「お姉様、帰ってきませんねぇ・・・」
「そうだね、何事もなければいいんだけど・・」
ここは金剛型の部屋。テーブルに向かい合って座っている榛名と比叡は同時にため息を吐いた。
「私達のお風呂の時間が終わってしまいます」
ちらりと壁の時計を眺めた榛名は前に体を倒し、テーブルに左頬をつける状態になった。
「霧島はお風呂に入らないでもう、寝てしまいましたし、もう私達だけでも行きましょうか?」
「うーん、もう少しだけ待って来なかったらそうしようか」
カチャ、ギィィィィ。
ドアがゆっくりと開き、そこから一人の女が部屋に入ってきた。
「「お姉様!!」」
長女の登場で待ってましたとばかりに立ち上がった二人は、それぞれ近くに置いてあった着替えやタオルが入った袋を持って金剛に近づこうとしたその時、金剛は妹達に目もくれず、自分の部屋に入っていってしまった。呆然と立ち尽くす二人。
「は、鼻血が出てましたね・・・」
「誰かと喧嘩してきたのかな?お姉様、最近提督と二人きりで話せないってイライラしてたから」
今の姉の状態を冷静に分析し、ヒソヒソと話す榛名と比叡は到底、風呂に誘える空気ではないと考え、刺激をしないようにゆっくりと風呂に向かおうとした。
すると先程の格好とは違う金剛が現れた。髪を後ろにまとめたジャージ姿から髪型をキレイに整え、脇が露出した巫女服の様な格好にバッチリとメイクをキメている。まつ毛が長く、目が強調され女性特有の色気があった。
「よしっ、これで完璧!いざっ!」
榛名と比叡の間をすり抜け、部屋から出ようとドアノブに手をかけると同時に両肩にポンと手を置かれた。
「お姉様、そんな格好でどこに行かれるのですか?」
「まさか提督の所ではないですよね?」
「邪魔をしないで、妹達」
金剛の前に進む力と比叡と榛名の抑える力が拮抗する。ミリミリと小さく音が鳴る。
「やはりですか、お姉様が提督を好きな事は重々承知していますが今はダメです。自重して下さい」
「少しテイトクとお話するだけだよっ!!それくらいいいでしょ!!」
「じゃあ普通の格好でいいじゃないですか、何ですか!その黒のガーターはっ!!そしてこの匂い、香水ですね?」
「これは足が寒いから穿いてるだけよっ!!香水はたまたま持ってたのを使っただけ。他意はないのっ!!」
「「もっとマシな嘘をついて下さいっ!!」」
姉がこれから何をするのかをわかるのか二人は必死に姉を抑える続ける。
「嘘じゃない、本当にお話をしにいくだけなのにどうして信じてくれないの?」
金剛はドアノブから手を離し、力なく床に座り込んだ。目から涙をポロポロ流し、比叡の顔を見つめる。
「えっ、嘘っ。ご、ごめんなさい、泣かないでお姉様!!」
「そこまでに提督の事を・・・・なんて純粋なお姉様」
まさかのガチ泣きに比叡は狼狽え、榛名は金剛につられてもらい泣きをした。てんやわんやなこの状況を途中から見ていた一番下の妹、霧島はスポーツブラとパンツ一丁という大胆な格好をしたまま三人に近づき、金剛にボソッと一言。
「本当は?」
「一つ、二万円もした特別製の香水と、このガーターでテイトクをその気にさせて後、はテイトクの○○○を×××で△△△△△してワタシの◇◇◇◇◇に÷÷÷÷÷÷をストライクショットして・・・・それからはもう後の祭りね!!それで子供を・・・」
霧島の質問に途中からノリノリで答えた金剛は両脇からの冷たい視線に気づき、言葉を止めた。
「「お姉様?」」
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「まぁ、あれだ。それぞれ卯月に恨みがあるのだろうが、一旦俺に預からせてもらっていい・・・かな?」
艦娘達の視線を一気に浴び、恥ずかしさやら申し訳ないやらで若干うつ向きながら山田は言った。すると空かさず手を上げて、山田に意見する艦娘が一人いた。
「一ついいかしら?」
目尻が上がり、腕を組んで不機嫌そうな態度をとる五十鈴に山田は答える。
「な、なんでしょう?」
「正直、私はあの駆逐艦に何かされた訳じゃないの。妹の為にここにいるのよ」
そう言うと少し涙目になって訴え始めた。
「妹の名取が今日初めて食堂でご飯を食べたいと言い出したの。妹はとても恥ずかしがり屋で訓練にもあまり参加しなくてずっと自分の部屋に引きこもっていたの・・・」
「・・・・・」
「私達姉妹とだけ会話はしていたんだけど。このままではいけないと思って少しでもあの子の性格を直すために、いろんな手を使って頑張った。・・・でもダメだった。」
「・・・・・」
「私達も、もうダメと諦めかけていた時、あの子は初めて言ったの。食堂に行きたいって。初めてあの子の意思を言葉で聞いたの。うれしかったわ。私達姉妹はすぐに食堂に向かった。」
「・・・・・」
「着いた途端、キョロキョロと見渡して、落ち着きがなかったけど目がとても輝いていたの。何かに興味を示すあの子の様子が可愛くて、愛おしかった。・・・その時、あの駆逐艦が名取に足をかけて転ばせたのよ!!あの子は何もしていないのにっ!!」
その時の感情がよみがえって来たのか、言葉に熱が入る。
「転んだあの子に謝りもしないで笑いながら何処かいってしまったわ!!おかげでまたあの子は部屋に閉じ籠ってしまった!!もう、私達とも話してくれないっ!!許さないっ!!絶対にっ!!だから一回でいいっ!!あの駆逐艦を殴らせてっ!!そうでもしないとっ!!私はっ、私はっ!!」
震えるほどに拳を握りしめて涙を流す五十鈴を見た山田は真面目な顔をして静かに言った。
「お前の気持ちはわかった。他の奴等も聞け。何も卯月に罰を与えないなんて言ってない。お前達、一人一人が卯月に怒りをぶつけてみろ。アイツの精神が崩壊しちまう」
「ならどうするのよっ!!」
五十鈴に続いて、そうだ、そうだと周りの艦娘も山田に抗議する。
「だから言ったろ?お前達の恨みを俺が預かると」
口を月のような形にした、悪魔のような微笑みをする男がそこにいた。
次回、持ち主探しの大冒険(睦月編・完結編)