ジャー、ガチャン。
「ふぅ。あぁー、腰痛い。」
ある程度、艦娘達の食事のペースが落ち着いて俺は今皿洗いをしている。隊長に聞いたがここの食堂は何回、何十回食べてもタダなんだとさ。太っ腹だね。まぁ、その代わりその日、その日で四種類のメニューしかないっていうのは少し味気ない気がするが。ちなみに明日は親子丼、麻婆豆腐、きつねうどん、冷やしボーキだって。前三つはうまそうだが何だよ、冷やしボーキって。何味なんだよ。
「提督・・・。」
「あ、あぁ、はい。」
間宮さんが戻ってきた。あれ?少し顔がさっきとは違うう・・。
「ありがとう御座います、手伝わせてしまって。」
「いいえ、とんでもない。こちらこそ名前を忘れてしまってすみませんでした。」
深く頭を下げ、謝った。隊長がうまく説得して事なきを得たが、けじめだ。俺が悪いのには変わりないのだから。
「顔をあげてくださいな、私もう大丈夫ですから。」
「本当、ですか?」
恐る恐る顔を上げる。彼女は前に手を組んで、やんわりと笑顔を作っていた。まつ毛は長く、目はパッチリ、頬にはほんのり赤みがかかって、口紅までしていた。さっきまでの顔も美人だっのに、化粧をしてより完璧な美人になっている。
ドッドッドッドッドッドッ!!
心臓の音が速くなっていく。これは・・・やばい。
間宮さんは髪をかきあげ、俺を見て言った。
「・・・チャーハン。」
「えっ。」
「チャーハンが食べたい、でしたよね?」
「は、はい。」
「お手伝いしてくれたお礼です。美味しいの作りますから空いている席に座って待っててください。」
すると彼女は鼻歌を歌いながら、ルンルンと冷蔵庫に食材を取りに行った。彼女の突然の変化に妖精達も唖然としている。俺と会話していた時の疲れた顔ではなく、まるで恋を知った少女のような初々しい顔をしているものだからそれは驚くだろうな。俺も驚いたよ、化粧ってスゲエなって。
「隊長。」
「ア?」
「本当に何言ったんですか?顔を洗ってこいって言ったんスよね?逆に綺麗になってるじゃないスか。半端なく。」
「・・ウズイチマッタンダロウ、オンナノサガガ。」
「えっ?何?何て言ったんスか?」
「ナンデモイイダロ、ホラココハモウイイカラ。ミズデモクンデ、セキニスワッテコイ。」
シッ、シッと手を払い隊長は俺を調理場から追い出した。
腑に落ちないが、言われた通り、入り口のウォーターサーバーで水を汲み、空いている席を探す。
「も、もう食べれない。これ以上は・・出ちゃう。」
「大丈夫?瑞鶴?お腹擦ってあげるわね。」
「・・っ!!翔鶴姉っ!大丈夫!!大丈夫!!だからお願いっ!!止めっ・・ぶぉぇぇぇぇぇぇっ!!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!瑞鶴ぅぅぅぅぅっ!!」
「ハハッ。情けないですねぇ、瑞鶴さん。私達はまだまだ食べられますよぉ?ねぇ?加、おろろろろろろろろろろろろ!!」
「赤城さん、汚いわ。」
「筑摩、人参食べるか?」
「要りません。」
「最近どうよ?あきつ。」
「ぼちぼちでありますなぁ。」
こうして見るといろんなのがいるな。あっちなんて食いながらゲロってる。ただの酔っぱらいじゃねぇか、色気もへったくれもねぇや。うおっ!!こっちは取っ組み合いしてらぁ。いやだなぁ、関わりたくねぇなぁ。やっぱ辞退させてもらおうかな。提督なんて、無理ゲーな気がしてきたぞ。
「無理ゲーなんかじゃないですよ?司令官。」
「ふぁ?」
何処からか声をかけられる。俺喋ってないよな?軽くホラーなんだけど。いやだ、もういやだ。心まで読めるってもうそれあきまへんやん。帰りまひよ。お家に帰りまひよ。
「帰るだなんて寂しい事、言わないでください。大丈夫です。プライバシーは守りますので。さぁ、席に・・おおっと!!」
山田はこの場を離れるため、声を無視して帰ろうとした。が、その声の主は山田の腹を後ろから摘まみ、動きを封じた。
なにコイツ、サイ●マン●ィスか?俺の行動をリーディングでもしたっていうのか!?
