吹雪「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!白雪!春雨ぇ!しっかりしてぇ!」
必死に二人の体を揺らす。しかし、全くの無意味だった。二人の死は、自分でも理解はしている。それでも、それでも
夕張「だいじょうぶですかー!」
向こうから夕張の声が微かではあるが聞こえた。
吹雪「夕張さんっ!こっちに来てください‼春雨と白雪がぁっ!」
程無くして夕張はやって来た。彼女の服装も軽く傷がついていた。小破というところだろう。
夕張「んなっ!」
珍しく夕張が慌てた表情を見せた。
夕張「・・・。吹雪ちゃんは、しばらくの間対空砲を撃って。この子達の面倒は私が見る。」
吹雪「はい!分かりました!」
そう言って誰も居なかった対空機関砲を握る。私の艤装も既に弾を撃ち尽くしていた。
吹雪「あたれぇっ!」
最新式の30㎜で弾幕を張る。しかし、全く弾が当たらなかった。
長門『こちら長門!そっちで爆発があったが、大丈夫だったか⁉』
吹雪「こちら吹雪!さっきの爆撃で、春雨と白雪が戦闘不能‼轟沈した可能性があります!」
長門「なっ!今からそちらに行くっ!少しの間だけ。うわっ!」
通信が途絶えた。遅れて体を震わすような轟音が鳴り響く。
吹雪「長門さんっ!」
夕張「吹雪ちゃん。」
後ろを振り返えって夕張を見る。
吹雪「春雨と白雪は大丈夫ですかっ⁉」
夕張は首を静かに横に振った。
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南渡「甚大な被害だな。」
大井「えぇ」
現在時刻は午後7時半。空襲が終わってから1時間程度がたった。
今日の空襲で、少なくとも昨日の倍近い数の兵士が死んだ。恐ろしい損耗率だった。
さらに特筆すべき被害は、もう2人もの艦娘を失ったということだ。
今日の増援の中には艦娘も含められているどの事だったが
焼け石に水のような感じもするのだった。
大井「通信隊より報告が。もうまもなく増援艦隊が到着するそうです。」
南渡「・・・そうか。」
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工廠にて
陸奥「彼女たちはどうなるの?」
夕張「分かりません。何しろここは最前線ですからね。白雪ちゃんは、瓦礫の破片が大量に突き刺さっただけなので、後送すれば、外傷だけは何とかなるかも知れません。」
陸奥「そう・・・春雨ちゃんは?」
夕張は沈痛な面持ちで言った。
夕張「春雨ちゃんは・・・完全に駄目ですね。下半身が吹っ飛んでいます。残った上半身も、ほぼ原型を留めていません。」
吹雪「私のせいです。」
陸奥「吹雪ちゃん・・・体の方は大丈夫?」
吹雪「はい、大丈夫です。」
陸奥「・・・そう。」
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入渠施設にて
不覚だった。
長門「もう、覚悟は決めた筈だったんだがな。」
吹雪は戦闘が終わった瞬間に私の所に来て、土下座をした。
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吹雪「申し訳ありませんでしたぁっ!」
長門「おいおい、どうした吹雪?」
吹雪「わたしは、わたしはぁっ、本来すべき役割を放棄してっ、結果二人もの戦友を殺してしまいましたっ!これは立派な軍法違反に当たります!今すぐ私を解体してくださいっ!」
そう、吹雪は涙ながらに訴えた。
しかし・・・
長門「・・・それは出来ない。」
吹雪「何故ですかっ!?」
私は、言葉に詰まった。
吹雪が来る少し前にある兵士がやって来て
兵士4「吹雪さんはおらを助けてくれましたけぇ、もし吹雪さんが解体してくれと言うようなら、絶対に阻止して下さらんか。」
と、血塗れの状態で言った。
事実を言っても良いのかもしれない。しかし、今の吹雪の心は、不安定だ。何をしでかすか分からない。
陸奥「吹雪ちゃん、こっちを見て。」
これまで何かを言いあぐねていた、陸奥が口を開いた。
吹雪「ぐすっ・・・はい。」
陸奥「・・・甘いわね。戦場で見方が死ぬことは当たり前よ。」
長門「おい陸奥!どうゆう意味だ!?」
陸奥の襟首を掴み上げる。流石に今の言葉はそれでも陸奥は吹雪の方を向き言った。
陸奥「今、吹雪がやろうとしていることは、逃げよ。現状に耐えきれなくなって、それから目を背けようとして、自分の都合の良いように逃げて・・・その先に何があるの?それが、味方を見殺しにして成し遂げる唯一の事なの?」
白露「ちょっと!陸奥さん言い過ぎだよっ!」
陸奥「もし解体して欲しいなら、執務室に行くことね。私はもう何も言わないわ。」
吹雪「うっ、ぐすっ・・・はい。」
白露「あっ!吹雪ちゃん待ってーっ!」
吹雪はその場から駆け出して行った。
陸奥「これでいいのよ。これで。いずれ私達も通る道よ。」
そう言う陸奥の表情は悔しげだった。何かを堪えているかのように。
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長門「ふぅ」
傷もだいぶ癒えた。
長門「もう二人か・・・」
このあと経験するであろう激戦の前哨戦でこれなのだ。
長門「まだ覚悟が足りないか。」
この戦場で生き残るには、心を無に、何も考えず獣のように戦うしか、ないようだ。
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北の湾口は鉄と人で埋め尽くされていた。その風景は大宮(おおみやこ:東洋帝国の首都)の通勤ラッシュの時間も、かくやというものだった。
南渡「一体どんなコネがあるというんだ・・・」
目の前にいる増援は前回よりバリエーションも豊かだった。
大井「提督、報告書です。」
不知火「この量が一晩で運び切れるのでしょうか・・・」
報告書に目を通す。
南渡「ん?」
何かが書類の間からこぼれ落ちる。
南渡「手紙?か、多譯宛てか。」
表にはちゃんと検閲済という判子が押してあった。
気を取り直して、書類を見る。
南渡「は?2個連隊!?」
ぞろぞろ降りてきている人数を見るとこれは本当の事のようだった。
南渡「機甲部隊までか・・・艦娘は、さすがにか・・・」
艦娘はどうやら内地暮らしの者ばかりのようだった。
これにはあまり期待していなかったのでよいのだが。
南渡「軍艦までか、重巡洋艦が2、軽巡洋艦も2、駆逐艦が11か。あまりバランスは良くないな・・・」
因みに対深海棲鬼兵器として軍艦は、あまり使用されない。
・図体のデカさ故、的になってしまう
・散布界が広いので、直撃弾があまり出ないから
・あちらの弾は、小さいのに、稀に戦艦の重防御区画ですら貫通することがあるから
という理由だ。
それでも豪華な増援だった。
ふと、ある考えが思い浮かぶ。
南渡「そういえば、こんな一大事なのにちゃんとした提督が送られて来ない・・・」
どうやら大本営は、大事な所が抜けているようだった。
―東洋帝国部隊通常編成―
¤狙撃砲部隊:砲撃手1、給弾員3、観測員兼測量員3、護衛隊員6
¤ホーレンス対空機関銃:砲手兼仰俯角調整員1、広角調整員1、弾薬補給員2~7
¤30㎜対空機関銃:砲手兼照準員1、予備員1、バレル、弾薬補給員2~3
¤90㎜高射砲:砲術長1、副砲術長1、弾薬補給員4~7、照準員2、通信員2、工作員1~2、(砲撃員1)