真名:???
性別:女性
筋力:E 耐久:A 敏捷:B+ 魔力:C 幸運:D 宝具C+
スキル:気配遮断D+、騎乗A、フェロモンB+、篭絡のカリスマA+など
宝具:『???』
エピローグ
いつか、どこかの世界。
日本のとある都市の郊外にある一軒家に、太陽のように輝く金髪を持った女性が訪ねてきた。
「あっ、いらっしゃい! 待ってたよ!」
「うわっ……ジャック、髪の色抜いたの?」
「そりゃあ……ほら、あいつもいるしさ。染めたまんまは教育にも悪いんじゃないかなって。」
「そっか、そうだよね。ねぇねぇ、早く見せてよ!」
「あぁ、上がりな!」
一軒家のリビングで、金髪の女性は家主であるプラチナブロンドのセミショートを揺らす女性に出された紅茶を飲みながら、テレビに映る子供向けのアニメをじっと眺める黒髪の少年の話をする。
「何て名前だっけ。」
「お前……人の息子の名前くらい覚えてろよ。ちょっと感覚が魔術師寄りになってんじゃないか? ……ジンクロウだよ。仁に久に郎。海外の奴らには発音しづらいだろうから『ジャンク』って呼ばせてる。」
「何歳になったの?」
「今年で五つだよ。やんちゃ盛りさ。」
「そうは見えないけど。」
「緊張してんだよ。」
プラチナブロンドの女性は呵々と笑い、紅茶を一口飲む。
「ゾーエもさっさといい男見つけろよ?」
「あっ、何それ。そういうの、良くないと思うんだけど!」
「はは! 違いないや。」
金髪の女性は、唇を尖らせ、少し頬を赤らめながら黒髪の少年に聞こえない程度の小声で訊ねる。
「……いつ作ったの?」
「おれたちの道のりは話したっけか。ウィンチェスターの真っ白いタワーだよ。……アイツが、『泥の所有権を放棄すれば俺の命と引き換えにビーストの野望を挫けるかもしれない』なんて言ってさ。」
「そんな……元々それを覚悟して……!? ジャック、それっ……止めなかったの!?」
「止めたよ。……でも、すっごく本気の目をしてたから。結局折れちゃってさ。それでどうしたいのかって聞いたら、『俺の子供を産んでほしい』だってさ。……確かに何でもするとは言ったけどさぁ……。」
呆れたように笑い、プラチナブロンドの女性は溜息を吐く。金髪の女性は少し居心地悪そうにもぞもぞと姿勢を揺すると、紅茶の入ったマグカップを両手で握りながら話題を切り替えた。
「ねぇ、最近みんなはどうなの?」
「みんなっつーと?」
「ズーハオ達だよ。」
「あぁ……ズーハオは上海で家門を細々と続けてるってよ。カイリはアメリカでズーハオの分場を開設してるらしい。ボドヴィッドの野郎は知らん。故郷で狩人続けてんじゃねぇかな。」
「へぇ、カイリがズーハオの門下生を募ってるのは初耳だったな。」
「あいつはあいつなりに、色々吹っ切れたんだろ。そういうお前はどうなんだよ、ゾーエ。最近研究はちゃんと進んでんのか?」
金髪の女性はぎくりと背筋を伸ばし、言い訳を始める。
「あ、あー……。何て言うかさ、やっぱり私たちって聖杯戦争の生き残りなわけだし? メンタル的にもきちんと療養した方が良いよねーって……。」
「おいおい、実家に怒られるのは自分じゃねぇの? 折角聖杯戦争から帰還した事実だけは認めてもらえて、動物科に転属させてもらえたんじゃないのかよ。」
「わ、わかってるよーっ!!」
「時計塔と言えばさ。」
プラチナブロンドの女性は、黒髪の少年の方を見つめながら、彼の父親が師事していた男について金髪の女性に問うた。
「シロウさんは今、どうしてるんだ? ゾーエ、お前トオサカ家当主とは未だに交友があるんだろ?」
「あぁ、あの人なら……。」
