真名:???
性別:女性
筋力:C++ 耐久:C+ 敏捷:A 幸運:D 魔力:A+ 宝具:C++
スキル:対魔力B、心眼(偽)B、魔力放出A、純盲槍装A+、治癒の魔眼B、アメジストの祈りA、無為の武窮B+、狂気E
宝具:『英霊真人類規格宝具(ノウブル・ファンタズム)』
→誰からも期待されず、誰からも愛されなかった独りぼっちの英雄が手にする名もなき槍。人属性の英霊に対して超強力な一撃を放つ。また、天及び地属性の英霊に対しては隠し属性を一時的に人属性へと貶める能力を持つ。
走れ、駆れ。ただもう一度、記憶の無くなったこの身を動かして、逢いたい女の子がいるから。英霊の座へと堕ちたこの身を叱咤して、伝えたい一言があるから。どうしてここにいるのか、誰が自分を召喚したのか、そんなことはこの際どうでもいい。
ただ、彼女を守るために――!
シスター・プラムは、初対面の人間も多くいることから優雅な所作で修道服の裾を摘まんで礼をしつつ、名を名乗った。
「改めまして。今回の命の聖杯戦争において監督役のひとりとして聖堂教会より派遣されました、プラム・コトミネと申します。皆々様におかれましてはこのような地球の辺境まで、よくぞ辿り着かれたこと……素直に称賛致しましょう。」
「言峰だと!?」
その苗字に強い反応を見せたのは、誰あろう士郎であった。シスター・プラムは少しきょとんとした顔を見せたが、すぐににんまりと笑顔を見せた。
「……あぁ、叔父をご存知ですか? ふふ……ということは貴方が……。そうですかそうですか、数奇な巡り合わせもあったものです。これも神の思し召しでしょうか。」
普段のシスター・プラムを知る人間であればその物腰の柔らかさに嫌悪感にも似た違和感を覚えるであろうが、今この場に居合わせる人々の中にそれを感じる者はいなかった。
「ところでさ。」
話題を変えるように口を開いたのは、ゾーエの傍に立っていたテラだった。
「どうしてきみは、ここにいるの?」
両者の視線が不可視の火花を散らし、すぐさまにシスター・プラムは取り繕うかのような笑顔を見せる。
「……監視役ですから。結末を見届けるのは道理ではありませんか?」
「それにしては貴様もサーヴァントと契約しているようだが。」
ズーハオの指摘には何も返答せず、ひたすらに笑顔を継続させ続けるシスター・プラム。びりびりとした空気感が、周囲に溢れ始める。
刹那、即座に動いたのは一休であった。
「――おや。」
シスター・プラムは想定していなかった反撃にやや驚いたような表情を見せる。ランサーですら目視できなかった高速移動を用いてエルマへと肉薄したシスター・プラムが放った拳は、一休の木製の大太刀によって阻まれていた。
「困りましたね……。」
即座に追いついたランサーの槍を躱しながら、シスター・プラムは距離を取る。
「一番厄介そうなサーヴァントのマスターから殺してしまおうと思ったのですが。」
シスター・プラムの義眼がぎょろりと動き、エルマを見据える。
「それはお生憎様だったねぇ、儂、千里眼持ってるからさ。そういうのわかっちゃうんだよねぇ。」
「そうですかそうですか。」
しかし。
「現実はそう簡単でもないですがね。」
一休はその瞬間に気付く。何もかも手遅れだったことに。先の先や千里眼を以てしても目の前のこの女の前では何も意味を為さなかったことに。しかし時既に遅し。一休の肉体はそのほとんどが座に還りかけていた。
背後にいたエルマがよろりと後ずさり、その場に倒れるのが見えた。その左胸には大穴が空いており、そこにあるべき人間の最重要器官が消失していた。
「くそっ……!」
「エルマアァっ!!」
ゾーエが駆け寄るも、エルマは身体に微弱に残った魔力だけで息をしているような状態になってしまっていた。もう五分と保たないだろう。
