真名:???
性別:女性
筋力:E 耐久:E 敏捷:EX 幸運:E 魔力:EX 宝具:EX
スキル:対魔力A+、単独行動A、陣地作成A、カリスマB、皇帝特権B、太陽神の加護C+、神性B、ガルバニズムA、オーバーロードBなど
宝具:『???』
エジプトは首都カイロ、観光客向けの雑貨店で見るからに粗末な造形の土産物を買うようしつこく勧誘されながら、ズーハオはここ最近に近辺地域で不審な事件が無かったかと聞き込みを行っていた。
「あー? 俺ぁ知らねぇなぁ。だからよ、この木彫りのお守りを……。」
土産物屋の主人はそう言って眉根をひそめつつ勧誘を続けたが、ちょうどそこを通った地元民らしき通行者が二人の会話を聞いていたらしく、それについての情報を口にした。
「あら、もしかしてジャーナリストの人かしら。
どうやらその女性は土産物屋の主人と知り合いだったらしく、店主は女性に対しエジプト訛りのアラビア語で短く怒声を飛ばしていたが、女性は気にも留めずに片言の英語で話題を続ける。
「南の方に住んでるいとこから聞いた話なんだけどね、最近ルクソールの方で変な建物が急に現れたんだって! ジャーナリストさんも噂は聞いてるんじゃない?」
ズーハオの事をジャーナリストと定義して疑わない女性に感謝の意を伝え、ズーハオはその場を離れる。店主のげんなりした顔に少し清々としながら。
「ルクソール県……と、言えば。」
「言えば?」
「かつて……エジプト第十八王朝時代に、とある有名な、悲劇の王が……遷都をした、ばしょ。と、されている……よね。」
ルクソール県郊外、広大な砂漠地帯の中を、ズーハオとゾーエ、エルマとそのサーヴァントたちはひたすらに歩き続けていた。元々病弱なエルマはエジプトの赫奕と照り付ける太陽に晒され、もはやクリーチャーのようにぐったりとしながらズーハオに担がれていたが、やがて一行の中で最も高い位置にあるその視界で、ある異変を捉えた。
「あ……。」
「何か見つけたの、エルマ?」
エルマが指を向けたのは、ちょうどテーベのネクロポリスと呼ばれる史跡が存在する方向。そちらをよく注視してみれば、確かにそちらの方角から眩い黄金の光が放射されていた。
「なに、あれ……?」
次の瞬間、雷鳴とも突風ともつかぬ爆音で、砂塵を吹き飛ばしながら少女の高らかな声が響いてくる。
『余の許し無く我が地へ足を踏み入れる不敬者ども!! この地を何処と心得る! これなるはウォ・セ! またの名をネウト・アメン! 余の治むる神域也! 疾く引き返すが良い! 余は寛大故、一度は許そう! しかしその足があと1キュビト以上こちらへと向こうものならば、余の名において貴様らに誅罰を下す!!』
「……だってさ。ズーハオ、どうする?」
ゾーエに問われ、ズーハオは短く溜息を吐き、躊躇いもなく足をまた一歩、前へと進めた。その直後だった。
『よろしい! ならば執行しよう! 余の名を覚えて逝け! 余こそ太陽神アメン・ラーの化身、雷のファラオ、ディオスポリスの主、「トゥト・アンク・アムン」である!!』
雷光一閃。咄嗟に跳躍したランサーが自らの槍を避雷針代わりにその雷撃を分散させていなければ、確実にズーハオ達は黒焦げの灰燼と帰していただろう。しかしその後も間髪入れずに無数の落雷が一行に襲い掛かる。雲ひとつない晴天の蒼穹から降り注ぐ無尽の真白き電雷を躱し、逸らしながらズーハオ達は眩く輝くその光の発生源へと走り出した。
それは、巨大な神殿であった。ルクソール中心街に存在するカルナック神殿やイペト・レスィト神殿を複合したかのような造形をしており、建物全体がまるで太陽のように黄金に光り煌めいている。さらには、今まさに侵入しようとしている者たちを灼き殺さんと降り注ぐ純白の雷がしきりに周囲に帯電していた。
「生まれて初めて入る古代エジプトの神殿がこんなのだなんて、散々だよぉ!!」
