「まったく、提督には本当に困ったものだわ。」
山田と北上がいなくなった後、大淀が疲れた顔で歩きながら食堂に向かっていた。
「私のペース乱されまくりでまいっちゃうわー。やっぱり敬語止めてフランクに接してみるかなー?提督なら怒らなさそうだし・・・」
すると向こうから誰かが走ってくる。
「大淀さーん、ここにいたのー!!」
伊19がこちらに一目散に走ってくる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
「どうしたの?そんな息を切らせて・・・。あぁ、まるゆさんにまた追いかけられてるの?」
「ちっ、違う・・・提督と大井さんが・・・」
「へ?」
「いっ、いいから早くきてなの!!」
なにやら切羽詰まってるイクに手を引かれ何処かに連れていかれる大淀。
「なんか嫌な予感しかしないんだけど・・・。」
球磨が大井の存在を山田と木曾に知らせて数秒。山田は戦慄していた。今までにないプレッシャーが彼を飲み込み、それに耐えられないのか心臓が異常に鼓動を上げていて、今までにないほどの感覚に軽く吐きそうな顔をしている。
「・・・・・・。」
山田の額に汗が流れる。
その時、大井が口を開いた。
「ごめんなさい、遅れちゃって~。」
大井は姉妹達に軽く謝罪をする。
「もういいから、早く席につくクマ~。腹へったクマ~。」
「にゃ~。」
「そうそうー。早く注文しちゃおうよー。大井ー。」
「・・・・・・。」
傍からみれば、大井は姉妹達と仲睦まじく話しているように見えるだろう。だが実際は違う。大井は俺の首を前から見えない絶妙な位置で後ろからつねっている。指全体を使い爪を立てて。ほら、木曾もなんとも言えない顔でこっち見てるだろ。
「えっ?何?提督?私とお話したい?仕方ないなぁ。」
大井が突然、山田に一方的に話かけた。
「いや、俺は・・・。」
ギリィィィィ!!
「話したぃぃぃぃっ!!」
「提督ったら大胆。と言うわけで姉さん。ちょっと提督とお話してくるわね。」
山田の襟を掴み、引きずりながら出口に向かう大井。
「わかったクマ~。適当に二人分頼んでおくクマ~。」
手を振りながら山田と大井を見送る球磨。
「なぁ、姉さん。」
「ん?」
「提督大丈夫なのか?」
木曾に聞かれた球磨の顔がみるみる変わっていく。
「大丈夫だろ。アレでも俺らの提督なんだ。死にはしねぇよ。」
先程までの球磨とは違い、語尾のクマもなくなり男のような話し方をしだした。
「でも・・・」
「くどい。ならお前も付いていけばいい。俺らの提督はそんなにヤワじゃねぇ。さっきのアイツの目・・・。面白くなりそうだ・・・。」
ニヤリと笑う球磨に少し戸惑う木曾。
「これで大井の性癖が治ればいいんだけどなー。」
窓の外を眺めながら北上がため息をついた。
俺は食堂の隣の休憩スペースに連れてこられた。
大井に手を離され、そのまま横になるように倒れる。
「痛たいっ!!」
頭を打ってしまった。大井は腕を組みながら俺を見下ろしている。俺なにかしたっけ?とりあえず立とうと手をついて立ち上がろうとした瞬間に俺の肩を大井が抑えた。
「?」
「・・・じゃないの。」
「え?」
「私と同じ目線に立つんじゃないのよっ!!」
ドゴォ!!と凄まじい音がこだまし、山田の下半身が床に埋まってしまった。
訳がわからないというか物理的におかしいだろと心でツッコミながら呆けた顔をしている山田に大井は言葉を続けた。
「アンタ、ここに来るまで北上さんとイチャイチャイチャイチャイチャイチャと・・・。羨ましいのよっ!私の気持ちを知っていて、わざとやっているのっ!?北上さんと仲良く話していると思ったら、添い寝までして。」
添い寝?お互いの体を密着させて寝る?してない、してない。俺は無言で首を振る。
「その後、北上さんと手を繋ぎながらラブラブモード全快で食堂に向かって・・・」
諸君、前回か前々回の話を見返してくれ。そんな事あったか?
「もう許さないっ!アンタのチ◯◯握り潰して・・・」
「女がチ◯◯なんて言ってるんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
山田はその単語を聞くと一気に床の底を蹴りあげ、地上に出てきた。
「な、なに?」
山田の突然の復活に大井は驚き、尻餅をついた。
山田には今だかつてない程のオーラを身に纏っている。
シュウゥゥゥゥゥゥ。!!
スーパー◯イヤ人並みの光を放ちながら大井に近づく山田。
「いやぁ、止めて、来ないでぇ。」
大井の目から涙がポロポロと溢れている。
「駄目だろ、女の子が容易にチ◯◯なんて言ってはっ!!」
山田の目には憎しみや恨みではなく、汚い言葉を言った、大井に対しての純粋な怒りだけがあった。
山田は大井に素早く近づき、両足首を持った。
「きゃっ、アンタッ!何を・・・」
咄嗟にスカートを抑え、恥じらう大井をよそに山田は大井の両足首に自分の脇を挟め、持ち上げる。そして・・・
「ハァッ!!」
と声を上げた瞬間、大井を回し始めた。いわゆるジャイアントスイングである。
グルン、グルングルン、グルングルングルングルングルングルングルングルングルングルングルンッ!!
