真名:森成利
性別:男性
筋力:C 耐久:B+ 敏捷:A 魔力:D 幸運:E 宝具:EX
スキル:対魔力B、心眼(真)B+、天下布武C+、魔王の寵愛A、献身の極みA
宝具:『人間無骨』
→まるで骨がないかのように敵を切り刻む森長可の愛槍。
『大権現の影武者(トクガワ・フェイクシステム)』
→徳川家康それそのものの存在を維持するためのクラス変異宝具。本来はスキルだが、成利に下賜されるにあたって宝具化した。
『刀狩り(ブレイド・テイカー)』
→ひとたび真名を解放すれば相対する者の宝具を強奪・使用できるようになる豊臣秀吉の宝具。
『第六天魔王波旬』
→下賜されたことで神秘殺しの特性が消失し、一般人にも絶大な威力を発揮するようになった織田信長の必殺宝具。
など。
河面に揺らぐ月の虚像を見つめながら、信長は傍に跪くランサーに語り掛けた。
「のう蘭丸よ。儂さぁ……ずっと此の地にいちゃだめ?」
「えぇ……。」
神妙な顔をしながらぐだぐだと言い訳をまくしたてる信長。
「だって今回の儂のマスター、半端ないくらい弱虫じゃったのよ! 戦闘が怖くて腰抜かしてアサシン如きに銃殺されるくらい! でも別に儂戻りたくないし! この時代面白すぎて戻りたくないの! 是非もないよね!?」
「だからこんな辺境の地に来たのですか主様……。一応まだマスターを持って戦争に参加しているボクからすればそうやってふらふらなされてしまわれると正直迷惑なんですが……。」
「えー。あ、これ見よ蘭丸、このちっこい鉄の板どうやって使うのじゃ。」
「スマホなんてどこから取ってきたのですか主様!」
「儂のマスターの死体からくすねてきた。」
「死体漁りとか何考えてんですか主様!」
「是非もないよネ!」
「ありますよっ!!」
そう言い合っていた時、突如としてランサーの意識の奥からズーハオの声がした。
『おい、さっきからまったく動いていないな。何をしているんだ。』
「あっ――ご、ごめんねズーちゃん!」
『夜はサーヴァントが活性化する。野良サーヴァントを一掃するのなら今が好機だぞ。』
その言葉にびくりと反応し、不思議そうな顔でランサーを見つめる信長の方を一瞥する。
『……なっちゃん?』
ランサーは確かに野良サーヴァントの掃討を目的に今のところは動き回っている。しかし、それを完璧に成就するためには、ランサーが誰よりも慕い尊敬するこの覇王すらも相手にするということ。
「だっ……、大丈夫! すぐに探すよ!」
ランサーの主君は現状ズーハオただひとりであり、今目の前にいるこの少女だって、ランサーたちの敵であることに変わりはない。ランサーは深くため息を吐くと、信長に事の次第を伝え、その場から離れようと姿勢を変える。
「おぉ、戦闘に向かうのか? 儂もちょうど暇しておったところじゃ、共に行くぞ蘭丸!」
「え!?」
「なんじゃ、儂がいると何か不都合でもあるのか?」
困惑と焦燥の入り混じった面持ちで言葉にならぬ声を漏らすランサーを見て、何を勘違いしたのか信長は胸を張って宣言した。
「安心せい、マスターを失ったとてこの第六天魔王織田信長、そこらの雑兵には劣りはせぬわ!」
「いえっ、そうではなく……ッ!」
ランサーの悲痛な訴えの声も聞こえていないのか、火縄銃を手に勇み歩き出す信長。しかし、『貴方を殺します』など、慈悲深いランサーにはとても
たった二人の織田軍は、至る場所で勝ち星をあげていった。