(サイなんたらはわかりませんが、司令官の行動原理は把握済みですので、これくらいは朝飯前です。)
えっ?そうなの?
(はい、余裕です。)
・・・・え?会話してるのコレ?
(えぇ、してますよ?すごいでしょ?相手に直で会話出来る、これが私の能力っ!!)
ビシッと何かのポーズを取った。
・・・・・・。
(抵抗は無駄です。大人しくソコの席に座ってください。)
銃を突きつけられているような冷たい感覚がした。初めてのタイプだ、行動、思考が相手に筒抜けなんて。こんな・・・
「あっ、そういうのいいんで。はよ座ってください。」
「なんて日だ・・・。」
山田は諦めて近くの席に座った。
「それでは改めまして・・・青葉です。以後お見知りおきを、」
「・・はぁ。」
山田は大きくため息をついて、目の前の人物を見た。
「どうしました?ため息なんか・・・あぁっ!」
ポンっと左の手のひらにグーの形を作った右手を乗せ、なるほどといった顔をした。
「私が美人すぎて「それはない。」声が・・・。」
「やはりそう言うと思っていましたよ。司令官。で?」
「?」
「本音は?」
「残念美人。」
「んっ!!またまたぁ~。照れちゃってまぁ。」
ヤレヤレと顔を振り、何かを置いた。
「コレは?」
「相手の心を読める装置、ヨムヨム君です。明石さんに三日間土下座をして作って貰いました。」
ドゴォ!!
ヨムヨム君の事を聞いた途端、山田は拳に魂を込めてヨムヨム君に会心の一撃を繰り出した。しかし。
「甘い、甘い。甘過ぎですよ?司令官どのぉ?」
どや顔をした青葉が山田の拳より速くヨムヨム君を引っ込めた。腕に顔を乗せ、いやらしく山田に視線を送る。
「っ!」
その顔を見て山田は青筋を立てる。
「待ってください、私は何も喧嘩したくてあなたと話してるんじゃない。あなたと仲良くなりたいんですよ。」
「ならソレを寄越せ。」
「壊さないと約束してくれますか?」
「うん、うん、うん、うん。」
「本当に?」
「うん!!うん!!うん!!うん!!」
「本当の本当に?」
「ぶっ壊してやるから早く渡せっていってんだろうがっ!!」
「うわぁ、最後の最後で本音が出ましたよ。この人。」
今までのストレスに青葉の煽りが掛け合わされ、山田の精神がピークになって来た。先程の頷きも、セッ●の如くヘッドバンキングをキめていた。
「まぁ、司令官には感謝しているんですよ?」
「え?」
突然の手のひら返しに虚をつかれた山田。
「あなたが来てから、明らかに彼女達の態度が丸くなりました。この間までお互いを牽制し合う女性特有のギスギスした空気が流れていたのに朝礼であなたの姿を見た途端、一変して穏やかな空気になったのですからうれしい限りなんです。」
青葉は自分のコップの水をチビりと飲んだ。
「お陰で顧客も増え「お待たせしました。」」
青葉の声を遮り、美味しそうな匂いと共に声が響く。
コトッ、コトッ。
皿を二枚、山田の前に置き、蔓延の笑みの間宮が御盆で口元を隠して山田を見ていた。
「丹精込めて作りました・・・」
「あっ、ありがとう御座います。いやぁ、美味しそうですね。」
山盛りのチャーハンが二つ並んでいた。山の頂上に尋常ではない量の紅しょうがを乗せて。
「残さず食べてくださいね?あな・・・っ!!」
途中何かを言いかけてビュンと調理場に戻っていった。
「・・・・・・・。」
「・・・手が早いですね。」
「違うわい。」
「いただきます。」
チャーハンの姿を見た途端に腹が鳴り、すかさずスプーンを取った。細切れにされた肉がジュワッと口の中で旨味を広げ、それをシャキシャキの歯応えがするネギによって更に味が整えられていく。卵も目立ち、目立たず主張してきて非常にいいバランスだ。シンプル・イズ・ベストこれが一番だよな。
「・・・・・じゅる。」
山田が旨そうに食べる姿をみて青葉がヨダレを垂らす。
「おっ、美味しそうですね・・・」
がつがつ、むしゃむしゃ、ごくん。
「その量、二つも食べられますかねぇ?」
がっ、がっ、がっ、むしゃむしゃ、ゴクゴクコク。
グゥゥゥゥゥゥ!!
