真名:オウスノミコ
性別:女性
筋力:A++ 耐久:D 敏捷:A+ 幸運:E 魔力:EX 宝具:EX
スキル:対魔力A+、騎乗B、単独行動B+、気配遮断B+、陣地作成E、魔力放出A、直感A、心眼(偽)C+、神性A、神殺しE、倭健A++、白鳥の翼Aなど
宝具:『葦原の民草よ、我は紡ごう(あまのむらくものつるぎ)』
→神代を生き、以降『日本』という国家を白鳥となって見守り続けたオウスノミコの精神性が宝具となったもの。彼女の振るう草薙剣はこの一瞬だけ元の姿へと回帰し、倭の国の天地に宿る八百万惟神の力を以てあらゆる邪悪を討ち祓う神器となる。
目が覚める。指を動かす。目を閉じて全身を廻る魔力を感じる。呪いの大元が飲乾されたというのに、その呪いを燃料に生み出されていたらしい自身の魔力は健在のようだ。契約自体は履行されているからだろうか。
見ればクロウが横たわっていたのは廃れた民家のようであった。痛む頭を手で押さえながら起き上がると、そこには信じられない姿があった。
「……目覚めたか、小僧。」
すなわち、キャスターであった。コーニッシュが連れていた金髪に碧眼の幼い娘。掌から無限に伸びる刃舌を出したり、額から十色の光を放ったりと、到底人間とは思えない身体構造をしてはいるものの、外見は何の変哲もない幼女だった。
「お前……どうして!」
「どうしてもこうしてもない。気を失ったお前を抱えてあのセイバーが転がり込んだ廃屋に忍び込んだまでのこと。」
「セイバー……そうだ、セイバーは!」
周囲を見渡すと、セイバーは部屋の隅で寝息を立てていた。セイバーが眠るという光景はクロウも見たことが無く、怪訝な表情で再度キャスターの方を見る。
「魔力不足だろう。」
クロウの心中を察したようにキャスターは答えた。
「あの泥を私が父の元へ送り去ったことで、泥の大半はこの世界から消失した。微量に残った泥が貴様との契約を律義に守り続けているが、先祖代々から蓄積された呪いは全て棄却された。よってその呪いを薪に貴様に宿っていた魔力も微弱な量となり、セイバーに供給できる魔力量も減少したのだよ。」
幼い見た目とは裏腹に傲岸な口調でそう説明するキャスターの瞳からは嘘偽りを話しているような感覚はしなかった。
「お前はどうしてここに……あのコーニッシュって奴はどうした?」
「
意味が分からなかった。目の前にいるこの幼女は確かに敵であるはずなのに、当の本人は敵前にして囲炉裏に火を入れて暖を取っている。時々「人間は火ひとつにしても回りくどいな」などとぼやきながら小枝を寄せ集め、どこかで拾ってきたのであろう杉の葉を使って火の勢いを強める。
「お前は俺を殺さないのか?」
クロウの問いかけにキャスターは数秒クロウをじっと見つめる。その瞳の奥に宿る小さな宇宙の虚無を直視してしまい、クロウの背筋に悪寒が走った。
「殺す理由がないからな。」
「は――?」
先程の刃舌を少し伸ばせば、半端な魔術使いのクロウなど一瞬で物言わぬ骸にできる。それだと言うのに、キャスターは再び長めの枝で囲炉裏の中を弄り回しながらクロウには頓着する気すら見せずに黙りこくってしまった。
「……貴様を殺す理由があるのはキャスターだけだ。私は貴様が生きていようといまいと興味がない。」
「じゃあ、どうして俺たちに刃を向けるんだ。」
「どうして? 決まっているだろう。邪魔だからだ。」
矛盾していた。生きていようといまいと、と宣った直後にキャスターは邪魔だから殺す、と言ったのだ。
「お前も……『死』を疎むのか。」
「興味がない。」
「なら、何故コーニッシュに与する!」
「――。」
