魔法科高校のアンチテーゼさん   作:あすとらの

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難産だったもう一個の小説をやっと投稿できて、ちょっとすっきりしたあすとらの。まだ最終回じゃないのにね。


三妖

放課後。廊下を歩く修平は数度目になる問いかけを、隣を歩く達也に投げていた。

 

「何故俺?」

「会長から言われた。許せ修平」

「ま、まあ………皆さんいい人ですし」

「そう思われたいだけだよ、総代。俺はああいう、隠したつもりでいるような『裏に闇がある俺カッコいい』みたいな奴が大っ嫌いなんだ」

 

司波兄妹と修平は生徒会からの呼び出しに応じ、生徒会室に向かっていた。しかし、一年生を生徒会入りさせる件が三人の話題であった筈なのだが、今はただの愚痴と化してしまっている。

 

「授業環境も最悪、クラスメイトも最悪、その他の扱いも最悪と来たもんだ。ここ作った奴はよく訴えられなかったな」

「必死なんだろうさ。即戦力の確保に」

「有能な魔法師の確保は、国策ですからね。黙認のようなところもあるのだと思います」

「なるほどね………」

 

修平はつくづく思う。魔法師の世界に本格的に突っ込むことなく済むであろう人生で良かったと。そして、魔法師の世界に片足を突っ込んでいる現状への後悔を。

 

「前も誰か言ったと思うが、どうして修平は魔法科高校に?ここに入れるくらいの教養があれば、別に魔法を学ぶ必要だってない。お前のストレスだってなかったんじゃないか?」

「そういうわけにはいかんのよ。達也、俺はね、金と家族と悠々自適な休日のためなら地獄に飛び込むし悪魔も神もぶっ殺す。お前さんもそうだろ?」

「………そうだな。俺も、深雪に仇をなすなら容赦はしない」

「お兄様………」

「イチャつくのはよしてくれ」

 

笑いながらも話が変な方向にシフトしていったところで、生徒会室が見える。

 

「おっじゃまー」

「おい………はあ………」

「お邪魔します………」

 

修平がノックをすることもなく、勢いよく扉を開ける。それに続いて指摘を諦めた達也と困ったように笑う深雪が入室する。気安い笑顔で座る真由美と摩利、そしてよろしくない感情を持つ男子生徒が一名。二科生の二人を素通りし、深雪に爽やかな笑みを浮かべる。

 

「副会長の服部刑部です。司波深雪さん、生徒会へようこそ」

 

ここまで露骨だといっそ清々しい。達也は特に反応を示さず、修平は鼻で笑った。

 

「ノックくらいしなさいな」

 

困ったように真由美は笑う。

 

「ノックしたら回れ右して帰れって言ってくれたか?」

「そんなわけないじゃない。もう今日は大型新人ゲットに命かけてるから」

「ほぉう。ベタ褒めじゃねーか総代、もとい司波妹」

「わ、私ですか?」

 

明らかに本命が深雪、そのオマケで二科生が二人付いてきたとしか思えない構図。だがそれは修平にとっても都合がいいことだった。

 

「あら、お名前呼んでほしいならちゃーんと全員呼んであげるけど?」

 

………のは、過去の話。最近は真由美も腕を上げたというか何というか、必死故になのか、段々と手段を選ばなくなっている。それが修平の虚を突いているのだが。

 

「アホか。マトモじゃねーって自分で言ってて思わねーのか。手品バカ女。お前がやりたいことやった瞬間に俺はここでバーベキューパーティーするぞ」

「まあ座りなさい。その辺含めて話すために今日は呼んだのよ」

「事故が起こるぞ」

 

脅しらしい脅しはしたが、効果は今ひとつ。

 

「起きない………いいえ、起こさないわ。だから呼んだんだもの」

「まるで俺のことを知ってるみたいな言い草だ」

「この中で誰よりも、ね」

「………そりゃまた」

 

真由美があずさに命じると、深雪は別行動となる。当然と言えば当然、それもまた差なのだから。

 

