ゴシゴシゴシ、ガシャ。
ゴシゴシゴシ、ガシャ。
ゴシゴシゴシ、ガシャ。
「スイマセ~ン、コッチテツダッテクダサーイ。」
「はい、喜んで~!!」
ジャー、ジャー、ジャー。ゴトッ。
「キレナイー!」
「はい、喜んで~!!」
ザクッ、ザクッ、ザクッ、トントン。
ザクッ、ザクッ、ザクッ、トン。
「ワァ、コボシチャッタ!!ドウシヨウ・・」
「はい、喜んで~!!」
フキフキフキフキ。ジャー、ギュウウウウ!!
フキフキフキフキ。
「コッチ、コッチ!!ゴゲチャウヨ!!」
「はい、喜んで~!!」
ジュー、カチッ。カチャカチャ、ボトッ!!
「オムレツ出来ました。トッピングオナシャス!!」
「アイヨォ。」
小さな体で器用にケチャップをかけていく。それに合わせて山田は皿にパセリを乗せた。
「ナカナカヤリマスナァ、テイトクドノ。マミヤドノヨリ、イクラカウゴキガイイ。」
「アリアトアス!!」
俺は今、食堂の調理場でコックコートを着ながら働いている。何故こんな事になっているかというと、だいたい一時間前くらい遡る。
ーーーーーーーーーーー。
「わぁぁぁぁぁんっ!!酷いっ、酷いっ!!私こんなに一生懸命頑張っているのにっ!名前すら覚えていてくれてないなんて、あんまりですぅぅぅぅぅ!!」
俺が自信満々に彼女の名前を答えた瞬間、「間宮ですぅ!!」と座り込んでしまった。顔は覚えていたんだ。なのにド忘れしてしまってタミヤなんて言ってしまった。いろんな人と取っ替え引っ替え会って、頭のキャパシティが越えてしまったのだろう。
この絵ヅラはキツイ・・・。だって大人の男が大人の女を泣かせたんだぜ?彼女は女の子座りをしながら手で顔を隠し、わんわんわんわん泣いている。完全に俺が悪者だよ。彼女の様子に気づいたのか、調理場からぞくぞくと妖精さんが間宮さんの周りに集まってきた。
「ドウシタノ?マミヤサン、オナカイタイノ?」
「ナイテチャワカラナイヨォ。」
「ヨシヨシ。」
「ネェ、ナカナイデ。」
「オレミタゼ?」
「ナニヲ?」
妖精の一人が山田を指差した。
「テイトクガ、マミヤサンノナマエヲ、ワザトマチガエテイジメテタンダッ!!」
「「「「「「!!」」」」」」
間宮の周りにいた妖精が一斉に山田を見た。
「いやっ、イジメたわけじゃ・・・」
山田が弁解をしようとすると問答無用と妖精達が山田に集まってきた。
「マミヤサンヲイジメルナンテ、ユルサナイ!!」
「ジゴクニオチロ!!」
「エイッ!!エイッ!!」
「オトコノカザカミニモオケネェ!!」
「バルスッ!!バルスッ!!バルスッ!!バルスッ!!」
「いだだだだだだっ、ごめっ、いだいっ、ごめんなさい!!」
妖精達は山田によじ登り攻撃を始めた。頬をつねったり、頭を叩いたり、爪楊枝で足を刺したり、何かに取りつかれた様に尻を集中的に攻略し始める妖精もいた。
(このままでは俺の尻が陥落するっ!!)
