俺の脳が二次元と三次元の区別をつけている間にも時間は進む。俺は今、目の前の五月雨(?)に手を差しだしたまま固まっている状態である。よくフリーズするな。64か?とふと思う。つまらない事だけは何故か頭は働く。そんな事が考えられるほど余裕が戻って来たのか?と思ったその時、手に感触があった。
「あっ、ありがとうございます。提督」
提督?俺が?現在、彼女の手と握手する形になっている。女の人の手を握るのなんて小学生以来の事だ。感動する。
「提督?」
彼女に再び声をかけられ正気に戻る。
「あぁ、ごめんなさい。」
俺は尻餅をついたままの彼女を起こす。彼女は俺の頭一つ分身長が低かった。服装も艦これのイラストと同じだ。特に印象的なのは目だ。すごくキラキラしている。吸い込まれる様に綺麗だ。絶対日本人ではないというのがわかる。
「はぁ、びっくりしましたよ、提督ってあんなに大きな声が出るんですね。」
「あのー」
「なんでしょう?提督?」
「さっきから提督と呼んでますが俺、ただの無職ですよ?」
それはそうだ。俺はこの間仕事を辞めたばかりなのだ。提督だなんてそんな大層な職についた覚えもない。たぶん人違いだろう。そう思い、少しジョークを交えて答える。しかし彼女は首を傾げてこう言った。
「無職?あははっ!何言っているんですか、提督はこの海を守るという大事なお仕事を一生懸命なさっているじゃないですか。からかわないでくださいよぉ。」
彼女は口に手を当てクスクス笑っている。
「えぇ?」
いやいやいやいや、さすがの俺でも多少は現実とゲームの区別はついている。確かに俺は提督だ。だがそれはゲームの中だけの話で現実はただの自宅警備隊なのだ。
・・・・・・あぁ!と俺は悟った。夢だと。これから宛のない就職活動に身を投じる俺が現実をごまかす為に作った夢だ。そうか、それなら納得がいく。なんでかって?リアルの俺なんて女の人との交流は皆無だからだ。
「なぁんだ・・・」
「?」
俺はすべてを悟り、背筋を伸ばす。目の前の脳内彼女は丸い目をさらに丸くして小首をかしげている。抱き締めたい。
俺はどれだけ欲求不満なんだ。名残惜しいが現実に戻ろう、この夢はリアル過ぎて気持ち悪い。自分が践んでいるこの砂もやけにリアルだ。手ですくってみとすごくサラサラしている。まぁ、砂だもんな。そして俺はこれが夢であるという決定的な場面を目撃する。それは
「あっはははははぁー!!キッモチイイィィ♪」
俺のいる位置より少し遠い浜辺に筋肉質の男が走っている。奇声を発しながら。見た感じ若くもないし歳をとっている感じもしない。だいたい30くらいだろうか。ん?何故筋肉質と一目でわかったなって?そりゃあ分かるよ。だって
全裸だもん。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!うぇぇあぁぁぁぁぁ!!緊急脱出ぅぅぅぅ!!」
俺は俺の腹部に全力のボディブロウをかました。
早く艦娘をだしたい。