祖龍と紅龍の力を持つ青年がダンジョンで一族復興を願うのは間違っているのだろうか 作:三本線
第一階層へ到着した3人。
今日はこの階層でモンスターを倒している冒険者は少ないようで、そこらを見渡せばそれなりにモンスターがいるのが見える。
まず3人が最初に出会ったモンスターは緑色の小人のような容姿のモンスター、ゴブリンだった。どうやら4匹の集団で行動しているようで冒険者を探しているのかキョロキョロと周りを見渡している。
それをゴブリンの視界の外から見つけたクシャがリヴェリアに確認をとる。
「リヴェリアさん。撃っていいですか?」
「あぁ、やってみるといい。」
「わかりました。お兄ちゃん、私が2匹殺るから、残りは頼んだよ。」
「わかったよ。クシャ。じゃぁそっちのタイミングに合わせるから。」
「おっけーい。じゃ、いくよー。」
そういって矢を構え、放つクシャ。そして同時に走り出すボレアス。クシャが放った矢がゴブリンの集団の内の1匹の頭に命中し、矢が当たったゴブリンが瞬く間に霧に変わった。
そして仲間が殺されたことで3人に気づいたゴブリン達。だが、既にクシャは2射目を構えており、1射目の時点で走り出していたボレアスは自身の双剣の間合いにゴブリン2匹を捕らえていた。
そしてクシャが2射目を放つ前に、自身の前に居たゴブリンの首を引裂くと瞬く間に1匹のゴブリンが霧になって消え、それに少し遅れてクシャの2射目が放たれ3匹目のゴブリンの頭に矢が刺さり霧と化す。
そして残った1匹も危なげなく、胴体を袈裟斬りにすることで倒すことに成功したボレアス。
「ふー・・。うん。中々良かったんじゃないかな。」
「そうだねぇ・・。あ・・お兄ちゃんちゃんと魔石回収しないと!ハントに教えてもらったじゃん!」
「おっと、忘れてた。」
「そうだぞ2人共。倒すだけじゃなく魔石の回収までが冒険者の基本だからな。」
そういって転がっていた魔石を回収していくボレアスとクシャ。
そして何度かゴブリンの他に狼と人を足して2で割ったようなコボルドというモンスターも危なげなく撃破していき、そこそこの魔石を稼いだボレアスとクシャ。
リヴェリアは付き添いで来ていただけなので戦闘には参加していない。
そして何十匹目かのモンスターを狩ったところで、本来の目的である2人の魔法の確認を行うことにしたリヴェリア。
「よし、2人ともそろそろ魔法の確認を行うとしよう。」
「わかりました。ただ、周りにもうモンスターがいないようなのですが・・・」
「そうだねー。お兄ちゃんが暴れすぎるせいじゃない?」
「クシャにだけは言われたくないけどね・・。少しモンスターが出てくるまで待ちますか?」
「そうするとしよう。2人とも疲れているようには見えないが、休憩だ。」
「わかりました。」
「わかりましたー。・・・・お腹すいたなぁ。」
などといって座って休憩をとる3人。そして10分程談笑しているとダンジョンの壁からゴブリンが3体わがみ生み出された。
そしてそれをみていたリヴェリア。
「お待ちかねのモンスターだぞ。クシャから先に魔法を見せてくれ。」
「わかりました。どっちから行きますか?」
「今回は【ステラ】だけでいいぞ。【フェザー・シールド】は最悪、ダンジョンじゃなくても確認できるからな。」
「わっかりましたー!」
そういって3体のゴブリンに向って詠唱を始めるクシャ。
「我が身に流れる風翔龍の血よ。目覚めよ。」
クシャを中心に魔力が渦巻く。そしてその魔力の渦に気づいたゴブリン達がクシャに向って走り出すが、遅かった。
既にクシャの周りには台風かと思うような強風が吹き荒れ、近くに居たリヴェリアはともかくボレアスは強風に飛ばされないよう足に力を込めていた。
そして、風の中心にいたクシャの頭上には風で形作られている矢が出来ていた。
そして遂にクシャが魔法を放つ。
「【ステラ】」
クシャがそう言い放った瞬間クシャを中心に吹き荒れていた強風がクシャの頭上にある矢に集まると同時に矢がゴブリン達の足元に向って放たれた。
風の刃がゴブリン達の足元に刺さった瞬間、それまで矢を覆っていた強風が一気に解放され、風の刃となりゴブリン達を切り刻んでいく。そして3秒ほど風の刃に蹂躙されていたゴブリン達だったがやがて、霧へと変わる。
