あの後、俺は大いに泣いた。途中からなんで泣いているのかわからなくなったが涙が止まらなかった。
ひとしきり泣いた後、少し精神が落ち着いた俺は五月雨が来るまで海を眺める事にした。まぁ、やる事ないし、もうなんか疲れたしな、しばらくたてばきっと五月雨がハンカチを持ってきてくれるだろう。涙も枯れてもう必要ないんだけどせっかく持って来てくれるんだ。無駄にはしない。汗を拭くなり広げてスカーフにするなりやりようはあるだろう。
「・て・・くー!、ていとくー!」
「ん?」
微かに声が聞こえる。おそらく五月雨が来てくれたのだろう。声が聞こえる方向に振り向くと二つの人影が見える。一人は五月雨だ。両手に箱を抱えて走ってくる。まさかあの箱の中身は皆ハンカチって事はないよな。そしてもう一人、五月雨の後を追いかけて走ってくる人がいる。あれは・・・
「はぁ、はぁ、、はぁ、て、提督。おまたせしました。ハンカチいっぱい持って来ましたよ。」
俺の予想は的中していた。皆ハンカチだったよ。まいったな。
「鎮守府の皆さんからハンカチを一枚ずつお貸りしてきたので、遅くなってしまいました。すいません。」
鎮守府中?すごいな。皆貸してくれたの?それって艦娘の皆の事、だよな。箱の中身を見せてもらう。確かにいろんな形、色のハンカチがこれでもかと敷き詰められていた。ただ涙を拭う物が欲しくて頼んだ奴がこんな量なるなんて思わなかったよ。
「あ、ありがとう。こんなにたくさん・・・」
あまりの量に言葉がつまる俺に五月雨は。
「っ!そうですよね・・・こんなにハンカチがあっても困っちゃいますよね。私って本当にバカだなぁ。ははっ」
俺はガッ!っと五月雨の両肩を掴む。
「いやっ!五月雨は悪くない!俺はうれしい。こんなにハンカチを持ってきてくれて、息が切れるほど走って来てくれて、俺は幸せ者だっ!本当にありがとう!!」
俺がありのままの思いを叫ぶと五月雨は少し顔を赤くしてにぱっと笑った。
「本当ですかっ?よかったぁ。五月雨うれしいです。」
もうあかん。涙がまた出てきた。健気で一生懸命。パーフェクツや。ホンマもんのパーフェクトガールやでぇ。涙のナイアガラや。とまれへん。
「ほな、さっそく使わせてもらうで。ホンマありがとな。」
「なんで関西弁?まぁ、いいっか。どうぞ思う存分使ってください。」
感動しすぎて心の声と逆になってしまった。涙で前が見えねぇ。俺は箱の中からピンクのハンカチを一つ取るとそのまま涙を拭う。
その時ザクッザクッと音が聞こえた。
「もぅ~、五月雨ちゃーん、もう少し遅く走ってよ。私、運動、ニガテなのにぃ。」
先ほど五月雨と共に走ってきた人が追い付いてきた。相当息があがっている。遠くから見てある程度誰なのかは検討がついた。その人は五月雨に一言声をかけると俺に顔向けて話かけてきた。
「あっ、提督。お疲れ様です。・・・その大量のハンカチ何に使うんです?」
その人、工作艦明石は俺をきょとんとした顔で見つめていた。