国を同じくして日本、その地方都市のすぐ近くに位置する山の麓に門を構える高等学校の校門前に、白髪の男が立ち尽くしていた。
「……随分と遅かったな。」
その視線の先に、漆黒の革ジャンを羽織った金髪碧眼の少女が律義に歩道の左端を歩きながら現れた。
「電車が人身事故で止まってしまっていてな。」
「受肉してやはり感覚が変わったか?」
「元々私は受肉しているようなものだ。だがやはり、マスターが味わえなかった分、私が日常を享受せねばならんだろうという使命感がある。電車も乗るしバイクも駆る。腹が減ればスーパーへ行って食材を調達し、ホテルで調理して食す。『生きる』……というのは、案外と楽しいものだな。」
「おやおや、名高き騎士王様が随分と庶民臭くなったものだ。」
「それは私よりも『彼女』に言うべきなのではないか? 最近会えていないと聞いているぞ。」
白髪の男は肩をすくめ、革ジャンの少女に本題に入るよう促す。
「これを届けに。まったく、六年もかかってしまった。あちこち飛び回りすぎだ、貴方は。」
革ジャンの少女は渋々と、ジャケットの内ポケットから一枚の封筒を取り出す。
「これは……?」
白髪の男は封筒から内容物を取り出す。それは、ここにはいない誰かから白髪の男へ宛てた、一通の手紙だった。
――士郎さんへ。
数多くの事をあなたに学びました。自分の信念を最後まで信じること。自分の信じたいものを信じること。だからこそ、俺は迷いなく自らの命を放棄することができました。
きっと、俺が居なくなったことを今でも悲しんでいる人がいるでしょう。ずっと独りぼっちだった俺にそんな人ができたのも、士郎さんのおかげです。ありがとうございました。
色々と言いたいこともありますが、最後にひとつだけお説教を。
あまり凛さんを待たせないでやってくださいよ、もうアラサーなんですから。守護者エミヤの名も大事でしょうけど、愛してくれる女性と寄り添うことも大事ですよ?
俺の子は今何歳でしょう。士郎さんにお子さんができたら、きっと一緒に遊ばせてやってくださいね。
「あの島へ到着する前、列車の中で『手洗いに行ってくる』と言って席を離れた際に書いていたらしい。」
「……まったく、耳が痛い限りだな。最後のふたつについては善処するとしよう。それで、お前はこれからどうするんだ? ――ルーラー・レイヴン。」
白髪の男は手紙を封筒にしまい込み、革ジャンの少女に訊ねる。
あの日、少女は聖杯戦争の勝利者となった。役目を終え、それぞれのマスターと涙や笑顔の入り混じった別れを交わしたサーヴァントたちが次々に英霊の座へと帰還していく中、アルトリア・ペンドラゴン[レイヴン]だけは退去しなかった。
彼女が聖杯に願ったのは、『この世界を見守り続けること』であった。
「六年前からもこれからも何も変わらない。私は聖杯の守護者だ。この世界で起きた聖杯戦争――その後処理は、これからもまだまだかかる。」
グランド・クラスの尽力により世界は一度浄化され、一種の並行世界として確立した。打ち止めだった惑星の未来は保障され、人々は平穏な日常を享受できるようになった。
「そうか……。フッ、負けていられないな。」
そう言って、白髪の男はニヒルな笑顔を浮かべて見せた。
「そうだな。お互い様だ。彼が守りたかったこの地球を、我々で守護していかねばならんさ。」
革ジャンの少女は穏やかに笑い、夏の高く澄み切った青空を眩しそうに見上げる。二羽の鴉が、のびのびと泳ぐようにその視界を横切っていくのを、レイヴンはじっと見守っていた。
物語は、ここで一度幕を閉じる。未来はこれからも続いていく。
過去の意志を受け継ぎ、現在を藻掻き、未来へと繋げていく明日への指標。
それこそが、