大本営からの連絡があった夜、執務室に大隊指揮官と、艦娘部隊の各艦隊の旗艦そして、曙と大井が集められた。
そしてありのままを話した。
南渡「まあ、第十一鎮のメンバーは知っているだろうが、以上が現在の戦況だ。」
室内に重苦しい空気が流れる。最初に口を開いたのは、多譯だった。
多譯「これはあくまでも、いままでの私の経験からですが、敵がこの島に押し寄せて来るのは約1週間後でしょう。
第十一鎮守府の残党兵力を掃討するのに2日。補給をし、航空機が発艦し始めるのに4日。最後に補給を受けながらここに殺到するのに7、8日。到着次第、圧倒的物量で、現れた艦娘部隊を何倍もの兵力で包囲殲滅。その間もここにひたすら爆撃を加え続け、艦娘を殲滅次第、上陸という流れでしょう。こちらも、物資の補給地点だったので、ある程度の備えはありますが、策なく挑めば我々は間違いなく敵の上陸開始から3日で全滅するでしょう。」
再び重い沈黙。無理もない、絶望的過ぎるのだ。兵力、物量、連携、練度。ほぼ全てにおいて。
南渡「一応、最悪の場合の策は考えてある。」
長門「どんなものだ。」
南渡「まず夜にここの滑走路から駆逐、軽巡をのせた一式陸攻を発艦、敵の後方でそいつらをパラシュート降下させ突撃を敢行、敵が混乱している隙に、全面から戦艦、重巡部隊による攻撃で時間稼ぎをする。そしてその間作り上げた陣地で海戦隊が防衛活動を行ない、大本営からの援軍を待つ。来なかった場合は万歳突撃を行い敵に被害を与える。パラシュート降下についてはこの3日で練習する。以上だ。」
どう抗っても、敗北前提で物事を考えなくてはならない。
長門「どうしてそんな発想がうまれてくるんだ?」
霧島「でも、状況はそこまできているのですか。」
大井「無茶な特攻でもやるしかないのね。」
大和「あの、すいません。」
南渡「なんだ。」
全員が大和の方を見る。大和は、若干怯えながら言った。
大和「先ほど提督は、『最悪の場合』とおっしゃいましたが、そうでない場合の事はお考えなのですか?」
ここで初めて登場する、第14大隊大隊長、三河 連太郎(みかわ れんたろう)が喋る。
三河「今は、それを話し合うために来ているのでしょう!」
彼は、たった3ヶ月前に結婚したばかりの男だった。憤るのも無理ないだろう。
南渡「一応考えてはいる。ただ時間が無さすぎる。」
扶桑「それでも、言うだけ無駄ではないのでは?」
南渡「うーん、・・・分かった。」
そうして僕は地図の前に立つ。
南渡「まず、僕が少し考えているもう一つの作戦の骨子は艦娘の陸上使用という点だ。我々対深海棲艦の戦力比では、制海権をおさめることはまず不可能だから、海戦隊とともに火力を集中し、水際で敵を殲滅し続けるというもの。そしてもう一つ、前線をあえて3つに分ける。」
ここで三河が上申する。
三河「なぜ火力を3つに分けるのですか!?敵は圧倒的な数で攻めてくるのです‼一つに固めた方がよいのではっ!」
それは最もだった。しかしそれをなし得ない要因がある。
南渡「現在ここは、敵に侵攻されやすい場所が3つある。一塊にしてもよいが、そうすると守っている戦線ではないところから敵は侵攻するだろう。そして我が軍は側面を衝かれる形になり、戦線は崩壊、ひいては全滅を招くだろうということだ。」
三河「っ!しっ失礼しました‼」
第41鎮補は、蟹のような形をしている島で、蟹のハサミにあたる部分は南側にある。そしてその両方のハサミの所に砂浜があり、目がありそうな所に、港がある島だ。はっきり言ってどこから上陸するのか、予想がしにくいのだ。
南渡「話を続ける。その3つの場所を東側から、甲、乙、丁ラインと仮称し、砂浜の甲、丁ラインはそれぞれ1大隊を配置、南の乙ラインは、一部の艦艇を抜いた、今ある艦隊で対応する。ここまでで、意見のあるものはいるか?」