咄嗟に反応して飛び掛かってきた三塚月姉妹も脚技のみで遥か彼方まで蹴り飛ばし、ランサーの槍も左腕だけで捌き切る。その右手には、未だドクドクと脈打つ心臓が握られていた。
「お前ッ……!」
「あはは、いえいえ。どうにもいけませんね。心の臓がお留守でしたので、つい手癖で。」
そのままランサーとズーハオの攻撃を弄ぶように往なしていたシスター・プラムの下半身の動きがある時ぴたりと石化したかのように止まる。
「……?」
上半身を捻って見てみれば、そこにはゾーエに背を支えられながら上体を起こし、自らのクリスタルのような純白色に輝く瞳へ手を当てたエルマがこちらへと視線を向けていた。
「うた――え……! ……私、の! 『
直後、シスター・プラムの五体が完全に硬直する。
「エルマ、もう魔力を使っちゃだめ!」
「ゾーエ……私……。」
「だめ、だめ! 喋らないで!」
生命力を促進させる効能を持ったナイフの切っ先をエルマの指先に刺しながら、ゾーエは涙ながらにエルマへ訴えかける。しかし、エルマは一休へとその令呪を向け、息も絶え絶えに一言命じる。
「セイ……バー……。令呪を、以て……命じます。宝具……宝、具を、使いなさい……。今のうち……私の、『眼』が、あの人を……捉えている、間に!」
一拍の逡巡の後、一休は木刀を投げ捨て、武術の構えを取った。閉じていた眼を見開くと同時に一休の周りに墨のような魔力で描かれた猛虎がどこからともなく飛び出してくる。猛虎と息を合わせるように、裂帛の踏み込みと共に身動きの取れなくなったシスター・プラムへと拳を振りかざす。
だが、シスター・プラムは余裕と嘲弄の滲んだ笑顔を一休へと向け、
「すべての人間がドラマチックに死ねるなんて、現実は甘くないと言っているのが理解できませんか?」
「『
突如、それまで微動だにせずに一連の騒動を傍観していたシスター・プラムが引き連れていたサーヴァントがその紅蓮の剣を地に突き刺し、左手を一休へと広げ伸ばす。
瞬間、その剣にも負けない深紅の灼焔が巻き起こり、一休の体勢を崩してしまう。
「……愚かな。」
紅蓮の剣を振るう月桂冠のサーヴァントがこぼした時には既に、一休の首は胴体を離れ、くるくると宙を舞っていた。
シスター・プラムはと言えば、その光景に見とれていたゾーエの元へといつの間にか接近しており、ゾーエの腹部を抉るようにその躯体をエルマから引き剥がし、彼方へと蹴り飛ばした。
「かはっ……!」
その鈍痛に悶えながら、焦点の合わない視界でエルマの方を見れば、シスター・プラムがエルマの首を鷲摑みにしていた。その両足は地についておらず、エルマは残った魔力によって延命してしまったがゆえにその苦しみに鈍い悲鳴をあげながらじたばたと藻掻いていた。
「エル――。」
「アーレルスマイアーの魔術師の肉体ですから、それはそれは心臓以外にも用途は十分にあるでしょうねぇ。質の良い魔術回路が宿っているでしょうから、アヴェンジャーの糧にしても良さそうです。」
「ッ、野郎!」
らしくもなく声を荒げ、猪突猛進にシスタープラムへ飛び掛かるランサーは月桂冠のサーヴァントに阻まれてしまう。だがそこへ、ようやく吹き飛ばされた先から合流したセイルがシスター・プラムに一矢報いんと掴みかかる。
「あ――?」
だが、それすらも。ゾーエには何が起きたのかわからず、ただただその場に力なく倒れたセイルの胴体に空いた大穴を見つめることしかできなかった。
「セイルっ!」
「おい、どういうことだ! 余の霊基が――っち、理解したくもないことを理解してしまった!」
今まで何をしていたのか、即座に複合神殿から飛び出してきたトゥト・アンク・アムンは、セイルの遺骸を発見すると唾を吐くと天空高くへと飛翔していき、雷鳴の如き音量の声で地上にいる者たちへと注意喚起を行った。