獅子頭のキャスター、瞳を隠したライダー、年若き幻想のセイバー、橋の上で通行妨害をしていた僧衣のランサー、男とも女ともわからぬセイバー、同じく男とも女ともわからぬライダー、深緑のフードのアーチャー、金仮面のキャスター、髑髏の面を被ったアサシンたち、クランの猛犬の名を持つランサー、理知的かつ紳士的なアサシン、機械の身体を持ったキャスター、早撃ちをしてくるアーチャー、双角のアサシン、八極拳を用いるアサシン、暴虐皇帝と呼ばれたセイバー、串刺し公爵と呼ばれたバーサーカー、伝説の海賊と呼ばれたライダー、幼くも威厳あるバーサーカー、魚のそれのような眼球を持ったキャスター――。
マスターを殺され、膨大な魔力渦巻く冬木の地に辿り着き、弱体化しながらも脆くなった霊基で生きながらえていた数々の英霊を、信長はノリノリで撃破していった。ランサーも、在りし日の日々を思い出し、少なからず懐かしいような気持ちで信長の後に続いていた。
あぁ、これが、これこそが、一騎当千の力を以て並み居る強敵を薙ぎ倒していくこの様こそが、自分がどこまでも敬愛し、信仰した我が主君、織田信長であると。
しかし、その時は着々と近付きつつあった。否、ランサーには元より理解していたことなのだ。その現実は、ズーハオと信長の言葉によって重くランサーにのしかかる。
『使い魔からの反応がほとんどなくなった。脅威となるサーヴァントはお前の隣にいる
「はぁ~、こんなものかのぅ。なんじゃ、儂とて同じマスターを失った身だと言うに、サーヴァントというのはこうも脆弱な物なのか。ま、何にせよこれで残る野良サーヴァントはほぼいなくなったな!」
手にした槍を、ぎゅっと握りしめ、俯くランサー。そんな彼に、信長は笑顔で振り向き言い放った。
「さぁ蘭丸! 儂を殺すのじゃ!」
驚愕に満ちた表情で信長を見つめ返すランサーに、信長はきょとんとした顔で尋ねた。
「なんじゃ、儂の顔に何かついているか?」
「いえ、そ、その……。」
「儂とて野良サーヴァントであることに代わりはあるまい。そちのマスターを勝たせたいと思うのならば、今ここで儂を殺さねば後々面倒になるぞ?」
もっともである。いつもそうだった。この御仁が言うことに間違いはほとんどなかった。暴君と呼ばれたであろう。冷徹だと、冷酷だと後ろ指をさされたであろう。生涯幾度となく謀反を起こされたであろう。
しかし、そこには彼女なりの想いや理想があったのだ。未来を見据え、古きを一蹴するのではなく、古きを知り新しきを取り入れる。彼女が一蹴したのは古きにすがって蔓延る『悪』であった。
それを勘違いした人間によって魔王だと貶められた彼女の悲しみを、嘆きを誰も知ろうとしてこなかった。その孤独を隣で見てきたこの身が、この手が、その彼女の血で汚れるなど、ランサーには
「だって……っ、ぼ、ボクにはそんなことぉ……っ!」
「『甘えるな!』」
ランサーの意識の中と外で、まったく同じ文言が響く。
「今の儂は其方の敵じゃ!」
『敵は殺さなくちゃならない!』
「それが聖杯戦争なのだ!!」
『それがこの世界で生き残るってことなんだよ!!』
そんなこと、わかりきっている。敵は殺す。それだけだ。至極単純で、突き詰めて考えてもそれ以上もそれ以下もありはしないつまらない事実だ。
「やれ、やるのじゃ成利!!」
憤怒に声を張り上げ、信長は自らの手から血がしたたり落ちるのも構わずにランサーの槍の穂先を掴み、それを自らの心臓の直上へと差し向けさせた。
「ま、すたぁ……ッ!」
絞り出すように、ランサーは涙混じりに嘆願する。
「令呪を……令呪を使って……! ボクにはできない、できない、よぉ……!」
「……見損なったぞ、蘭丸!」
