魔法科高校のアンチテーゼさん   作:あすとらの

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さきがけのカーテンコール

社会とは争いの連続だ。大なり小なり、常にそのリスクに晒されるという意味では人は平等だ。ただ、不平等でなくなるのは、それによって得るか失うか。楡井修平は、後者だった。

 

頭脳明晰で、平等を重んずる正義漢の非魔法師。たったそれだけの理由で彼は家族を奪われ、恩人を殺されかけた。苗字で通じるような名家でない、ごくごく一般的な家庭の楡井家。そして、魔法師としての才能は遺伝しやすい。そこで奪う側の者達は考えたのだ。

 

凡庸な家庭から生まれた天才、楡井修平というイレギュラー。IQ200超、コンピュータと競えるレベルの並列演算能力、それに加えて類い稀な身体能力と完璧なボディイメージ。

 

家は関係ない。つまり、たった一人生まれた特異点を消し去るだけでいい。そうして彼は、狙われた。

 

魔法師としてさえありえない才能を持つ、非魔法師。だから彼は、命を狙われた。

 

「おいお前ッ!」

「………あ?誰だてめえ」

「一科生の森崎だ!」

「知らねえな。お前に用はない」

「僕達は用があるんだ!いいから———」

「知らねえっつってんだろ。話しかけんなモヤシ野郎。次同じことしたら死ぬまで殺すぞ」

「ぐ、ぐがぁ………あ、が………うぐ………」

 

———金も権力もコネもない一般人。だから俺は、生きてちゃいけないのか?

 

騒動が沈静化した後も、そうして、彼の心を苛み続けた。永遠に答えなんて出ないんじゃないか。今彼は、出口の見えない闇の中で手探りをしているのだ。

 

◆◆◆

 

放課後の出来事は、さらに追い討ちをかける。

 

『全校生徒の皆さん!僕達は学校の差別撤廃を目指す有志連盟です!』

 

有志連盟を自称する二科生の生徒達が、生徒会と部活連に対して差別完全撤廃を要求。それが通るまでは放送室を出ないと宣言した。

 

魔法は実力主義。それは認めるが、魔法以外の分野でそれが横行するのは我慢ならない。自分達は学生だ。要点はそういうことである。

 

「……………」

「……………」

「………話は分かった。で、何で来た」

 

それ自体、起こることは修平予想の範疇に収まっていた。ジャックするというのはやや強行が過ぎているが、何かしらの穏やかでない手段で主張を押し通そうとすることも。だからこそ、不機嫌を貼り付けて邪魔するなオーラを前面に押し出していたのだが、それが通じない相手がいる。

 

「いやあだって………怖いじゃない?」

「うるせえな。部活連のゴリラに守ってもらえばいいだろ。()()()二科生に遅れる奴じゃねえ」

「私が一緒にいてほしいのよ!悪いッ!?」

「お前いよいよ言い訳しなくなったな」

 

まだるっこしい建前すらなくなった真由美。それはある意味防御を捨てた戦士と同じで、猪突猛進だからこそ恐ろしい。バランスなど意識せずに攻撃一辺倒になるもので、その面倒さと言ったら、あらゆる人間と比にならない。

 

「昨日のことなら、私も貴方も無事だったじゃない。お互いこうして五体満足でいられたのは、貴方が強かったからよ」

「うるせえ。そういう問題じゃねえんだよ。お前みたいな楽天家のせいでいらん心配までさせてんだ」

「………じゃあ、そんなに貴方にとって引っかかる何かがあるなら、今、挽回するべきじゃない?」

「チッ………」

 

あいも変わらず、卑怯な言い回しだ。きっと二人は同時にそう思っただろう。片方は忌々しそうに、もう片方は自嘲気味に。

 

「プランは」

「どうにかして扉を破って、お得意のビリビリ銃早撃ちでささっと無力化する感じ?」

「実質無策じゃねえか、このアンポンタン」

「アン………じゃ、修平君はどうするつもり?」

「差別撤廃派の先鋒はお前だろ。何を怖がってる?お得意の長広舌で、演説でもすればいい」

「そんなこと出来ないわ」

「出来るかどうかじゃない。やるんだよ」

 

一体何の冗談か。いや、実際にいつものタチの悪い冗談と思った真由美はそれを苦笑で回避しようとするが、有無を言わさないほどの鬼気迫る表情で彼はそれを許さない。

 