多譯「一つ質問が。」
南渡「なんだ?」
多譯「その場合、砂浜の沖合は無防備になります。かといってそこに軍艦や、艦娘を配置すれば、乙ラインが無防備になってしまいます。もし、敵が事前に艦砲射撃をしようものなら、生身の人間では到底耐える事が出来ません。対応策としては、トーチカを作るなどがありますが、作り上げるには、時間が足りません。何かお考えがあるのですか?」
それがこの作戦の最大の欠点なのだ。
南渡「一応、援軍を大本営に頼んではいるのだが、だし渋っているな。」
ここで阿武隈が前髪をいじりながら口を開いた。
阿武隈「トーチカとは言わないけど。ちょっとした穴と言うか、そういうものなら作れると思うんだけど」
三河が憤然とした表情で立ち上がった
三河「何ですか?我々海戦隊を7日7晩働き詰めにさせるつもりですかっ?!我々は人間だっ‼そんなに強くないっ‼」
空気が凍りついた。
多譯「言葉を慎め、三河。さっき作戦を考えるためにここに来たと言ったが、そういうお前は何か考えでもあるのか?まさか、伝統を重んじて万歳突撃をさせる、とは言わないよな?」
多譯のこのような姿は初めて見た。ぞっとするような、声、オーラ、瞳。その後は暫く沈黙が続くのだった。
しかし、その沈黙も長い間続いた訳ではなかった。
曙「あ、あの阿武隈さん。さっき何をおっしゃろうとしていたのですか?」
阿武隈「え・・・ああ、艦娘の砲を直接岩や地面に撃ち込んだら穴って出来ないのかなって?」
悪くない案だった
南渡「ほう、なるほど。大井、資材備蓄量はどうなっていた?」
大井「艦娘用の15㎝弾がおよそ1000発、20㎝弾がおよそ500発、15,5㎝高射砲弾が600発程度でそれ以外の砲弾はほとんどありません。」
このあとの戦闘に使う量の事も考えると、非現実的だった
その時、執務室内にコンコン、という乾いた音が響いた。
南渡「なんだ?」
通信兵「通信科の山谷です。大本営からの通信が届いたので、ご報告に参りました。」
南渡「入れ。」
山谷「失礼します。報告致します。『我、ソチラガ窮地ニ立タセラレテイルト思ヒ、援軍送ル。到着ハ明日ノ夕方。砲弾ト人員ソシテ道具ヲ送ルノデ最大限活用サレタシ。賀楠田ヨリ』以上です。」
思わずおお、という声が漏れる。砲弾が届くのならば、量にもよるが阿武隈の案で拠点を作って、水際防衛戦を行う事が出来る。
多譯「先ほどの案が現実味を帯びてきましたな。」
その通りだった。
南渡「他に何か考えが有る者はいるか?」
誰も何も、言わなかった。
南渡「では、この作戦でいいな。工期や、人員の配置はこのあと、私と多譯、大井で行う。以上解散。」
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=第41鎮守府補医療室内=
夕張「よし、これで大丈夫!」
夕立「ありがとうっぽい‼」
夕張「・・・それにしても、被害が大きいわねぇ。」
???「おお、久しぶりやなぁ夕張!」
後ろから突然声を掛けられた。この特徴的なしゃべり方は、
夕張「なんだ、龍驤さんですか、お久しぶりですねぇ、1年ぶり位でしたっけ?。」
龍驤「そうやな、もうそんなにたったんか。調子はどうや?」
夕張「ぼちぼち、といったところですねぇ。それにしても凄い被害ですねえ。轟沈がなかったのが救いなんですけど。」
龍驤「まあ、仕方あらへんなぁ。何しろ提督を」
夕立が慌てて振り向き言う。
夕立「龍驤‼それ以上言っちゃダメっ‼」
龍驤「あ、あぁ。いや、今のやっぱり忘れてもらえへんやろうか?」
夕張「ええ、分かりました。」
・・・忘れて欲しいと言われてしまっだが、なんとなく察してしまった。どうやら、私もこの火の中からは逃れられ無さそうだった。