敵航空機の、空襲から一夜明けた。昨日の空襲では、221名もの戦闘員が亡くなった。重症者も多く、医療部隊は一睡もすることができなかった。
医務室にて
兵士3「うぅ、あぁぁ。」
衛生兵2「しっかりせいっ、おいっ!」
兵士3「はぁ、はぁ、頼む、もう楽に、してくれ。」
衛生兵2「何をいうちょる!気をしっかり持たんかっ!」
兵士3「次、生まれて来るなら・・・もっとじ、じゆうな・・・せかい・・・・・・に」
衛生兵2「おいっ!おいっ!しっかりせい!・・・くそぉっ!」
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工廠にて
扶桑「はあっ、はあっ、はあっ、」
島風「高速修復剤持ってきたよっ!」
山城「早くお姉さまにっ!」
島風「えいっ!」
扶桑「はあっ、はあっ、ありがとう・・・助かったわ。」
それでも作業を休むことは許されなかった。今日もおそらく空襲はあるだろうし、敵が来るまでに、もう一週間も無いのだ。
工兵1「はようツルハシ持ってこい‼」
工兵「はあっ、はあっ、す、すいません!」
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夕張「次はここです‼」
木曾「撃てっ!」
夕張「次は南西100㍍の岩にお願いします!」
木曾「分かった‼」
とにかく時間がなかった。執務室、現場、医療室、工廠全ての場所で。
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南渡「大本営から通信があった。今日の夜再び増援を送ってくれるそうだ。」
多譯は苦笑した。
多譯「あの大本営がですか。」
東洋帝国の大本営は、大抵味方が押し込まれている時は失敗した時に責任の押し付けあいになってしまうので、増援を出し渋る癖があるのだ。
南渡「なんであれ、増援が来るのだ。文句はあるまい。さすが賀楠田大佐だな。」
コンコンという音が響いた。
龍驤「失礼するで!」
南渡「入れ。」
わりかし小柄な女の子(まあ艦娘なのだが)が入ってきた
龍驤「提督とは、初めましてやなぁ。ああうちは軽空母龍驤や、よろしく。」
南渡「ああ、よろしく。」
今日、彼女に来てもらったのは他でもない。このタイミングだが、艦娘が何故提督に怯えるほどに追い詰められているかを聞くためだ。何故、龍驤なのかというと、夕張から龍驤と話すよう、唐突に勧められたからだ。
南渡「まあ用件は大井から聞いた通りだ。」
龍驤「ホンマ変わった提督が居るもんやなぁ。そんな提督初めて見るわ。で、どういう方向の話から聞きたいんや?」
南渡「どういう方向とは、一体どういう?」
僕が、何かを知っている前提で話されても困るのだ。
龍驤「質問を質問で返されてもなぁ・・・。まあ、つまり、原因が聞きたいんか、始めから対処法を聞きたいんかっちゅうことや。」
時間を考えると、対処法を聞いた方が早いのだろうが、深い理由があるんだろう。敢えて、原因から聞くことにした。
南渡「分かる範疇でいい。原因を教えてくれ。」
龍驤「分かったわ。そもそもうちもここの鎮守府補の出身やったんやで。」
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5年前:第41鎮守府補
龍驤「軽空母龍驤や、よろしく‼」
黒部「・・・」ジー
龍驤「・・・一体どこ見とるんや?」
黒部「なんだ、空母だから期待してたのに。」ボソッ
最初から失礼な奴やなぁ。とうちは思った。
でも、これで有能だったら、まだ文句はなかった。
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黒部「さっきの演習の様はなんだっ!このカスどもがっ」
曙「はぁ⁉あんたこそなんなのよ‼ろくな指揮も出来ない癖に!偉そうな口を叩くなら、もっと学習してからにしたらっ!」
黒部「はあっ?!そんなもの現場の判断で何とかすればいいだろう‼」
現実は自分の思い通りにならなかった。いつも、こんな調子だった。
曙や、時々大井がキレ、それに黒部が反論する。それなら、別に黒部が言っている事が正しければ、問題はなかった。むしろ互いを向上させる、いい関係だった。
しかし、実際は戦闘している最中にもかかわらず、夕張にセクハラを延々と行っているのだ。こちらの指揮をほっぽりだして。彼女らがキレるのも無理はない。
自分で言うのも何だが、穏やかな私ですらストレスがたまっているのだ。
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そんな歪な生活が半年も続いたある日の事だった。事件が起こった。