尻の危機を感じた山田は尻の妖精を引き剥がそうとした、その時。
「ヤメネェカ!!オマエラ!!」
ピシャリと調理場の中から一人、妖精が出てきた。
「マッタク、セッカクツクッタリョウリガ、サメチマウジャネェカ・・・」
黒っぽいエプロンに、漁師のようなハチマキを頭にした格好の妖精が山田と妖精達を見つめていた。
「デスガオヤブン・・」
「コイツハ、ソンナゲスジャナイ。ソウダロ?アンチャン?」
「そっ、そうです。いじめなんてとんでもないっ!!」
「ダ、ソウダ。オラッ、ハヤクモドレ。」
すると山田の体から妖精達が離れ、調理場に戻っていった。
「ヤレヤレ、アトハ・・・」
そう言うとその妖精は間宮に近づき、泣いている彼女の肩に乗って
「・・・・・・・」
「ひっく、ひっく。」
「・・・・・・・」
「え?」
「・・・・・・・」
「そ、そんな事・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・」
間宮さんはジッと俺の顔を見ている?睨んでいる?気まずい。俺は咄嗟に下を向いた。
「・・・・」
「・・・っ!!」
すると間宮は顔を赤くして、頬に手を当て上目遣いでチラチラと山田を見ている。
「うん?」
「・・・・・」
「・・・・わかりました。」
すると彼女は立ち上がり、カウンターを出てそのまま食堂から出ていってしまった。すれ違う時、口を手で押さえてコッチを見ていたが、妖精さんは何を言ったんだろうか。
「ホラ、アンチャン。ナニシテンダ?ハヤクコイ。」
「えっ?」
突然の妖精さんの言葉に一瞬驚いた。
「ゴカイヲトイテヤッタンダ。メシヲツクルノテツダッテクレ。」
「手伝う?俺が?」
何が何やらわからんが、この妖精さんが状況を変えてくれた事はわかる。手伝うのは構わないけど、この妖精さんどこかで・・・
「ダイジョウブダ、オレラデモデキルンダ。オマエニモデキル。」
「誤解を解いてくれたのは礼を言いますが、どっかで会いました?」
「・・・・オイオイ。キョウアッタバカリダロウ。」
その妖精は頭のハチマキを取り、にかッと笑う。
「・・・・あっ!隊長じゃないか。」
山田は思い出した。自分のためにトイレを造ってくれた妖精達の事を。ヘルメットを被った、つなぎ姿の妖精の事を。
「タイチョウ・・・?マァ、スキナヨウニヨンデクレ。イイカラハヤクテツダッテクレ。オオグライドモガ、コッチミテル。」
ふと後ろを見るとズラッと大型の艦娘が並んでいる。
〈(●) (●)〉
駄目だ、目に光がない。どんだけ飯食いたいんだよ。
俺はそそくさと調理場に入った。
コックコートに着替えた俺は、最初に皿洗いを命じられた。その間にいろんな場所からヘルプが続出し、それの対応に追われている。間宮さんはこれをずっとやっていたらしい。大したものだ。
隊長から聞いた話によると、「俺たちは建物の建造が主な仕事だが、それだけじゃ暇なんだ。だから昼食時には調理場を手伝っている」らしい。というか報酬が目的なのだとか、運がいいとアイスが貰えるとの事。可愛いなもう。
「ウチ、カレー。」
「私はオムレツを。」
外から注文が聞こえてくる。
メニューは4つ。カレー、天ぷらそば、オムレツ、そしてボーキ丼。・・・・ん?あぁ、何だソレ?って?俺も知らん。簡単に言うと山盛りのご飯に金の延べ棒(ボーキサイト)を三本乗せたシンプルな物だ。主に空母が食べるらしい。ほぼご飯が主役のものが多いため比較的楽だ。
「ヨォ、ガンバッテンナ。」
隊長が話しかけてきた。
「えぇ、まぁ。」
「ケンソンスルナ。イツモヨリハヤクサバケテイル。サスガダ。」
「いやぁ。」
誉められて少し照れるが、俺には気になることがあった。
「そうだ、隊長。」
「ナンダ?」
「間宮さんに何言ったんですか?泣き止んでくれたけど、どっか行っちゃって・・」
「・・・・アァ、オマエハイイオンナナンダカラナクナ。カオアラッテコイッテイッタ。」
「格好いいなぁ!!隊長!!キザだね?」
隊長の男気に感動した山田は肘で隊長をつつく。
「ハハッ。」
隊長は腕を組んで空を見上げた。
パシャ!!パシャ!!
「今度はコックさんですか・・・提督は話題に事欠かないですねぇ。そろそろ直撃インタビューでもかましますかっ!!」
おまけ:隊長と間宮の会話。
「ドウシタンダ?マミヤサン?」
「ひっく、ひっく。」
「マッタク、アイツハシカタナイヤツダナ。イクラスキダカラッテ、オンナニイジワルスルナンテ。」
「え?」
「アイツ、マミヤサンニホノジナンダヨ。マチガイネェ。」
「そ、そんな事・・」
「オトコッテノハヨ、スキナヤツヲイジメルシュウセイガアルンダ。」
「・・・・」
「ホラミロ、アイツマミヤサンニミツメラレテ、テレテヤガル。ウブダナ。」
「・・・っ!!」
「ソウイウコトダ、ショクドウハオレラニマカセテ、カオデモアラッテキナ。」
「・・・・わかりました。」