「さて………行こうか」

「いやちょい待て」

 

さも当然のようにそう言った摩利に修平が食ってかかり、足を止めさせる。

 

「何だ?」

「ここで済ませろ。長居するつもりはない」

「今なら委員会本部にも招待するが」

「何だその嬉しくない初回限定特典。あのな、俺が今一番困ってるのはお前とそのお仲間の指揮下に入るってことだ」

 

なし崩し的、あるいは先輩としての権限でごり押しされても困る。ここで修平が最も避けるべきは、いいように使われること。委員に入ることを受け入れれば、それだけで断るという行動の大義は大半が失われる。

 

「君の力は役立つと聞いたのだが」

「そりゃ風紀委員会にとってだ。こんな名誉職で毎日雑魚の掃除なんて、続けてたらどっかしらおかしくなるぞ」

「随分じゃないか。そこまで実力に自信があるのか」

「魔法で戦おうとする時点で負けてんだよ。お前の右手が惜しくないなら証明してやってもいい」

 

摩利の背筋に悪寒が走る。三巨頭と呼ばれる実力者だからこそ、修平のその言葉が法螺でないことをいち早く察知した。挫折は味わえど、命の危機を味わうことがないのは高校生の身分であれば致し方のないこと。

 

「司波君から概要は聞いていると思うが、楡井君と司波君が風紀委員の希望だ。昼休みは色々あったからな。出来れば今日中に決めてもらいたい」

「ヤダ」

 

達也が逡巡していた丁度その時に、食い気味に、バッサリと切り捨てた。本題が来る前の嫌悪感で分かってはいたが。

 

「………もう少し考え直してはくれないか?」

「絶対ヤダ。だって———」

「渡辺先輩、待ってください」

 

二人の会話に、強引に割って入るのは、先程の一科生だ。

 

「何だ、服部刑部少丞範蔵副会長」

「フルネームで呼ばないでくださいっ!」

「ぶふっ」

 

思わぬ不意打ちに吹き出してしまう。どこの時代の人だよ、と無知なりに彼も思ったものだ。フルネームで人生を損していそうな副会長がキッと修平を睨むが、その時彼は既に達也と談笑する風を装っていた。

 

「風紀委員の補充について、お話が」

「何だ」

「そこの一年生を風紀委員に任命するのは反対です」

 

………まあ、平常運転である。修平にとっても、真由美、摩利、司波妹、十文字はやや異端に当たる存在。本当ならばこちらが反応としては正しいのだろう。

服部は厳しくなった摩利の視線に対し、負けじと真っ直ぐに見る。

 

「君が口を挟むのはお門違いだ。生徒会長の推薦と、教職員の推薦。それだけで十分というのは知っている筈だろう?」

 

ややうんざり、とばかりに、溜め息混じりに摩利はそう突き返す。

 

この時点で修平は、仮説を二つ立てた。

 

「過去、ウィードを風紀委員に任命した例はありません」

 

ですよねとばかりに、修平は笑いを堪えている。どこまでも感情豊かな彼に対して、達也はまるで悟りを開いたかのように無関心だが。

 

これ以上ないくらい分かりやすく侮蔑と敵愾心を剥き出しにした服部の言葉に摩利の眉が少し上がる。

 

「それは禁止用語だぞ、副会長」

「ブルームとウィードの間には決定的な実力差があります。これを取り繕ったところでどうにかなるわけではありません。事実これは学校の制度として認められたものです」

 

徐々に熱を帯びていく。これはマズイのではないかと真由美が制止を口にしようとした時だった。

 

「誰の人選だ。お前か、チビ助」

「………そうよ」

「目が曇るどころか節穴になってんじゃねえのか。あんなのが懐刀とは、泣かせる人手不足じゃんか?なあ、生徒会」

 

今の彼の厄介なところは、たちどころに悪い空気を振りまくというところにある。そしてそれを、慣れているとばかりに一蹴する者もいれば。

 

「口を慎め。ウィードの分際で」

 

という者も存在する。

 