まるでムシ◯ングのス◯パー◯ルネー◯スローの如く回転数を上げていった。
「ーーーーーーて。ーーーーわーーーー。」
大井の声も最早聞こえない。
しばらくして回転を緩め、大井をゆっくりと地面に降ろした。
「うぅぅぅぅぅぅ!!」
大井が仰向きになりながら、顔に腕を置き、おいおいと泣いていた。大井だけに。
「ヤバイ、さすがにやり過ぎた。」
大井のマジ泣きを見て、冷静さを取り戻した山田が申し訳なさそうに近づく。
「ご、ごめんな?でも女の子なんだからチ◯◯なんて汚い言葉使うのは良くないと・・・」
山田は大井の顔を見る。すると腕の隙間から目が見えた。泣いてない。むしろ笑っているように見える。
山田が後ろに一歩下がろうとした瞬間。
ここから速かった。大井は山田の足に蹴りを入れ、体勢を崩すと素早く上体を起こし、うつ伏せに倒れた山田の背後に回り、腕を両足で踏み、背中に座って首から顎を掴んだ。駱駝固め、別名キャメルクラッチ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
山田が苦しそうに叫ぶ。
それに対して大井は狂ったように笑う。
「あっはっはっはっ!!獲ったわ!!これで北上さんと◯◯◯◯よーっ!!」
苦しい、苦しい、洒落にならない。どうしよう。死ぬのか?俺は・・・・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
「大井。」
後ろから声が聞こえる。
「さすがにそれ以上はダメクマ。」
そこにはクマが立っていた。回りには複数の艦娘もいた。野次馬だろう。
「姉さん邪魔しないで!後少しで・・・」
球磨に意見しようとした時、大井は止まった。球磨や他の艦娘からの殺気が彼女に集中していたからだ。球磨は咳払いをして言った。
「お前、ここで提督を殺すつもりクマ?本当に殺すなら覚悟するクマ。いくら姉でもコイツらからは、お前を守りきれないクマ。」
球磨を含め、他の艦娘からの殺気が一層、強くなる。
「・・・・・ごめん、なさい。」
あまりの緊張感に山田から離れ、震えている。大井。
すると球磨はにぱっと笑い、艦娘達の方をみて言った。
「うちの妹が迷惑かけたクマ~。もう大丈夫だから食事を続けて欲しいクマ~。」
明るく言い放つと、他の艦娘はゾロゾロと食堂に戻っていった。そして休憩スペースには球磨と大井、そして気を失った山田だけになった。
皆が戻るのを確認すると球磨は振り返る。
「おふざけが過ぎたな。まさか殺そうとするなんて思わなかったぞ。」
球磨が大井にゆっくりと近づく。
ポンッ。
球磨が大井の肩に軽く手に置く。
「コイツは俺に任せて、お前は部屋に戻って反省してろ。飯は後で持っていってやる。」
大井は頷く。
球磨の手が大井の肩から離れた瞬間、球磨は大井の耳元で小さく言った。
「2度目はない。」
大井はビクッと震え、走って自分の部屋に戻っていった。
「やれやれ、大井の奴め。手間をかけさせる・・・。」
首を鳴らし、気絶している山田を眺める。
「まぁ、人間にしては良くやったんじゃねぇか?タイマンで艦娘と渡り合うなんざ、大したもんよ。」
そう言うと山田の体を起こし抱き抱えた。お姫様抱っこで。
「だがな、大井に遅れるようじゃ、まだまだだ。お前にはもう少し強くなってもらわにゃ困る。頑張りな。山田の坊や。」
球磨は山田の顔を見ながら微笑むと食堂に戻ろうとした。すると
「あそこっ!あそこなのねっ!」
声がする方を向くとイクと大淀が走ってくる。
「ここで提督と大井さんが喧嘩を・・・って何もないの。」
「はぁはぁはぁ、腰が痛い。」
イクは球磨を見つけ、近づいて来た。
「・・・提督っ!!球磨さん、どうして提督を抱いているのね?」
「あぁ、うちの大井と喧嘩した後、疲れて寝ちゃったんだクマ~。大井は泣かされて自分の部屋に帰ったクマ~。」
「そうだったの?でも来る途中、大井さんとはすれ違わなかったの。」
「途中でトイレにでも行ったんじゃないかクマ~。それより二人とも早くしないと席無くなっちゃうクマよ~。」
球磨は山田を抱えたまま食堂に戻っていく。
「そうなのね、イクもお腹減ったの!!大淀さん。早くイクのー。」
イクは大淀の腕を引っ張りながら食堂に向かう。
「え?結局何だったの?」
と疑問を持ちながら食堂に連れていかれる大淀だった。
一時のテンションで、下手ですが挿絵を入れて見ました。