そして、そんな様子を見ていたリヴェリアは心の中で
(レベル1の冒険者の魔法の威力はないな・・。全く、コレほど強力な魔法を使うとは恐ろしいなミラの一族。)
と驚き半分、感嘆半分で呟いた。
そして魔法を放った当の本人は
「ふー・・。私の魔法どうだった?かっこよかった?!」
「うん、かっこよかったよクシャ。でも、魔石まで消滅させちゃだめだよ。」
「え?!あ・・・ほんとだ。魔石なくなってる!なんで?!」
「攻撃の威力が強すぎると魔石が消滅することは多々ある。次からは少し加減することだ。それと大丈夫か?」
「へ?なにがです?」
「いや、初めて魔法を使った冒険者は精神《マインド》を消費することになれてなくて疲労感を感じることが多いのだが・・・」
「いや、特に疲労感とかはないですけど・・・」
「そうか。ならば良いのだが。」
そしてそうこうしてる間に今度はコボルドが5匹生み出された。
「よし、では次はボレアス。いってこい。」
「わかりました。えーっとどれから使えば・・・・」
「好きに使っていいが・・・クシャと同じで【ミラ・エンチャント】は最悪ダンジョンでなくても確認出来るからな。だから今回は残りの2つを使ってくれ。」
「わかりました。じゃあまずは・・・」
そういいながらコボルドに向って詠唱を始めるボレアス。
「我が身に流れる祖龍の血よ。敵を焦がし尽くせ。」
詠唱を終えた途端、ボレアスの周囲に雷が発現し、バチバチと音を立てて発光している。そして、それにコボルドたちが気づくより先にボレアスが魔法を使用する。
「【ルーツ・ブリッツ】」
ボレアスがそう言った途端、コボルド達の中心に1つの雷で出来た球が出現したと思った途端、その球からコボルド達へ向って無数の落雷が轟音を響かせながら起こる。
そして、一瞬でコボルド達は霧に変わる。そして当然の如く魔石も消滅していた。
「ふー・・・。少し、地味だね。」
「えー、そんなこと無いよお兄ちゃん!ただ、少しうるさいね。お兄ちゃんの魔法。それに魔石も消えちゃった。」
「そうだね。この魔法はピンチの時以外は封印だね。リヴェリアさん僕の魔法どうでした?」
「あ、あぁ。クシャと同じく強力な魔法だな。それとボレアスも疲労感などは特にないか?」
「?はい。特に疲労感とかはないですね。いつも通りです。」
「そ、そうか。ではもう1つの魔法も使ってみるといい。さっきの音で周りのモンスターが少し集まってきたぞ。」
「そうですね。・・・そろそろ僕もお腹が減ったので終らせますか。」
そういいながら集まってきたコボルド3匹と2匹のゴブリンに向って詠唱を始めるボレアス。
「我が身に流れる紅龍よ。敵を燃やし尽くせ。」
ボレアスを中心に真っ赤な炎が発生し、ボレアスの周囲の温度が一気に上がる。
そしてそれらの炎がボレアスを守るかのようボレアスの回りを漂い始める。
そしてボレアスが魔法を発動させる。
「【バルカン・フレイム】」
そうボレアスが呟き、手をモンスター達に向けるとボレアスの周りを漂っていた炎が一斉にモンスター達を包み、一瞬で霧に変える。
ちなみにまたもや魔石は消滅した。
「よし、終わりました。」
「そ、そうだな・・。そろそろかなり時間も経っているし帰るとしよう。」
「そうですねー。私もうお腹ぺこぺこです。」
そしてダンジョン入り口へと背を向ける3人。
その中でリヴェリアは内心驚きと若干の恐怖心を覚えていた。
(この2人の力は強力すぎる・・・帰ったらフィン達に相談だな・・。明らかにレベル1の冒険者の魔法の威力じゃない。)
口には決して出さないが内心では驚きを隠せない。たしかにボレアスとクシャがこのまま【ロキ・ファミリア】で成長してくれれば頼もしいことこの上ないが、もし、万が一、【闇派閥】に落ちてしまったら・・・
そんな事を考えてしまいそうになって慌てて首を振り、覚悟を決めるリヴェリア。
(この2人がそんなことになるはずがない・・・。あの時、ロキに夢を語った2人の目は本気だった。ならば私達がその手助けをしてやらなくてどうする。)
そしてそんなリヴェリアを見て首を傾げるボレアスとクシャ。
そしてそんな2人に微笑みながら
「いや、なんでもないさ。では帰るとしようか私達の家に。」
そういってダンジョンを出る3人。