真名:???
性別:???
筋力:C++ 耐久:C+ 敏捷:A 幸運:D 魔力:A+ 宝具:C++
スキル:対魔力B、心眼(偽)B、魔力放出A、純盲槍装A+など
宝具:『???』
もっと、ふやさなきゃ。
もっと、ふえなきゃ。
もっと、つくらなきゃ。
もっと、つくらせなきゃ。
もっと、あつめなきゃ。
もっと、あつめさせなきゃ。
もっと、そなえなきゃ。
もっと、そなえさせなきゃ。
もっと、もっと、もっと、もっと――もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと。
「よう、お嬢さん。」
最初にこの部屋に辿り着いたのは、アサシンの霊基をあてがわれた幼女の姿のシモ・ヘイヘと、そのマスターであるボドヴィッド・ランデスコーグでした。私は口を付けていたカップをソーサーの上に静かに戻すと、見るからに田舎生まれ田舎育ちな風体の二人へと視線を向け、次の言葉を待ちます。
「いい趣味してんな、あたい、こういう家は好きだぜ。随分と
「あはははっ! 吐き出す冗談もまるで品がないのですね!」
心底から面白みのない反吐の出そうなそのお世辞を一笑に付すと、シモ・ヘイヘは私の正体について聞いてもいないのに推論を語り出します。
「なぁ、この家よぉ、どこの廊下、どこの部屋にも銃が飾ってあったよな? ……あれ、ウィンチェスターだろ?」
確信をわざわざ確認してくるなんて、本当に愚か。ならばそれに答える義理などありはしないでしょう。私は再びカップを手に取ります。
「……いい加減、何を企んでるのか話せよ、ウィリアム・ワート・ウィンチェスター。」
――……。
「特にさしたることは企んでいませんよ。私は生きていたかったから、生きるために必要なことをしていたまでの事。」
そう、私は単純に、生きていたかったのです。呪いも霊基も関係なく、召喚され、第二の生を授かったからには、たとえ仕えるべき主を失ったとしても今度こそ健やかでささやかで幸せな生活が送りたいだけ。それを捕まえて悪企み呼ばわりとは、これだから田舎の芋兵士は。『芋・兵ヘ』とでも改名してしまいなさい。
「生きるためにどうしてあたいらの記憶なんか見る必要がある。」
――……。
「個人的に必要だから、と言って貴方は納得しますか?」
「納得しねぇことはないな。『個人的』って言葉は何にも勝る最強の刃だからな、ことこの時代に限っちゃ。」
「それに、自らの過去を見たことで心境の変化があった……だなんて、安っぽい映画のようなことも、無かったわけではないのでしょう?」
人間というのはとてもわかりやすく、そして愚かな生き物。少し過去を振り返っただけで自らの現在を見つめなおしてしまう単純な生物。嗚呼、それが進歩の妨げになっているとも知らずに!
えぇ、確かに過去のデータを参照して戦略を練ることは大変に重要なこと。ですが、在りし日の記憶は参照すべきデータではありません。むしろ大事な戦局において重大な判断ミスを引き起こしかねない不要な事物。そんなものを見て自己の在り方を省みてしまうというのだから、人類というのはなるほど稚拙な知性体です。
「そうだな、あたいと
「ランデスコーグさん!」
次にこの部屋に辿り着けたのは、アインツベルンのお嬢様とそのサーヴァント――何でしたっけ、このバーサーカー。インターネットミームの怪物、とか。幻霊ではありませんか。なるほどそれを立派に運用してみせるのだからアインツベルンの名折れではなさそうですね。
「貴女は……。」
「こいつぁわかってるだろうがサーヴァントだぜ、嬢ちゃん。恐らく真名はウィリアム・ワート・ウィンチェスターだ。」
――……。
「ウィリアム・ワート・ウィンチェスター……なるほど、この家自体が宝具ってことなのね?」
「推測だがな。」
紅茶を一飲み、私は無言で雑物たちの情報交換を聞き流しながら、手元に置いておいた推理小説を手に取って開き、栞を挟んだページから読み進めはじめます。
「おい、ウィンチェスター嬢。」
読書をしている人間に配慮もなく声をかけるとは。これだから兵士というのは勝手が良い。
「あんた、道中あたいらを
――……。
「あ、二人も気付いたの?」
「気配的には
「それなら、おれたちも感じたぜ。」
最後にやって来たのはクロウとジャクリーン、クロウのサーヴァントである騎士王でした。この二人に関しては個人的に怒りたいことがあるのですが、まぁそれは今でなくとも良いでしょう。
「あれは明確に
――……何が、したいか。
「貴方がたは少々勘違いをしている。その証左が今こちらへ向かっているので、それを待っているのがよろしいかと。」
真実は時に残酷です。特に、この真実は。
ねぇ、皆様。皆様は、『自分が本当に自分である』と胸を張って証明できますか?
