ここで問われるのは、修平の理性的な行動ではなく、あずさの先輩としての資質なのだろう。
「はいダメー!はいそれダメー!」
「あああ!楡井君待って!待ってください!」
「そんなこと言ってたら現場に間に合わないよあーちゃん先輩!」
楡井修平は止まらない。アクティブ過ぎるのである。権力を手にしたことで躍起になったのか、その心情は見えないが、とにかく違反を見つけては悪即斬。あっちに行っては取り締まり、こっちに行っては取り締まり。広大な学校の敷地内を駆け回っている。
「はぁ、はぁ、ひゅー………ちょ、ちょっと………タイム、楡井君、ま、待ってくださ、ください………」
「いやいやいかんよ。本当に、いつもと比べて荒れてんだから。休んでる暇はないぞ、あーちゃん先輩、出撃だッ!」
「ひぃぃん!」
ぺたんと座り込むあずさの手を引き、無尽蔵ではないかと錯覚するほどのスタミナで駆け回る。
「はいはい先輩方、新入生に圧かけるのも大概に。困ってるでしょうに」
あまり前に出られない自分に代わり、業務をこなしている修平を見ているあずさは、頼もしい、申し訳ないという感情に加え、もうひとつ渦巻くものがあった。
(思ってたのと、違う)
生徒会室で出会った彼は、汚い言葉で生徒会長である真由美を声高に罵倒する、喧嘩腰、やたら噛み付く。お世辞にも態度がいい生徒とは言えず、最早暴徒か何かと間違えるほどだった。しかし、今のそれはやや異なる。馴れ馴れしい上に話し方も不遜だが、荒々しさは消えて、親しみやすい好青年という雰囲気だった。
「ウィードで、しかも下級生だとッ!身の程を知れ!」
時にはそう返されることもあったが、それは修平をめげさせるどころか逆にスイッチが入ってしまう合図のようなものだ。
「がぁぁぁ!!肩がああだだだだ!」
「はーい肩固め決まったよーこのままだと関節の可動範囲が増えるよーやったねー」
そうして差別を受けても殴る蹴るはせず、あくまで彼は無力化をしようとする。それがまた、生徒会室の彼らしくなかった。
「あーちゃん先輩のお陰で、変なこと企む輩は減ってはいるかな。ちょっと休もうぜ」
「あ、はい………」
目に入った最も近くのベンチに並んで腰掛ける。
「何か買ってこよっか?」
「い、いえ、大丈夫ですよ。お気になさらず」
「そう?そう言うんならいいけど、無茶はしない方がいい」
「ありがとう、でも、大丈夫です。はい」
こうして一対一で喋ると、らしくなさは顕著だ。ただ先輩後輩という垣根を強引に取り払われるようになるだけで、気遣いも出来るしアドバイスまでしてくれる。
(あれ………?)
ギャップに戸惑っていると、ここで違和感に気付く。
普通逆じゃない?と。
普通は初仕事に慣れない新入生を先輩が優しく労うものではないか。意気込む後輩に対して、期待してると声をかけるものではないか。立場の逆転を感じるとともに、物寂しさを感じるあずさであった。
「なーんであーちゃん先輩なんだろな」
「ふぇ!?」
まさかその心を読まれていたのかと、思わず変な声が出る。
「流石に俺だって鈍感じゃない。七草も摩利ちゃんぬも、首輪をつけたいんだろうなっていうのは何となく分かる。でも俺がそれを分かってたら、懐柔する意味だってない。ここであーちゃん先輩をくっつける意味が分からん」
「それは………私には分かりません。会長のお考えは、私では遠く及ばないところにある」
「どうだろうね。案外あいつは分かりやすい。観察すれば、見えるものもあるさ」
そう言って修平は薄く笑う。
「その、聞いていいのか分かりませんが、会長と楡井君はお友達ではないんですよね?」
「うん。友達じゃない。顔を知ってるし会話もするけど、それだけ。友達は同級生にいるから」
「じゃあどうして、あんなに律儀に会長に合わせてくださるんですか?」
「……………」
そうして笑う彼に馴れ馴れしくなった、というわけではない。地雷を踏み抜く覚悟はしている。しかしそれでも、生徒会役員として会長を支える立場であるならば、把握するべきだと思った。交友関係に口出しをしようとか、そういうおこがましい真似はしない。ただ、修平との関係はただの交友関係ではないのだから。
