真名:アルトリア・ペンドラゴン[レイヴン]
性別:女性
筋力:A 耐久:B 敏捷:A 魔力:A 幸運:A+ 宝具A+
スキル:対魔力A、直感A、騎乗C、魔力放出A、カリスマB+、変化B、騎士王の化身A、処刑見届け人A+、黒鴉A、竜国の守護者EX
宝具:『王威守護せし勝利の剣(エクスカリバー・レイヴン)』
→ブリテン、ひいてはイギリス王の威光の顕現であり、有史以降このブリテンの地を統治してきた全ての『王』の栄光を魔力に置換し、熱エネルギーとして放出する対軍宝具。
『???』
→未だ謎に包まれたセイバー[レイヴン]の第二宝具。ブリテンの守護者としての側面を体現する宝具のようだ。
内部は至ってシンプルなホワイトカラーを基調としたモダンスタイルな内装で纏められている。ドバイの名に恥じない、昨今一部の巷で徐々に話題になりつつあるスマートライフ用の高性能な調度品が取り揃えられており、床も壁も汚れひとつない小綺麗な空間が広がっていた。
「凄い……まるでカルデアの内装みたいにピカピカだ……!」
呆気にとられる藤丸を放置し、クロウとレイラは感じた違和感について話し合う。
「なぁ、ドアくぐった瞬間にリビングってのは、ドバイの流行りなのか?」
「それは流石に……。ねぇクロウさん、ところで気付いたかしら。」
「何だ?」
レイラの問いを理解していない様子のクロウの肩を叩き、セイバーがリビングの奥を指で指し示す。クロウがそちらを注視してみれば、そこにはひとつのドアがあった。
「……ドアだな。」
「さっきこの建物の外周をぐるっと見て回ったけど、あのドアの先、多分壁よ。」
「はぁ?」
話を聞いていたマシュが早速そのドアに近寄り、ドアノブを捻って引き開ける。そこには確かに、純白の壁面が立ち塞がっているだけで、ドアはドアとしての役割を果たしていなかった。
「……なんだ、それ。」
「マシュ、もしかしてこれって……。」
藤丸の意図を察したのか、マシュはひとつ頷いてリビングの奥へと消えていく。
「どうしたんだ、リツカ?」
「うん。俺はこの状況に覚えがあるんだ。一度こういう空間を踏破したことがあってね。あの時はひたすら下へ下へ、奥へ奥へと進んで行ったけど……。今回は上へ上へ、みたいだね。」
駆け足で戻ってきたマシュが、今度はまた別の方向へと去っていく。今度は先程よりも短い時間で藤丸の元へと帰ってくると、やはり、と報告を口にした。
「このリビングの奥に上方階層へ続く通路――階段や梯子の類を確認しました。恐らくですが、すべて別の階層へと接続されています。」
そこへ、玄関をくぐってジャクリーンとアサシン、ボドヴィッドが建物内に入ってくる。
「随分遅かったな?」
クロウの素朴な疑問に、ジャクリーンは自慢気な笑顔で「まぁな」と返す。アサシンを睨むボドヴィッドはあからさまに機嫌が悪く、アサシンは放心と諦観の入り混じった苦笑を浮かべていた。
「ライダーはどうしたの? ジャクリーンさん。」
「あいつは万が一に備えてアケローン号のメンテナンスさ。この建物からの緊急脱出手段にも使えるからな。いざって時に動いてくれなきゃ困るだろ?」
ジャクリーンに感謝の言葉を述べると、それじゃあ、と藤丸は今後の方針について提案を挙げる。
「ひとまずはこの建物を調査しよう。人数もいるし、何組かに分かれよう。マシュ、マスターのみんなに通信機を。」
「はい!」
元気な返事と共にマシュは手にしていた巨大な盾の内側から小型の通信機を複数取り出し、クロウ達マスター陣に手渡していく。しかし途中で足りなくなってしまったようで、レイラの分がなくなってしまった。
「じゃあ、おれの分を使うといい。」
「ジャクリーンさんはどうするの?」
「おれは手元にサーヴァントがいないただの魔術師だからな。クロウについていくさ。」
ジャクリーンはマシュから受け取った通信機をレイラに渡すと、軽やかな足取りでクロウの腕に抱き着く。
「それが目的ね……。」
ぽかんとする藤丸、赤面するマシュと呆れるレイラに見つめられる中、初心な反応を見せるクロウの腕にすりすりと頬擦りを続けるジャクリーン。ボドヴィッドはと言えば、付き合っていられないとばかりに早々にアサシンを引き連れてリビングを去ってしまっていた。
レイラと共に複数の階層を調べていたが、どうにも鍵となりそうな事物は見当たらなかった。途中、何度かどこへも繋がっていないドアや階段、梯子、廊下も存在しており、さながらにこの建物の内部は迷宮かのような様相を呈している。
「あら?」
レイラが何かを見つけたらしい。そちらへと向かってみれば、レイラはひとつの階段の下で立ち止まっていた。階段の下には鳥類の物と思しき青色の長い尾羽が落ちている。
「建物の中に鳥の羽……? 生贄用にでも飼育していたのかしら?」
レイラは臆する様子もなくその階段を上がっていく。その後ろを慌ててついていけば、レイラの肩越しに信じられないような景色が目に飛び込んできた。
「そんな……建物の中、なのよね……!?」
