「大丈夫ですよ。提督。」
明石はあっけからんと山田に言った。
「・・・・・・・・・。」
しかし山田はただただ、机の一点をじっと見ている。人形のように。
「・・・仕方ないなぁ。」
そう言うと明石は山田の隣に座り、山田に抱きついた。
「えっ?えっ?何をしてんの?」
明石の突然の行動に大淀は動揺し、明石を指差しながら顔を赤くして肩を震わしている。
「いやぁ、男の人ってこうすれば元気になるって昔、本で読んだから」
山田に抱きつきながら何事も無いように大淀に答える明石。
「い、いくら提督でもそんな事で・・・」
「大丈夫ってどういう事だ?明石?」
「えぇ?」
さっきまで死んだ魚の様な目をしていた山田が明石に抱きつかれた瞬間、瞳に光が戻り顔が前よりもイキイキとして、足まで組むほど余裕な表情をしている。社長と秘書がイチャイチャしている絵を想像してください。そんな感じです。
「よいしょっと、それはですね。この世界に連れて来られたのは提督だけではないんです。」
山田に光が戻るのを確認すると明石は大淀の隣に座り直した。
「俺だけじゃないって事は他に俺と同じ様にここに連れて来られた人がいるって事?」
「そうです。そしてその人達は提督より前にこの世界に来ています。」
「よかった、俺一人なのかと思ったよ。」
「あははっ、提督程度が一人で世界を救える訳ないじゃないですかw」
ピキッ!
「それにほとんどの深海棲艦はその人たちのお陰でほぼ壊滅。今はどこの海域も平和そのもの。少しここに来るのが遅すぎましたねぇw」
ピキッピキッ!
「でも油断出来ません、ほぼ壊滅でも壊滅ではないのですから。なので提督にもこの田尻鎮守府で指揮をとってもらいこの世界の人類の為、完全な平日を取り戻す為に奮闘してもらいたいのです。」
ピキッ、ピキッ、ピキッ!
「丁度いいじゃないですか!敵の数も少ないし、ド新人の提督でも業務を比較的楽にこなせますし、そのうえゆっくりと経験も積むことが出来る、一石二鳥良いことずくめです。」
ピキッ!ピキッ!ピキッ!ブッ!(なにかが切れた音)
山田はゆらりと立ち上がり、明石が座っているソファーの後ろに立ち止まった。
後ろに振り向きながら山田を見上げる形になる明石、その隣の大淀も同じように山田を見ている。
すると山田は明石の肩を後ろから両腕で包み込む、すなわちあすなろ抱きというものだ。ちなみに女子がされたら恥ずかしいけど、一度されてみたい抱きしめかた第1位らしい。
「あわわわわ。」
山田の突然の行動にまたもや顔を赤らめる大淀に対し、あすなろ抱きをされた明石は。
「提督、困ります。いくら私が魅力的だからってこんな事・・・」
先ほど自分から提督に抱きついた時とは違い、ほんのり顔を赤くさせてボソボソとか細い声で呟くように声を出した瞬間。
「ぐえっ!」
明石は女とは思えないほど低い声を出した。
やった。山田のあすなろ抱きは首絞めに進化した。
「大淀」
「はっ、はい。」
一連の流れを見ていた大淀が突然山田に呼ばれ思わずウラ声で返事をした。
「だいたいはわかった。俺はこの田尻鎮守府とやらでお前達を指揮して化け物共を一匹残らず駆逐☆すればいいんだろ?」
「だいたい合っています。」
「他にもイロイロと突っ込む所はあるが、おいおい解決していくとして・・・」
「て、提督っ!苦しいですっ!タイム、タイムッ!」
さっきのキュンキュンとした展開はどこにいったのか、山田の腕をバンバン叩きながらじたばた足を動かしている。山田は腕が少し緩めた。
「画面の前の皆は真似しちゃダメだよ?やられた方は本当に洒落にならないからね。」
「誰に話しているのですか?提督?」
上の方を向いて語りかけている提督に質問する大淀。
「なんでもない、さっそくで悪いんだがここの施設を案内してもらえるか?ある程度場所を把握してないと困るから。」
「昨日の事ですか?大変でしたよ、提督がトイレに倒れたって吹雪ちゃんが呼びに来てくれなかったらあのまま龍田さんにバラバラにされる所だったんですよ?」
いまだに首絞められたままの明石が会話に入ってくる。
「そうか、あの後龍田に手刀かなにかを喰らったから記憶がなかったのか。」
「で、私が提督を元の部屋までおぶって運んだんです。」
そうか、そんな事があったのか。山田は明石がしてくれた事につい目頭が熱くなり、首絞めの姿勢を崩し、明石に感謝と謝罪の言葉を掛けようとしたその時。
「寝てる提督の顔がマヌケすぎて思わず笑っちゃいましたよ、・・・・・・あっ!」
その一言がなければ彼女は助かったのだろう。
「ゆ る さ ん。」
一気に山田の腕に力が入り、明石の首を締め上げていく。
やったね。山田の首絞めはガチ首絞めに進化した。
ギリギリギリギリ!!
「ぐぇぇぇぇ!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「大丈夫だ、明石。俺はメ◯ルギ◯シリーズを長年プレイし続けたベテランだぞ?加減はわかる。」
「そういうことじゃ・・・」ガクッ。
気絶した明石をそのままにして何事もなかったようにドアに向かいドアノブを掴む山田。
「よし、案内してくれ。」
ガチャ!
山田はやり遂げた顔をさせ、唖然としている大淀にそう言うと部屋から出ていってしまった。
大淀は白目をむいて、顔中の穴という穴から水分が出ている明石を一瞥する。
「・・・・・・いいなぁ。」
その後山田の後を追って部屋から退出した。