「はぁ~、本当に好きですねぇ、気絶するの。」
メタ○ギ○のゲームオーバ時のリアクションを大袈裟にとった山田はテーブルとテーブルの間に倒れ込む。何事だ?と心配する艦娘もいたが、ほとんどはそんな事を気にせずに黙々と食事を摂っていた。
青葉は倒れた山田を少し眺め、何か閃いたのか顔をニヤつかせ、テーブルの写真を手に取り高らかに掲げ言った。
「皆っさぁぁぁぁぁんっ!!提督のすっ・・・・ごく格好いい写真っ!!見たくありませ・・・」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
己を社会的抹殺をしようとする悪意に反応し、意識の深淵からクロールで現実に戻ってきた山田がビーチフラッグのスタートのような勢いで立ち上がり、青葉の口を塞いだ。
「ひへふはいへいはふひはひはへ。ふぉうへふほ。はんへもはんへほひへふへふぁいへふへひふはんへほほははひほほへふ。」
訳:
(気絶耐性がつきましたね、そうです。なんでもかんでも気絶で解決出来るなんて思わない事です。)
「何いってんのか、わからんがお前が今までの奴とは違うと言うことはわかった。」
青葉の口を押さえながら、山田は息を荒げる。そして周りを軽く見渡しながら申し訳なさそうに言った。
「ごめんなさい!!そのまま食事を続けてくださいっ!!申し訳御座いませんでした!!」
深く頭を下げ、場の沈静化に全力を注いだ。その熱意に押されたのか大体の艦娘は食事に戻った。中にはまだ山田を興味深そうに見ていたり、写真を見てみたいと思った艦娘がソワソワしたりしているが、山田には最早見えていない。目が笑っていないコイツに何故その場面の写真があるのか。を問いただしたかったからだ。
「よし、残りのチャーハンやるから一先ず座ろうや。」
それを聞いた青葉は目を薄め、首を縦に振る。口から手を離し、お互い席に座り直した。
「では・・・」
山田の前にある残りのチャーハンに目配せした青葉は視線を山田に戻し、手のひらを差し出した。そのチャーハン寄越せという事だろう。山田は諦めたようにため息をつき、器を青葉に渡した。空の器を。
「皆っさぁぁぁぁん!!司令ってば私達の誰かのパンツでほにゃららをぉぉぉ・・・」
「あぁぁぁぁぁぁぁおば様ぁぁぁぁぁ!!こちらのチャーハンを御受け取りくださいませぇぇぇぇぇぇ!!」
青葉の倍の声を腹から出し、テーブルに頭をつき、チャーハンが乗っている器を前に出した。
「はぁぁぁ、なかなか美味しかったですねぇ。シンプルなものほど美味しいんですよぇ。ねぇ?司令官。」
「そーですね。」
一連のやり取りから数十分後、チャーハンをたいらげた青葉が水を飲んで一息ついていた。対する山田は青葉が食べ終わるまでテーブルの上の写真を食い入るように見て、色々考察していた。
斜め上辺りから撮られているこの写真は空中で撮ったには違いない。あの時は何もかもわからず、時間に流されるだけだったからな。でも何かが飛んでいる音も気配もなかったハズなのになんで写真なんか。考えている山田を見て青葉が話始めた。
「その写真を撮ったのは、この鎮守府の周りを監視している完全自律思考型のロボットが撮ったものなんです。」
「完全自律思考のロボ?」
「そうです。どこの鎮守府にあるもので、地下、地上、空中、水中と何処にでも稼働出来るとても万能な監視ロボットなんですよ。」
水陸両用でなおかつ空中もいける監視ロボだって?たまげたな。確かに俺の世界でも無人で動く人工AIはニュースで見たことあるけど完全自律だろ?人の制御が要らないロボットが勝手に動いてる、すごいと思う反面、怖いとも感じる。もしそのロボットに武装が備えられていて、俺を敵と判断したら・・・
「しかも特殊なメガネを掛けないと姿すら見えないステルス機能付きです。」
「見えない?じゃあお前らにも見えないの?」