ただ、顔を見れば罵るほどに嫌悪しているのなら、そもそも顔を合わせない選択肢だってあるではないか。彼のことだ、フイにするのが怖いというような性格でもあるまい。
「………やっぱりそこは、デリケートですか?」
「いや。あーちゃん先輩なら別にいいよ。どこまで聞いてるのかは知らんけど」
「まったく聞いていません」
「あっそう。まあそんなに難しいことじゃない。
「それは———」
あずさが言葉を発しかけたところで、それは遮られた。
『闘技場で一悶着起こりそうだ』
右耳のトランシーバーから、無機質な達也の声でそう発せられる。
「闘技場ってどこぉ」
「こっちです。行きましょう!」
第一は任務、それに変わりはない。二人は闘技場へと駆けていった。
◆◆◆
一悶着起こりそう、と聞いて、もう少し暴動めいたものを予想していた二人だが、起こっている光景は若干それと異なるものだ。
片や、いかにも武道に習熟していますという感じな流麗かつ凛々しい女子生徒。片や、若干軽薄そうな男子生徒。両名が竹刀を構えて向かい合っていた。
「中条先輩は?」
「外で警戒してる。飛び道具持ちはそうした方がいい。んで、どうしたよ。エキシビションにしか見えないんだけど」
見れば、防具をつけていない。何とも趣味の悪いエキシビションマッチかと思えば、両者には若干の違いがあった。
「剣道部に剣術部が突っかかった。体こそ一対一だが、双方一触即発だ」
「そりゃまた………いや、なるほど。大体分かった」
剣道部と、剣術部。剣道部はそのまま良く知る武道だが、剣術というのは噛み砕いて言えば魔法と剣道を組み合わせた武道である。そして女子生徒は剣道部、男子生徒は剣術部。その差が意味するところとは。
「分かってくれたか?」
「あれは女子生徒の方が勝つね。間違いなく。そんであの人多分二科生だ」
「ああ。壬生紗耶香先輩は大会で入賞する実力者な上に、桐原武明先輩は面を打つのを躊躇するだろう」
「二人の実力差は大きくない。こりゃ負けて剣術部が逆ギレするだろうな。まして壬生さんは二科生、そういうプライドもぶつかると厄介だ」
当然、併用とはいえ魔法を扱う剣術部には一科生がいる。対して剣道部は、純粋に剣のみでの勝負となるため魔法はさほど重要視されない。そのため実力ある二科生も在籍しているのが特徴だ。両部のぶつかり合いというだけでなく、一科生と二科生のぶつかり合いでもあるのだ。
「そういうわけで増援を呼んだ。頼めるか」
「任せなさい。じゃあ剣術部のチャラ剣士は俺がやるから、取り巻きは任せた」
「了解した。中条先輩はどうする?」
「生き証人になってもらう。この場を正確に証言してもらわないと」
「レコーダーがあるだろう?」
「そう上手くいかんのよ。まあやれば分かるさ」
話している最中に決闘は始まっていたようで、既に目で追うのがやっとの剣戟が繰り広げられていた。
「おおう、エリカじゃないの」
「おいっす。もう始まってる?」
「決闘なら始まってるよ」
「お、間に合ったか。えかったえかった」
見物するほど興味があるのかと修平がエリカ問うと、彼女は勿論だと答えた。曰く、実家の関係で剣に関することに目がないらしい。純粋に勝負を楽しませたいのなら、この後乱闘騒ぎが起こるであろうことは伏せるべきだ。
「それにしても面白い対戦カードだわ」
「あら、そうなんだ」
面白い、というのは、見応えがあるということだと解釈した。それほどまでに、純粋な剣による腕くらべで壬生紗耶香は強いのだ。
「剣道小町って呼ばれててね。大会二位で有名になった人なの」
「………一位は?」
「その………ルックスが………」
「ああ………」
「世知辛い世の中ですのう」
そして試合中の両者だが、徐々に、剣を交える二人に差が出始める。紗耶香はあくまで冷静に、太刀筋を見て回避や受け流しを行い、隙が生じれば攻撃に転ずる。一方で、桐原には余裕がないように思えた。段々と動きや攻撃を狙う箇所の選別が雑になっていき、容易く回避される単調な攻撃になってしまっている。
