労いの挨拶といわれてもなんの事だか、さっぱりわからん。労いより謝罪の挨拶ならわかるが、体育館に人が集まりその前で挨拶するというのは校長の挨拶かスポーツ大会の開会式ぐらいなもんだろう。よく寝たからか頭がやけに回る。昨日の第一号女子便所特攻作戦の実行に対する謝罪の挨拶かと思ったが違うらしい。
音一つ無く、大勢の前に見られているこの状況で昨日の一件がここにいる全員がまだバレていないのかバレているのか判断がつきにくい。女という生き物は噂話で成り立っている(持論)。昨日の俺の行動を見た奴が他の奴に話した時点でアウトだ。ゴキブリ方式で広まってしまう。事実は事実だ。それは認める。だけど弁明をさせてもらいたい。あれは仕方ない状況だったと、決して欲望に負けて入ったのではないと。
俺は昨日のすべての元凶、川内を血眼になって探す。いた。川内は真ん中より少し後ろ側にいた。あっ!目が合った。するとすべてを悟ったように右手を上げ勢いよくサムズアップのポーズをとった。川内ぃ・・・。信用してるぞ。俺も川内にサムズアップを返した。
場面は変わり・・・
「姉さん」
「なに?神通」
「提督となにをなされてたのですか?」
川内の後ろの神通が微笑みながら聞いてくる。
「昨日、遊んでくれてありがとうって意味でサムズアップしてたの」
「そうなんですか。いないと思ってたら提督の所に・・・良かったですね。遊んでもらって」
姉の幸せそうな顔を見つめ神通もつられて笑う。
ちなみに末の妹、那珂は立ったまま器用に寝ている。
「うん。提督におんぶしてもらってね、トイレまで運んでもらったの。」
「もうっ!姉さん、トイレくらい自分で行ってください。恥ずかしい。」
提督にそんな事をさせたのかと神通は少し怒ったように叱った。
「違うよ?トイレに入ったのは提督。」
「え?」
神通は理解できなかった。姉の言葉を。なにせ100%女性というこの鎮守府に男性用トイレという場所は存在しないのだから当然だ。神通がバグったファミコン並に硬直していると前から声が聞こえた。
「本当よ~。」
川内の前に立っている龍田が答える。
「昨日、天龍ちゃんとトイレで話していたら提督が入って来たの~。凛々しかったわぁ~。でも天龍ちゃんは顔を赤らめて涙目になっちゃって、可愛かったわ~。」
「お、おい!その話をするなっ!あれは、あれだっ!目にゴミが入っちまっただけだっ!!だがアイツが入ってきたのは本当だ。間違いねぇ!」
龍田におちょくられ、天龍も反応する。
「吹雪もあの場にいたから後で聞いてみろよ。」
龍田と天龍の主張で疑惑が確信へ変わった。一連の会話を聞いた神通はフリーズしている。
「ねっ、本当でしょ?」
無邪気な顔をして語りかけてくる姉の話など最早、彼女の耳には届かなかった。しかし他の艦娘にはしっかり聞こえていた。さぁ、山田のいうゴキブリ方式が現実になろうとしている。覚醒の時は近い。
暁型
「司令官、なんてことしてるのよ。」
「・・・ハラショー。」
「雷がいるのに。」
「意味わかんねぇよ、なのです。」
陽炎型
「司令、最低。」
「ホンマ、アホやなぁ。」
「不潔です。」
「・・・・・・」
「へんたいさんだぁ。」
「嘆かわしい。」
「いいねぇ、その発想は無かったわ!」
白露型
「一番に話が盛り上がってる。悔しい!!」
「あとでお仕置きねぇ~。」
「君には負けたよ。」
「提督さん、頭おかしいっぽい。」
吹雪型
「うぅ。」
「うちの姉を泣かせるなんて許さないっ!」
「男らしいなぁ。」
睦月型
「まぁ、提督も男だから気持ちはわかない事もないにゃしー。」
「怒ってないよ。」
「うぷぷ、このまま地獄に落ちればいいぴょん♪」
「あほくさ」
軽巡の近くに整列していた駆逐艦から重巡、軽空母、空母、戦艦、潜水艦と提督の勇姿はあっという間に駆け巡る。巡洋艦だけに。
山田は何か話そうと口を開けようとすると、駆逐艦の列、先頭の雪風が手を挙げた。
「雪風さん、どうぞ。」
大淀が雪風に言った。
大淀に指された雪風はにっこり笑いながら山田に問う。
「しれぇはおとこのひとなのになんでおんなのひとのといれにはいったんですか?」
to be continued