真名:伊達政宗
性別:男性
筋力:A 耐久:B+ 敏捷:B 幸運:C 魔力:B+ 宝具:A
スキル:対魔力B+、騎乗B、カリスマB、心眼(真)B+、無窮の武練C+、驥足百般A、軍略B、青葉の喝采A、独眼竜A+、浮世の闇を照らしてぞ征くB+など
宝具:『???』
セイバー、伊達政宗。その名はアロイジウスにとっても聞き覚えのあるものであった。何せそのサーヴァントは、自らの肉親が召喚した英雄であったからだ。
「ま、政宗公! 大兄上もいるのか!?」
「オフコォース! 『マスターがのこのこ出るのは愚策だ』つってこの場にはいねぇーけどな!」
「大兄上らしいな……少し安心したよ。それで政宗公、どうして僕様たちの場所が?」
「ンなもんマスターに聞いてくれっつーの。アローちゃんにGPSでも付けてんじゃネーノ?」
ぎょっとした顔で全身をまさぐるアロイジウスを見て大笑いすると、政宗は傍目に立つマーシャルへと体を向ける。その瞳は勇壮に輝いていた。
「欧州の騎士サマよ、一度でいいからあんたらと手合わせしたいと思ってたぜ。」
「異国の戦士とは幾度となく刃を交えてきたが、東の果ての者とは初めてだ! 我が名はウィリアム・マーシャル! 諸王に仕えた初代ペンブルック伯にして五百戦無敗の決闘王である!」
「改めて拙者遠く東方より参上つかまつった、出羽、陸奥国守! 仙台藩初代藩主にして伊達氏十七代当主、『青葉の独眼竜』伊達政宗である!!」
双方が名乗りを上げ終わると同時にマーシャルからは暴風が、政宗からは水流のような魔力が渦潮状に巻き上がり、それぞれが衝突し合って魔力による衝撃波が周囲に生じる。舗装された道路に亀裂を生じさせるほどのそれが凪ぐと、ややの静寂の後、両者が一斉に動き出した。
それより数百メートル離れた場所で、またひとつの勝敗が着きつつあった。藤色のガスに覆い囲まれ、膝をつくダルタニャン。
「おいおい、世界に名高き『三銃士』の主人公ってこんなもんなのかぁ?」
「私は――。」
トレンチコートの袖から凶悪な三本爪を突き出したガスマスクのサーヴァントはケラケラと笑いながらダルタニャンを様々な角度から斬りつけてはガスの中へと消えていく。ダルタニャンはゾーエの意識が戻っていることを確認すると、彼女にも聞こえる声で真実を口にした。
「――私はダルタニャン伯爵。『三銃士』に登場する勇猛の銃士・ダルタニャンではなく、『シャルル・ド・バツ=カステルモール』……ジャン・ダルタニャンの孫であり、三銃士のダルタニャンのモデルとなった男だ。ゆえに私にかの銃士ほどの勇猛さも無ければ戦闘能力もない。だから私は……戦闘をなるべく回避したかった。」
「シャルル、どうしてそれをもっと早く……っ! うぅっ。」
消耗した体力で苦しげな声を漏らしながら糾弾するゾーエに申し訳なさそうな表情を浮かべながら、なおもダルタニャンは続ける。
「……誇らしかった。」
「え……?」
「……何の功績も遂げていない親の七光りだけで重役に就いていた私が、世界に名を轟かせる勇猛の銃士のモデルになったことが……とても誇らしかった。……だから失望させたくなかった。同じフランスの地に生まれたゾーエを、落胆させたくなかった……。」
「アハハハハッ!! こりゃあ滑稽だねぇ、本人にはこれっぽちも実力がないのに、モデルにされちまったから勘違いされちゃったんだ! 残念だねぇ、無念だねぇ! でもその選択を取ったのはお前だよぉ? マスターとの相互理解も無く聖杯戦争で生き残れると思ってたのぉ?」
「いいや。……この真実を告げた時が私の最期だと思っていた。だからもう――。」
その言葉を聞いたガスマスクのサーヴァントはつまらなさそうな声で「ふぅん」と短く漏らすと、膝をついて項垂れるダルタニャンの首元目掛けて三本爪を振り下ろした。