「おお、すげえな壬生さん。めっちゃ強い」
「いや、二年前と動きが全然違う。たった二年であそこまで変われるものなの………?」
「どうだろうな」
ここで、弾くような打撃音が鳴る。竹刀が命中したようだ。壬生紗耶香が桐原武明の右肩に竹刀を綺麗に当てた。一科生と二科生の代理戦争の勝者は、二科生の壬生紗耶香。そして当然、それに納得いかないのが一科生の剣術部である。
「素直に負けを認めなさい、桐原君。真剣だったらその右腕はもう使い物にならないわよ」
凛とした声で紗耶香が告げる。その言葉が武明には堪えたようで不気味に笑う。
「真剣………だと?俺の体は斬れてねえぞ、壬生ぅ………真剣勝負がお望みかあ………」
桐原は小手の形をしたCADに触れ、魔法式を展開する。サイオンの光が竹刀を覆い、そこからガラスを引っ掻いたような甲高い不協和音が発せられる。ギャラリーの中には不快感に耳を抑える者も少なくない。
「だったらお望み通り、真剣で勝負してやるよッ!」
そう叫んで突進する桐原に、言い知れぬ何かを感じたのだろう。紗耶香は竹刀による防御を捨て、後退して回避する。
「なッ———」
まさに紙一重。彼女の道着は横一文字に切れた。数秒と言わず数瞬の遅れがあれば、切れていたのは道着だけでは済まなかっただろう。
「どうだ壬生、分かったか。これが剣道部と剣術部の差だッ!!」
桐原はそう吠える。
振動系、接近戦闘用魔法、高周波ブレード。単純化して言えば、超高速の微細振動によって分子を崩し切断する。それは原理上、切るというより溶かすと言った方が正しいかもしれない。当然それは人間の肉体に対しても例外ではなく、極めて危険な魔法である。
そして、人間を殺傷する剣を振り上げ、紗耶香に向かって振り下ろす。
思わず目を覆う者が現れる中、それは起きた。
群衆から飛び出した影が二つ。一つは紗耶香を庇うようにして立ちはだかり、もう一つは少し離れた位置で剣術部員達を牽制するようにして立つ。修平と達也である。
突然の介入に驚いた武明だが、意識する程度では振り下ろされた刃は止まらない。
「おるぁ!!」
高周波ブレードに臆することなく、彼は竹刀向かって拳を飛ばした。当然待つのは、溶断の筈。
ヴゥン………
しかし、皆が目を覆いたくなるような残酷な結果とはならなかった。家電の電源が落ちるような、何とも間の抜けた音。ゴン、という鈍い音が鳴ったかと思えば、その竹刀はもうサイオンの光をまとっていなかった。
「何———」
驚く暇もなく、次の行動へ。竹刀の間合いを外して懐に入り込み、そのまま背後に回る。左手で腰を抱えて右手を右脇の下から通して左襟を掴む。そのまま持ち上げ、倒れ込むようにして武明を後方に投げる。柔道で言うところの、裏投。そのまま地に落ちて倒れる桐原に追い打ちをかけるように後ろ手を回して固める。
「よーしよしよし、さてさて、話を聞かせてもらおうじゃないのパイセン。達也、ゲッチュしたぞ」
「ありがとう。桐原先輩、魔法の不正使用により同行を願います」
達也が呼びかけると、武明は苦しそうに、あるいは悔しそうに呻きながら頷いた。やはりというか二人の予想通りというか、大きな反応を示したのは取り巻きの剣術部員達だった。
「あの腕章、風紀委員か!」
「しかも二科生だと!?」
「何で桐原だけなんだ!壬生だって同罪だろ!!」
悲しき人間の性というべきか、エンブレムを見た瞬間に部員達がヒートアップする。
「あー俺こういうの苦手だわ」
「はあ………分かった。魔法の不正使用により、と先程申し上げましたが」
どこまでも冷静を貫く達也に、面白くないと思ったのだろう。
「ッ………何だ、その言い方」
「スペアの分際で!舐めるなよ!」
結果だけ見れば神経を逆撫でしてしまい、失敗だったように思える。
十名ほどの部員達が、一切に達也に襲いかかった。
「じゃあ、よろ」
「軽いな………」