その言葉は、あまりにも小さく。あまりにも遠く。あまりにも遥かで、クロウの耳には終ぞ届かなかった。しかし彼女はあまりにも――人の身で実感してはいけないような、神々ですら耳を塞いでしまうような、そんな恐ろしいことを呟いた。そんな直感が確かにクロウの内には在った。
「最後にひとつだけ、構わないか?」
廃屋から去ろうとするキャスターを引き留め、クロウは尋ねる。
「
初めて笑う姿を見た。無垢な幼さとあどけなさと、その奥にぼこぼこと沸き満ちる邪悪な意思を湛えた笑顔だった。
「――貴様には最期まで理解できぬさ。」
そう言い残し、キャスターは景色を歪ませ、ひずみの向こう側へと去って行った。
セイバーが目覚めたのはその数十分後だった。事の子細を聞いたセイバーはクロウの身を案ずる態度こそ見せたものの、異常がないことがわかると、クロウが大怨鬼と呼んでいた悪鬼について所感を告げた。
「クロウ。あれは聖杯の泥。聖杯が何らかの要因によって汚染された際に生まれ落ちる『この世すべての悪』です。」
「それって前にリンさんが言ってた……?」
「はい。かつて冬木の地に顕現した聖杯から生じた呪です。それと同様のモノであることに間違いはありません。なぜ、と問われればそれは私にも皆目見当も付きませんが……。」
そんなセイバーの言葉を聞きながら犬鳴村の結界を出る道すがら、クロウはひとりの青年に呼び止められた。西暦も二千年を超えて十年が経過しているにも関わらず明治時代のような和装を身に纏うその青年は、明確にクロウの名を口にした。
「おい、玖郎! お前なんだろ!」
「――セイバー、早く出よう。」
「ですがクロウ……。」
青年はクロウに駆け寄り、その腕を掴む。
「祠の禁を誰かが破ったってさっき長老様が……お前なんだろう、玖郎!」
「
「クロウ……。」
クロウは青年の手を振り払うと、肩を怒らせながら牙を剥く。
「散々俺を無視してきておいて、俺を殴っておいて、俺に石を投げておいて! 俺の行いに四の五の口挟んでんじゃねぇ!! 俺はもうこの村の人間じゃねぇんだ……お前らはこの閉ざされた鳥籠の中でせいぜい外の連中に在りもしない罪をなすりつけて、虚しさ極まる空ろな憎悪を滾らせていやがれッ!!」
「お前……父親が死んでからその歳になるまで無事に育てられた恩義を忘れたのか!?」
「恩義? 恩義だと? 恩義と言ったのか、お前ッ! 笑える冗談だ、最後にいい手向けを貰ったと思っておくさ! 二度とその口を俺の前で開くなよ、次に何か言ったらその首刎ね飛ばす!!」
しかし、そんなことは構うこともなく再び青年はクロウに向かって手を伸ばし、喉から何かを発しようとする。
刹那、クロウの手にはすぐ傍に伸びている公道に刺さっていた道路標識が握られていた。それを横薙ぎにブンと重い音を響かせて振るうと、いとも容易く青年の首は宙を舞った。
「クロウ……っ!?」
セイバーが顔を真っ青にしてクロウに掴みかかり、制止しようとするも、クロウは強化した脚で道路標識の支柱を斜めにカットし、鋭く尖ったその先端を何度も何度も屍と化した青年の胴体に突き刺し続ける。その都度に生温い体液が飛び散り、クロウの全身を濡らしていく。
「クロウ、もうやめて!」
ようやくクロウが手を止めた時には、既に青年の体躯はぐちゃぐちゃに掻き混ざって潰れており、原形を留めていなかった。最後に肉会に道路標識を突き立て、返り血で真っ赤に染まった顔面を俯かせながらその場にへたり込んでしまう。彼が履いている靴にはいくつもの無色の水滴が零れ落ちており、総身がしきりに震えていた。
「クロウ、帰りましょう。私たちを待ってくれている方々がいます。」
「――……。」
泣き腫れた目でクロウが見上げれば、セイバーが慈愛に満ち溢れた瞳で手を差し伸ばしていた。その手を取り、クロウは立ち上がる。道路標識はその場に捨て、犬鳴村の結界から外界の土を踏みしめるために足を前へ。
