俺は考えていた。やはり何かがおかしいと。さっきの「女の子だからな。」発言について違和感を感じていた。何回も言うようだが俺は人見知りだ。人との対話、ましてや女の子との会話なんて緊張してまず出来ないハズだと。
ここに来て最初に会った五月雨、明石との会話だってあんなにテンパってたのに今はどうだ。
「ごきげんよう、提督。」
「提督、チィーッス!!」
そのあと出会った、川内、大淀、北上、球磨、多摩、木曾、大井。彼女達とは当たり前のように話をして交流もしている。
「こんにちは、提督」
「待ってください、扶桑姉さまっ!・・・こんにちは。」
皆とは初対面なはずなのに、段々と他人ではないような気もしてきた。川内とは兄妹のように接し、大淀とは親近感を覚え、北上達とは仲良くご飯を食べ、大井とは死闘を演じた。
「あっ!クソ提督っ!!一丁前に呼吸なんかしてるんじゃないわよっ!!」
「曙ちゃん、そんな事言ってはダメだよ?すいません、提督。」
「あはっ、マジワロスw」
なんか体力もついたような気もするし、俺が俺じゃなくなっているような・・・そんな感じがして不安になる。
「やぁ、提督。もうご飯は食べたのかい?って何しているんだ!二人ともっ!」
「提督さんのお尻なんか気になるっぽい?」
「魅力的なラインなのよねぇ~。」
あれか?俺がここに運ばれてきて、目が覚めた時に見た腕の傷跡。薬の調合なんたらと明石が言ってたがやはりアイツのせいか?さっきの首締めから時間も経っているし、探してみるか。
「おぉ、提督ではないか。どうした悩みごとか?よし、聞いてやるぞ。その代わり尻を愛でさせてもらおうか?」
「駄目よ、長門。他の子が見ているわ。後にしなさい。」
「それもそうだな、すまない、しり・・・提督よ。また後でな。」
「うふふっ。それではまた・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
地下一階からトイレがある四階まで階段でゆっくりと移動していた山田は立ち止まった。
すると山田の前の階段から誰かが降りてきた。
「あいたたた~。提督ってば酷いな~。私のような美少女に首を締めるなんて・・・あっ。」
明石と山田の目が合う。
「あっ、提督っ!!ここで会ったが百年目!!さっきの借りを返させてもらいますよぉ?」
胸から大型レンチを取り出し、こちら側にジリジリと近づいて来る明石。
スッ。
山田は右の手のひらを明石に見せ、止まれの意思表示をした。
「ハンッ、命乞いですか?提督?確かに私達艦娘は、一般人に危害を加える事は出来ませんが、自分達の上官、すなわち提督が私達に対して暴力、乱暴を行った場合、自己防衛としてならある程度、危害を加えてよいと。大本営からお達しが出ているんですよ?」
「・・・・・・・・・。」
「提督は私に乱暴をしましたよねぇ?」
明石の顔がニタァと歪む。
「なのでこのレンチで提督の脳天をぶっ叩いても問題はないって事ですよねぇ?」
レンチを舐めながら挑発的な態度で山田を見る明石。もはや女の顔をしていない。
「一つだけいいか?」
山田は明石に訪ねる。
「俺の体に何をした?」
「何をした?・・・あぁ、ナノマシンの事ですか。」
明石の顔が少し戻り、山田に答えた。
「ナノマシン?」
「そう、ナノマシン。そうですね、簡単に言えば小型のウイルスです。体の中に入ったナノマシンはその人の身体的能力を高め、精神、肉体を飛躍的に向上させます。」
「精神、肉体の向上か。」
「そうです。思い出してください。私達と初めて会ったとき、提督ってば童◯感丸出しで狼狽してたじゃないですかw」
顔を歪め、手を叩きながら笑う明石。
「ナノマシンを注入した事により、今私ともこうして会話が出来ているし、体力も上がった気がしませんか?そうでしょ?だから言ったじゃないですか、私に感謝するって。」
「・・・・・・。」
「さぁ、もういいでしょう、提督。私ってね、以外に執念深いんですよ?深海棲艦ならともかく、ただの人間に遅れをとるなんて私のプライドが許さないんですよっ!やられたらやり返す・・・倍返しだっ!!」
明石はレンチを山田に向かって振り上げた。
「だけど勘違いしないでください?決して提督が嫌いな訳ではありませんので。このレンチは特殊な素材を使っていますが、ナノマシンのお陰で大した怪我はしないはずです・・・ですからっ!!」
ゴォォォォォ!!
レンチが山田に振り落とされる。
「これで相子にしましょうよっ!!」
ドシン!!
大きな衝突音が廊下中に響いた。
「・・・なんで避けなかったんですか。」
「一発は一発だからな。」
山田は明石のレンチを両手で受け止めていた。
するとレンチが消え、明石がペタリとへたり込む。
「まさか受け止めるとは、さすが提督。」
「少し痛かったが、お前の言う通り何ともないわ。まぁ、これで俺は今までの疑問を解消出来たし、お前も俺に一撃入れた。これで俺達にわだかまりは無くなったって訳だ。」
山田は座り込む明石に手を差しのべた。
「んじゃ、改めて。お前とも長い付き合いになりそうだ。そんな気がする。だからよろしく頼む。」
山田さん、いえ提督は私によろしくと手を伸ばしてくれた。会場でした握手の時のような、ふざけた感じではなく真面目な態度で私を見ている。
「仕方ないですねぇ。」
私は提督の手をとり、立ち上がった。ふざけたと思えば、急に真面目になったり。本当に面白い人ですね。いいでしょう、この明石。あなたの為に惜しみ無く力をお貸ししましょう。
「こちらこそよろしくお願いしますっ!!提督っ!!」
・・・ナニコレ?