真名:フェルディナント・フォン・ツェッペリン
性別:女性
筋力:C+ 耐久:D+ 敏捷:B 幸運:D 魔力:B 宝具:A+
スキル:対魔力D、心眼(真)C+、騎乗A+、陣地作成A+、ツェッペリンA、軍師の指揮B、軍師の忠言Cなど
宝具:『人類よ、夢想を追い究めよ(トラウム・フリューゲル)』
→一度使ってしまえば現界中二度と使用できなくなるが、代わりに「人類の手によって過去・未来に関わらず実現可能である」事象ならばいくらでも叶えられる宝具。翼を夢見たツェッペリン伯爵ならではの宝具と言えるだろう。
「おい。おい!」
雲雀のセイバーが目を覚ますと、目の前には見知らぬ和装の青年がしゃがみこんで雲雀のセイバーを見下ろしていた。
「……。」
「瀕死じゃんよお前さん! サーヴァントだろ? しかも見るからに日本人だ。アンタ真名は? オレはセイバー、伊達政宗。知ってるか?」
一方的に捲し立て、政宗と名乗るセイバーのサーヴァントは倒れていた雲雀のセイバーの手を掴んで起こし上げた。
「伊達政宗……知っている。伊達の十七代当主、か。」
「お、ってことはオレとも近い時代の……って、ンなワケねーか。そんなナリだもんな。」
麻布姿の雲雀のセイバーをじろじろと眺め、政宗は溜息を吐く。
「ったくよォ……な~にをどうしたら……。」
政宗は雲雀のセイバーの患部をちらりと見降ろし。
「
「海賊稼業してるとよォ。」
赤毛を荒っぽくアップで纏め、オリエンタルな水兵服を着込んだサーヴァントは、リグセンルールの地下城塞から再び、クロウとセイバーの前に立ちはだかった。
「御主人様がコロコロ変わる……なんざァ、しょッちゅうだったぜェ?」
「こらフズール、私たち一応私掠船の船長なんだから、あんまり勝手の良いこと言うもんじゃないわよ?」
「チッ……さァて、また会ったなァ甲冑女ァ! 覚えてるかァ? 海賊は執妄の化身だからよォ、あたいはきッちんと覚えてるぜェ。お前を生け捕りにして爆薬をたンまり積んだ小舟に乗せて遠くからカルバリン百門ブッ放すッつッたんだぜェ!」
隣に立つ同じく赤毛をこちらは膝下まで長く豊かに伸ばしたやや身長の低いサーヴァントは付き合いきれないとでも言いたげに肩をすくめ、手にした分厚い装丁の書物を重々しく開く。
「でもよォ、甲冑女ァ。」
好戦的に牙を剥き、心底愉快そうな笑顔を浮かべる結髪のサーヴァントを前に、セイバーは両の手にした暴風をいつでも振るえるよう構え、そのぞっとするような声を真正面から受け止めた。彼女の雷雨を孕む大波濤のような低く恐ろしい声に呼応するように、姉妹の背後に流れていたテムズ川が渦巻き始める。
「ちょいとあたいとゲームしねェか?」
「ゲーム……?」
「おゥよ、至極簡単なゲームだぜェ。アンタ、見たとこ王様か騎士様だろォ? それも三流のそれじゃねェ。その出で立ち、覇気、闘志……そいつァ一流の騎士様だ。ならよォ、あたいらみてェな卑しい海賊二人ぽッち相手にしてもつまんねェだろォ……?」
「!」
何かを察した様子のセイバーは、背後のクロウに臨戦態勢を進言する。クロウも言われた通り令呪を用い、傍の道路標識をヒョイと引き抜いて見せた。
「話が早いこッて何よりだぜェ!! そんじゃ、地獄を楽しみなァ!! ――我らは嵐! 我らは厄災! 我ら怒涛の悪魔と成りて此地を草木も生えぬ大更地へ変貌せしめん! 全軍上陸……、暴力だァ! 略奪だァ!! ハハッ――最高だぜ兄弟! 楽園だな! ここはすべてが許される地獄浄土さァ!!」
詠唱を言祝いでいく都度に、渦巻くテムズの川面から半透明の海賊たちがひとり、またひとりと上陸してくる。それはさながらに幽霊船の海賊軍団のようであった。
「我ら無敵の赤髭海賊団! 飲み干せ奪え、侮辱せよ! ――『