「うぅ・・・」
お腹を抑えながらひもじそうにチャーハンを見る青葉。
「食べるか?」
「いいんですかっ!?」
山田の鶴の一言に目を輝かせ、身を乗り出す。もし彼女に尻尾があったら、ぐるんぐるんと振り回しているだろう。
「ヨムヨム君を差し出せばな。」
スプーンを置き、青葉に手を出した。寄越せ、寄越せ、ぶっ壊してやるから寄越せ、と。
「嫌です。」
先程の表情から一転、彼女の目から光が消えた。なにいってんだコイツは?とそんな顔をした。
「あ、そう。」
山田はさっきとは段違いな速さでチャーハンを口に掻き込んだ。ちゃんと噛んでいるのか?
「あっ、あぁ、私のチャーハン・・・」
左手を出し、ワナワナと震えている青葉。すると突然、下を向いて笑い出した。壊れたように乾いた笑い声で。そんな事を気にせず山田は二皿目の皿に手をかけた。その時。
ダァンッ!!
「わかりましたよ、私も
ニタァと顔を歪め勝利者の顔をしている彼女に戦慄を覚える山田。
脅し?たかだかチャーハンをくれないからって脅し?コイツの頭どうなってるの?食いしん坊にも程があるだろコレぇ!!こういう目をした奴には大概ロクな奴はいない。間違いない、コイツ。俺を・・・・・
殺す気だ。
テーブルに叩きつけられた青葉の手下には何かあった。写真?
「司令官、この世界に来て初めて会ったら人は誰ですか?」
そんな事を聞かれ俺は流されるまま答えた。
「最初?えぇっと・・あぁ、五月雨だっ!!」
ここに連れてこられて、わけもわからない俺に優しくしてくれた優しい子。綺麗な青い髪、クリクリとした目にぷっくりとしたほっぺ。あぁ、すっかり忘れていた。ええ子やったなぁ。俺の為にあんなたくさんのハンカチまで・・・。
「彼女は
こいつ。
「艦娘全員からハンカチを借りてきて、箱を一杯にしてあなたに持ってきましたね?えぇ、えぇ、一生懸命頑張ってましたよ?彼女は。」
まさか
「あなたはその中の一つを取り、気絶をした・・・・何故か。」
そんな事・・
「その秘密はっ!!コレだっ!!」
青葉は勢いよくテーブルから手を話した。
そこには写真があった。写っているのは三人。五月雨、明石、そして右手にピンクの柄のパンツを持っている山田が写っていた。
「うぅわっ、うぅわっ、うぅわっ、うぅわっ!!」(エコー)
山田は突然心臓を抑え倒れこんだ。
バタッ!!
デンッデンッデレレッ!デンッデンッデン!!
GAME OVER
どうした!?山田!!返事をしろっ!!山田!!山田!!山田ぁぁぁぁぁぁっ!!