真名:ポルトス
性別:男性
筋力:A+ 耐久:B+ 敏捷:A 幸運:D 魔力:C+ 宝具:B
スキル:騎乗C+、対魔力C、怪力B、カリスマD、蛮勇A、黄金律B+、四剣の加護A++など
宝具:『喝采せよ、役立たずの一剣(アンプールトゥス・トゥスプールアン)』
→自身と霊脈を接続し、尽きぬ魔力供給源を確保することで膨大な魔力を用いた攻撃を絶え間なく浴びせることが可能となる宝具。霊脈の規模に影響を受けるため、強力かどうかは使用する場所による。
『喝采せよ、四剣の英雄譚(アンプールトゥス・トゥスプールアン)』
→三銃士が全員持つ共通宝具。ポルトスのそれは『喝采せよ、役立たずの一剣』の効果を他者に与えるというもので、これを使用すると霊脈からだけではなく、周辺に立つ英霊からも魔力を吸い取るようになる。
それは、本来あり得ない召喚。誰も喚ばなかった。誰も求めなかった。それでも、
真名をポルトス。『役立たず』『木偶の棒』と揶揄されども、その怪力無双を以て仲間たちを導いた『蛮勇の一剣』。
「ライダー、どうして……あなたは座に……っ!」
ゾーエの問いに、ポルトスはニカッと笑って答える。
「おうとも! でもよぉ、お嬢。オレはお前に言ったはずだぜ。ここで待ってる、ってよ。さぁ、お嬢。まだ令呪はあるだろッ!?」
「――!」
その言葉に何かを察すると、ゾーエは一画すらも失くなった薄れゆく令呪をライダーへ向ける。そして、夜の空を切り裂くような裂帛の宣いをライダーへと投げかける。
「――告げる! 汝の身は我の下に、我が命運は汝の腕手に! 聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うのなら――我に従え、さすればこの命運、汝が蛮勇に委ねよう!!」
ニヤリと笑い、ライダーもゾーエが伸ばした手を握り締め、それに応える。
「応! ライダーの名に懸けその誓い、確と受け取った! 貴殿を我が主と認めよう、ゾーエ・モクレール!」
しかし、すでに令呪をすべて失ったゾーエにマスターとしての権限は皆無に等しく。無から新しく令呪が生み出されるのは相応の絶痛を伴った。
「――ッあああっ……!」
しかし、ゾーエは涙を流さない。まるで、歴戦を生き抜いたかのような胆力が、彼女の心の奥底で燃え盛っていた。
「は、はははっ……!」
その表情は、実に凄絶だった。眼前の強敵に対する恐怖と興奮、破天荒すぎる自らの運命に対する嘲り、懐かしい戦友に再会できた喜楽入り混じった不敵な微笑。そう、ライダーならば、と信じて疑わない絶大な信頼から来る自尊心が、そこにはあった。
「……今更、既に敗れた英霊ひとり特例召喚を果たしたところで、この私に勝てると……そう、本気で思っているのか?」
「思ってないよ!」
そのゾーエの回答は、ラヴクラフトを面食らわせるに十分だった。
「だって、貴方には今はまだ勝てない! ライダーだって勝つためにここにいるわけじゃない。そうでしょ、ライダー?」
「よくわかってるじゃねぇかお嬢、オレはあくまで前座さ。その仕事が終わったら速やかにまた還る。それだけの霊基しか持っちゃいねぇ。」
「――うん、また会えたのはね、すごく嬉しいんだ。ライダー、本当に……。」
ゾーエは暫く俯き、込み上げてくる感情を押し留める。そんなゾーエの髪をぽんぽんと叩くように撫で、ライダーは再びレイピアを抜いてラヴクラフトの方へ向き直る。
「何度でも言おうぜ、お嬢!
「――うん、何度だって!
