「あのぉ・・・」
山田の基地外的テンション声が食堂に響いた後、少し間を置いて調理場から申し訳なさそうな声が聞こえてきた。
「大変申し訳ないのですが、できれば上のメニューから選んでくれませんか?・・・」
大きな赤いリボンを付けた、割烹着姿の女の人がのれんをくぐり、調理場とカウンターの間に立っていた。
「あっ、あぁ!!す、すいませんっ!!」
おかしなテンションになってチャーハンなんて言ったけどメニューになかったんだな。すごい申し訳なさそうにこっちを見ている。いや、俺が悪いんだ。そんな顔しないでくれ!
「チャーハンは無しっ!!無しでっ!!」
咄嗟に右腕をブンブンと横に振り、山田は頭を下げた。
「いえ、こちらも提督のご希望を出来るだけ叶えて差し上げたいのですが・・・私と妖精さん達では手が回らないのです・・・」
その人は後ろの調理場をチラリと見た。山田もつられて見てみると調理場内には大量の妖精さんが調理をしていた。トイレを造ってくれた妖精さんかまた違う妖精かわからないが、学校の給食当番が着ているような白い服に頭巾、マスクをしている。
「伊良湖ちゃんも妖精さんも頑張ってくれているのですが、皆さんの食事量とスピードが速くて・・・」
カッカッカッカッ!!
「ん?」
カウンターの女性の話を真面目に聞いていた時、聞いたことあるような無いような音が山田の耳に響いた。ふと後ろを振り返ると先ほどにはなかった恐ろしい程のオーラを纏う二つのテーブルがあった。いや、テーブルと言うより座っている人間から発せられていた。
「美味しいっ!!美味しいですぅっ!!」
「赤城さん、落ち着いて・・・そんなに急がなくても食料は逃げはしないわ。」
「瑞鶴、そんな張り合わなくても・・・」
「翔鶴姉っ!!これは私達に対する挑発なの!!一航戦なんかに負けてられないっ!!」
カッカッカッカッカッカッカッカッ!!
金の延べ棒のようなものをかじり、ご飯をかきこんでいる。
「こんなモノでは腹は膨れぬ。おひつごと持ってきてくれ!!」
「無理ですよぉ!!もう少しゆっくり食べてくださいよぉ!!」
「ふむ、やはり些か物足りないな。」
「長門、少し食べ過ぎじゃない?おデブになっちゃうわよ?」
「酒だぁぁぁぁっ!!ヒャッハー!!」
「私の天ぷら、とても小さい・・・ふっ。」
「そんな顔しないでお姉様。ほら、私のあげるわ。」
「瑞雲の天ぷら・・・ありだな。」
「あぁ、やっぱり物足りないなぁ。日向、また並ぼう。今度はカレー頼もう、カレー。」
体が普通のサイズより、やや大きいまたはとても大きいであろう艦娘達がそれぞれ山盛りの料理を食べながら駄弁っていた。ただ飯を食っている絵なのになんて威圧感だ。イ◯ル◯ョーがド◯ジャ◯ラスを補食する位の見ごたえがある。店員らしい子が半泣きじゃないか。可哀想に。
「なのでメニューの種類を少なくさせてもらって、食事の量を増やして対処させてもらっているのです。」
「なら他に誰かに手伝って貰えばいいんじゃないですか?」
ここには腐るほど人がいるんだから、誰かしら手伝ってくれるんじゃないか?妖精さんだけじゃキツイだろ。小さいし、ほら包丁を使ってキャベツを切ろうとしてる。危ない、危ない、危ない。これは大変だろう。
「はい。お手伝いを申し出てくれた方はいたのですが・・」
「が?」
「戦闘に集中して欲しいと思い、断ってしまいました。私、戦闘は出来ませんので。」
「そうなんですか。」
でもほぼ敵は壊滅したって言うし、こんなに数がいれば多少何かあっても対処出来るような気がするが。んんー。どうなんだろう。
最初にソバを食べていた時は全体的にほのぼのとしていたが、今はとてもそんな空気じゃない事は確かだ。俺の食べたソバのどんぶりより遥かに大きいどんぶりを盃の様に持ち、飲み込んでいる奴、全然足りないと、こちらをチラチラみて次何を頼むか考えていそうな奴。っ!!後ろに並んできた。目が何だか怖いわ。
「と言うわけでして申し訳ないのですが、上のメニューから選んで頂いてよろしいですか?」
俺の後ろに並んできた二人を気にしてか俺にメニューを決めてくれと言わんばかりに切羽詰まったような顔で催促してきた。ちなみに明石はもういない。俺と彼女が話しているうちに妖精さんにカレー注文して、さっさとテーブルに向かっていった。金も何も払わなかったので多分無料なのだろう。
さっきから同じ顔二つが俺の顔をじーっと睨んでるし、とっとと決めるか。
「天ぷらそば!!」
さっきと同じだがコレでいい。天ぷら食えなかったし。
「はいっ!!」
俺の注文を聞いた途端、素早く調理場に戻っていった。そして
「お待ちどう様です。」
トッ!!
おぼんに天ぷらそばを乗せて持ってきた。すげぇ10秒もかかってねぇ。それだけ急いでるって事か長話して申し訳ないな。俺はお礼を言ってさっさと席に着こうとした。
「ありがとう、っ!・・・・・・・・それじゃ!!」
ガッ!!
「待ってください。」
俺は肩を捕まれた。
「まさかとは思いますけど提督。私の名前・・・知ってますよね?」
「・・・とっ当然ですよ?知ってるに決まってますよ。やだなぁ。」
頭に手を当て、あははと笑う山田。
「ですよねぇ?私名前忘れられちゃったのかと思いましたよ。」
フフと笑う女性。
「「あははははははははは!!」」
「で?」
「ファッ?」
「私の名前は?」
「・・・・・・。」
ヤベェ!!真面目に誰だかわからねぇ!!いや、艦これには居たよ?居たけど名前が思いだせねぇ!!誰だっけ?疲労時にアイスくれる人!!ふぁーって治る奴!!えーっと。
ヒントがないか辺りを見渡す山田。すると山田の後ろで並んでいた同じ顔の一人がなにやら口を動かしている。
「!」
それを見た山田は一瞬で閃いた。この人はこの人の名前を教えてくれようとしていると。
(ちなみに山田はこの日向の名前も覚えていない。ナノマシンのせいなのか、それともただの認知なのかわからんが。)
「?、?、?」
「ん?三文字。」
「?、?、?」
「あ、い、う?」
「?、?、?」
「・・・!」
わかった。ありがとよ。・・・・(^^)d
(^^)d
山田と日向はお互いにサムズアップをした。
「恥ずかしくて言えませんでしたが、わかりましたよ。仕方のない人ですね?」
覚えてなかった事を悟らせないため山田は余裕の表情で笑う。
「もうっ!意地悪は止めてくださいな。本当は覚えてたくせにっ!名前覚えられていなかったら私、立ち直れませんでしたよ?」
山田の笑みを見て今までのは全て提督のおふざけだったとわかった彼女は胸を撫で下ろす。
「・・・・・・・・タミヤさん。」
「間宮ですぅぅぅぅぅぅっ!!」
間宮さんはその場で泣き崩れた。