しかし、その刃がダルタニャンの首の肉を抉るよりも疾く、三本爪の持ち主が被っていたガスマスクの額に真っ赤なハンドハチェットがガツンと盛大な音を立てて食い込む。
「なッ――!?」
さしものガスマスクのサーヴァントも驚愕に二歩下がり、斧が飛んで来た方向を睨む。同様に藤色のガスの向こう側を見据えたゾーエの目に飛び込んできたのは、超高速で疾駆する獣の影。血肉を求めて煌めく深紅の双眸がガスマスクのサーヴァント目掛けて襲い掛かる。
「ぎゃああああっっ!!?」
次の瞬間、獣の影はダルタニャンの背中を踏み台に跳躍し、ガスマスクのサーヴァントの首筋に牙を立てた。獣性のままにガスマスクのサーヴァントの血肉を貪り喰らうその獣の正体は、被っていたフードが外れて艶やかな黒髪を顕わにしたメイジーであった。その腹部には内臓がすべて消え失せた大穴が空いており、なぜ生きているのか不思議なほどだった。
「い、痛い! 痛いぃっ! いやだ、いやだぁっ! 痛いっ!! 助けて、たすけてッ!!」
耐え切れず倒れ込んだガスマスクのサーヴァントに覆い被さってのしかかり、正気など一切感じられない動作でその人肉を鋭牙でもって引き千切って貪食するメイジー。胴の風穴は、ガスマスクのサーヴァントを食せば食すほど見る見るうちに再生していった。どういった原理か、衣服も同様に再生していく。
やがてガスマスクのサーヴァントの悲鳴も消えて身体の痙攣も止んだ頃、メイジーはおもむろに立ち上がり、口元に付着した血液を袖で拭い取ってゾーエの方を振り向く。恐怖の面持ちで硬直するゾーエに歩み寄ると、メイジーはフードを目深に被りながらゾーエに手を差し伸べて微笑んだ。
「立てますか? ゾーエさん。」
「あっ……う、うん。」
「お見苦しい所を見せちゃいましたね、ごめんなさい。」
ゾーエの手を取って立ち上がらせると、ぺこりとお辞儀をしてガスの消え去った高速道路の上をてくてくと歩いてダルタニャンも同様に立ち上がらせるメイジー。
その後動かぬ骸と化したガスマスクのサーヴァントをしばらく見下ろしたかと思うと、目にも留まらぬ速度でその胸部に右腕を突っ込み、拍動していない心臓を取り出した。それをしげしげと観察したかと思うと、食道を一直線に伸ばすように顔を上げ、心臓を丸呑みしてしまった。それと同時にガスマスクのサーヴァントは魔力の風となって空気中へ還元されていく。
「政宗様! そろそろ逃げましょう!」
彼方で熾烈な剣戟を繰り広げる隻眼の男にそう告げ、メイジーは背後で立ち往生していた大型の乗用車から運転手を引きずり下ろし、一発殴って気絶させると、呆然と立ち尽くすゾーエと項垂れるダルタニャンを後部座席へ押し込んで発進させる。
政宗もアロイジウスを後部座席のゾーエに放り渡すと、マーシャルに
「いったん決着はお預けだ、アバヨッ!」
と言い残してメイジーと運転を代わり、全速力――否、自家用車に出せる速度以上の速さで全員を乗せた大型車を走らせ、その場を離脱した。
出発序盤こそマーシャルが騎馬に乗って追いかけてきていたが、魔術で強化された自家用車に速度で敵うはずもなく、一行がイタリアの国境を越える頃には速度も時速六十キロ前後にまで落ちていた。
「政宗公、大兄上はどこにいるんだ?」
アロイジウスの問いに、運転席の政宗は曖昧な返事をする。
「さぁな~。オレも知らね。ま、単独行動スキルもないオレがこうしてきちんと実体化できてんだから、どっかその辺ついてきてんじゃネーノ。」
「ストーカーみたいだね、アローのお兄さん……。」
「実際ストーカーだ。長兄だからなのか何なのか、大兄上は僕様が小さい頃から何かと僕様を依怙贔屓するのさ。それが高じて粘着行為になってしまっているんだ。あれ……そういえば、大兄上はどうして僕様の所に? 手段の是非を問わずとも、その理由が僕様には見当たらない。大兄上はリグセンルールの筆頭マスターとして……。」