「差別はなくしたいけどとりあえず二科生は制圧しますやったーさすが真由美先輩バンザイ一科生バンザイ。こんなもんが通ると思ってんのか。お前とお近付きになりたいお花畑野郎共が、お前らが出張った事態の収束でどういう反応するか分からんほど馬鹿になったのか」

「それは………」

 

どうにかして事態を収束させたい。それには風紀委員会の力を借り、有形力の行使によって鎮圧するのが最も手っ取り早い、かつ安全策である。しかしその安全というのは、二科生の安全ではない。

 

二科生がなんか主張してたけど、やっぱ魔法とその名家には逆らえないんやなって。

 

そんな風潮が生まれれば、ある意味従来の差別より深く根を張る事態になりうるだろう。

 

「武力で制圧したいなら勝手にしろ。だがその瞬間、お前は生徒っていう踏み台を使ってヒーローになったことになる」

「……………」

 

そんなこと、到底許されない。それは何より、差別を容認しない真由美がよく知っている。しかし修平には、いつだか摩利が言っていた言葉が頭から離れない。

 

正義と秩序のために風紀委員の腕章をつける者が全てではない。中には、二科生への侮蔑という邪な思いでその職務を遂行する者もいる。

 

「………どうすればいい?」

 

蚊の鳴くような声で、真由美は縋った。もう今は、生徒会長だとかそういう肩書を投げてでも、自分の正義に殉じたかったから。

 

「言っただろ。話し合えばいい。その場で正論かまして打ち負かそうが何しようが、今言ったようになるよかマシだろ」

「もしも、逆上した誰かに襲われたら?」

「万能の魔法師だろ。自分でどうにかしろ」

「いつだって、魔法が絶対的な力じゃない。そう教えたのは貴方よ。それにもし………彼女が現れたら?」

「……………」

 

彼はくだらない、とばかりに鼻で笑った。

 

「お前を死なせないと約束した。これ以上は言わせんな」

 

真由美は、笑わなかった。

 

◆◆◆

 

2日ほど経った頃。講堂では、公開討論会が行われていた。緊張した様子でパイプ椅子に腰掛ける同盟側の生徒と、相対する生徒会長の真由美。聴衆は前半分が一科生、後ろ半分が二科生。舞台袖には生徒会の面々と、不測の事態に備えて風紀委員会もスタンバイしている。

 

討論会の真っ只中に結論を出すのは性急だが、こればかりは勝敗が見えている。

 

ディベートの能力、多数の聴衆がいようとも物怖じしない姿勢、どれをとっても真由美は同盟側の生徒を圧倒している。データと数字を用いて論理を展開する真由美と違い、あちらは、差別されてるので撤回、撤廃してくださいの一点張り。それは討論というより、駄々をこねる生徒をいさめる説得のようだった。

 

「楡井君、私だ」

 

目はしっかり弁舌をふるう真由美とその周辺に向け、しかしトランシーバーを使って、摩利は事の張本人を呼び出す。

 

「おっすー摩利ちゃんぬ。どったの?」

 

あっけらかんとした様子、というか悪びれる様子がないだけだが、修平は明るく答える。

 

「何、生徒会長を脅した張本人がいないのが寂しくてね」

「心外だなあ。間違ってはいないべ?」

「それには同意するが………ここまで話を大きくする必要があったのか?」

「それは知らん。俺が大きくしたんじゃない、勝手に野次馬が集まっただけだからね」

 

彼の言う通り、彼自身もここまでの大ごとになることを予想はしていても、それを許容するとは思っていなかった。一科生は、生徒会長が身の程知らずの二科生をコテンパンにするところを見たくて。二科生は逆に、一科生に対して一矢報いることを望んで。それが超満員の理由だ。

 

「今どこにいる?」

「学校に決まってんじゃん」

「そういうことではなくてな………学校のどこだ?」

「放送室」

「それはまた………何故?」

「スピーカーってのは指向生ひとつで簡単に集音器になる。情報収集なうだよ」

「そうか………何か気がかりがあるんだな?」

「そりゃね。摩利ちゃんぬも気付いてるだろうけど、作戦成功。陽動と本隊を上手く切り離せた」

 

席に空白がある。

 

反魔法師団体のブランシュと、その下部組織であるエガリテ。それらが深く関わっていることに関してはある匿名の情報筋から分かっていたことだったが、それに生徒が所属していると知った時は目と耳を同時に疑った。それでも、こうして実際にここにいない二科生を見ると、疑念は実感へと変わっていく。

