真名:ブランシェット
性別:女性
筋力:A+ 耐久:B+ 敏捷:B 幸運:A+ 魔力:A 宝具:C
スキル:狂化EX、心眼(偽)B+、戦闘続行A、獣殺しC、単独行動C、無垢な心A、変化A、黒い森の乙女A+など
宝具:『哮えよ、我が内なる愚喰の魔狼(ルスト・ファストヴォルフ)』
→ブランシェットの内に宿る魔狼の血を解放することで、視界に映るすべての生命を『食糧』として認識する暴食の人狼へと変貌する宝具。『満月の夜であること』、『周囲に三百本以上の針葉樹林があること』、『極限の魔力不足状態であること』のいずれかの条件を満たすことで発動可能になる。
「――アインツベルンもやられた!」
「詳しく、詳しくお願いマサムネさん!」
政宗からの連絡を携帯電話で受け取ったゾーエは、緊迫した声で問い詰める。電話の向こうの政宗は至極冷静に、だが焦燥感に満ちた様子で事態の詳細を語った。
『壊滅したって意味じゃない。
いつもの軽薄な調子もどこへやら、政宗は悔しそうな声音で報告を終える。
「っぐ……! なんだ、どうしたんだ盟友?」
ゾーエの背後で、熱暴走寸前の魔眼を冷却しつつその力でズーハオの傷を癒す作業を施していたアロイジウスが、苦痛に耐えながらゾーエの方へ近寄ってくる。ゾーエの腕に縋らなければ立っているのもやっとといった様子のアロイジウスに、ゾーエは政宗の言葉をそのまま伝えた。
「失われた……? おい、アインツベルン本家に真正面から侵入できたのか?」
ゾーエの携帯電話を奪い取り、政宗に問い掛けるアロイジウス。
『言っただろアローちゃん、アインツベルン本家は誰も居なかったんだ。誰も。誰もだ。使い魔もいなけりゃ魔術師も技師もいねぇ。まるで昨日の晩に皆が皆一瞬でその場所から消え去ったような……。食事も残ってた。紅茶も残ってた。暖炉の火も燃え続けていた。ただ、人間とホムンクルスだけがいなくなっていた。』
「魔術師が消えたことで警備魔術が意味を失くした……? でも、誰が!」
ゾーエの疑問に答えたのは、政宗ではなく――政宗から携帯電話を受け取ったルーラーだった。
『ロバート・E・コーニッシュ。その名を覚えておいてください。』
「コー……ニッ……っ、がぁっ!?」
瞬間。ゾーエの脳髄に激痛が駆け抜ける。取り零した携帯電話を空中でキャッチし、アロイジウスはゾーエの名を鋭く呼ぶ。しかし、ゾーエの頭痛は激しさを増していき、その場で膝をついてしまう。
「わた、し……その……そいつの、名前……知ってる……! コーニッシュ……コーニッシュ! そいつだ! そいつ……が……世界、を……!」
息を荒げながら『コーニッシュ』の名を連呼するゾーエに呼応するように、数メートル後ろで意識を失っていたズーハオが目を開く。
「――ルーラー。ジャン・ヴァルジャン。お前、何を知っているんだ。裁定者のクラスにあって、どうしてそれを早く言わなかった!」
『……。』
ズーハオの方へと歩み寄りながら、アロイジウスは通話の先にいるルーラーに詰問する。
『確定要素ではなかったのです。あくまでも
「ルーラーが僕様たちのところへ?」
『はい。貴方がたと合流し、私もコーニッシュ征伐へと向かいます。』
「でも、そいつらの居場所もわからなけりゃ企みもわからないじゃないか。」
「――人類の進化。」
アロイジウスの吃驚した表情の先に、ズーハオは仏頂面で座っていた。
「コーニッシュだろう。会ったことがある。……その日はひどい頭痛がしてたもんでな、発言そのものはほぼ覚えていないが……。ただ、『人類から死を抹消する』って主旨の説明だった。何を思って俺にそんなことを言ったのかはわからないが……。」
