今回は五月雨回です。大した内容ではありませんが頭を空にして見てください。パンツの持ち主は次に持ち越しです。
「すいません、ハンカチを返しに来ました。」
「ハンカチ?あぁ、ハイハイ。ありがとね。」
私、五月雨は艦娘の皆さんのお部屋を巡って、ハンカチを返して回っている。何故それを今やっているのかというと、前に提督が私にハンカチを持って来てくれと頼まれてから今の今まで返すのを忘れてしまっていたからだ。提督を運ぶ姿を見た姉妹や他の駆逐艦の子達に囲まれ、質問攻めに遭った。
一人、一人に細かく説明していくうちに、どんどん時間が経ち、そのままハンカチの事を忘れてしまった。自分自身が少し嫌になる。忘れっぽいというか、やることが空回っているような気がして。提督からのお願いにも何も考えず、ただハンカチが必要なのだとその事だけが、頭に響いて、結果的にこんなにも沢山のハンカチを持っていってしまった。少し考えればハンカチなんて一、二枚あれば十分なのに。
でも提督はそんな事を気にしないで、ハンカチを受け取ってくれた。怒りもせず、笑いながら私を誉めてくれた。その日の夜は、提督の役に立てたのだと嬉しくて、嬉しくて殆ど眠れなかった。
この鎮守府は提督が来てからとても活気が出てきたと思う。この前まではお互いがお互いに素っ気ないというか、関心がない様な暗い空気が漂い、とても過ごしにくかった。同じ艦種の子達とはそれなりに会話はしていたが、少し話すと話題が無くなり、気まずくなって自然に解散するという事が多々あった。
私も頑張って話題を考えて何度も他の子に話し掛けたけどダメだった。基本私達は深海棲艦と戦い、人を守るのが仕事。戦闘以外の話題なんてあまりない。もし質問などしても、
「好きな色は?」
「黄色」
と一言で終わってしまう。私も話す事が無くなり、ほかの子との会話を諦めようとしたその時、提督が現れた。
提督がここに来て、一時間も経たないうちに鎮守府中が提督の話題で持ちきりになった。あれほど殺伐としていた空気が一気に変わり、明るく、賑やかになった。
「まさか朝礼で土下座するなんて思わなかったよ。」
「私もビックリしましたわ。」
「提督さん、可哀想・・・阿賀野が慰めてあげなくっちゃ!」
「阿賀野ねぇ、止めて。金剛さんがこっち睨んでいるから・・・」
「へっ。」
「あかんなぁ、男が女に頭下げるなんて情けなくて見てられへんわぁ。」
「あら、私はそうは思わないけど・・・」
「聞いてピョン!!あの球磨型達が雌の顔をしてたんだピョン!!」
「またそんな嘘ついて・・・騙されないよ。あの極悪非道の球磨型がそんな顔するわけないよ。」
「嘘じゃないピョン!!ホントだピョン!!」
「あのジャイアントスイングは見事でした。私も司令官に負けないようにもっと鍛えなければっ!!」
「朝潮姉さん、その上腕二頭筋だけでも十分だと思うよ。」
「提督も男ですものー、力はあるわよねー。」
「・・・ふんっ!!」
「提督ってさー。」
「うん。」
「あんまり格好よくないよねー?」
「そうだ・・・っ!!蒼龍っ!!後ろッ!!」
ガッ!!ミリミリミリミリ・・・
「お姉様っ!!止めてくださいっ!!」
「蒼龍さんの頭が割れそうですっ!!」
「・・・いい音ね。」
提督は様々な人達と積極的に交流を深めているらしい。今は同じ艦種のみならず、艦種の枠を越えて皆で仲良く提督の話題で会話をしている。共有の話題から自分の考え、価値観を話して更に盛り上がるというループが続き、とてもいい雰囲気だ。私も早く皆のハンカチを返して他の子達と会話をしたい。もしかしたら他の軽巡、重巡、戦艦、空母の人達ともお話が出来るかもしれない。
五月雨はかつてないほどの高揚感を胸に込め、再びハンカチを返すため歩き出す。
「でも。私が一番お話をしたいのは・・・・」
そう言って五月雨が顔を少し暗くさせたその時。
「五月雨ぇぇぇぇぇぇ!!何処だぁぁぁぁぁ!!」
絶叫に近い声が五月雨の耳に響いた。自分の名を呼ぶ声に一瞬、驚いた顔をしたが、その声の主を五月雨は知っていた。ふふっと思わず笑みがこぼれる。声が聞こえた方に顔を向け、遠くに声が届くように両手を口に添え、息を大きく吸った。
「提督ーーーっ!!私はここでーーーすっ!!五月雨はここにいますよぉーーーーっ!!」
五月雨は精一杯大きな声を出して山田に答えた。