 

「壬生さんはそっちにいるかい?」

「………いない」

「やっぱり壬生さんもエガちゃんに入ってたのか」

「驚かないのか?」

「学校がどうにかしてくれないなら校外に助けを求める。それくらい当たり前だべ?」

「そうだな………」

 

悲しいが、もどかしいが、悔しいが、そういうことなのだ。結局学校は、有能ならばそれでよし、無能ならば捨て去るという間引きによってエリート校と呼ばれてきた。こうした分裂も、大人達にとっては瑣末な問題なのだろうか。それが摩利にとっては解せない。

 

「君はどう思う?」

「何が」

「差別についてだよ」

「それ壬生さんにも聞かれたなー………」

 

若干間延びするように、気怠げになったあと。しかしすぐに考えるように唸って、あるひとつの答えを示した。

 

「150年以上前、アドルフ・ヒトラーはあえて被差別階級を作り出すことで国民を一致団結させた。その階級に落ちたくないがために国民は努力をして、識字率も平均知能指数大学進学率も高くなった。思うに、善でも偽善でも独善でもない、良くなったっていう結果論だけ残るのが、必要悪なんじゃないかな」

 

あくまで、そういう思想。そういう仮説。そういう考察。それだけのはずなのに、どこかそれには説得力というか。学生の思い付きのはずなのに、学術書に載っていたらうっかりなるほどと言ってしまいそうな言葉だった。

 

「君は自分を正義だと思うか?」

「アッハハ!何じゃそりゃ!そんなん思ったこと一回だってないよ!」

「そうか、それは———」

 

慌てて摩利は口を閉じた。

 

———正気でいてくれたようでよかった。

 

彼のあんな話を聞いた後に、こんなことを言うなんて非礼もいいところだ。

 

「ま、高校生らしくテキトーにやってるよ。ちょっとやることあるから切るね〜」

「あ、ああ………分かった。ありがとう」

 

始終やたらご機嫌な口調で、そのまま通話を切った。

 

「さて………」

 

向き直ると、最早真由美の独壇場になったと言っても過言ではなかった。

 

そもそも、これは真由美にとって舌戦による争いではない。悪しき風習を打ち破りたい気持ちは嘘偽らざるものだという、一般生徒達への宣言であり、その意思を汲もうとしない同盟に相対したのは正直、彼に言われて気付かされなければなければやらなかったことだろう。人の気持ちなど簡単には曲がらない。信じるものがあれば、余計に。だからこそ、生徒会長という立場を人質にして公約を掲げたのだ。

 

こうして討論会は、真由美の意思確認という形で終結———

 

「………!窓から離れて!!」

 

———したらどれほどよかったか。目付き鋭く放った真由美の言葉によって風紀委員と生徒会が臨戦態勢をとる。窓を破って飛び込んできた円筒型のそれは、床で少し跳ねたあと煙を吐き出した。

 

「ガス弾か!!」

 

動いたのは、副会長の服部だった。展張を続ける煙幕に腕を伸ばすと、煙はビデオの巻き戻しのように収束していき、最後は球状に集まっていく。慎重に操作し、お返しとばかりに投げ込まれた窓からガスの塊を放り出した。

三体のうち、最も自由に流動する気体を精確に操作するには、相当な実力が必要だ。将軍(ジェネラル)の名は伊達じゃないというか。驕りとそれによる怠慢で敗北を喫したことはあったものの、本来の実力は相当なものである。

 

「皆さん落ち着いて!この場は生徒会と風紀委員が対処します!」

 

混乱が伝染し始めるが、三巨頭という精鋭の力強い言葉に縋った。もとい、落ち着きを取り戻した。

 

「もしもし修平君?何企んでるか知らないけど、今講堂は大変だから!」

「心配すんな。何なら手伝ってやってもいい。もうちょいで用事も終わる」

「………修平君がそう言うってことは、貴方の助けが必要な事態が来るってことね?」

「まあな。問題ないってんなら、ここで見物してるよ」

「すぐにお願い。敵の狙いは図書館内の研究資料よ」

「イエスマム」

 

陽気な様子で修平は通話を切った。

 

胸騒ぎがする。彼が自ら加勢に名乗りを上げたということは、単なる暴徒ではないということだ。

 