人類から『死』を忘却させる。その魂胆はあまりにも無謀であり、恐ろしい。そう、アロイジウスは思ってしまいたかった。だがそうは問屋が卸さない。
『ふーん? アーレルスマイアーの悲願に似ているねぇ。』
今度は別の場所から声がした。ちょうど腕輪の向こうにいる人々へ報告を行っていた藤丸の、その腕輪から聞こえる声だった。
「――誰だ、お前。」
『おぉっと、マスターであるキミには自己紹介はまだだったねぇ。この私こそ! 人類最高の叡智、ダ・ヴィンチちゃんだとも!』
「胡散臭いな。」
『あはは、手厳しいものだね。ところで、人類を死無き生命へ昇華させたい、というのは、君たちアーレルスマイアーの最終目標でもあるのではないかい?』
「その通りさ。僕様たちアーレルスマイアーは人類を英霊にする……『真人類』へと導くことを願っている。でも……。」
アロイジウスは忌々しげに背後で手摺に背を預け、頭蓋の熱を抑えようと何度も呼吸を繰り返す親友の方を一瞥する。
「僕様はそれ以前に一人の人間だ、一人の女だ! そもそも僕様は誰にも期待されていない。大兄上が少し贔屓しているだけで、僕様にアーレルスマイアーの未来は託されていない! なら、僕様は刃向かうさ。たとえ道を同じくする同志であっても! 僕様の盟友に苦しい思いをさせる馬鹿野郎はどこにいる、ジャン・ズーハオ!」
藤丸の腕輪から「ヒュウ」と短い口笛が聞こえ、藤丸も笑顔でアロイジウスの決意に頷く。
「俺は知らない。」
ズーハオはその言葉の後、やや躊躇ってから話を続けた。
「だが、知っている連中を俺は知っている。」
その名を告げる。その一言が、アロイジウス、メイジー、ダルタニャン、そしてゾーエを運命の場所へと導こうとしていた。
「――『グランツ・レルヒェ』。」
カチン、と。政宗は燭台切を鞘へ戻す。そこには何もなく、ただただどこまでも、無限の『純白』が広がっていた。
「どうして。僕も。行くのさ。」
「それは貴方のサーヴァントに原因があります。」
「……。」
セスタンテはルーラーの言葉に項垂れ、自らの右手の甲を左手で隠すように握る。その指の隙間からは、ゴブレットのような形状を象った紅蓮の呪印が見え隠れしていた。
「ここを。出たら。僕。死ぬよ。」
「えぇ、死ぬでしょうね。」
「……。」
ルーラーはただ淡々と、真実だけを述べる。
「そのための
「……。」
セスタンテは、悲しそうな目で背後を見つめる。だが、勿論そこにはただ純白が在るのみ。何もなければ誰も居ない。だが、セスタンテはその虚無へ向けて問いを投げかける。
「なぁ。ランサー。僕が。死にそうに。なったら。ちゃんと。助けて。くれよ?」
返事はない。否、そもそもその場所には肉眼では誰も居はしないのだから当然である。しかし、セスタンテは少しの後、安堵の表情を浮かべた。
「……『聖杯を発見する宝具』、ねぇ。本当なら意味のないモノなんだろうケド。こと命の聖杯戦争においては最高に優秀な宝具だナ?」
軽薄な笑みを見せる政宗に言われ、セスタンテは外方を向く。
「彼女たちは聖杯の出現する場所へ向かうでしょう。ですが、それを追跡しているようでは間に合いません。なので先回りが必要です。恐らくゾーエとアロイジウスはジャン・ズーハオと共に『グランツ・レルヒェ』と合流するでしょう。彼の組織の戦艦へは私が。貴方がたは先に
その声には肌をぴりぴりと焦がす『正義』が感じられた。冷や汗を垂らすセスタンテと高揚したように満面の笑みを見せる政宗を置いて、ルーラー、ジャン・ヴァルジャンは
「ありがとう、セスタンテ。貴方がいなければ、私は不十分な魔力で消滅していました。そして……神の慈愛のあらんことを。すべてが終わったら、また会いましょうね。」
