その後、五月雨に睦月型の部屋の場所を訪ねた。階段が嫌になっていた山田はどうか、どうか睦月型の部屋がここの階でありますようにと密かに願う。だが五月雨の
「睦月型のお部屋は私達の部屋の近くなので三階ですね。」
との言葉で山田の願いはあえなく散ってしまった。少しばかり溜め息をつき、再び階段を上り始めた山田。その様子を後ろから見た五月雨は暗い顔をして話す。
「ごめんなさい。私がドジなばっかりに提督まで巻き込んでしまって・・・。」
せっかく手伝いを申し出てくれたのに自分の失敗で提督を振り回してしまった。あの時、咄嗟に箱を置かなければ。箱を持ったまま提督を探せばこんな事にはならなかったのに。あぁ、私なんて・・・
「五月雨。」
自分自身の情けなさに泣きそうになっていた五月雨に山田は階段の途中で止まり、振り向かずに言った。
「お前じゃなくて箱を盗んだ奴に呆れて溜め息が出たんだ。」
「え?」
「それに巻き込まれたなんて思ってないよ。元々俺が頼んだ事だし、階段の上り下りもいい運動になった。」
首を右左と交互に動かし、体の向きを変えて後ろの五月雨を見ながら言葉を続ける。
「あんまり自分を責めるな。いいじゃねぇか、ドジだって。それも個性だ、個性。」
「個性?」
「あぁ、ドジっ娘。いいじゃないの、可愛くて。」
「可愛い?私が?」
山田のドストレートな誉め言葉(セクハラ)に五月雨は顔をポッと赤くさせた。(★)気づいてくれ五月雨。ソイツはただパンツを返す為だけに君を利用しているゴミカス野郎なんだ。騙されちゃダメだ。世の中にはソイツよりも顔の整ったイケメンがうじゃうじゃいる。早まってはいけないよ?心を強く持つんだ。
「あ?んだお前。やんのかコラ。」
お?なんか文句あんのかコラ。
「俺の顔が整ってねぇみてぇな言い方したじゃねぇか。」
整ってねぇから整ってねぇって言ったんだろうが。
「上等だ!!そこから引きずり出して登場人物に加えてやるわっ!!」
やれるもんならやってみろや!!このっ・・・止めよう。五月雨ちゃんが見てる。すまない、五月雨と会話しているお前が羨ましくてついナレーションに熱が入っちまった。許してくれ。
「いや、こちらこそゴメン。俺もストレスからついカッ となっちまった。」
ーーーーーーーーーーーーーーー。
(★)からの続き。
「だから、チャッチャッと犯人をはっ倒して、ハンカチ返しの旅に行こうぜ。」
そう言うと山田は階段を再び上り始めた。
(五月雨の声が今にも泣き出しそうな感じだったから少し空気を変えようと頑張ったが厳しいか?)
「・・・・・っ!!よし。」
パシッ!!
五月雨は自分を鼓舞するように両手で顔を叩き、山田の後を追う。後にこの些細な出来事が彼女の、いや、この鎮守府の未来を大きく変える事になるとはまだ誰も知る由もなかった。
「ここか。」
「はい。」
階段を先頭で登っていた山田の横を勢いよく抜かして、「こっちです」と先導する五月雨に少しは元気になってくれたのかなとホッと胸を撫で下ろす山田。そしてあっという間に目的地に着いた。
さっそく五月雨がインターホンを鳴らそうと人差し指をつきだす。
ズニュ。
「ズニュ?」
インターホンの音ではない不思議な音が鳴った為、五月雨はふと後ろを向く。すると提督の後ろに人影があることに気づいた。とその瞬間。
ドサッ!!
山田が突然、前のめりで倒れてしまった。
「提督っ、大丈夫ですか!?」
「・・・ッ!!・・・・・っ!」
五月雨は必死に山田に声をかけるが、山田からは返事がない。よほど苦しいのか呼吸が荒い。
「大変っ!!明石さんをっ!!明石さんを呼んできます。待っててください。提督っ!!」
山田の緊急事態に五月雨は鬼気迫る勢いで明石を呼びに行った。
山田は今にも気絶しそうになるのを堪える。その様子を眺める一つの人影。五月雨が見た山田の後ろにいた人影だ。その影の主はゆっくりと山田の前に移動し、余裕の顔を浮かべ山田を見下ろす。
山田はそれに気付き、薄れゆく意識の中その人物の顔を凝視する。が途中、力尽き気絶してしまった。
その人物はつまらなそうな顔をしてどこかに歩き出した。
次の獲物を探しにいく為に。
「取り戻さなくちゃな、全部。」
「提督、もうあなたは・・・・」
「へへへへへへへっ!あはははははははっ!!」
「心配したんですから、もう。」
「楽しいなぁ、ねぇ?司令官?」
「俺はお前を許さない!!五月雨の仇だっ!!」
次回、「持ち主探しの大冒険(睦月型編・後編)」
お楽しみに。
※ここのセリフは後編にはあまり関係ありません。