「お前、俺の海老、盗ったろ。」
山田は冷静な顔を保ちながら、静かに北上に問う。
「海老?何の事だかサッパリ。」
山田からのの指摘に一瞬、体を震わせるが北上の顔はポーカーフェイスに変わり、何を言っているんだ?という風に手でジェスチャーをする。
「じゃあ、さっき俺の前で旨そうに食ってた海老はなんだ?」
北上のどんぶりをビシィッと指差しながら山田は言った。
「だからそんなのないよ。ホラ」
北上は自分のどんぶりを山田の前に出すと、どや顔して腕を組んだ。確かにどんぶりの中には海老らしきモノはなく、そばのスープだけが残っている。
「確かに、普通に見ればスープだけのどんぶりだが・・・」
「提督っ、何を・・・」
山田は北上のどんぶりを持ち上げ、スープをゴクゴクと飲んた。
「・・・・・・っ。」
北上の顔がみるみると青ざめていく。
「んっ、んっ、んっ、・・・はぁっ!!ならこれは何だっ!!」
スープを飲み干した山田は北上の目の前にどんぶりを乱暴に置いた。
ドンッ!!
どんぶりの中には少量のネギ、天かす。そして海老の尻尾が三個つあった。
「あわわわわ。」
「青ざめたな・・・北上。」
確信を得た山田はニヤリと笑みを浮かべた。そしてまた顔を元に戻し言った。
「つーか、俺が海老をツッコんだ時、海老持ってたやん?海老食ってたやん?そんで尻尾をスープに入れてたやん?俺見てたやん?・・・・・お前現行犯やん。」
「てへっ。」
北上が右手でコツンと頭を叩く。
「いやー、ノリいいねー。一回やってみたかったんだよねー。こーゆうのー。」
北上の顔が普通に戻る。
「まぁ、俺も少し変なスイッチ入って、あんなリアクションとったけど面白かったわ。」
「だよねー。でさぁー・・・」
「ん?」
「ごめんねー?海老天食べちゃってー。提督の海老、私達の海老より大きくて美味しそうでさー。ついー・・・。」
今まで海老天を食べたことを隠していたのは許せんが、頭を下げて北上が謝ってくれた。子供のような言い訳だが嘘偽りを感じない。まったく・・・最初から謝ってくれれば俺もこんな事しなかったのに。
「ふっ。わかったよ。」
人差し指を鼻の下でこする山田。
「提督ー、許してくれるのー?」
北上がパァっと顔を明るくする。
「あぁ。」
山田はしっかりと北上を見据えこう言った。
「絶対許さねぇ。お前も必ず浜辺に埋めてやる・・・川内と共に。」
ガタッ!!
どこかの席で大きな音が聞こえた。いるな、川内。俺は忘れてねぇぞ?俺を◯ッシーにした件と女子便所特攻作戦においての情報漏洩。お前も目の前で口を開けて硬直している北上と一緒に浜辺に埋めてやる。時間がかかってもいい。絶対に埋めてやる。・・・いや、もう一人か。
「木曾、この天ぷらそばに海老は最初、何個入ってたんだ?」
「提督、海老の数え方は尾だ。一尾、二尾と数える。生きているのは匹でいいけどな。」
可愛いだけではなく博学とは大したものだ。勉強になった。
「あぁ、すまない。話題がそれてしまった。私のどんぶりに海老は二尾入っていたな。皆もたぶん同じ数が入っているはずだが・・・」
「だいたいそんなものだろうな。だが北上のどんぶりには海老の尻尾が三つ。と言うことは・・・」
俺はゆっくりと右斜めを向く。
「「・・・・・・・・・。」」
球磨と多摩が二人揃って上を向いていた。
「どっちだ?俺の海老食べたのは?」
「ちょ、ちょっと待つクマっ!!」
球磨が慌てて山田に問いかける。
「木曾はっ?木曾も容疑者の一人クマよっ?」
「木曾は大丈夫だ。会ったばっかりだが俺にはわかる。」
山田は木曾の頭を撫でる。心なしか木曾もうれしそうにしている。
「差別だクマー!!」
「にゃー!!」
二人揃ってドンドンと机を叩く。見事にシンクロしてやがる。さすが姉妹。
「まぁ落ち着け。一つだけチャンスを与えよう・・・」
「クマッ!!」
「にゃー!!」
「今正直に話せば海老天の件はチャラにしてやる。もちろん北上も無罪放免だ。」
ビクッ。
「さっきは埋めてやるとは言ったがあれは嘘だ。正直に言えば許すよ・・・」
「コイツだクマっ!!」
「コイツだにゃっ!!」
互いに互いを指差す二人。
「デデーン、球磨、多摩アウト。浜辺に埋めまーす。」
「なんでクマっ!!」
「なんでにゃっ!!」
「もういい、最早何も語るまい。えーっと、北上、球磨、多摩・・・そして川内か。」
指を一本づつ折りながら数を数える山田。
ガタッガタッ!!
「なんてな。」
「クマ?」
「にゃ?」
「埋めると言っても実際にはできないし、第一女の子だからな。」
「「「「!?」」」」
「ある程度には腹も膨れたし、それに久しぶりに笑わせてもらった。ありがとよ。」
「「「「・・・・・・。」」」」
「・・・・・・だが今度また俺の食い物盗ったらマジで埋めるからな。っ!!わりぃ、ちょっとトイレ行ってくるわ。」
山田は少し恥ずかしそうに立ち上がるとトイレのある四階に向かっていった。
「俺らが女の子・・・・・・か。」
「あたし女の子扱いされたの久しぶりだー。」
「私もにゃー。」
「お、俺もだ・・・。」
山田が姿が見えなくなると四人ともほのかに顔を赤らめていた。
「いや、あなた明石を締め落としたじゃない。」
今までのやり取りを後ろの席から座って見ていた大淀が天ぷらそばをすすりながらボソッとツッコミを入れた。
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