そして、白と白の狭間の世界から、無辜の罪人は姿を消した。裁定者としての責務を果たすため。
「リグセンルールは皆殺しにされた。アインツベルンは消失した。命の聖杯戦争三大派閥と呼ばれた陣営のうち二つが無くなったんだ。おれたち『グランツ・レルヒェ』だけが、最後の牙城。おれたちだけが世界を救えるんだ。」
「……。」
ジャクリーンの言葉に、クロウは押し黙る。
『すべては、
そんなクロウの記憶の中で、小さな狙撃手の言葉がリフレインしていた。彼女に託された命、記憶、絆を最大限利用して、クロウは今、最後の地へと向かおうとしていた。
それは数時間前のこと。
「ゾーエ。ゾーエ・モクレール。また会ったね、クロウくん。」
「アロイジウス・アナスタージウス・アーレルスマイアーだ。覚えておいてくれたまえよ諸君!」
「セイバー、シャルル・ド・バツ・カステルモール。ダルタニャンと言った方が聞こえは良いか?」
「バーサーカー、メイジーです! はい! 一生懸命生き残りましょうねっ!」
二組の魔術使いとサーヴァント、そして、
「……ジャン・ズーハオだ。契約サーヴァントはアーチャー。今はこの船外を警邏させている。」
「ルーラー、ジャン・ヴァルジャンです。これより皆様に指令を与えます。」
二人の『ジャン』。
「藤丸立香と言います! この特異点を修復するため、未来から派遣されました!」
「野良サーヴァントのハサン・サッバーハよ。フジマルくんのサポートをしているわ!」
未来からの使者と、総数四人の魔術を知る人間、五騎のサーヴァントが『グランツ・レルヒェ』の居城、『ノイエ・グラーフZ』へと乗り込んできたのだ。その理由は戦闘ではなく、『共闘要請』であった。
ルーラーは全員の自己紹介が終わってから口を開いた。
「現在、私の協力者がサーヴァントの宝具を用いて聖杯の顕現地へと向かっています。ロバート・E・コーニッシュはその野望の達成のため、恐らくそこへ向かうでしょう。」
「なるほど、一回目でダメだったから、今度はより大量のリソースが必要になる。ならば聖杯を利用する事が最も好ましい。」
雲雀のキャスターの言葉に頷き、ルーラーはその目的地について単刀直入に言い放った。
「今回の命の聖杯戦争において端末としての聖杯が顕現する場所は、当該サーヴァント曰く――。」
「グレートブリテン及び北アイルランド諸国首都、ロンドン。……
「『西端の地の霊脈』……!」
雲雀のキャスターの予言を思い返すジャクリーンに、雲雀のキャスターは得意げな表情で腕組みをし、鼻息をひとつ吹く。
「いや、お前言ったこと覚えてないだろ。」
「今回、我々は皆様と協力し、彼女の野望を阻止して頂きたいのです。」
"Z"は押し黙っていたが、ルーラーの真摯な眼差しに微笑み、ジャクリーンの指示を仰いだ。
「で、でも艦長は"Z"だろ!?」
焦るジャクリーンに、"Z"は大笑いし、彼女の前に軍帽を脱ぎ捨てて跪いて見せた。
「御決断を、我がマスター。貴方は我が宝具の乗組員であると同時に、この一騎のサーヴァント……ライダー、『フェルディナント・フォン・ツェッペリン』のマスターなのだから!」
ジャクリーンは慌ててクロウの方を向くが、彼もまたニヤニヤと見守るのみ。セイバーも、雲雀のキャスター、ハンス、ナイチンゲール、ラグーンも、何も言わずにじっとジャクリーンを見つめていた。
「――……っ!!」
そして。ジャクリーンが放った一言は、確かに舞台を幕引きへと誘う。だがその幕引きは、あくまでももうひとつの幕間への転結に過ぎないのやも知れない。
「――ライダー!