「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
おかしいな。さっきの一撃で目が覚めると思っていたのに景色が全く変わらない。てゆうかすげー腹痛い。的確にみぞおちに入ったのだろう。吐きはしないがきたない声が出てしまった。痛い。ただそれだけ。
「ひゃっ、ど、どうしたのですかっ?提督。自分のお腹を殴って・・・」
俺の奇行を見て五月雨が駆け寄って来る。ありがとう、五月雨。なかなかいないぞ、目の前の気違い男に心配の声をかけてくれる女の人なんて。君はええ嫁になれる。この俺が保証しよう。それはともかくなんで夢の中なのにこんなに痛いんだ。まだかすかに鈍い痛みが残る。まさか夢ではなく本当に・・・まさか、な。
まてよ。もしこれが夢じゃなく本物の俺の現在ならさっき見たマッパの筋肉質なおじさんは・・・・・・俺は首をゆっくりと右に向ける。そう、奴がいた方向だ。恐ろしい、恐ろしい。だけど俺は見極めなければならない。真実を。
「・・・・・・いない。誰も。」
俺は先ほど奴がいた所を凝視していた。上、下、右、左。なんども確認した。俺は立ち上がって360度周りを見た。山、住宅地、道路、電柱。そして一面に広がる海があるばかり。特に変わったものはない。見た感じ、人は俺の目の前にいるオドオドしてやけに守ってあげたい感を放つ五月雨に俺だけだ。おっさんはいない。
「ありがてぇ、ありがてぇっ!!」
俺はとっさに土下座の形になった。何に?と自分に問いかけるが、もうどうでもいい。これは現実だ。現実なんだ。俺は今ここにいる。もうそれだけでいい。正気(?)を取り戻した俺は彼女、五月雨と向き合う。
「いやぁ、すいません。重ね重ね奇声を発してしまって。」
「いえ提督が元気なら五月雨もうれしいです。」
とても眩しい笑顔で会話してくれている。さっきまでトチ狂っていた俺に
「ええ娘や・・・」
「えっ?なんです?提督?」
思わず言葉に出てしまった。だってしょうがないじゃないか、しずかちゃんなみに優しいんだもの。
「っ!いや、なんでも・・・」
とっさに誤魔化したが恥ずかしい。しっかりと俺の目を見て話してくれる。人見知りの俺にとってそれはうれしいやら恥ずかしいやらで俺の感情をかき乱すには十分すぎるほど効果は抜群だった。そんな俺を知ってか知らずか五月雨は俺に視線を合わせ続ける。
「ふふ、変な提督さん。・・・あれ?」
今度は五月雨が辺りをキョロキョロと眺め始める。
「どうかしたんですか?」
俺はふと訪ねる
「いえ、さっきまでそこに妖精さんが遊んでいたんですけどいなくなってしまったなと思って。」
妖精さん?はてそんな可愛いのいたっけかな。俺がここに来てから見たのは五月雨と・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・」
「ん?どうしました?提督?」
違う、違う。ありえない。あれは人だ。いや人か?いやはやまさか、あれが妖精のわけがない。あれだろ?妖精ってのは小さくて緑っぽい服着てのほほーんって感じの生き物だろ?あんなにゴツい露出魔が妖精のわけないだろ。うん、そうだ。そうに違いない。でもいちお聞いておこう。
「あのぉ、五月雨さん?」
「はい、なんでしょう?」
「妖精ってのはアレですよね?小さくて可愛いものですよね?」
「いいえ、妖精さんといっても個体差がありますから大きさはそれぞれ違うんですよ?錬度に応じて成長していくんです。」
・・・・・・・・・うん?
「でもさっきの妖精さんはすごかったですね。あんなに大きい妖精さんを見るのは初めてです。もしかしたら私達の鎮守府に来てくれるかもしれませんね。楽しみです。」
・・・・・・・・・・・・
「ねっ、提督。」
・・・・・・・・・・・・。
「五月雨さん。」
「提督、さっきから気になってたんですが、さん付けはやめてください。私達の上官なんですから。呼び捨てでいいんですよ?」
「それじゃ、お言葉に甘えて、五月雨。」
「はい、なんでしょう?」
「ハンカチを、ハンカチを持ってきてくれないか?」
「ハンカチ?、っ!どこかケガされたのですかっ?」
「いや、まぁ、うん。そんなところだ。」
「それは大変ですっ。でもハンカチより包帯のほうが・・・」
「いや、ハンカチでいいんだ。」
「わかりました。すぐ持ってきます。待っててくださいっ。」
五月雨は俺の頼みを聞くとそのまま走り出していった。もうやめよう、考えるのは。もうやめよう、抗うのは。今の俺に出来るのは受け入れる事のみ。そして思う。俺は彼女が戻って来るまで涙を我慢できるのだろうか。と