その疑問に行きつき難しい表情を浮かべるアロイジウスに、政宗は真剣な面持ちでハンドルを握りながらその答えを話した。その事実は、ゾーエはもちろん、聖杯戦争に最初から真面目に参加していたアロイジウスでさえも耳を疑うものだった。
「――リグセンルールは全滅した。」
「なッ――!?」
「どういうこと!?」
高速道路の行先看板を確認しつつ、政宗は経緯をざっくりと説明する。
「リグセンルール一族が撫で斬りに遭ったのさ。同盟者の家長同士が顔を合わせる古めかしい定例会議を狙ってよ……。そいつぁもうマイケルでベイな監督もアンビリーバブルな大隕石さ。つーかアイツぁ惑星だったな。それも地球より数十倍ビッグな奴だ。オレの知識が間違ってなけりゃありゃあ金星だろうよ。ハハッ、金星を弾丸にしてブッ放すサーヴァントなんざロクでもねぇに決まってやがらァ。神霊か冠位の英霊か……そうでもなけりゃもうオレのクレバーなブレインでも思い付きやしねぇ。」
「そ、それで!? リグセンルールについていた他の家の人々は!」
「オイオイアローちゃん、わかりきってんだろ賢いお前さんならよ。」
政宗はあえてそれを口にせず、アロイジウスがその最悪の結末に思いを至らしめるのを見計らってその隣に座っていたゾーエに声をかけた。
「ようモクレールのお嬢ちゃん。アローちゃんはちょっとオネムらしいからよ、枕になってやんな。」
「えっ――。」
「す、すまない盟友……その通りだ。……僕様は疲れた。魔眼を酷使したかもしれない。悪いが休ませてくれ……っ!」
必死に作り笑いを浮かべながら、アロイジウスはゾーエの制服をぎゅっと握ってその体躯にしがみつく。その肩は激情に震えていた。アロイジウスの頭を優しく抱きながら、ゾーエは政宗に尋ねる。
「そういえば、今はどこへ向かっているの?」
「千と五百年続いた黄金の大帝国のかつての首都、月桂の
「元アトラス院の……。」
政宗はちらとアロイジウスを一瞥し、寝息を立てている事を確認するとやや声を落としつつもテンションは維持したまま言葉を続ける。
「応ともよ! オレのマスターはアーレルスマイアーの次期当主。いや……現当主様が灰燼に帰しちまった今はもうマスターがアーレルスマイアーの現当主だ。そのアーレルスマイアーの当主とも非常に仲の良い……っツーカご学友だな。学生時代のご友人らしい。そいつのいる隠れ工房に向かっ……いや、ついた。」
「え?」
いつの間にやら、一行を乗せた大型車は純白の大空間にぽつんと佇んでいた。政宗はアロイジウスとメイジーを車内に残し、ゾーエとダルタニャンについてくるよう言って大型車から降りた。言われるがまま二人が降車して政宗の後についていくと、屑ひとつ落ちていなかった純白の大空間に突如としてこれもまた真っ白色のドアが出現した。
「……んだよ、騒がしいな。今日は朝から晩まで。客人尽くしか? 僕。暇じゃないんだけどな。おかしいな。」
唐突に三人の目前に現れたドアを開けて空間の中に入ってきたのは、これもまた純白の無造作に伸び切った長髪を揺らす青年だった。その背後には赤毛のショートヘアを持った清純な雰囲気の女性が顔を覗かせていた。
「セスタンテ、そこの超絶美人さんは? お前さんのガールフレンドか?」
「馬鹿を言え。こんな奴。恋人にする人間がいて。たまるかよ。」
赤毛の女性はひょいとドアから顔を出して三人の顔をしげしげと眺めると、邪気の一切無い満面の笑顔で自己紹介をするのであった。
「伊達政宗様にシャルル・ダルタニャン様ですね! わたくしの名はジャン・ヴァルジャン! この命の聖杯戦争を裁定するため顕現致しました、