応援が必要ではないか。騒動を見守るエリカはCADに手をかけるが、目が合った修平は、それを見て人差し指を唇に当てる。暗に手を出すなというサインだ。
そして彼の予想通り、あるいはギャラリーの予想を大いに裏切る光景が繰り広げられる。当然といえば当然、剣術部は徒手格闘において、素人に毛が生えた程度の実力。頭に血が上り冷静さを欠き、大人数で挑むという慢心が戦術的な思考力さえ奪っていく。
突進する部員をヒラリと躱し、躱し、躱し。当たりそうで当たらないというもどかしさに部員達はさらに冷静さを失って追い込まれていく。時に部員同士がぶつかるような、およそ武人らしからぬ凡ミスまで誘発させ、ただ鮮やかに躱すだけでなく逆に距離を詰めてプレッシャーを与えることも忘れない。実に奇妙な光景なもので、手を出していない達也が相手を追い詰めている。そんな茶番が数分続いた頃には、息も絶え絶えといった様子で部員達は転がっていた。それと対比するように、達也は息が上がらないどころか汗ひとつかかない、表情も変えない。
「うぉぉ強いッ!何か達也めっちゃ強い!すげえ!」
ギャラリーとエリカが、あのピリピリと殺気立った立ち上がりからあまりにも呆気ない終幕に呆然とし、修平は一人、武明を押さえつけながら興奮した様子。部活同士の威信をかけた競り合いは、たった二人の二科生によって鎮圧された。
◆◆◆
「………以上が、闘技場での剣術部による魔法不正使用に関する報告となります」
淡々とした様子で、達也は報告を完了させる。横に構える修平とは一言も発さない。あずさは一足先に報告を、というより彼女は警戒をしていた以上のことを言えないためここにはおらず、報告に耳を傾けるのは俗に三巨頭と呼ばれる三人。生徒会長の七草真由美、風紀委員長の渡辺摩利、部活連会頭の十文字克人である。
「そう、ご苦労様。そんな数を相手にしたようだけど、二人とも怪我はないかしら?」
「ええ、問題ありません」
「安心しろ。言うほど強くなかった」
悪い意味で予想を裏切られたというか、期待外れだったがとばかりにそう吐き捨てる。実際、彼にとってはそうだったのだ。一科生と二科生の対立なんて、所詮はこの程度。その思考を加速させるものとなった。
「ふむ、流石だな。楡井君も司波君もよくやってくれた。私の目に狂いはなかったな」
「ありがとうございます」
「へーへー、どうも」
心底どうでもよさそうに、実際どうでもいいのだろうが、面倒そうに彼は言葉を使っていた。
「桐原の様子はどうだ?」
「当人は自身の非を認めていて、反省している様子でした。また報復に関しても、そのつもりはないかと」
「そうか………剣術部の部員はどうだ?」
「楡井も言いましたが、特に被害もありませんし。そちらも問題ありません」
達也は淀みなく摩利の問いに答えていく。二人の問答に移ってからは修平が欠伸をしたり、指を遊ばせたりと退屈が目立つようになった。
「そうか。風紀委員会としては、報告を統合して懲罰委員会に持ち込むべきではないと判断する。如何か」
そう言って摩利は克人を見る。彼は溜め息をひとつ吐くと重い口を開いた。
「寛大な処置に感謝する。本来なら殺傷ランクBの魔法の使用は停学処分級の重大な違反だ。後は部活連で対処させてもらおう」
「よし。二人ともご苦労だったな」
あまりにもあっさりすぎるくらいに場が収まろうとしていた場で、今度は修平が口を開いた。
「やっぱりさっきから考えても解せねえ。何であんなもんが使えた?」
このままでは終わらせないとばかりに、語気を強めて、最早詰め寄ると言っても過言ではないほどに強気に三人と相対する。すると先程までのいくらか理性的な雰囲気が壊れ始める。これでは痛いところを突かれたことが丸分かりだ。
「桐原も言ってたが、あれは真剣だ。学生が真剣持ち込んで生徒に斬りかかったってことだぞ。無法地帯じゃねえか。どうなってやがる」
誰も、何も発さなかった。
「………分かった」
しかし、その沈黙というリアクションは最初から予想していたとばかりに、あるいはそれを返事と受け取ったのか、修平自身も沈黙を短くした。
