「ねぇ、山田」
「なんだ」
「もし、この世界に得体の知らない化け物が突然やって来て、私を別の世界に浚って逃げてしまったら山田は助けてくれる?」
「テレビの見すぎだ、病院に行け。なんなら付いてってやろうか?」
「ははっ、冗談だよ。冗談・・・」
「やれる範囲でなら助けてやるよ」
「えっ?」
「まぁ、助けるといっても国家権力頼みだけどな」
「・・・・・バーカ」
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深い眠りから解放され、山田は目を開ける。月明かりの光が窓から溢れ、部屋中を微かに照らす。この景色を見るのは山田にとって二回目だ。ここはパンツを見て気絶した彼が鎮守府に連れてこられ、寝かされた部屋。自分の家では無いことを認識し思わず溜め息を漏らす。
「また懐かしいものを見たな・・・」
そう呟き、両腕を頭の下に潜り込ませ、鼻からゆっくりと空気を吸い込み口から吐いた。深呼吸をし、リラックスした山田は気持ちを切り替え、いままでの出来事を軽く振り返る。
突然、艦これの世界に呼ばれる
↓
パンツで気絶する
↓
盛られる
↓
女性用トイレに侵入
↓
集団の前で土下座
↓
「ここ、パラレルワールドなんです。ハイ」
↓
昼食&バイオレンス
↓
写真一枚で脅される
↓
五月雨とデート
↓
誰かに襲われる
「ロクなもんじゃねぇな」
普通では体験できない事をこれでもかと成し遂げた山田の目から一筋の涙が流れ、キラリと光る。
「う、うぅん」
「!?」
自分一人だと思っていた山田はブルッと身を震わせ、急いで上体を起こし足元を見る。すると山田が寝ているベッドの隣に椅子に座りながら器用に寝ている五月雨がいた。こっくりこっくりと船をこいでいる。
「もしかして、ずっとここにいたのか?」
動揺した山田は咄嗟に少し大きめな声を出してしまった。
しまったと思った山田だがもう遅い。その声が決め手となって五月雨は起きた。
「・・・うん?あっ、提督!!目が覚めたんですね?よかった!!」
ドターン!!
勢いよく立ち上がった為、五月雨が座っていた椅子が盛大に倒れた。思わず山田も「おうっ!」と驚きの声を上げた。
「すっ、すみません」
椅子を戻した五月雨は恥ずかしそうにドアに近づく。
「じゃあ、明石さん呼んできますね・・・」
ガチャ、パタン。
「・・・・・・結婚しよう」
ガチャ。
「はぁーい、お・ま・た・せ。明石ちゃんだよー?」
「待ってないから、森にお帰り」
「またまたぁ、照れちゃって」
カチ。
五月雨が部屋を出て、しばらくたった後に明石が来た。証明の電源を入れ、椅子に座って山田を見据える。
「まぁ、とにかく病気ではないですね」
「そうだろうな」
彼女はあっけからんと話し、それを山田は軽く流す。
「よくよく考えれば、提督の体内のナノマシンのお陰で病気なんてかかりませんし」
「すげぇな、ナノマシン」
自身の体に注入されたナノマシンの能力に感嘆の声をあげる山田に頷きながら明石は言った。
「で?大丈夫ですか?お尻」
「めっ・・・・ちゃ痛い!!」
山田はあの時、病気で倒れた訳ではない。「ズニュ」その擬音と共に尻○に何かを刺され、悶絶し、あまりの出来事に声が出ず、
「でしょうね、五月雨ちゃんに呼ばれて来てみれば、お尻が血だらけで倒れてたんですから」
「血だらけっ?嘘っ!?」
血が出ていたとの言葉に反応し、ベッドから起きあがった山田はズボンを確認する。それは今まで穿いていたズボンではなくなっていた。全体が真っ白で少しゴワゴワしている。まるで軍服のようだ。
「あまりにも大量に血が染み込んでいたので治療の途中で交換させてもらいました。男性用の服はそれしかないので我慢してください」
「そんなにか、悪いな。着替えさせて貰って・・ありがとう」
山田は右手で頭を掻いた後、頭を深く下げた。
「いえ、これも仕事なので気にしないでください。私特製の軟膏も塗りましたし、すぐ治りますよ」
「そうか」
やれやれとベッドの端にゆっくりと座り直した。その様子を見た明石はふと立ち上がり言った。
「目が覚めた事ですし、食事にしましょうか。あれから五時間も眠っていたんですからお腹すいたでしょ?」
「五時間もか?・・・・どうりで暗いわけだ」
「間宮さんに頼んで何かいいものでも作って貰いましょう、待っててください、すぐ持ってきますので」
「あ、あぁ。ありがと」
トゥンク。
な、なんだ?このトキメキは。メッチャ優しくない?ダメだ、気を緩めたら涙が出る。耐えろ!!俺っ!!
山田の手にギュッと力が入る。涙を我慢し、平然を装う。せめて明石が外に出るまでは泣くものか。
「んん。」
すると明石は少しだげドアを開け、動きを止めた。
「?」
どうしたのかと山田は小首を傾げ、明石を見続ける。
「提督って・・・・毛深いんですね。」
パタン。
そう言って部屋から出ていった。
残された山田は何の事だと口をポカン開け固まった。
「毛深いって、そりゃあ俺は男だし、友達より毛の量は多いとは思うが」
自身の腕毛をシミジミ見ながら言葉を続ける。
「そりゃあ女から見れば毛深いとも思われるか」
ゴロンと横に仰向けになり、食事が来るのを待つことにした。横に寝て暫くたつと尻に微かに違和感を覚えた。何だろうと思った山田は先程の明石との会話を思い出す。
「あぁ、軟膏塗ったとかいってたっけ」
尻の違和感の正体が軟膏のせいであると分かった山田は納得し、体の向きを変えた。
「懐かしいな、昔ヘルニアやった時にも尻から痛み止めを・・・・」
再び違和感を覚えた。さっきのではない、それ以上に何かがヤバいような、何かを失ってしまった気がした。
着替え
軟膏
毛深い
この三つのパワーワードが折り重なり、オーバーレイネットワークを構築する・・・
ガチャ。
「おぅ、提督。摩耶様が飯持ってきてやったぜ?感謝して・・・」
「尻、見られたぁぁぁぁぁぁ!!」
尻の痛みより恥ずかしさがより上だった。ベッドの上で顔を手で覆い、ゴロゴロと転がり狂う山田。
摩耶はその様子をただただ、見つめていた。
次回は山田が復讐鬼になる心暖まるお話。