「・・と・。」
「っ・・・。」
「・・とく。」
「うっ、うぅ。」
「提督ー。」
「あっ、・・・ん?」
「やっと起きた-。おはよう提督ー。」
「・・・あぁ、おはよう・・・」
提督と自分を呼ぶ声に山田は反応して意識を取り戻す。最初に食堂に来たときと同じ場所に座っていた。
「あれ?俺は・・・」
山田がおぼろげに先程の事を思い出そうとしたその時、鼻孔をくすぐるいい匂いがした。すると腹からぐぅぅぅぅっと大きな音が鳴った。
「まぁまぁ、そんな細かいこと気にしないで早く食べるクマ。冷めるクマよ?」
そう言いながら球磨はどんぶりの麺をすする。他の姉妹達も球磨と同じように何やら食べている。
「はい、これ提督の分ー。」
目の前の北上が俺にどんぶりを差し出した。
「天ぷらそばだよー。美味しいよー。」
北上は俺にそばを差し出した後、割り箸もくれた。
「ありがとう。」
起きたばかりで頭が動いてないのか、ボーッとする。でも腹が減ってるせいか、手は自然に動いた。
ズズズズー。
うまい。この世界に来て初めての食事だ。そばはネギと天かす、そしてカマボコだけの非常にシンプルな物だが今の俺にとっては最高のご馳走だ。どんどん食べるスピードが速くなり、一気にスープを飲み干した。
「はぁぁ、うめぇなぁ~。」
俺はきっと今、とても幸せそうな顔をしているのだろう。感覚でなんとなくわかる。そば一杯でこんなに幸せな気持ちになれるとは。食べられるっていいね。生きるって素晴らしいね。そんな事を考えていると。
「おー。速いな。そんなに腹が減ってたのか?」
隣の木曾がどんぶりを持ちながら言ってくる。ちゃんとお茶碗持ちながら食べるなんて行儀いいな。
「あれ?木曾もそば?」
「あぁ、俺も天ぷらそばだ。というか皆、天ぷらそばだぞ?」
「そうなの?」
俺は他の奴を見渡す。確かに器が皆同じでそばをすすっている。
「なんだクマ?これは私の分クマ。あげないクマ~。」
目が合った球磨がジト目でこっちを睨んでいる。
「にゃー。」
多摩は自分の物だと言わんばかりに自分の分のそばを身体全体を使って守っている。
「いや、大丈夫だ。取らないからゆっくり食べな。」
俺の言葉に安心してか二人は警戒を解いて食べ始めた。
「二人とも大げさだなー。」
北上が笑う。
「全くだ。」
木曾も笑う。
「そうだよな。さすがの俺も人のは取らないわ。」
俺も思わず笑ってしまった。
「それもそうかクマ~。」
「にゃー。」
「「「「「あっはっはっはっは!!」」」」」
気がついたら皆で笑っていた。ここに来てからはいろんな事が続いて笑うなんて出来なかったし、落ち着く暇も無かった。だけど今は腹も膨れ、気の合う仲間?とこうして笑いあっている。今、とても充実している。そんな気がする。
「・・・・・・。」
山田はふと空になった自分のどんぶりを眺める。
ああは言ったけど、やっぱり何か物足りないなぁ。もう少し何か食べたいなぁ。そんな事を考える山田。
サクッサクッ。
すると前の方をから何とも言えない美味しそうな音がした。
「ん~。美味しい~。」
見ると幸せそうにモグモグと口を動かしている。割り箸の先には海老の天ぷらがあった。
そうか、そうか。海老の天ぷらかぁ。そうだよな。天ぷらそばっていったら海老天だもんなぁ。カラッとした外側にプリっとした海老のハーモニーがたまらんよなぁ。北上は好物は最後に食べる派かぁ。うふふっ、俺達気が合うかもなぁ。付き合っちゃおうか?なーんて・・・・・・
「あ?」
「んー?どうしたのー?」
天ぷらだぁあ?俺そんなモン一口も食ってねぇぞ?そうだよな、天ぷらそばって天ぷらが主役であるから天ぷらそばなのであって、天ぷらが無い天ぷらってそれってもうただのそばですやん!?いや待て状況を整理してみよう。起きたばかりでまだ頭が寝ぼけているのかも知れんし。
キーワード1
「天ぷらそばだよー。美味しいよー。」
キーワード2
そばはネギと天かす、そしてカマボコだけの非常にシンプルな物だ。
キーワード3
「あぁ、俺も天ぷらそばだ。というか皆、天ぷらそばだぞ?」
キーワード4
「なんだクマ?これは私の分クマ。あげないクマ~。」
キーワード5
北上の箸の先の海老天。
「・・・・・・ふっ。」
ガタッ!
「いきなり立ってどうしたのー?トイレ?」
「クマ?」
「にゃ?」
「?」
「北上よぉ、ちょっとひとっ走り付き合えよ。」
「え?」
「地獄までな。」
次回!!「山田孝夫の事件簿(解決編)」お楽しみに。