『消し炭になりたくない者は疾くその女から離れるが良い! これより我が神威を下賜してくれる!!』
「王よ、供をします!」
これもまた今までどこへいたのかもわからないモーセがシスター・プラムの元へと追いつき、徐々に放電し青白く発光する岩床へと立ち塞がる。その肉体は既にボロボロに朽ちており、彼もまたダメージ過多による消滅が間近に迫っているようだった。
見れば、テラや士郎もどこかへと消えている。
『余の名はトゥト・アンク・アムン……そうさな、通りの良い名で言えばツタンカーメン! アクエンアテンの子、太陽神にして雷神、アメン・ラーの化身! 人より出で、人により育ち、人として死した民の王! そして神王である! 我が名の元に! 汝らの罪を汝らの肉ごとこの手で焼き尽くしてやろう! 今、ここで!』
地表の放電は勢いを増していたが、シスター・プラム、および月桂冠のサーヴァントはその場を離れようともしていなかった。
『これこそは地より撃たれ、神へと届く民の総意、人の雷! アメン・ラーよ、この神罰を見届けたまえ! 「
「友よ、今ひと度貴方の宝具を借り受けます……! 『
地より眩く煌めく純白の大雷撃が大地を焼き、その電雷を貫き穿つように天空から巨大な黄金のピラミッドが落下してくる。文言として口にしてしまえばあっさりとしたその神話の大戦の如き情景も、ゾーエの目には世界の終りのように思えた。
「エルマ……。」
痙攣して動かなくなった両足を引きずりながら、腹ばいになってシスター・プラムが投げ捨てたエルマの遺体へと近付いていく。その手を取り、左胸に空いた穴をじっと見下ろす。
「何も……できなかった……。」
零した涙が穴の中へと吸い込まれていくも、エルマが再び息をすることは無い。苦悶と絶望に見開かれた瞳が光を取り戻すことは無い。
「ごめん……ごめん……なさい……! 私は……
思わず飛び出した言葉に、ゾーエは疑問を抱いた。
「また……?」
その時、ゾーエの右手の甲に激痛が走る。それはライダーが再召喚された際と同じ痛みだった。
そして目の前の閃光とピラミッドが消えると同時に、視界が光度に慣れ、ハッキリしてくる。――そこには、未だ傷ひとつなく立ち塞がるシスター・プラムと、月桂冠のサーヴァントがいた。
「そんな……!」
代わりに二騎分の黄金の粒が座へと消えていく。シスター・プラムはそのままエルマの死骸へと目を向けると、ゾーエの方へずんずんと近付いてきた。
「ゾーエ!」
必死に立ち上がり、駆け寄ろうとするランサーをまたも月桂冠のサーヴァントが阻む。
「……さて、どいてはもらえませんか?」
思わず、ゾーエは満身の力を籠めて立ち上がり、エルマを庇うように立っていた。その恐怖と怯えに満ちた表情を愛おし気に見下しながら、シスター・プラムはゾーエの肋骨を砕き折る勢いで膝蹴りを捻じ込む。
「ひぐ……っ!」
情けない悲鳴を上げて倒れるゾーエ。
「やめて……!」
霞む視界の中、エルマの抜け殻を再び拾い上げようとするシスター・プラム。
「もう私は、失いたくない……!」
ゾーエの目には、その動きがゆっくりと見えた。
「友達の命とか、そんなものよりも……っ!」
悔しさで握り締めた指が、固化溶岩をガリガリと削って血みどろになっていく。
「友達の……!」
「友達の、誇りを! 尊厳を! ――未来を! もう
その時だった。唐突に巻き起こった旋風と共に降り立った第三者の握り拳が、シスター・プラムの横顔を強く激しく抉り抜く。吹き飛ばされたシスター・プラム、そしてゾーエが見たものは――。
「――断言しよう。僕様こそが、キミのサーヴァント。アロイジウス・アーレルスマイアー。召喚に応じ参上したぞ、ゾーエ!」
――少女だけの、たったひとりの英雄であった。