真名:???
性別:男性
筋力:E 耐久:E 敏捷:D 幸運:B 魔力:B+ 宝具:A
スキル:陣地作成D、道具作成E、自己暗示EX、直感EX、魔力反響A+など
宝具:『???』
『おい、おいおいおいおい!』
『ひゃあ~、こりゃすごいや。何あれ、惑星? 金星だよねあれ。』
「総員、衝撃に備えろ! ハンスとエーリヒは機体をノイエ・グラーフZの裏側に回せ!」
北アメリカ東部、グランツ・レルヒェのメンバーたちを乗せた航空要塞ノイエ・グラーフZは命の聖杯戦争史上類を見ない大事件を間近で目撃していた。即ち、太陽系第三の惑星、地球の姉妹惑星こと金星のレプリカのようなものが大地に衝突、周囲数十キロ圏内が不毛の地と成り果てるほどの大爆発が巻き起こる光景だ。
「クロウ、手を!」
艦橋でそれを左の目下に見下ろしていたクロウは、ハンスとエーリヒが搭乗していた戦闘用の航空機がノイエ・グラーフZの右側へと回るのと同時に起きた衝撃波による大振動から身を守るために姿勢を低くする。セイバーもクロウに手を差し伸べながら艦橋に設けられた階段の手すりを握りしめ、吹き飛ばされないよう足腰に力を籠める。
「艦内各所、被害軽微! ラグーンに修理は任せる!」
『カンチョさん、第四魔力エンジンが振動でダウンしちゃてるヨ!』
「叩けば直らないか!?」
『ムチャ言わないでヨ!』
「
「いきなり言われても困る、マスター!」
艦長の"Z"やそのマスターのジャクリーン、"Z"と無線越しに通信を取る『ラグーン』と呼ばれている整備担当のサーヴァントなど、クロウの目の前で慌ただしくグランツ・レルヒェの面々が事態の対処に右往左往し続ける。
何故このような事態に巻き込まれているかというと、この北米東部の森だった場所に数分前まで存在していた屋敷で行われようとしていた会合に、"Z"とジャクリーンも出席するはずだったからだ。
グランツ・レルヒェの臨時メンバーとなったクロウが改めて気付いたのは、グランツ・レルヒェには人間がジャクリーンしか参加していないことだった。航空移動要塞ノイエ・グラーフZは、艦長である"Z"の宝具によって造られているらしく、その設備は『事前に決めておく分にはいくらでも設けられるが後付けで設置することはできない』とのこと。
そして、その設備群の最たる例のひとつが『疑似マスター契約装置』だった。既に死亡してしまったマスターから遺体ごと令呪を回収し、ノイエ・グラーフZの下層に存在する魔力炉に放り込むことで遺体は魔力源に、令呪はそのまま保存されてサーヴァントが存在を維持できるようになるという装置だ。
欠点として適度に魔力源を補充しなければノイエ・グラーフZを駆動させつつサーヴァントたちを生存させることができなくなることと、さらに魔力炉が『マスター』となるためサーヴァントたちはノイエ・グラーフZから離れすぎると行動できなくなる点が挙げられる。
「……やぁ、あなたがクロウ・ウエムラ氏……この世界における歪みの根源、ですね?」
そんな疑似マスター契約装置によってノイエ・グラーフZには少数だが個性豊かなサーヴァントたちが乗り込んでいた。そのうちのひとり、穏やかな雰囲気のスーツ姿の男性は、クロウを自室に呼び出すと開口一番にそう確認した。
「その認識で間違いはない……と、思う。」
「えぇ。存じ上げております。」
「お前は何者なんだ?」
「わたしですか。そうですね……仮に『雲雀のキャスター』、と。少なくともあなたは現状、客員のような状態ですから。無暗に真名を明かすのもどうかと思いますのでね。ご容赦ください。」
そう言って雲雀のキャスターは安楽椅子に腰かけたまま頭を下げる。そして促されるがままクロウは雲雀のキャスターの対面に置かれた椅子に腰かけ、セイバーはその背後に立つ。
「この世界の正体について予言したっていうキャスターはお前か?」
「いかにも。」
雲雀のキャスターはゆっくりと首肯し、言葉を続けた。
「わたしは個人的に輪廻転生を強く信仰していますが、
「何ていうんだっけな、そういうの……。」
「インド哲学における大ユガのサイクル、でしょうね。」
セイバーの助言に再び雲雀のキャスターは頷く。
「ですがこの度、わたしが眠っている間に
キコキコと安楽椅子を軋ませ、素直に姿勢を正して耳を傾けるクロウにその事実を告げる。
「『今まで我々が観測してきた世界の輪廻は後付けの代物であり、我々がこうして存在している世界はあるひとりのサーヴァントによって捻じ曲げられ、歪みを刻まれた本来在ってはならない世界である』と。これは剪定事象や亜時空世界とも違う、世界の上から上書きされた世界。真実の世界を覆い隠すように塗り潰された
「……さっきから自分のことを他人みたいに言うんだな。」
「ははは! これは失敬。わたしはまぁ俗に言う二重人格のようなものでしてね。眠っている間はわたしと
「それって要は魔法使いってことじゃ……。」
「そうとも言うでしょうね。実際わたし、生前はしょっちゅう魔術協会に追いかけられてましたし。」
穏やかだが心底愉快そうにそう大笑いする雲雀のキャスターに対し、クロウとセイバーは顔を見合わせて困惑する。