泣き言を叫ぶゾーエをスルーし、ズーハオは神殿内部へと足を踏み入れる。その瞬間、既に疲弊した状態のランサーが前へ飛び出し、その一撃を槍で弾き飛ばした。
「っ――!」
しかし食い止めた時点でランサーは気付く。吸収しきれない衝撃を以てズーハオを蹴り殺さんと放たれたこの攻撃は、本命ですらないと。
「マスター、逃げ――!」
言い切るよりも前に、ランサーの身体は大きく吹き飛び、吹き抜けになった神殿の内壁、高度数十メートルの場所に叩きつけられてしまう。落下してきたランサーをキャッチし、すぐさまにゾーエはポケットから一枚の護符を取り出してランサーの身にあてがった。
「一応マスターの命令だし、迎撃はしたけど……。どうかな、ここで退いてくれれば、僕も君たちに危害を加えずに済むんだけど。」
そう言って巨大かつ長大な階段の中腹に着地したのは、中性的な印象を受ける外見と声音を持つ白髪の少年であった。
「……なるほど、ね。君たちが……。」
少年はひとり頷くと、再び口を開き、すぐに前言を撤回した。
「わかった。僕がここを退こう。ほら、この先でファラオがお目見えだ。早く行くと良い。彼女、結構気が短いから。」
階段の端へ移動し、壁にもたれかかって少年は先へ進むよう促す。
『おいこらぁ! 何をしているリーダー、そ奴らを立ち退かせぬかぁ!』
「王よ、彼らが僕の待っていた者たちです。」
『――……ふむ。』
どこからともなく響いてくる先程の少女の声。それに対し遜りつつも意見し、少年は首でズーハオに向かって早く向かうよう示す。ゾーエとエルマは顔を見合わせるが、一休は特に気にする様子もなくズーハオを追い抜かして階段を昇り始めた。少年が立つ段を過ぎても、やはり少年は何をする様子もなくじっと一行を見守っている。
「……行くぞ、ゾーエ、エルマ。」
それを見たズーハオもゾーエから気を失ったランサーを預かり、二人を促して前へ進む。材質は日干し煉瓦のようでありながらも微かに光り輝くその大階段を昇りきると、再び細く長く、そして天井の高い廊下が続いていた。
「……まるでピラミッドだな……。」
そんな感想を呟きながら歩き詰め、やがて華美な装飾が施された黄金の扉の前へと辿り着く。
『貴様がリーダーの評価に値する人物か、余と余の臣下が診てやろう。許す、扉を開け、まずは余に頭を垂れよ。』
少女の声と共に扉が重厚な音を震わせながら観音開きに開け放たれると、そこには黄金の巨大空間が広がっていた。
天井は入り口の巨大階段の間や今まで歩いてきた長廊下の空間よりも高く、最奥には細長い階段の先に玉座が据えられ、その階段の下、両側に二人の少女が並んで立っていた。どちらも顔のつくりが大変よく似ており、一目で双子であると理解できる。
「へぇ、やっぱあんたっすか。」
「……。」
両者ともに若葉色の髪を有していたが、挑発的な笑顔を浮かべる左側の少女は左目が、感情の無い表情を見せている右側の少女は右目が、それぞれ長く伸びた前髪で隠れていた。
そして、その双子に挟まれた階段の先に設けられた玉座には、ひとりの少女が腰掛けていた。入り口からも遠く離れており、人影程度にしか見えなかったが、武術家であるズーハオには一瞬で判別できた。その少女は豪華な鎧や装飾品こそ身に着けておれど、筋肉がほぼついておらず、痩せこけていることを。
「余の神殿に許しも乞わず立ち入った罪、此度は一度忘れることとしよう。」
玉座に座する少女の言葉は決して大きくなかったが、広間の構造の関係なのか、まるでスピーカーを通したかのように高らかに響き渡った。
「しかし余は言ったはずだ。まずは頭を垂れよ、と。」
「……悪いが、お前に用は無い。オレが話したいのはそこの双子だ。」
「ほう?」
次の瞬間、強烈な電流がズーハオの全身を駆け巡り、堪らずズーハオはその場に膝をついてしまう。
