祖龍と紅龍の力を持つ青年がダンジョンで一族復興を願うのは間違っているのだろうか 作:三本線
「うわー、この服かわいくない?!」
「うん、かわいいと思うよ。」
とある人間向けの服屋に入るなりクシャは色々な服を手にとりボレアスに感想を聞いてくる。
それにボレアスは都度答えていたのだがさすがに2桁を越えたあたりから返答が雑になっていき、それに対しクシャは少し不満そうに頬を膨らめる。
ちなみに店員はそんな2人対して温かい目を向けている。
「なんかさっきから返答が雑じゃない?」
「そんなことないよ。それよりどれにするか決まった?そろそろ僕も自分の選びたいんだけど・・・」
「うーん・・どれもかわいいから悩むんだよね~・・お金もそんなに一杯あるわけじゃないし・・・」
「慎重になるのもいいけど速く決めないとじゃが丸君食べれないよ?」
「そうなんだよね~・・みんなおいしいっていうからじゃが丸君も絶対食べたいんだけどかわいい服も多くって・・・」
「は~・・・じゃぁ決まったら呼んでね。僕も自分の服みてくるから。」
「は~い。」
ちなみにじゃが丸君については【ロキ・ファミリア】のほかの団員達が食べているのを見て味について気になったクシャが訪ねてとてもおいしい上に色々と味のヴァリエーションがあると聞いてこの服屋に入るまでに今回の自由時間の目的の一つになっていた。
ちなみに、ボレアスは特に服に着いて拘りはないものの白色の服がお気に入りである。ちなみにクシャは結構服に拘るタイプである。昔から母親にかわいい服を強請っていたの覚えがある。
そして、ボレアスが自信が買う服(白色のフード着きの長袖パーカー)を持ってクシャの元へといくとクシャも遂に覚悟を決めたのか一番最初に持ってきた白色のワンピースを手に持ってボレアスに向って歩いてきた。
「結局それにしたの?」
「うん。値段的にも丁度良かったし。お兄ちゃんはそのパーカーにするの?」
「うん。今のズボンとも合うでしょ?」
「うん。いいと思うよ~。じゃ、お会計だね。」
そういって会計を済ませるボレアス。ちなみに前回と今回のダンジョンで稼いだ1万3千ヴァリスはボレアスが纏めてもっているため会計はボレアスが行う。ちなみに2人の服の合計は8400ヴァリスであった。
ありがとうございましたーと言われながら会計を済ましたため店からでるボレアスとクシャ。
「それじゃあ服も買ったし次はじゃが丸君だね。」
「そうだね!楽しみだな~」
といってジャガ丸君の屋台に向って歩いていく2人。
そして5分程あるいてじゃが丸君の屋台についた2人はメニューの豊富さに絶句していた。
プレーンは当然としてチョコやミントはてにはわさびや小豆クリーム味などという変わり者まである。そして今抜き出したのですらほんの一部だ。
そこで2人は始めてなのでここは冒険せずに無難にプレーンにすることに決めた。
「すいません、プレーンを2つお願いします。」
「はーいプレーン2つねー。どうぞー」
「ありがとうございます。」
とじゃが丸君プレーン味2つ(2つで60ヴァリスという超リーズナブルな値段)を店員から受け取り、クシャへと一つ渡し屋台から離れて近くにあったベンチへと腰掛けることにした。
そしてそんなボレアスの横にちょこんと座ったクシャ。
そして2人とも「「いただきます。」」といってじゃが丸君に噛み付く。
「ん、ほくほくしておいしいな。ジャガイモの甘さを引き立てるみたいに塩がほどよくきいてる。」
「んー!おいしい!いろんな味食べたいな~」
そして2人共じゃが丸君を食べ終わり、ごみをきちんとゴミ箱にすてたところでもうすぐ日暮れが近い事に気づいた。
「もうこんな時間だ。そろそろもどろっかクシャ。」
「そうだね~・・今度は1日休み貰って遊びに行きたいね~」
「そうだね。うん次は別の味のじゃが丸君を食べよう。」
そして【黄昏の館】へと歩を進めるボレアスとクシャ。そして、そんな3人に近づく人影が1つ。
「君達、今日ダンジョンの4階層でモンスターを狩っていた2人だろ?」
「え、えぇそうですけどあなたは?」
2人に話しかけてきたのは優しそうな人好きな笑みを浮かべた人間の男。たしかに纏っている雰囲気などは優男のそれだがボレアスは少しこの男に苦手意識を持っていた。
「いや、僕もたまたま同じ階層でモンスターを狩っていてね。それで君達に興味が湧いたんだ。どう少しお茶でもしないかい?あぁもちろんお金は僕が持つからさ。」
「そうなんですか・・・。でも僕達そろそろ帰らないと・・・」
「いいじゃん。いいじゃん。少しくらい遅れても怒られないよ。それに奢りなんだよ?」
「いや・・・でも・・・」
「まぁまぁ固いこと言わないで。それにお金のことなら心配しなくても大丈夫だから僕、こう見えてレベル2の冒険者なんだ。」