「うっせーよ撃たれ好き。練習台にぶち込んで無敵気取るのも大概にしたらどうだ?」

「………何だと?」

 

売って、買った。高校生の間にはただそれだけの単純な方法で悪化するものもある。もっともこちらの場合は、最初から最悪だったが。

 

「何だ、ブルームってのは頭の中にもお花が咲いてるって?だから手ぬるいんだ、魔法師ってのは。なあチビ会長」

「……………」

「会長を愚弄するかっ!」

 

思わぬ飛び火。敬愛の対象に移ってしまったものに、服部は声を荒げる。

 

「俺としては助かってんだ。魔法師っていうのがあん時の泣き虫が会長になれるようなレベルでいてくれて。お陰でこっちもやりやすくなってる」

「貴様………」

 

怒りが頂点に達し、服部が遂に行動を起こす。右手を伸ばして胸倉を掴もうとする。こけおどしで魔法式を展開して。怒りで頭が沸騰しているが、言い訳の逃げ道を残す辺りは流石というべきか言わざるべきか。とにかく謝罪の言葉を吐かせるまで掴んで離さないつもりだった。

 

バギン———

 

そもそも、見誤っていなければ、の話だが。

 

「な………に………」

 

右腕のCADにヒビが入る。そしてそれはどんどんと広がっていき、遂には腕にはめる部分が割れて地に落ちた。

 

「ガラじゃねえだろ、副会長。威張るのは練習台の前だけにしとけ」

 

意地の悪い笑みを浮かべる修平が右手を掴む。

 

「魔法なんぞに頼るからこうなる。ご自慢の手品はネタ切れか?」

「この………舐めるなっ………」

 

恥辱で顔が歪む服部と、どこまでも楽しげに笑う修平。明らかに形勢は修平に傾いているが、それが悪化するキッカケとは限らない。不安定だからこそ、真由美は制した。

 

「そこまでにしなさい」

 

敬愛する会長の命令とあらば逆らえない。服部は睨みを利かせながらもおとなしく従った。が。

 

「ごっ………」

 

修平の鋭い右フックが服部の顔を捉える。倒れた服部は口を切って出血し、鼻血も出していた。

 

「ふん、てめえみてえな差別主義者(レイシスト)でも血は赤いんだな」

「修平君!」

「喚くなチビ。お前の名誉は傷付けないから安心しろ」

「そういう問題じゃない!今度は私でも庇えなくなるのよ!」

「こうさせたのはお前だろうが、筆頭」

「……………それは」

「今の俺は、先輩にいちゃもんつけられた可哀想な新入生だ。そいつが予想外に至上主義者で、目が合うだけで親の仇みたいに嫌われる。差別撤廃派の会長の腹心がこいつの理由を聞いたらキレ出した。一科生で生徒会副会長に迫られた可哀想な新入生は自分に出来る精一杯の自己防衛をした。これはそういうことだ」

「……………」

 

閉口する。言葉が見つからないから。イエスかノーかの簡単な意思表示が出来る筈だが、誰もそうしない。最も重要なのは、生徒会のトップたる真由美の決断だが、しかし。ここで彼女は言葉を失ってしまった。

 

修平の言葉は、決して間違っていない。嘘は何一つとして言っていないのだ。それが閉口の原因となってしまっている。

 

「ウィードの分際———っでぇ!!」

 

今度はサッカーボールを蹴り上げるように服部の腹を捉えた。

 

「今回は激しく競り合ったみてえだ」

 

修平は白々しく話す。

 

「ごほっ………ぐ………ふぅ………」

「やっぱりあの人は正しかった。魔法師なんて案外こんなもんだ」

 

失望した、という言葉は当てはまらない。事実を確認した、というのに近い。そして視線を外し、懐に手を伸ばす。

 

「ダメっ!」

「ぶっ」

 

が、それを力技で止めたのが真由美である。どうにかして止めたい。しかし有効打が浮かばない。達也も達也で、自らの秘密を守ったまま止められるかどうかに疑問符が浮かぶ。二人が攻めあぐねていると、今まで静観していた筈の真由美が突然動き出す。タックルと見間違うような速度で修平にしがみ付いた。