そうして、たった二人の三銃士は、格闘魔術師とその従者の隣に並ぶ。
「茶番は終わったか。 まったく、そのような脆弱な
ラヴクラフトの嘲笑に、ライダーも笑顔で返す。
「そうだな! 確かに今のオレは令呪一画分のチカラしかないさ。」
その言葉にゾーエが手の甲の令呪に目を落とせば、そこに刻まれている令呪は事実、一画しかありはしなかった。即興の契約、さらにルールを大きく無視した再召喚。数多の要因が、ゾーエの隣に立つ騎士の在り方を貧弱に堕としてしまっていた。悔しさと無力感に顔を歪ませるゾーエの肩に腕を回し、ライダーは笑った。
「気にすんな、お嬢。何度も言ってるだろ! オレは待ってたんだ。たとえ次の一瞬にお嬢の前からオレが消えたって、オレはそれでもいい。お前の王子様として、ここにもう一度立てた。お前の笑顔が見れた。」
それでいい、と。銃士は前を向く。
「正真正銘、最後の一画だ! 命令することは決まってるよなッ!?」
「――うん!」
再び、ゾーエの表情に覚悟が宿る。それを見たランサーも満面の笑顔で自らのマスターの瞳を見つめる。それに何を感じ取ったのか、ズーハオはランサーの背を叩き、ラヴクラフト目掛けて送り出す。
「時間稼ぎ、この森成利が承った! 存分にやれ、蛮勇の銃士!」
「え、お前男だったの!?」
吃驚の言葉ひとつ飛び出し、ライダーは困り顔で笑って溜息を吐き、ゾーエの方を振り向く。ゾーエも頷き、手の甲をライダーに向け、命令を下す。
「――ライダー、宝具を使いなさい! 貴方の役目を果たして!」
「『
既にマンハッタンに霊脈としての機能はありはしない。それでもその瞬間、令呪の魔力ブーストによって宝具の真名解放が可能となった彼の肉体は、マンハッタンの霊脈と接続される。
それは、この大いなる大地と一体化するということ。真名解放だけでほぼ底を尽きかけている己の魔力を叱咤し、身体の節々の血管が千切れて血液が噴き出しても、ライダーはその『ひとつ』に集中する。
「お嬢ちゃん……あー、お嬢ちゃんじゃねぇんだっけか。まぁいいや、ランサーのお嬢ちゃん!
「え、えぇ!?」
「ほう?」
その一言に、ラヴクラフトはニヤリと邪悪に微笑んで反応する。
「見たいか! フハハハッ、貴様の破滅願望もここに極まったか! 良かろう、何を企んでいるかは知らんが――我が『変貌』のケモノの本性、お見せしよう!」
次の瞬間、彼女の高笑いと共にラヴクラフトの躯体が風船のように膨張、はじけて飛び散り、その爆心地から無数の肉塊と触手、炎と水泡、巨大な翼や獣の脚部が溢れ零れ、名状し難い超巨大物体となって凝固する。
『ビーストのクラスを名乗るには未だ霊基としての成熟度が足りんが、それでも貴様らを貪食するには充分な身を保有している!! さぁ、我が狂気の寝床にて永遠の恐怖に微睡め!!』
「チョロいぜ――ビーストの成り損ない!」
既にライダーは満身創痍。身体の端が座に還りかけている状態だった。それでも、ゾーエはライダーを止めることはしない。自身の令呪を握り締め、真摯な瞳で目の前のライダーを見守り続ける。
「なに、ライダー! これ、キミの想定内!?」
「いいや、オレにそんな頭はねぇさ!」
ついに、ライダーは膝をついてしまう。何をしているのか、ゾーエには何もわからなかったが、ライダーが無茶をしてまで自分の隣に立ってくれたその目的を果たそうとするその姿を咎めることだけは、絶対にしなかった。
「――目の前にはビースト……とはまるで言えねぇチャチさだが、ビーストがいる! オレは今地球と接続している! つまり聖杯と接続しているのさ!」
『……!』
名状し難い巨塊は何かを察したように、目の前のランサーよりも真っ先にライダーを捕食せんと触手を伸ばしてくる。しかし。
「遅いッ!!」
瞬間、ライダーを起点として魔力の爆発が起こる。それは単純な暴風だったが、既に消えかけていたライダーの霊基を消滅させるには十分すぎる威力を持っていた。
「ラ――っ!」