「さて、それでは本題に移りましょうか、クロウ氏。わたしは
ノイエ・グラーフZの揺れも収まり、格納庫ブロックから戻ってきたハンスとエーリヒが確認できた限りの報告を"Z"へと行う。
「だーめだ姐御、あたり一面ぺんぺん草も生えちゃいねぇ。」
「生命反応はなし。かわいそうだけどここに命と呼べるものはもうないよ。」
"Z"はしばらく悔しげに俯いていたが、やがて真剣な眼差しを艦橋の壁面に取り付けられた艦内放送用のマイクへと上げ、航空要塞のどこかで今も忙しなく整備をしているサーヴァントに向かって呼びかける。
「ラグーン! サーヴァント反応は検知できたか!?」
『オッケですヨ、カンチョさん! 霊基反応一個だけ見つけたヨ! トンデモなくおっきいネ! 神霊クラスだヨ!』
「そりゃあそうだろ、グレードダウンさせたとはいえ金星ぶつけるいっぱしの英霊なんざいてたまるかよ。当たり前のこと言ってんじゃねぇよ。」
そうぼやくハンスの愚痴に、苛立ちを含ませた抗議がスピーカーから轟いた。
『ソレじゃお前がやれヨ! ブンブン空を飛ぶしか能のないエンジンバエがヨ!』
「はいはいハンス、ラグーン。喧嘩しないの。ラグーンはハンスの索敵能力がなきゃレーダーも使えないし、ハンスはラグーンが敵を見つけてくれなきゃ戦えないでしょ。グランツ・レルヒェのサーヴァントとして助け合おうよ。」
なだめるエーリヒの態度に多少負い目を感じたのか、『ラグーン』と呼ばれたサーヴァントはややむくれ気味に報告を続ける。
『……サーヴァント反応は南南西の方角に高速で消失していったヨ。この船じゃ追いつくのはゼッタイ無理ネ。』
「そうか……致し方ない。とはいえここで
「わかった、雲雀のキャスターが言ってた物を探せばいいんだよな?」
「うむ。」
肯定する"Z"に手を振って応えながら、クロウはセイバーと共に艦橋を後にする。その後ろから駆け足でジャクリーンが、そしてまたその後ろからハンスとエーリヒが雑談しながら追従してくる。ジャクリーンがクロウに追いつくのを確認すると、クロウはジャクリーンに尋ねた。
「この船、一体何騎のサーヴァントが乗ってるんだ?」
「ん? 活動ができるほどにまで回復してるのは……"Z"を数えないで六人かな。それ以外にも今霊基を復元中の奴が何人かいるぜ。」
「ひとりでそれだけのサーヴァントを御するのなんて不可能じゃないのか?」
「何言ってんだよ、おれはあくまで"Z"のマスターさ! 他の奴らのマスターはおれじゃない。あいつらは好きでこの船に乗ってんだよ。おれたちの活動を面白がって乗ってくれてるのさ。だから御するとか支配するとかそんなんじゃない、おれたちは等しく仲間さ!」
その言葉に、クロウはぼんやりと『彼女』のことを思い浮かべるが、すぐに振り切ってノイエ・グラーフZ下層、船底付近の乗降口の前に立つ。やがてハッチが開くと、まず先にハンスとエーリヒが、それに続くようにジャクリーンが「いやっほう!」と叫びながら空中へとダイブしていき、セイバーに腰を抱えられた状態でクロウもそれを追いかける。
地上に降り立つと、ジャクリーンが四つん這いになって倒れ込んでいた。
「どうしたんだこいつ。」
「身体強化魔術しか取り柄がないからって僕らの手も借りずに着地したの。」
「バカだろ。千メートルだぞ。」
遥か上空で待機するノイエ・グラーフZを指さしながら呆れた声を漏らすクロウに、ジャクリーンは生まれたての小鹿の如く膝を笑わせながら立ち上がって言い放つ。
「お前はいいよな! 戦闘能力とか機動力とかが自分の身で生み出せるサーヴァントが相棒でさ!」
『聞こえているぞマスター。』
「ひゃえっ!?」
四方八方からじっとりと見下ろされるも、ジャクリーンは話題を逸らして地平線まで続く草木も生えぬ広大な更地を両腕で示して大声で喚起する。
「さっ、さぁ! 魔術師の工房って言えば地下だろ!? 多分この大平原のどっかに地価工房の入り口があるんじゃないかなっておれは思うんだけど!!」
「ええ、微弱ながら隠匿しきれていない魔力をあちらの方角から感じられます。」
そう言って、セイバーが東の地平線を指で指し示す。しかしその方向には、その場の全員とは違う、二人の先客がいた。
「……なんだ、あいつら。」
ハンスが目を細めて小さな人影程度のシルエットを確認しようとする。人影はじっと動かず、こちらを観察していた。
「こんな現場にいるんだから、そりゃあ一般人じゃないでしょ。」
「だろうなぁ。あー……。赤毛の女ってことしかわかんねぇわ。どっちも女。顔似てるし姉妹か双子か……。」
「顔のつくりはアジア系かな。」
「なんだエーリヒお前、俺より目良いじゃねぇか。」
「……そう暢気なこと言ってられないかもよ!」
エーリヒが鋭く進言した次の瞬間、一同のすぐ左横で砂煙を上げながら爆発が起きた。
「カルバリン砲だ……クロウさん! 僕らは戦闘機がないとほとんど無力だ! ハンスとジャック、僕で目当ての物は探すから、あいつらの相手を頼めるかい!?」
エーリヒの提案にセイバー共々頷き、クロウは米粒ほどのシルエット目掛けて走り出す。
「令呪を以て我が肉体に命ず!」
右手の令呪を、輝かせながら。