昨日の襲撃から早くも一晩が明けた。まだ立ち直り切れてはいないメンバーも多かったが、大部分が仕事に黙々と取り組んでいた。
大井「大丈夫?吹雪ちゃん?」
吹雪「はいっ!もう大丈夫ですっ!」
私は、提督に頼まれて吹雪のメンタルケアをしていた。
同じ艦隊のメンバーを二人も喪っているのに、吹雪はとても元気そうだった。しかし、彼女には、夕張のような症状が出始めていた。
吹雪「安心してください‼私がきっちりと、やつらを『皆殺し』にしてやりますから‼」
その言葉に思わず身震する。頼まれたのはいいが、もう手遅れのような感じがした。
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南渡「明日の夜明けまでに終わるか?これ。」
いつものように、ボリュームたっぷりな増援が送られてきた。
と、いっても今回は人員ではなく、弾薬等が多く運ばれてきた。
南渡「見たことがない兵器もあるな。」
なんだこれ、[識別記号<H&I.001>対深海棲鬼用神経ガス弾]
東洋帝国には、今までにも化学兵器はあったが、これは、見たことも聞いた事もなかった。
しかもこれは、弾種も幅広く揃えられているので、なかなか使えそうだ。
ただ・・・
南渡「まともに作動してくれる物であるといいんだがな・・・」
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ー宴会場にて
一同「「「「「「かんぱーいっ!」」」」」」
今日は、多譯予測、深海棲鬼の侵攻日最後の日だったので
、酒保が開かれていた。
兵士4「この芋焼酎はうめえのう!」
兵士7「本土からの贈り物だそうだぞ!何しろ一升6,000円もするんだとか。」
兵士4「へぇ!そんな酒が最前線で、しかもただで呑めるなんて大本営様々だなぁ‼」
兵士10「あぁ!もう俺に心残りはぁないなっ!」
しかし、どれだけ酒を呑んでも殆どのものが酔うことはなかった。緊張しているのだ。何しろ敵は、最前線の先鋭を打ち破る程の兵力を以てここに攻めてくるのだ。
兵士4「・・・そうか。・・・月がきれいじゃのう。」
今日の夜空には月が目映く輝いていた。
兵士4「もう一度、綺麗な満月がみたいのぅ・・・」
兵士7「1ヶ月生きればもう一度見られるさ、頑張ろうぜ。」
兵士4「もちろんじゃ。」
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私、長門は、南の波止場に来ていた。
陸奥「なーに一人で黄昏てるのよ。」
後ろから陸奥に声をかけられた。
長門「あの雰囲気の中に、少し居づらかった。それだけだ。」
陸奥「そう・・・やっぱり気にしてるの?吹雪ちゃんの事。」
長門「まあ、な。」
しばらく二人の間に沈黙が訪れる。まったく酔えなかった。いつもなら、これだけ飲んだら間違いなく泥酔してしまうのだが、今日はまったくそんなことはなかった。
長門「・・・なぁ陸奥。」
私はずっと気になっている事を聞いてみることにした。
陸奥「なあに?」
長門「後悔、してるか?吹雪にあんなことを言って。」
陸奥「いいえ、まったく。」
そう、陸奥は強い口調で言った。
陸奥「いった通り、いずれ私達も通るかもしれない。いつか私だってきっとああなるわ。でも、そこで挫けて泣いていても変わらない。それは長門だって分かるでしょ。・・何言ってるんだろうな、私。」
長門「・・・もう寝たらどうだ陸奥。きっと疲れてるんだ、陸奥は。」
陸奥「そう、ね。お休みなさい長門。あまり飲みすぎないようにね。」
長門「ああ。」
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兵士4ことワシは比土(ひど)。今は宴会場を出て、少し涼みに来ていた。
???「あの、すみません!」
後ろから少女に声をかけられた。と、いってもここには艦娘しか女性はいないので、おそらく駆逐艦娘だろう。
その艦娘はこちらに近づいて来て、やっと顔が認識出来るようになった。
その子は・・・
吹雪「お久しぶりですね!」
その手には、リボルバーが握られていた。
比土「久しぶりじゃのう。・・・で、何のまねじゃこれは?」
吹雪「いえ、いくつか質問をしたいことがあって、答えによっては『死んで』頂こうかと。」
こんな恐怖は今まで感じた事がなかった。
比土「質問とは、なんじゃ?」
吹雪「では、単刀直入に聞きますね!何で私のしたことを皆に言ったのですか?」
そうして吹雪はリボルバーのハンマーを引いた。
今の吹雪はそうすると言ったからには、必ずやるだろう。
比土「今、ここには一人でも多くの兵士、艦娘が必要なのじゃ。あの様子だと、不味いなと思ったからそうしたまでじゃ。」
とりあえず、合理的な理由、ないし、当たり障りの無いことを言っておく。
吹雪「いえ、別に私は合理的な理由を聞いているのではありません。率直な理由を聞きたいのです。」
吹雪は引き金に指をかけた。
まずい。非常にまずい。逃げ場が失われた。なのでもう諦めて、本音を言うことにした。
比土「ワシは、あんたと『同じ』で、人が目の前で死ぬのが嫌なんじゃ。だからそうした。」
吹雪「そうなんですか。」
そう言い、吹雪は容赦なく引き金を引いた。辺りに轟音が鳴り響く。
しかし、いつまでたっても、何も感じない。もう死んでしまったのか?