 

「ダメ………ダメなの………」

 

何かおかしな気配を察したのか。真由美は呪詛のように『ダメ』と吐き出している。

 

「お、おい………」

「会長………?」

 

何の前触れもない、あまりに突然な彼女の変化に対応出来ずにいる。必死なのは伝わるが、何にどう必死になっているかがまるで見えない。

 

「……………」

「お願い、お願いだからっ、お願いだからそれ以上はやめて………」

「……………はあ」

 

涙声で、いつか落涙するのではないかとヒヤヒヤさせるほどに儚げになった真由美を見て、修平はひとつ溜息を吐く。

 

「別にそこまで間抜けじゃない」

「あっ………」

 

心配されるのは願い下げとばかりに、しがみつく真由美を突き飛ばす。

 

「別に長引かせることもないだろ。風紀委員に入れるつもりなら、俺はそれを速攻で断る。達也で満足してろ」

「………本当に、入る気はないんだな?」

「ない。従わせたいんなら勝手にしろ。俺も自己防衛してやる」

「………分かった」

 

従わせる。それもまた、手段の一つとして摩利の頭の中にあった。しかしそれも、失われてしまったのだ。明らかにCAD、あるいは魔法のみを狙い撃ちにした彼の武器。彼の前では、魔法の優劣など関係ないと、改めて実感した。

 

「最終決定は本人の意思だ。君が嫌だと言うのなら無理強いはしない」

「そりゃどうも」

「その代わりと言っては何だが、一つ君のことで疑問があるんだ。応えてはくれないか?」

「………そりゃモノによるだろ」

「俺もある。この際だ、渡辺先輩と一緒に答えてくれ」

「便乗してんじゃねーよ達也」

 

だが、詮索と知的好奇心はこの場合似て非なるものである。単に気が置けない後輩を知りたいがため、達也も友人についての疑問、もとい不確定要素を減らしてもう一歩歩み寄りたいため。これが断られるようなら、いよいよ心理戦を身に付けなければならなくなってしまうが。

 

「まあ、言うだけ言ってみろ」

「突っぱねないのか?」

「聞くだけ聞くっつってんだろ」

 

先程から、縋るように修平を見る真由美が気になって仕方がない摩利と達也だが、最早修平の目には入っていないようだ。

 

「君は多重人格なのか?」

 

機嫌を損ねればどうなるか分かったものではない。さながら不安定な爆弾を触っている気分になりながらも摩利は問うた。

 

「……………」

 

数秒の沈黙が重く場を支配し続ける。真由美は相変わらず、自殺志願者を見るような、悲しみと恐怖が混ざったような表情で修平を見る。

 

(これは当たりか………?)

 

嬉しさ半分、恐ろしさ半分。即応出来る姿勢を保つべきかと摩利が悩む段階に入ると、修平は口を開いた。

 

「帰る。聞きたきゃついて来い」

 

答えが出るのかと思いきや、そうではなかった。

 

「では司波君に頼もうかな」

「えっ」

「スカウトはあえなく撃沈してしまったし、私は警戒されているようだしな。司波君には後日改めて話すとしよう」

「………了解しました」

 

これは友人としての立場から体良く押し付けられたのではないだろうか。達也も、己に枷がなければここで気前よく受け入れたもののそうとはいかない。

これは実戦経験豊富で確かな実力を持つ達也の第六感でしかないが、彼から見て修平は強い。だからこそ、秘密を秘密のまま暴走した彼を制圧出来るかを問われれば、難しいと言わざるを得ないのである。

 

「まったく。深雪ちゃんも終わってんだろ。行こうぜ」

「そうだな………では先輩方、失礼します」

「ああ、出来れば今度は茶菓子を用意して待ってるよ」

「いい?修平君。絶対ダメ。絶対ダメだからね?約束破ったら真由美お姉ちゃん泣いちゃうから」

「わーったようっせーな!」

 