それはやや広めの庭園だった。天井も白ければ壁も白いが、確かに踏みしめる床は土であり、木々が自生し、野草や花々が茂り、小鳥の囀りが響いていた。それもスピーカーなどから聞こえてくるものではなく、正真正銘本物の野鳥が庭園の中を飛び交っている。
窓からは遠くドバイの高層ビル群が見え、その中でも一際目立っていたのは、つい数年前に開業したばかりの世界一の高さを誇るビル、ブルジュ・ハリファだ。
「……なんだか、懐かしいわね。」
背後で聞こえたレイラの声に振り向けば、レイラは花園の中に腰を下ろし、行き交う蝶を見つめていた。彼女を取り巻いていた黒靄も実体を取り戻し、漆黒の長躯を持つ巨人が出現する。バーサーカーはまるで幼子のようにふわふわと舞う蝶を追いかけ、庭園の中をうろうろと歩き回る。
「ふふ、バーサーカーも懐かしくなった? ……モスクワの春なんて、他の国からすれば冬みたいなものらしいけれど。わたくしたちにとっては、暖かくて気持ちが良くて……よく、一緒にお花畑で遊んだわよね、バーサーカー?」
「■■■■■■――!!」
相変わらず、バーサーカーは意味を成さない咆哮しか叫ばない。しかしレイラにはその意味がわかっているようで、にこにこと笑っていた。
「もう二十年……三十年近く昔の話だものね。わたくしの肉体も成長を止めて久しいけれど、バーサーカーはずっと覚えていてくれるのね。……うれしい、わ。」
「■■■■■■■■■――?」
「ふふ、それを言ったらおしまいよ! ……そっか。もうあの出来事も三十年前、か。バーサーカーは覚えてる? わたくしが、アインツベルンの総意から逸脱した日のこと。」
知らない。レイラの過去は終ぞ聞いたことが無かったがゆえに、その話題に聞き耳を立ててしまった。
「……本家が、命の聖杯を模造しようとした事件、覚えてる?」
約六十年以上前、アインツベルンは命の聖杯を模造し、小聖杯としてイタリアのとある農村地方で聖杯戦争を執行しようと画策した事件があった。結局それは失敗に終わり、出来損ないの聖杯は廃棄された、とされていた。
「バーサーカーのそのカラダの元になった都市伝説のスキルのおかげで、わたくしはあの倉庫を見つけることができた。……命の聖杯に限りなく性質を似せるための手順。結局、本家は何も諦めていなかった。
でも、とレイラは表情を曇らせる。バーサーカーは悲しげな表情のレイラの頭をぐしゃぐしゃと強く撫でると、足元に咲いていた赤色の花を引き抜き、土も払わずにレイラにそれを差し出した。
「あはは、慰めてくれるの? ……大丈夫よ、バーサーカー。あの一件があったからこそ、わたくしは聖杯という存在を毛嫌いするようになった。十年前の冬木の聖杯戦争だって、わたくしに手段さえあれば行って聖杯を破壊してやりたかったわよ。……まぁ、結局エルメロイの当主代理様とトオサカの鉄砲娘が破壊してくれたんだけどさ。」
レイラの視線は窓の向こうに広がる大都会に向けられていたが、その目にはもっと別の景色が映っているように思えた。
ふぅ、と一息吐くと、レイラは立ち上がり、真白のドレスの臀部から汚れを手で払う。バーサーカーが再び黒靄へと姿を変え、自身の周囲に纏わりつくのを確認すると、レイラは庭園の部屋を後にする。奥に設けられていた階段が上層へと続いていることを確かめ、次の階へと上がっていく。
もっと、ふえなきゃ。
もっと、つくらなきゃ。
もっと、あつめなきゃ。
もっと、そなえなきゃ。
いつの間にか、ボドヴィッドは吹雪の舞う廊下を歩いていた。床は積雪へと変わり、目の前がハッキリと視認できないほどのホワイトアウトに襲われている。
「――だが。」
けれど、ボドヴィッドは迷うことなく分岐点の多く存在しているその廊下を迷うことなく突き進む。どこからその確信が来るのかはわからないが、とにかくボドヴィッドには確たる目的地と、そこへの行き方がわかっている様子だった。
「なんだ
「その通りだ死神様。何の悪巫山戯かは知らんが、この森は私の生まれ故郷の森そのものだ……!」
右折。左折。直進。ボドヴィッドはひたすらに、アサシンを引き連れてどこかへと辿り着こうとしていた。
「何を焦る、
「焦る……焦っているのか、私は?」
「あたいにはそう見えるがね。」
ボドヴィッドは立ち止まり、不思議と冷たさを感じない吹雪の中で大きく息を吸う。
「――死神様、私の昔話に興味はあるか?」
「へぇ、自分語りとは珍しいな。吹雪が晴れるか?」
「抜かせ。」
ボドヴィッドは再び足を踏み出す。しかし今度は駆け足ではなく、ゆっくりと、噛み締めるように歩き出す。アサシン共々、そんな彼の背中を追いながらボドヴィッドが語り出した物語に耳を傾けた。
「……私は元々、魔術に一切興味がなかった。」
それは、一人の男の思い出話。魔術師を嫌い、魔術を嫌い、狩人として生涯を終えようと決意したはずの青年の末路。中年になり、何の因果か祖国の英雄を召喚し、生き残ることに貪欲に、命を守ることに強欲になった、ある一人の男の物語。
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