「……ありがとうな、セイバー。」
「たとえこの世界限りの契りと言えど、私は貴方のサーヴァント。シロウにも託されましたから。」
ノイエ・グラーフZへと帰還し、クロウは自身に関する情報やコーニッシュとキャスターが口にした事柄を包み隠さず艦橋にいた全員に語った。
「次なる儀式の場所……?」
"Z"が反芻した言葉に反応したのは、珍しく艦橋に上がっていた雲雀のキャスターだった。
「彼女たちはテクスチャを剥がしたい、レイヤーを消去したいと言ったのでしょう? でしたら簡単でしょう。それだけのリソースを蓄えた場所へ向かうのですよ。」
「……いや、おまえが予言してくれればおれたちも動きやすいんだけど?」
ジャクリーンの苦言を雲雀のキャスターは高らかに笑って流してしまう。
「私は戦術や戦略には疎い看護師ですが、やはりそうなると高濃度の魔力を擁する霊地が最適なのではないでしょうか。」
ナイチンゲールの言葉に、ハンスもしきりに頷く。
「手っ取り早く敵軍を降参させるにゃ首都爆撃が一番だぜ。軍法だの戦争法だの知ったこっちゃねぇわな。歪む前の世界でもそれは同じだろうな。どっか名のある霊地で儀式を行ったんだろ。」
『――マンハッタン。』
その時、幽かだがハッキリとした声が響く。声の主を見れば、そこには穏やかな表情で眠りこける雲雀のキャスターがいた。
「なんだよ、やりゃあできんじゃんか!」
嬉しげなジャクリーンの声にも全く反応せず、雲雀のキャスターは眠ったまま言葉を続ける。
『彼の者等、西端の地の霊脈に喰らいつきて地の力を悉く喰尽す。』
「これが……雲雀のキャスターの予言……!」
唾を飲むクロウとセイバーの目の前で、雲雀のキャスターは尚も続ける。
『無塵の地と化した彼の地にて冒涜に穢れた力を流し込みて儀は功を制す――。』
そこまで告げると、雲雀のキャスターはぱちっと瞼を開いて目を覚ます。
「えーっと。」
申し訳なさそうに後ろ頭を掻き。
「誰か記録してくれました? 案の定覚えてないので。それとごめんなさい、今ので教会の方々にバレました。」
『カンチョサン、ものっすごい速さでこの船を追いかけてくる反応ネ! これ……ただの人間ヨ!?』
ラグーンの艦内放送が響くと同時に、"Z"はその場にいる全員に持ち場に就くよう指示を飛ばした。
裏側。無も有も無く。天も地も無く。人も神も無き世界。『世界の裏側』――そう魔術師たちが呼ぶ場所とは一切共通点の無い、高次元の
一方は白衣の女性と金髪碧眼の幼女。もう一方は麻布を首から被っただけの裸同然の恰好をした剣士。
「ここに辿り着けるとは……貴様、神代のサーヴァントだな?」
幼女はぞっとする口調をかわいらしい声で発する。剣士は目を閉じ、それを一笑に付した。
「――答える義理は無い。」
「ふん、それもそうだ。」
「そっちにいる女はどうした。クロウの話では随分と姦しいとのことであったが。」
剣士は手にした十束剣の切っ先を白衣の女性へと向ける。幼女はフンと鼻を鳴らし、種明かしをする。
「簡単だ。言葉を発せばこの空間の一部になる。黙っていろと命じたまでよ。」
「そうか。……この場で満足に戦えるのは貴様ひとりであろう。さぁ剣を構えろ、
現人神と呼ばれた幼女は大溜息をつくと、掌から無限に伸びる細く鋭い舌をずるりと垂れ落とす。
「これだから古今東西、戦士と言うのは嫌いだ。」
「奇遇であるな。私も貴様のようなヒトの未来を竟やそうとする者は心底から忌々しく思う。」
一瞬の間。
「我が真名、『オウスノミコ』! 古より
「我が真名……『繝上Ρ繝シ繝峨?繝輔ぅ繝ェ繝??繧ケ繝サ繝ゥ繝エ繧ッ繝ゥ繝輔ヨ』。我が父なる神の御名の下、貴様を断罪してくれる!!」