キャラじゃないだろ、と最後に吐き捨てて修平は部屋を出た。達也もぺこりと一礼してそれに続く。生徒会室の中には、後味の悪さだけが残った。

 

達也と修平は、まだ若干の明るみが差す廊下を歩いた。しばらくお互いが無言になると、修平の方から言葉が出た。

 

「………ケーキ」

「え?」

「1ホールのケーキを等分して、どれが偽物のケーキでどれが本物のケーキなんてことにはならない。俺の感情の変わり方はそういう誤差でしかないんだ。多重人格ではない」

 

それは、天啓のように降って湧き、ようやく手に入れたヒントらしいヒント。

 

(いや………)

 

ではない。達也は、それが明らかにミスリードを誘うための罠だと即座に見抜いた。

 

理屈っぽい内容。しかし意味はというと、単に煙に巻いているだけのものに過ぎない。

 

(ヒントを与える気はないということか………)

 

分かってはいたが。

 

「ちょっといいか?」

「仕方ないのう。特別サービスだぞぉ?」

「服部先輩のCADを破壊したもの、話に聞いていた渡辺先輩との模擬戦で使ったもの、お前がこうして魔法科高校で戦える材料は全て同じものなのか?」

「そうだよ。全部同じ」

 

情報で圧倒的に優位に立っている修平が、ここでわざわざ嘘をつくとは考えにくい。修平が達也を敵として見ていなければの話だが。

 

「じゃあ、お前はどうしてあそこまで七草先輩を嫌悪しているんだ?」

 

無神経だとは自覚している。しかし、180度入れ替わったような軽薄で、怒っていないという意味では穏やかな彼ならば。と、思ってしまうのである。

 

「気になるかい?」

「ああ。先輩も手馴れている様子だったし、良くも悪しくもただの顔見知り程度には思えなくてな」

「そーけそーけ………まあ、色々あるんだよ。こっちも」

「ぶっちゃけられないか」

「話すならみんなの前でだ。そうしないと不公平ってもんだろ?」

「………そのみんなには、渡辺先輩や十文字先輩も含まれているのか?」

「本人次第だな。十文字ゴリラはどうせ七草から聞いてるだろうし。聞きたいんなら聞かせてあげましょっ」

 

達也から見て修平は、明らかにテンションが上がっている。明るくなっているというよりは高揚しているといった方が正しいか。スポーツ観戦を楽しむサポーターのよう。自分の手の届かないところで奮闘する人間達を見て楽しんでいるようだ。

 

「………最後に聞かせてくれ」

「ほいほい。何なりと」

「お前はどういう立場で先輩方を見てるんだ?敵として見ているのか?それとも楽しむためのものでしかないのか?」

「そりゃ今は言えないな。ネタバレ防止、今はもう少し知恵を見るんだ」

 

その必要はない、と達也は心の中で苦笑する。最早それが答えのようなものだ。

 

明らかに楽しんでいる。渡辺摩利が氾濫するヒントという名の情報に翻弄される様を、あるいは七草真由美が真実を知りながら傍観することしか出来ず苦悩している様を。そしてそれは、観察するという簡単な方法で可能になってしまっている。

 

「お前は会長をどうしたいんだ?」

「まったく、最後ってさっき言ったじゃないの。今日の窓口受付は終了しました〜」

「はあ………明日また出直せと?」

「やるべきことはやった。あとは待つだけだ」

 

屈託のない笑顔は、まるで邪気がないように思わせる。しかし騙されることなかれ。

 

「俺ちょっと用事あるから。兄妹仲良く下校してくんな」

「気を遣わなくてもいいんだぞ」

「バッカ、あんな風景見せられただけで薄ら寒いわ。精神衛生上よろしくないんだよっ」

 

そう言うと、修平はさっさと走っていった。

 

明らかに何かを察知していた。それが何なのか、それはまだ、修平が奇々怪界なせいで測りかねているところではあるが。とにかくそこに何かあった。

 

「そうか、俺達では楽しめないのか、修平」

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