「か、えせ……っ! わた、しの……からだっ……!」
シックな色調のドレスを身に纏った淑女の姿のサーヴァントが待っていた部屋へと入ってきたのは、ボドヴィッドであった。その姿は半透明であり、まるで霊的な存在のようであった。
「なッ……!?」
そう、この瞬間、この部屋の中には二人のボドヴィッドがいることになる。アサシンの隣で無言を貫いていたボドヴィッドと、半透明になってしまっているボドヴィッド。半透明のボドヴィッドは苦しそうに前へ前へとふらつきながら前進し、やがて実体を持ったボドヴィッドの肩に掴みかかる。
「おま、えは、にせもの、だ! わた、しの……からだ、を! かえ……せ!」
「何を……! 私が偽物だという客観的な証拠があるとでもいうのか!」
らしくもなく声を荒げる実体のボドヴィッド。他の面々も判断のしようがなく、硬直しているしかなかった。
少し休もう、というジャクリーンの提案で、クロウとジャクリーンはもはや地上何階かもわからない階層の一室で休憩を取っていた。セイバーは部屋の前で待機している。
「……クロウ、おれが気付いたことを言ってもいいか?」
「なんだ?」
「……たぶん、おれたち
唐突な憶測に、クロウは面食らってしまう。
「どういうことだ?」
「クロウ、部屋のドアを開けてセイバーをしっかりよく見てみろ。」
言われた通りクロウは小走りで部屋のドアを開け、ドアの前に立っているはずのセイバーを確認しに行く。しかしそこにセイバーはおらず、セイバーの影だけが壁にペンキをぶち撒けたかのようにべっとりと染みついていた。
「な――!?」
「クロウ、一度戻ってきてくれないか。」
ジャクリーンに呼ばれ、クロウはドアを閉めてジャクリーンが腰掛けていたベッドの上に戻る。
「おれの固有魔術は『
「つまり?」
「ライダーだ。あいつはおれが
「待て、地球と同期させてるって……それって、聖杯と同期させてるってのか!?」
「違う。地球って言う存在だ。表層的な意味だよ。知名度っていうのかな。……そこは今どうでもいいだろ。問題は、その『おれが生み出してないおれ』のうちの一体に『
「だから……俺たちが偽物、ってことなのか……。」
「断定はできないさ。おれたちだってこうして実体を持ってるしな。『
そう言って、クロウの体に全力で抱き着くジャクリーン。確かにその体には感触も温かみもあり、実体がないようには思えなかった。
「今はどうすることもできないし、ちゃんと休んでおこうぜ。」
ジャクリーンはぱたりとベッドの上に大の字になって横たわり、クロウにも寝転がるよう手招きする。素直にそれに応じて横になると、クロウは何かを考え込むような表情を見せた。
「……悩んでも仕方ないさ。ちゃんと休めって。歩きっぱなしで疲れただろ。……ほら。」
クロウの頭を抱きかかえ、ジャクリーンは優しく何度もその後頭部を撫でてやる。それでも難しい面持ちを崩さないクロウに対し、ジャクリーンはその理由を訊ねた。
「……なぁ、ジャック。頼みがあるんだ。」
「なんだよ改まって。おれでいいなら何でもするぜ。」
直後、クロウが言い放った一言に、ジャクリーンは耳まで真っ赤に赤面し、
「何でも……とは言ったけどさぁ……。」
と呟くのだった。
「すごい……カロンさんの言った通りだ!」
驚く藤丸とマシュの前には、シックな色調のドレスを身に纏う淑女が座っていた。
「どうして……どうしてわかったのですか!」
淑女は慌てふためいた様子で、藤丸に対し糾弾する。
「私もマスターの魔術が無ければわからなかった。単独行動をしろというマスターの意図がここに来てようやくわかったからな。さて、『サラ・ウィンチェスター』。ここが一体何を目的とする施設なのか教えてもらおうか。」
真名を看破されたサラ・ウィンチェスターは観念したように溜息をひとつ吐き、この奇妙奇天烈な塔について語り出した。
「ここはウィンチェスター・ミステリー・ハウス。私ことサラ・ウィンチェスターがウィンチェスターの呪いによって造らざるを得なくなった呪いの屋敷です。この内部ではウィンチェスターの呪いによって自己の記憶が身体を持ち、彷徨うようになってしまいます。よって、当人からは自分の過去が見えているように感じるのです。」
「……そういう、ことだったのか。」
道中、例に漏れず自らの過去を何度も見てきた藤丸は、合点のついた顔で拳を握り締める。
「そして記憶の人格たちは全員が全員自己の正当性を信じ込むため、自分が偽物であることなど考えもしない。しかしこの地下三階と最上階だけは別です。二つの部屋だけは記憶の人格が記憶ではなく自分自身として見えるため、存在が破綻し……ここ、ないし最上階で出会ってしまった人格同士は最終的にこの屋敷の階層の一部となってしまうのです。」
「マスター! 早急に皆さんに伝えないと……!」
「無駄です。この屋敷の内部自体、呪いによって構成されていますから。通信機や電子機器の類は機能不全に陥っているはずですよ。」
サラ・ウィンチェスターの言う通り、藤丸が取り出した通信機は起動すらできなくなっていた。
「そんな……!」
「最上階の私――私の記憶から生まれたウィリアム・ワート・ウィンチェスターの前には今、『本物の』ボドヴィッドさんがいらっしゃいますが……このままでは、彼もこの屋敷の一部になってしまうでしょうね。」
「どうして……どうしてこんなことを!」
「どうしてと言われましても……私はただ、生きていたかったのです。
「……っ!」
確かにその通りだった。藤丸たちは『奇妙だったから』と軽率に侵入してしまった。それがこの事態を引き起こしているというのならば、責任は自分たちにある。
「どうすれば……!」
「何ということはない。このために私が来たのだ。」
カロンはそう言って、部屋のドアを開ける。
そこには、裸体の上から麻布を一枚着込んだだけの姿をした長く艶やかな黒髪を持った剣士が立っていた。
「あなたは――?」
剣士はサラ・ウィンチェスターの眼前まで歩み出ると、名を名乗った。
「セイバー、オウスノミコ。慙愧を断ち切るため、カロン殿に呼ばれ参上した。」