その日もいつものように彼女らは喧嘩をしていた。しかし、今日は迫力が違った。
黒部「うるさいだまれっ!何故俺がセクハラをしていると言われなければいけないのだっ!」
そう言いながら、黒部はおもいっきり曙をビンタした。
曙「痛った!いい加減にしなさいっ!あんたの行動は誰がどうみてもセクハラじゃない‼憲兵さんに聞いてあげましょうか‼」
話題は夕張の事についてだった。理由は知らないが、夕張はセクハラされ続けていた。その事を曙達に聞いても渋い顔をして、結局はぐらかされてしまった。
喧嘩は暴力を振るうまでに発展していた。
黒部「うるさい‼」
黒部は再度手を振り上げた。
しかしその手は曙に届かなかった。黒部の後ろで沈黙を続けていた男がしゃべった。
???「お二人とも一回落ち着いて下さい。この事は、そんなに簡単に済むような話ではありません。そもそも、何も知らない方もいるのです。これ以上はお止め下さい。」
黒部「くそっ。いつか解体してやる。」
なんとかその時の騒動は収まった。
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龍驤「まあ、今日はこんなところや。」
話は2時間半ほど続いた。
南渡「待て、それだけじゃあ、曙達が怯えている理由に結びつかないじゃないか。」
龍驤の瞳から光が消えた。何度か見たことがある瞳。そう、夕張や、曙がしているような、どす黒い瞳だ。
龍驤「・・・これ以上は・・・話しとうない。」
さっきまでの龍驤からは、考えられない程のか細い声が聞こえた。
龍驤「嫌なんや・・・あの日々が。今でも夢を見るんや。」
龍驤は泣いていた。気丈に振る舞っていただけで、黒部という男は龍驤の心にも相当なトラウマを与えていたらしい。
南渡「・・・すまなかった。」
龍驤「こちらこそ、申し訳あらへんなぁ。うちが不甲斐ないばっかりに。」
その時、再びサイレンが鳴り響いた。
龍驤「そういや何で提督はんは、昨日航空部隊の発進を許可しなかったんや?」
南渡「気にするな。ああ、空母達に伝えといてくれ。敵艦隊が来るまでは航空部隊を温存しておくように、とな」
龍驤「質問に答えてぇな。はぁ、まあうちはもういくで。」
南渡「ああ、お疲れ様。」
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空にはゴマ粒のような点が無数に飛び交っていた。
春雨「はぁ、はぁ、敵が多い‼」
嘆きながら対空機銃で撃ちまくる。私の艤装は、すでに撃ち尽くしてしまった。
吹雪「そんなこと言ってても仕方がないよっ!」
分かってる。そんなことは分かっているのだ。
兵士4「なっ⁉グハッ。」
吹雪「あっ!春雨ちゃん!ちょっと離脱するけどいいっ?」
優しい吹雪の事だ恐らく今撃たれた兵士を助けに行くのだろう。
白雪「私が援護するっ‼さっさと行ってきて!」
吹雪「ありがとう!」
吹雪が兵士のもとへ駆けていく。
凄いな、と思った。私は、周りに気を配る余裕すらないというのに
上から甲高いヒューという音が聞こえた。嫌な汗が背中から流れる。音のする方に目を向ける。始めは、米粒のように小さかった影は、どんどん大きくなって、大きくなって、大きくなって。
・・・視界は光に包まれた。
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私が兵士の元に駆け出した時、後ろで恐ろしい音が聞こえた。恐る恐る後ろを振り替える。
そこには、さっきまで一緒に戦っていた二人の姿はなかった。
吹雪「ふぇ?え、え、春雨ちゃん?白雪?」
パニックになってしまう。まさか!
兵士4「・・・戻れ、おらは、自分の止血位自分でする。」
吹雪「っ!すいません‼すぐ戻ります!」
慌てて、先ほどの場所まで駆け戻った。
そして見てしまった。その場にへたりこむ。
吹雪「え・・・嘘そんなっ!うっ!おろろろろろろろろろろろろろろ」
そこには、目から光の消えた仲間だったものがあった。
ー兵装紹介 対空砲ー
・高射砲
〇十五年式高射砲(50口径125㎜単装砲6基)
〇二四年式高射砲(75口径90㎜連装砲2基、同単装10基)
〇四十七式軽高射砲(50口径45㎜単装砲14基)
〇試作艦娘用高射装置(扶桑型用2基)
・対空機銃
〇ホーレンス式対空機関砲(50口径25㎜連装砲15基)
〇六六式対空機関砲(60口径30㎜トーチカ連装砲2基、トーチカ単装砲6基、単装砲6基)
〇五八式重機関銃(45口径12㎜トーチカ用24基、露出14基)