「……………」

 

自分達ならば、やれる筈。そんな自信が、どこか幻想のようで。彼の姿を見てしまってからは、魔法に秀でているから大丈夫、という文句がひどく言い訳に聞こえてならなかった。

 

それでも、そんな心配をよそに、銃で武装した襲撃者達は、三巨頭をはじめとする実力者達に次々と無力化されていく。

 

摩利は、気体分子に干渉するMIDフィールドと呼ばれる魔法を駆使して、マスクの内側の酸素濃度を操作、窒息死しない程度に手加減しているとはいえ急激な酸素欠乏によって男達は崩れ落ちた。

 

「………!」

 

しかし、これも彼女が聡明だった結果だろう。胸騒ぎの正体はすぐに判明した。

 

「摩利!十文字君!」

 

◆◆◆

 

実技棟入口前。そこでは、達也達が敵の攻撃を食い止めていた。

 

食い止めるというより、実力差が圧倒的で反攻作戦すら可能なのだが。パンツァーと呼ばれる、レオが得意とする硬化魔法で普通の殴打や刺突は通じず。武道に明るいエリカと自己加速術式のコンビネーションは凶悪で、ヒットアンドアウェイに徹されてはそれだけで敵は彼女を捉えられない。

 

深雪の戦法は実に多彩で多才だった。加重系で数人を纏めてその場に拘束したり、武器を狙い撃ちで氷漬けにして破壊したり。魔法師として成熟していると言われてもおかしくない、技術と臨機応変な対応力、状況判断力に優れていなければ出来ない芸当だ。

 

一方で達也は、少々異端だ。白兵戦ではあるが、魔法を一切公使しない。100パーセント身体に依存した戦法である。ただこれは、彼だからこそ可能という側面もあり、身のこなしや体術によって魔法というハンディキャップを見事に克服している。

 

「何だ、大したことねえなあ」

「油断してズッコケても知らないわよ?」

「うっせえなあ。そっちはどーよ、達也」

「問題ない。深雪、そちらはどうだ」

「問題ありません。もう終わります」

 

不意打ちという点において上を行ったものの、そこから乱戦に持ち込まれてからは、魔法科高校側が質で圧倒していると言ってもいい。兵士として凡庸ならば、油断しなければこのまま勝てる。

 

「悲しきかな、悲しきかな」

 

凡庸ならば、の話だが。

 

「何、あいつ………」

「おい、ヤベエんじゃねーの?」

 

黒のレインコートに、ガスマスク。武装した襲撃者達とは明らかに違う。手には、『surprise!』とラメが散りばめられた文字が書かれている長方形の箱。それを、大事そうに両手で抱えている。

 

「お前は………」

 

あの時、帰り道で待ち構えていたガスマスクだった。達也はあの時のお返しをしてやろうと構えたが、やがてそれに話しかけた。

 

「ひとつ、聞いておくことがある」

「何かね、悲しき人よ」

 

あの時の言葉を総合し、分析し、推測するのなら。ある答えにたどり着く。達也もこんな答え見つけたくなかったが、間違いであると信じたかったが、それでも仕方のないことだ。

 

「もしかしてお前は、楡井修平なのか?」

 

支離滅裂で、意味の通じない喋り方。あれは、模擬戦で摩利と相対した時の修平と似ていた。まったく同じ、というわけではないが、特徴が当てはまる。自己修復術式の機能不全も、彼が高周波ブレードを封じたものと同じ原理を使っていたとしたら不可能ではない。強烈なデジャヴは、いつも見ていたゆえだろう。

 

「………それはナンセンスな問いである。悲しき人よ」

「どういう意味だ」

「いつだか、その楡井修平が話したであろ。ケーキを等分した時、分けられたそれらを偽物と本物で区別するようなことはしない。つまり、そういうことよ」

「………にわかには信じられないな。お前も分けられた存在だと?」

「違うな」

 

やや食い気味に、それを否定する。

 

「なあ達也、どういう意味だよソレ」

「そのままの意味だが」

「いやいや、分からないってそれ。ちょっと私達にも分かるように説明してよ」

「むううん、そちらの人々はそんなに悲しきかなじゃない。事情を知らなんだか」

 

とにかく正体を暴こうとして突っ走る。そんな達也の姿勢を危惧して、エリカとレオは止めに入ろうとする。

 

「無残」

 