ライダー、と呼ぼうとするゾーエの目の前でライダーの霊基が崩壊していく。腕を伸ばし、ライダーを止めようとする。その掌に拳を打ち付け、ライダーは豪快に笑って見せる。
「お嬢、ここからはあんたの英雄譚だぜ! ――世界を任せた、マスター!」
まるで蝋燭の炎が風に吹かれて消えるように、ライダーの存在が消失する。だが、彼が成し遂げた偉業が彼に代わるようにゾーエの眼前に立ち塞がっていた。
蒼穹のようなシアンカラーのふわふわとなびく髪にマグマのような赤眼を持ち、大地のような黄土色の服装に風のように透明な薄緑のマフラーを巻き、海のような群青色のサンダルを身に着けたその
「――もうやめてっ!」
驚き固まるランサーとズーハオ、ゾーエには目もくれず、少年は肉塊と化したラヴクラフトに訴えかける。
「もうやめて! ぼくを取り合って、何が楽しいの!? こんなにたくさん人が死んで、たくさん人が悲しんで、その涙が、悲鳴がきみには聞こえないの!? ……ああ、ああ! 聞こえていないんだろっ!? だからそんな姿になってまでぼくを生まれ変わらせようとするんだ! そもそもっ……!」
「ま、待って待って!」
まくし立てる少年を遮り、我に返ったゾーエが少年に誰何を問う。
「君は一体……誰なの?」
「……あ、ごめん。ぼくは
「グランドライダー、『
即ち、霊長の世から生まれ落ち、霊長の世を滅ぼさんとする獣の霊基、超特殊クラス・ビーストを討ち滅ぼすために抑止力から顕現する天の御遣い。
「グランド……ライダー……。」
「うん。『テラ』とでも呼んでよ、ゾーエ。」
「私の名前を?」
「当たり前じゃないか! ぼくは地球そのもの。七十二億四千四百万人全員の名前や人生は知っているよ。勿論――。」
宇宙船地球号――テラは慈愛に満ちた眼差しでランサーを見つめ、
「
と微笑んで見せる。
「……だからこそぼくはきみを見過ごせない。ラヴクラフト……ううん、ラヴクラフトを名乗る
「ラヴクラフト・オルタ!?」
『……。』
黙りこくる肉塊に向かって、テラは語り掛ける。
「ぼくは知ってる。ハワードはきみみたいな願望は持ってない! 彼は確かに外宇宙の諸神を視てしまったせいで外側の放浪者になってしまったけれど、ぼくの事を心から愛していた! ぼくを生まれ変わらせようだなんてこれっぽちも思ってなかったんだ!」
『……うるさい!』
直後、テラ目掛けて巨大な偶蹄目の脚部がテラを踏み潰そうと襲い掛かる。テラはそれを正面から見据え、涙を目尻に浮かべながらそれへと人差し指を向ける。一瞬の閃光の後、テラの指先から熱戦が放たれ、蹄は跡形もなく蒸発してしまった。
「ガンド……!?」
ズーハオの言う通り、その射出法は病魔の呪、ガンドのものだった。
「これが一番この体で狙いを定めやすいんだ。でもぼくが撃つのは病気や魔力塊、宝石じゃないよ。」
その時、目前の肉塊が鼓膜が張り裂けそうなほど盛大な身も凍る悍ましい雄叫びをあげる。
『貴様……貴様ぁッ!! これは……星の記憶か!! 流れ込んでくる、強制的に……再生される! やめろ! やめろぉ! 私の中で……歴史を繰り返すなァ!!!』
「そう、ぼくが撃つのはぼくの記憶。文明、事件、英雄、種族、あらゆる断片的な情報を相手の魔術回路に打ち込んで破滅させるガンドだ。……
目元の涙を腕で拭うテラの前で、肉塊が収縮していく。そこに何も無くなった時、代わりに五番アベニューの路上には一糸纏わぬ全裸の幼女が倒れ込んでいた。
「ひゃ。」
敵と言えど吃驚して口元を両手で押さえるランサー。
ラヴクラフトはむくりと起き上がると、憎しみ一色の瞳でその場にいた全員を睨み、捨て台詞を吐いて虚空へと消えていく。
「貴様ら……貴様らだけは特別だ! じっくり味わって屠り喰らってやる! この星ごとなァ!!」
一瞬の静寂の後、敵性存在のいなくなった道路には、やがて数台のパトカーが駆け付けてくる。テラは三人に喚起し、ゾーエの手を引いてその場から走り去る。ランサーとズーハオも二人を追って駆け出した。