十万というのはどうやら見栄ではないらしく。テムズ河畔に次々と乗り込んでくる海賊たちは、ひとりひとりが一流と言わないまでも、三流とまでは行かない高位のサーヴァントに匹敵する大軍団であった。自分たちの横を過ぎ去り、我先にとセイバーへ襲い掛かる半透明の海賊たちを見守りながら、二人のサーヴァントは名乗りを上げる。
「私は叡智の災厄、ウルージ!」
「あたいは暴虐の災厄、ハイレッディン!」
「「我ら姉妹、赤き髭持つ災厄の大海賊!! 海賊『赤髭』、『
――さながらに、人間の濁流であった。波を掻き分け、斬り捨て、なおも減る様子を見せない赤髭海賊団。それもそのはず、斬れば斬るほどに増援が大渦の渦中から海賊から溢れ出でている。止めどない攻防を繰り返す中で、クロウは『赤髭』バルバロッサ姉妹に問い掛ける。
「――お前たち、あのコーニッシュって奴の敵じゃなかったのか!?」
「言っただろォ? あたいらにとって主人の違いは大して問題じゃねェ。暴れられるか、暴れられないか。そっちの方が何より重要なのさァ!」
「もう、フズール? それじゃ私たちがただの荒くれ者みたいじゃない! 私たちはあくまで商売人。クライアントが変わっただけだわ。」
「あたいらはひと儲けできる。アイツらは聖杯を探し出せる。ウィン・ウィンだ、ウィン・ウィン。あたいらだけじゃないぜェ? どっかの決闘王サマだの、北欧の航海王だの……ま、ある種戦争じゃねェのォ? お前ら『グランツ・レルヒェ』のサーヴァントたちと、あの科学者サマのサーヴァントたちの、全面戦争さァ!」
ハイレッディンの無邪気な笑い声が響き渡ると同時に、ロンドンシティのあちこちから爆発や衝撃音が巻き起こり始める。それはまるで、開戦の号砲かの如く。
場所は変わって時計塔。外壁には魔術的な障壁が施され、内部の人間が地上へ脱出できない牢獄のような状態にされてしまった白亜の塔の中から、一本の電話が入電する。
「もしもしっ!」
咄嗟にゾーエが応えてみれば、それは時計塔の中にいた凛からであった。
『――そ、だいたい状況は理解したわ。あまり無茶はしないようにね。この障壁、どうにもサーヴァントが張ったみたいでね……。うちの御老公たちが束になっても全然解ける気配すら見せないの。外のことはあなたたちにしか任せられないわ。頼んだわよ!』
「はい、すぐに何とかして見せます!」
事態を説明し終わり、凛からの激励に元気よく応答するゾーエ。そんな彼女に、凛はクスッと小さな笑い声を漏らした。
「先輩?」
『時計塔を飛び出すちょっと前まで、あんなに「シャルルが~」だとか、「戦いたくない~」だとかってウジウジしてたのにね。立派になったわね、ゾーエ。』
「――……っ!」
優しい声音のその言葉に、思わずゾーエの目尻に水滴が浮かぶ。
「せん……ぱい……。憧れのトオサカ先輩に、そんなこと言われる日が来るなんて……。っ、あ、はは。あははははっ……! シャルル、私勇気を出して良かったよ……!」
「……ああ。お前はよくここまで頑張ってきた、ゾーエ。ゾーエが声を掛けなければ、アロイジウスも世界の真相について知ろうともしなかっただろう。……お前が、皆をここまで導いてきたんだ。」
肩を震わせるゾーエの背を撫でながら、ダルタニャンは前を向くよう促す。涙を拭ったゾーエがそちらを向けば、ゾーエたちが立つウェストミンスターブリッジのゾーエたちとは反対側、東の端に、その男は立っていた。即ち、かつてゾーエとアロイジウスの前に立ちはだかったイングランドの決闘王、初代ペンブルック伯ことランサー、『ウィリアム・マーシャル』であった。
「……ほぉ、お主。佳い目をするようになったな。以前に相まみえた際は何とも卑屈な瞳をしていたと言うに。」
マーシャルは騎乗槍をブンと音高く振るうと、ゾーエを庇うように前に出たダルタニャンに語り掛ける。
「戦意を放棄した敗軍の将かの如き面構えであったお主を、何がその境涯に至らせた?」