ガスマスクが箱を開けると、造花の赤いカーネーションが溢れる。そして取り出されたものは、やはりあの時と同じ。本来は獣を撃つために使用される筈の散弾銃だ。しかし今回はピストルグリップで、銃床と銃身を切り詰めている。

 

「貴様………」

 

銃口は真っ直ぐに達也の方を向いている。

 

———これが、命の危機というやつか。あまり実感が湧かないな。

 

死ぬ時は、魔法によって死ぬと思っていた。そうでなくても、いつの日か命が終わることも予想はしていたが。

 

こうして魔法以外の何かによって死ぬなんて、とても———

 

「オラァお鼻敏感野郎!そのガスマスクのフィルターに納豆突っ込んでやろうかこのボケ!!」

 

ドンドンと、叩きつけるような足音が響く。もしや新手かと思考を切り替えて構えていたら、それは敵ではなかった。

 

あるいは、味方でもないが。

 

「修平………」

「おっす。突然だけどこいつの相手は引き受けた。みんなは他のとこの手助けしてちょ」

 

彼らの前にタイミングよく現れたのは、修平だった。それはいい。それだけならいい。しかし今回の彼は、それだけじゃない。戦っていた四人が、はい分かりましたと頷き難い理由はその得物である。

 

「修平君、何でそんなの………」

「あん?ああこれ?何って深雪ちゃん、別に、俺のお手製ってだけよ?魔法師なんてこれよりえげつないもん持ってんじゃん」

「でも………」

「でももヘチマもないんだよお。いいからさっさと行った行った」

 

彼が手に持っていたのは、マットブラックの、なんてことのない、ごくありふれた機能しか持たない、自動拳銃。

 

魔法の中には、既存の武器をはるかに凌ぐ火力を持つものも存在する。というより、深雪はそれを扱える。しかしそれでも、長年の時を経て植え付けられたイメージはそれをも凌ぐのだ。銃とは人を殺すもの。魔法は人を殺す以外も出来るが銃はそれが叶わない。だからこそ、持つべきではない。そんな棚上げのような理論が、その場の四人全員の頭を支配する。魔法はいいけど武器はダメだ、と。

 

「………あとで説明してもらいますからねッ」

「いいともいいとも。ほれ、早う行きんさい」

 

しかし、専門職は専門家に任せるべきと、それもまた総意だった。戦力に穴があるのならば、そこを塞がなければならない。ガスマスク一人に魔法師四人では、相性も効率も悪い。四人は劣勢、あるいは拮抗している場所に援護に向かうためこの場を離れた。

 

「久しいな、贋作」

「本物偽物っていう区分は正しくないって、お前が言ったんだぞ」

「黙るがよろし。もとより贋作はどこまでやっても贋作以上になり得ない」

「会話ってやつをしてほしいね。俺は出来るぞ」

「貴様の本質はこの世に生まれ落ちた時から不変のものだ。時に………」

 

黒いレンズの双眸で、達也達が走り去った方向を見る。

 

「あの魔法師達は何か」

「友達だけど」

「………遂にこちらも血迷ったか?」

「そんなわけあるかよ、お前じゃあるまいし」

「ならば問いを変えよう。本気か」

 

顔はマスクで覆われて見えない。声はボイスチェンジャーで加工されていて、声質が分からない。それでも、ガスマスクが怒りに震えているということは観察ではなく直感で得たものである。

 

「ああ。残念ながら本気だよ」

「……………何故」

「高校生なもんで。友達くらいほしいと思うお年頃さ」

「ふざけるな」

「ふざけるわけあるかよ。こちとら友達作りに色々犠牲にしてきたんだぞ」

「何故ッ。何故よりによって、魔法師を友人などと呼称する?理解出来ない。理解、理解、理解理解理解理解理解理解理解理解理解理解理解理解理解理解理解理解理解理解理解理解!!」

 

———まだバグがあるのか。予想外だったが、そうでなくても案外簡単なものだ。これは幸運が舞い込んだ。

 

「やっぱり魔法師と友達になるなんて、すげえインパクトだよなあ」

 

今まで、へらへらと軽薄そうに笑っていた修平の顔は、突然限界まで口角を吊り上げ、歯を見せて笑う嗜虐的なものに変わる。

 

「会いたかったよオ!!()()ッ!!ここでお前の腹かっさばいて内臓爆散させて骨砕いて、消し炭にしてやる!!」

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