「やればできるではないか。それで良い。なれば次は貴様の名を聞いてやろう。」
「ズーハオっすよ、雷王。ジャン・ズーハオ。」
「む、なんだカイリ。お主、この若人の輩か?」
「ははは! んなわけないじゃないっすかぁ! それに、こいつも馴れ合いのつもりでここに来たワケじゃないと思うっすよ?」
痺れる五体に鞭打ち、苦悶の顔を見せながら立ち上がるズーハオをにやにやと眺めながら、左目を隠した少女は指の骨をバキバキと鳴らし始める。
「好戦的なのはリーダーのマスターとしても心強い限りではあるが、余の神殿を台無しにしてくれるなよ?」
「あったりまえっすよぉ! まっかせてくださいっす!」
左目を隠した少女は玉座に座る少女へひらひらと手を振ると、右目を隠した少女と共にズーハオの方へと近付いてくる。ズーハオも全身の痛みに耐えながら、双子へと接近していった。
「ズーハオぉ、お前モテるようになったなぁ! 昔は女の『お』の字も無かったのになぁ!」
「……っ、偶然だ。本意ではない。カイリこそ、随分ととっつきやすくなったじゃないか。昔はジャパニーズマフィアの下っ端みたいな荒れ様だったのにな。」
そのズーハオの一言に、左目を隠した少女は苛立ったように眉を吊り上げる。次にズーハオは、右目を隠す少女に向かっても挑発を飛ばした。
「おいセイル、お前まだ英語が喋れないのか? 脳みそまで筋肉なのは良いことだが、魔術師として少しは勉学にも精を出したらどうなんだ?」
瞬間、右目を隠した少女の蹴りがズーハオの顎を抉らんと繰り出される。咄嗟にそれを躱し、ズーハオは距離を取って決闘を行う騎士のように名乗りを上げた。
「
それに呼応するように、双子も名を名乗る。
「上等っすよ、『
「……『三塚月セイル』……オマエ、コロス……!」
流暢な英語を話す妹のカイリと、片言の英語を扱う姉のセイル。二人は同時に飛び出し、ズーハオを捻じり殺さん勢いでその拳を振りかぶった。
「で。」
玉座の隣に正座し、どこからともなく取り出した茶器を用いて雷の王を自称するファラオ、トゥト・アンク・アムンに緑茶を振るまいながら、一休は問答を始める。
「王様ちゃん、あの男の子千里眼持ちでしょ? じゃあ
「……呼び方も話し方も不敬極まりないが、ニホンの茶の美味さに免じて許そう。して……そうだな。リーダーは確かに千里眼スキルを持っている。神の啓示を聞き、無辜の民を約束の地へ導いた聖者だ。相応しいと言えよう。」
「じゃあさ、どうしてこんなことをするの?」
一休は、階段の下で激しい格闘戦を繰り広げるズーハオと三塚月姉妹を見下ろしながら問う。
「……試練だ。」
「ふぅん。必要なんだ。」
「言わずとも貴殿には理解できよう。」
「王様ちゃん、優しいのね?」
「フ。余は嬉しいぞ。余の寛大さを理解し得る人物がリーダー以外におろうとはな。」
傍から聞いていれば、何を言い合っているのかさっぱりわからないようなやり取りも、両者にとっては立派なコミュニケーションとして成立している様子だった。
「それじゃあ、王様ちゃんがこれからすべきことも……わかってるんじゃない?」
「……貴殿にはどうも労りの心が足りていないようだなぁ?」
「うふふ、よく言われるー。ま、誰でも死にたくないもんなぁ。英霊だって同じよ同じ。二度目の人生はもっと有意義に生きたいよなぁ。でもねぇ王様ちゃん、人間誰だって使命ってモンがあるんだわさ。」
「余の肢体を見てもまだ言うか。」
露出の多い鎧のあちらこちらから覗く痩せて骨の浮き上がった体躯を指し示しながら、雷のファラオは憎々しげに一休を睨む。既に一休の周囲の空気には純白の電気が漂っていたが、一休は気にする様子もなくにこにこと微笑んでいる。
「……。」
はぁ、とひとつ溜息を吐き、ファラオは一休に答えを訊ねる。
「余は、具体的に何をすれば良い。」
「そうだねぇ……。」