「……絆、だな。」
「ほぉ。」
凛との通話を切断し、震える手を固く握りしめてダルタニャンの背中とマーシャルの巨躯を交互に見つめるゾーエの方を少し振り向き、ダルタニャンはその時初めて、ゾーエに向かって笑顔を見せた。それは『勇猛の銃士』らしい、鮮烈な威嚇の表情であった。
「ゾーエ、その手を。――嗚呼。令呪はまだ残っているな。」
ゾーエの右手の甲に触れ、ダルタニャンは再びマーシャルの方へと向き直る。
「その令呪が在る限り、このシャルル・ダルタニャン。命尽きるその一瞬まで貴公の剣、貴公の盾となろう! さぁマスター! 命令を!!」
再び視界がぼやけるのも構わず、ゾーエは笑顔で叫ぶ。たとえ偽りでも、たとえすり替えられた絆でも。ゾーエにとってその銃士は何者にも代えることのできない、世界でたったひとりの相棒だから。
「――セイバー! 私は君を信じてる!! だから信頼に応えて見せろ!! 君こそ私だけの、『ダルタニャン』だッ!!!」
「あぁ――貴女に勝利と、未来を!」
レイピアを胸に。マスケットは対峙せし王者へ。高らかに、リールの総督は己の名を誇示する。それは敬意。それは畏敬。五百戦無敗の決闘王への賛辞でもあった。
「我が名はシャルル・ド・バツ=カステルモール! 通称シャルル・ダルタニャン……フランス銃士隊隊長代理、老いてはリール総督! 勇猛の銃士の名を冠する者である!! 名を申せ、決闘王!」
「おぉ、ならば名乗ろう、勇敢なる騎士よ! 我が名はウィリアム・マーシャル! 五百戦無敗のペンブルック伯、決闘王である! そして――そなたを討ち果たす者也!!」
ダルタニャンのマスケットから弾丸が射出されると同時に、マーシャルの脚が地を蹴る。ここに一世一代の大勝負が幕を開ける。戦は信頼だけでは成り立たぬと現実を突きつけるが早いか、無敗の決闘王に唯一の黒星を与えるが早いか。
そして、騎乗槍の切っ先と弾丸の先端がシャワーのように火花を散らしながら衝突した。
キャスターが掌から伸びる舌先を引き抜くと、槍の騎士は心臓から噴水のように血液を噴き出しながらその場に倒れる。
「えぇ。えぇ、えぇえぇえぇ! まぁそうするでしょうねェ……予想通りすぎて些か面白みに欠ける気も致しますが。この世界のルーラーも警戒するほどのサーヴァントではなかった、ということでしょうかァ?」
「……。」
臙脂色の外套を羽織ったルーラーの足元には、ひとりの青年の遺骸が無機質に転がっている。
「だってアナタ、聖杯の場所がわかる宝具があったら使いますよね? 使いません? 使いましたよねェ。現にその思考を読まれてアナタはひとりのマスターとそのサーヴァントを見殺しにした!! アーーッハハハハ!! いやぁ、これだから聖人君子というのは面白いものですよ、結局のところ自己利益をどこまでも純粋に追窮した人物が聖人君子と称されるわけですからァ? おや……と、あらばこの私も聖人君子の一種では? アハーーーッハハハ!! これは困っちゃいますねェ!!?」
「……。」
狂気に満ちた哄笑を高らかに響かせるコーニッシュ。それに反論することも無く、ルーラーはただ黙って屈み込み、青年――セスタンテの無惨な死体を前に祈りを捧げる。
「ありがとう。そしてごめんなさい、セスタンテ。」
立ち上がり、ルーラーは拳の関節から重低音を鳴らし始める。
「おや?」
まるで、素手で喧嘩をするような。ボクサーのような構えを取るルーラーに、キャスターは憐みを含んだ微笑とともに神速の剣を掌から放つ。――が。
「……っ!?」
その剣は、ルーラーの頭蓋を捉えない。ルーラーが少し首を傾げただけで、舌先は虚空を斬る。髪の毛一本すらをも掴めぬその事実を前に、キャスターの瞳に怒りが滲むのがルーラーには手に取るように理解できた。
「――来なさい、この世ならざる放浪者。精々、