う女子よ。」
「ちっ!」
アロイジウスは手にした朱槍を投げ捨てると、ポケットの中からチェスの駒のようなものを取り出して握り砕く。すると路上に転がる朱槍が消え失せ、代わりにアロイジウスの右腕に大理石のような質感の巨大な篭手と、その先に握られたアロイジウスの身体より巨大な豪槌が出現した。
「そのような巨槌、そなたの矮躯で取り回せるのか?」
「さぁ、どうかなッ!!」
青白い雷光を迸らせながら、アロイジウスはその豪槌を振り下ろす。手負いだというのにそれを軽やかなサイドステップで躱し、マーシャルは左手に握った騎乗槍をアロイジウスの横腹に抉り込んだ。
「ぐぅ――っ!」
しかしアロイジウスも負けじと豪槌の角度を変え、横方向へ振り払うことで騎乗槍の先端を叩き折った。そのまま遠心力を利用して自分の身を軸に独楽のように回転し、何度もマーシャルに豪槌の打撃を加えるアロイジウス。回転を弱めてアンカーのように道路に豪槌を食い込ませ、その場で立ち止まるも、その息はすでに絶え絶えであった。
「やはりな。サーヴァントの力を扱うということは、サーヴァントの格が高ければ高いだけ消費する魔力の量も段違いになるだろう。そなたの振るうそのハンマー……推し測るに北欧神話の代物と見たが、いかがかな?」
「さて……ね。」
マーシャルがちらりと相方の方を見れば、ガスマスクのサーヴァントもダルタニャンを追い詰めており、ダルタニャンは既に片膝をついていた。
「では決着と行くか、小さき雷神!」
三度マーシャルの巨躯から突風が巻き起こり、先折れの騎乗槍を握り締めたマーシャルがアロイジウス目掛けて突進してくる。それを迎え撃つべくアロイジウスも豪槌から大量の雷を放出させ、ふらつく足で頭上高く掲げて構える。
「『
だが、マーシャルとアロイジウスが激突することは叶わなかった。それよりも疾く、二人の間に割って入る人物がいた。
「ヘイヘイヘイヘイ! ストップストーォプ! ヘイ! ヒーロー着地! 膝が痛い!」
天高くから右膝と右拳をアスファルトにめり込ませて着地し、軽薄な口調でおどけた言葉を放つその和装の男は、腰から一振りずつの日本刀をシャンと澄んだ音を鳴らして抜き、マーシャルの騎乗槍とアロイジウスのハンマーを食い止めて見せた。
「うおおおぉぉ!!? やっべこれどっちも宝具じゃん! やっべ! いやオレ死ぬ! 死ぬってこれ! やばい! 死ぬ死ぬ死ぬ!!」
そう言いつつも空から自身の右側と左側にそれぞれ三振りずつの日本刀を落下させてマーシャルとアロイジウスを引き離し、腰に日本刀を戻すと、首と肩をボキボキと鳴らしながらアロイジウスに満面の笑顔を向けて見せた。
「ピンチみたいだったからヒーローが駆けつけてやったぜ、アローちゃん☆」
「お前っ……!」
「何者だ、おぬし!」
マーシャルに名を聞かれ、右目に布製の眼帯を身に着けた和装の男は不敵な笑顔で総計六振りの日本刀を両手の指の間に挟んで握り、自らの名を名乗った。
「騎士に名を聞かれちゃ答えるしかねぇな! このオレこそ!