「そういうことじゃ・・・」
「もーお兄ちゃん!せっかく奢ってくれるんだからいかないと失礼だよ!」
「うーん・・・クシャがそこまでいうなら・・・」
「よし決まりだね。じゃあ僕行きつけのお店があるからそこでいいかな?」
「はい!お兄ちゃんもいいよね。」
「う、うん。」
「じゃあ決まりだね。こっちだよ。着いてきて。ねぇ」
そういって男が歩いていったので着いて行く2人。
そしてメインストリートを外れた脇道を進んでいく男。そして、どんどん人気が無くなっていく。ここでボレアスが異変に気づく。
「・・・・こんなとこにお店なんてあるんですか?」
「もう少しいったところにあるよ。」
「・・・嘘ですよね。それにさっきから僕達以外の足音が後ろから聞こえてくるんですが知り合いですか?」
「気のせいじゃないかな?」
「・・・クシャも気づいてるでしょ?」
「うん。ごめん。お兄ちゃん。私のせいで・・・」
「・・・・・ってことです。それで謎の冒険者さん本当の目的を教えてもらってもいいですか?」
「はぁ・・・。ガキの癖に勘が鋭いじゃねぇか・・・つってもそっちについても大体気づいてんだろクソガキ。」
この言葉を聞いた瞬間に臨戦態勢を取る2人。
そして謎の冒険者の言葉と共に後ろからついてきていた謎の足音の正体が明らかになる。
「おい、てめーらの尾行が下手なせいでばれちまったじゃねーかクソが!」
それは恐らく冒険者であろう2人の男それに二人共ショートソードを持っている。
「す、すいません・・・」
「で、ですがここならこいつらを攫っても足はつかないですよね!」
「たしかに足はつかねぇとおもうが・・・っち予定が狂っちまったじゃねぇか」
「だ、大丈夫ですよ!しょせんこいつらはレベル1。たしかに俺らもレベル1ですけどアニキはレベル2じゃねぇっすか!」
「ま・・そうだな。っち予定変更だ。ここでこいつら攫ってくぞ。」
ボレアスside
ボレアスは冷静に今の状況を分析していた。
最初はたしかに動揺していたが仮にもレベル5の冒険者であるハントに師事していたボレアスである。切り替えは早かった。
(・・・武器が無い上に人数も向こうが上。それに3人の内2人は武器を持ってる。恐らくここまで僕達を連れてきたあいつも武器を持ってるだろう。それに・・あいつはさっきの会話から考えるにレベル2の冒険者。それに加えこっちはダンジョンに潜ってまだ2日のレベル1冒険者が2人。恐らく、というより絶対敵のレベル1の冒険者2人も僕達より長くダンジョンに潜ってるんだろう。・・・どうする?)
ボレアスには正直この場面を無事乗り切る図が浮かばなかった。
それもそのはず。レベルが1違えば勝つのはかなり困難になり2つ違えば絶望的、3つ違えば不可能。それほどまでにレベルの差というのは圧倒的であり、さらに人数でも負けている上に武器も持っていない。さらに敵のレベル1冒険者2人にも恐らくステータスで負けていると考えていい。
絶望的。まさにそういえる状況だ。
だがボレアスには諦めるという考えは無かった。
(今ここで諦める?ありえない。クシャを見捨てて逃げる?ありない。じゃあここで戦って死ぬ?ありえない。じゃあどうする?・・・・・・・ここで全員、殺す。レベル差?しらない。父と母は恩恵を持たずとも《俺》とクシャを命を賭けて逃がしてくれた。じゃあ恩恵を貰った《俺》がこいつらに勝てない?そんな事は有り得ない。認めない。ここで・・・・こいつらを殺す。自分の中に流れる祖龍と紅龍の血に賭けて。)
そしてボレアスの瞳からハイライトが消えていく。
クシャside
(やっちゃった・・・。それにこの状況結構やばいよね・・・。うーん最初に足音に気づいた時点でお兄ちゃんと一緒に逃げるべきだったかな・・・。ま、過ぎた事きにしても仕方ないかな。それに、お兄ちゃんもやる気みたいだし。)
そういいながら横に立つボレアスを見るクシャ。
たしかに、状況は絶望的だ。敵はレベル2の冒険者1人とレベル1冒険者2人。対してこちらはまだダンジョンに2回しか潜ってない冒険者が2人さらに武器も無い。たしかにまともに戦えば死ぬかもしれない状況だ。だけどそれがどうした?自分達は既に死んでいてもおかしくない状況を両親に生かさせて貰い、いまここで冒険者として生きている。死んでもおかしくない状況?上等だ。父と母はそれに立ち向かった。じゃあ子供である私達が立ち向かわない理由があるか?答えは、否だ。じゃあどうする?立ち向かう。敵を殺してでも自分達が生き残る。お兄ちゃんも覚悟を決めたのだ。じゃあ私も立ち向かおう。敵を殺して見せよう。この身に流れる風翔龍の血に賭けて。
そしてクシャの目に覚悟が宿る。