比土「あれ、生きちょる?」
そこには、笑顔の吹雪が立っていた。もちろんリボルバーを握って。
吹雪が持っているリボルバーからは硝煙が出ている。と、なると
比土「空砲、か?」
吹雪「はい!今の私はあまり死ぬ気はありません‼一匹でも多く奴等を殺す事が、今の私の生き甲斐ですから‼」
そういい残して、吹雪は去っていった。
兵士7「おーい、大丈夫かぁー。」
そうしてまた宴会場に戻るのだった。
比土「・・・」
熱は完全に冷めた。
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鎮守府のほぼ全員が広場に集められた。定例通り提督の戦闘訓示を聞くためだ。
そして提督である僕はそれをしなければならない。
ー本当にどうしてこうなってしまったのだろう。
壇上に登りながら思う。
はっきり言おう。僕は戦争なんか大っ嫌いだし、人前でしゃべることも嫌いだ。
だけど今の僕はそんな事を言える立場ではない。だから僕は壇上でこうやけくそに叫ぶ
南渡「さて、諸君!楽しい歓迎会の時間だ‼楽しんで行こうじゃないか‼」
ため息をつきたくなる。だがしかし。
南渡「明日、いつかは分からないが、ほぼ確実に敵は!今まで我々が経験したことの無いような軍勢でこちらに攻め込んで来る!しかし、それがなんだ?!そんなのは敵前逃亡する理由にはならない‼」
そして一呼吸置く。
南渡「明日より我々は、甲乙丁ラインに別れて防衛戦を行う‼敵は招待されてもないのに、武装してやって来るような糞どもだ!そいつらには・・・」
最後に高らかに叫ぶ。
南渡「きちんとこちらの礼儀に則って、歓迎して差し上げろっ!いいなっ!」
ー沈黙
しかし誰が、やってやるぞっ、と叫んだのを皮切りに、そこの声はどんどん広まっていった。その声はまったく途切れることがなかった。
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そうして夜は明けた。
見張り1「・・・・・・ん?・・・おいっ!」
見張り2「どうしたっ!・・・・・・おいおいおいおい・・・嘘だろ・・・」
双眼鏡の先には水平線を埋め尽くす程の敵の群れがあった。
それと同時にサイレンが鳴り響いた。
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副砲術長「砲撃用意完了しました。」
砲術長「まだ、まだ撃つなよ」
あちらこちらで、忙しく迎撃準備が始められた。
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霧島「準備はできましたか?」
長門「全部隊、艤装各種配備完了しました。」
金剛「みんな、急いで配置につくネー‼もうそろそろ敵が来るネー!」
電「凄く緊張するのです‼」
暁「安心して!レディーである私がついてるんだから‼」
響「威勢はいいね。でもさっき、トイレの個室で泣いてたのはどこの誰だったっけな?」
木曾「おいおい、言ってやるなよ。暁が泣いちまうだろ。」
暁「・・・泣かないわよ。ぐすっ。」
誰もがそんな軽口を叩きながら持ち場につく。
今、ここで今まで世界で一度しか成功したことのない(小規模なものだった。大規模なものは、成功したことはまだない。)多方面前線が幕を開けた。
ー<H&I.001>対深海棲鬼用神経ガス弾ー概要
〖物質の特徴〗
簡水溶性のゲル状の物体が中に入っている。これを一時的に圧力を加え、なおかつ高温にすると気化し、空気より思いので下に落ちる。
致死量は0.3グラム。しかし、少量吸っただけで強烈な腹痛、嘔吐感、目眩、催涙、意識混濁、てんかん発作等が起きるので、非常に危険である。しかし、すぐ、物質の特徴は失われるので、ある程度息をせずに居れば、多少症状が軽くなる。
防毒マスクでは、現在防御不能である
〖弾の構造〗
接触、または時限信管によって作動する。作動した瞬間に、中の爆薬が炸裂、ガスを撒き散らす。外殼はあまり分厚くないのでかなりの確率で作動するが、扱いは丁寧にしなければならない。