サーヴァントに強制的に命令を聞かせるための魔術装置を使うことを頼み込むランサー。
『令呪は使わない。お前はオレにこう言ったな。強い人間は優しくも状況に応じた適切な判断ができる人間だと。ランサー、強い人間の何たるかを説いたお前が、強い人間でなくてどうするつもりだ。』
「……!」
ランサーはしばらく身を震わせてたが、獣の咆哮のような叫び声をあげると、その宝具の真名を明かした。
「咽べエエエェェッッ!! 『人間無骨』――っ!!!」
掴んでいた信長の指を斬り落としながら穂先が展開し、いつもの十字槍の姿を見せるランサーの槍。そのまま、ランサーは一歩踏み込み、信長の心臓を刺し貫いて見せた。
「がふっ――!」
一度喀血し、その場で槍に貫かれたまま力なくガクリと崩れる信長。
「――よく、やった。それでこそ……儂の蘭丸……じゃ。」
「信長様ぁっ……!」
大粒の涙を流しながら、徐々に魔力の粒子と化していく信長の名を呼ぶランサー。
「泣くな……大の男ともあろう奴が……そう大泣きするものではないぞ……。」
「こんな……やっと会えたのに、こんなのって……っ。」
「聖杯戦争で会うというのは……変なことでもない限りはこんなもんじゃよ……。しかし、よりにもよって鬼武蔵の槍で散ることになるとはのぅ……。返り忠を何より嫌っていた奴めの槍で死ぬことになるなんぞ、思いもよらなかったわ……。」
信長の身体は、既に首から下が魔力還元され、失われていた。最後に、と信長は二つの言をランサーに伝えた。
「儂の分まで、最後まで生き残ってくれ……。生き残って、其方のマスターを勝たせてやってくれ……。それと……。」
にこりと笑い、信長は消滅していきながら未来を語る。
「次に会う時は――もっとふざけた世界で会おうぞ、な――
手から零れ落ちた槍を拾おうともせずに、黎明の光明をぼんやりと眺めるランサーの元へ、ズーハオがやってくる。呆けるランサーに槍を手渡そうと槍を持ち上げようとするが、見た目以上に重かったようで、持ち上げることも叶わなかった。
「……マスター。」
言いたいことは山ほどあるのだろう。伝えたい思いが、こみあげてくる感情が、海より深いのだろう。それを言葉にすることも、整理することもままならないほどに。
「マスター……。」
天を仰げど叶うはずのない願いがあるのだろう。地下深くに潜り込んでも晴れることのない後悔があるのだろう。同じ言葉しか呟くことのできぬほどに。
ズーハオはただ無言でランサーを抱き締め、その背を優しく叩いてやった。
「大丈夫だ。お前は立派な……立派で強い人間だ、なっちゃん。」
その後、ランサーは海を越えることを提案した。信長に言われた最後の主命を果たすために。ずっと待っているだけでは何も起こりはしない。起こすのならば自分から起こした方が手っ取り早い。大丈夫、自分に任せろ。必ずキミを勝たせて見せる。そう、不敵に笑ってランサーは提言した。
時を同じくして、イタリアの南部をバイクで駆け抜ける少年と少女がいた。
「セイバー、腹減った。」
「辺りを見回してパブが
ハンドルを握るセイバーことアルトリア・ペンドラゴン[レイヴン]と、後部座席で彼女の腰に手を回す彼女のマスター、クロウ・ウエムラは、ナポリを目指して風を切って進んでいる。何故サーヴァントがバイクを、というのはこの際いつぞやか冬木で起きた聖杯戦争の記録を時計塔で見せてもらえとでも言うとして、クロウの空腹はそろそろ限界に達しようとしていた。
「無理……腹減った……。」
「マスター、いい加減にしないとその胃袋灼くぞ。」
ナポリは、まだ遠い。