「そうです、監視ロボットは主に大本営で生産され、それぞれの鎮守府に納品されます。深海棲艦になるべく察知されない為に私達の身体能力をベースにして造られたと聞いています。人間から見れば私達も深海棲艦も変わらないという事でしょうね。」
水を飲みきったコップの中の氷をカランと鳴らしながら説明を続ける青葉。
「ふーん、そういう事ね。なーるへそっ。」
後半、少し顔が暗くなった青葉に気を使い山田は少しおちゃらけて相づちを打った。
「それで青葉様。」
「青葉でいいですよ。」
「その写真はさぁ、どうやって現像・・印刷したの?」
「あぁ、この鎮守府に小さい管制室があるのでそこでちょちょいっと。」
青葉は人差し指を空中でクルクルと回した。
「そう、それでさ。その写真の事なんだけど・・」
山田は青葉の誤解を解こうとした、違うんだ。俺はパンツを持ってこいといった訳ではないんだ。あれは五月雨の頑張りがちょっぴり空回りしてしまっただけなんだ。と
「わかってますよ、ハンカチが欲しかったんですよね?五月雨ちゃんから直接、ハンカチが欲しいと頼まれましたし、第一あなたにそんな度胸は無いって事くらいわかってましたので。」
「へ、へぇ。それはそれは。」
後半軽くディスられた山田は少し顔をヒクつかせたが、青葉が本当の事を知っていると分かり、山田は少し安心した。
「それでですねぇ・・・よっと。」
腰のポケットから何かを取り出し、山田の前に置いた。
「スマホ?」
それはまさしくスマホそのものだった。画面には写真と同じ絵が写っていて真ん中に再生ボタンがあった。動画のようだ。
「じゃあ再生しますねぇ。音は無いのであしからず。」
青葉はスマホの再生ボタンを押した。
あっ、パンツを持った俺が倒れた。ドラマみたいな倒れ方だ。第三者の目線で見てみるとなかなか恥ずかしい。五月雨がアワアワしている可愛いなぁ、食べちゃいたいわぁ。おぉ、明石がでっかいレンチを取り出したぞ。なんでそこからでるのか今でも不思議だが。まさかそれで寝ている俺を殺すつもりじゃあ・・・さ、五月雨が必死に止めてくれてる。あぁ、心がこんなにも暖かい。
山田の顔が自然と綻んだ。
・・・俺を運ぼうとしている、明石は両腕、五月雨は足を持って・・まるで豚の丸焼きみたいな感じで滑稽に見える。あっ!明石の奴、手を離しやがった。この時か、たん瘤が出来たのは。
おっ、五月雨が・・あぁ、ハンカチの箱を忘れたと。違う俺が落としたパンツを拾った。そうだよな。一応パンツだし、そこら辺に落としたままだなんて可哀想だよな。そのパンツを箱の中に、中に・・・・明石っ!!てめぇ!!なんで邪魔すんだよ。五月雨からパンツを取り上げて・・・
明石は五月雨からパンツを奪うと山田に近づき、なにやらモゾモゾしだした。そして何事もなく山田の腕を持ち、モジモジしている五月雨に足を持つように指示を出していた映像はそこで終わった。
「・・・・・・・・」
山田は恐る恐る右のズボンのポケットに手を入れた。
「・・・・・・・・」
左のズボンのポケット。
「・・・・・・・・」
立ち上がり、右側の尻のポケットに手を入れる。
「・・・・・・・・」
そして最後に左側のポケットに手を入れた。
「・・・・・っ・・」
青葉はスマホを戻し、テーブルに肘を付け、両手を組んで頭を乗せた。
「今、五月雨さんはあの大量のハンカチを返しに艦娘の部屋を巡回している筈です。艦娘は人間より基本能力が優れている為、記憶力はあります。あなたが持っている
山田の額に一筋の汗が流れる。
「貸し一つ・・・ですからね?」
蠱惑的に青葉は人差し指を唇に当てて言った。
グッ!!
物凄く血管が浮き出た手で青葉にサムズアップした。
「ぐっ!!」
青葉も口に出しながら山田にサムズアップを返した。
早歩きで食堂の入り口に着いた途端、山田は一気に加速し、階段を駆け上がる。
「五月雨ぇぇぇぇぇぇ!!何処だぁぁぁぁぁ!!」
食堂からそれはそれは大きく、とても悲しげな声が響いたそうな。
このあと五月雨に追い付き、パンツを返すため奮闘する山田。さていったい誰のだったのかな?アンケートとるよ♪