「やっぱりいい。忘れろ。将来魔法師が、冷酷無比な殺人マシーンになれるように国と魔法の名家が一生懸命殺しに慣れさせようとしてるなんて、そんな都市伝説は忘れろ」
彼は達也に声をかけて、ビデオレコーダーをテーブルに投げ、圧をそのままに退出した。重い静寂が辺りを流れたのが十秒ほどだったか。
「七草の言う通りだったな」
「ねぇ〜、これ本当によかったの〜?摩利ぃ〜」
「ああもう、言うな。私だって悩んだんだぞ」
真由美がぐでっとテーブルに突っ伏したのを合図に、摩利も姿勢を崩して溜め息を吐く。克人は腕組みした姿勢を保ち続けているが。
「私言ったじゃない。変に側に置こうとするとこうなるって」
「耳が痛いな………司波君が隣にいてくれなかったら、あの1-A教室騒動の再来を見る羽目になっていた」
「俺は悪くないと思うぞ。目に付かないところで暴力沙汰を起こされるよりは、こうした方が問題も減るだろう。楡井は無茶だが馬鹿じゃない」
「そうだな………」
「あぁ〜、このレコーダー結構高いのに〜………」
修平の是非について話し合う摩利と克人をよそに、真由美はビデオレコーダーのボタンをカチカチと押す。しかしレコーダーはうんともすんとも言わず、完全に沈黙してしまっている。
「どうした?」
「………ご臨終だわ………」
それは、トランシーバーの方も同様だった。外傷はない。彼に渡した時とまったく変わらない筈なのに、故障しているのではなく、完全に壊れてしまっている。
「………どこで壊れたんだ?」
「魔法を無効化した時ね。間違いないわ」
ぐぬぬぬ、と真由美は身をわななかせる。
「………なあ」
いっそ弁償させてやろうか、CAD以外も壊すのかと恨み言を呪詛のように並べる真由美に、呟くように摩利は声をかけた。
「何ッ」
若干ご機嫌斜めになっている真由美が振り返る。しかし、射抜くような摩利の視線にただならぬ気配を感じ取ったのか、いつもの落ち着いた生徒会長に戻った。
「教えてくれないか。十文字会頭もいるんだ。長引かせることもない、彼の戦法を知れば、あるいは」
「無理よ」
摩利が何を言いたいのか、何をするべきか考えた上で何をしたいのか。それを真由美は汲んだ上で、そう突っぱねた。やや食い気味だったこともあり、若干ムッとした様子の摩利だが、それを承知で真由美は続ける。
「あの子もいつか言ったでしょう。私達が魔法師である限り、魔法を高めようとする限り、魔法を戦力の全てだと考えている限り、私達は彼に勝てない。私が彼の力を話さないのは、彼を案じてるのもある。でもそれ以上に、無駄だからよ」
「しかしな………」
「ちょっと待ってくれ、七草」
二人の論争になろうかと言う時、克人が割って入る。
「お前は何を恐れているんだ?例の、魔法を封じる奴の能力か、それとも粗暴な人格か、優れた徒手格闘の腕前か」
「全部よ。全部引っくるめて、楡井修平っていう子は、魔法師の天敵なの。あの子の強さは経験した私が一番よく分かってる。聞くのはいいけど、それで彼の全てを知ったと思わないでほしいの」
「そんなこと思わないさ。彼はただでさえ謎めいているからな」
「そうじゃない」
摩利の言葉は的外れだとばかりに真由美は首を横に振る。
「どうにか
その言葉の重みを知ることが出来ないというのは、意識の隔たりである。真由美は有無を言わさない強い口調、だが、どこか縋るような表情、そんな矛盾を抱えた彼女を見る摩利と克人は、真由美が納得する答えを捻り出せなかったのである。
「すまない。それでも私は聞きたい。もう好奇心がどうとか、そういう問題じゃないんだ」
「俺もだ。聞かせてくれないか。理由はどうあれ、彼も生徒ならばな」
意思は固いのだろう。まったくどうにも頑固な二人だ。
———笑えない。
「………修平君にこう言って」
二人は口元に耳を寄せる。
「———に———してると」
魔法科原作の最初の方を読んでて一番分からなかったのが、CADに規制がかかってるのに魔法に規制がかかってない点でした。勧誘期間で解放されるのに。何でやねん。