「待つネ~!!テイトクゥゥゥ!!」
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
静かな浜辺に男女の微笑ましい戯れの声がこだまする。まさに幸せ絶頂の二人であった。女は愛する男を追いかける、その顔は照れているのか少し頬が赤い。巫女のような真っ白な衣服が月明かりに照らされ、女性特有の色気を醸し出している。まったくもって微笑ましい。
一方、男の方は何故か鬼気迫る顔で女との距離を稼いでいた。息も荒く必死に前を向いて走る。女と一緒の時間を長く過ごしたいのだろうか。初々しいというかウブというか独り身の男性なら少し妬いてしま・・・・
「早くその○○○を○いでワタシ○バー%~^%グ○ブするネェェェェェ!○そ^て数○き#な○程のベ@ビー#^//ぉぉぉぉぉぉ!!」
「怖い!!怖い!!怖い!!怖い!!怖い!!怖い!!」
というのは冗談で山田は必死に走っていた。金剛というバーサーカーから逃げるために。え?何で逃げているのかって?男だったら最高のシチュレーションじゃないかって?いやいやいやいや、いやいやいやいや。話は少し前に遡る。
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彼女の涙(よだれ)をくらいながら俺は、とりあえず対話を試みた。
「ちょっ、ちょっと、あの、落ち着いて。一旦話をしましょう・・・・」
丁寧な口調でなるべく相手を刺激さないようにゆっくりと話しかける。
「なぁに?テイトク?・・あぁ。大丈夫ネ!ワタシはバリバリの○女ネ!!」
「えっ!!あぁ、いや、その・・・・」
彼女の発言に一瞬、驚いた山田に金剛は言葉を続ける。
「ワタシ、体力だけは自信あるヨ!!ノープログレムネ!!」
「体力あるのは結構だけど一旦、離れてもらえると嬉しいんですが・・・・」
「・・・・」
最後の山田の言葉に今まで興奮気味だった彼女は突然、無言になった。街頭の光が突然消えてしまったように一気に場の空気が変わる。彼女は山田が発したある言葉を聞いた途端、思考を停止させたのだ。突然の彼女の変わり様に山田は背筋に寒気を覚える。しかし山田はそれを我慢して言葉を続けた。
「俺、体が貧弱なんで・・あ、あまりここにいると風邪をひいてしまうかもしれません。だから一回、降りてもらってですね。部屋で・・」
「なんで・・・・」
「へ?」
山田の話を遮り、金剛がうつむきながら話し出した。
「なんで離れてなんていうネ・・・・?」
「・・・あっ、あぁ!一旦場所を変えて、建物の中で話そうと思いまして、この状態では移動も出来ないのでそれで・・・・うわっ!!」
山田は肩を勢いよく捕まれる。あまりにも速かった為、思わず声が出てしまった。何事だと金剛の目を見た山田はおもわず恐怖した。彼女の、金剛の目は光が灯っていなかったからだ。真っ黒な眼球がただただ、山田を見つめている。それがあまりにも不自然で恐ろしかった。
「ワタシは、貴方の事だけを考えて生きてきた。食事の時も、訓練の時も、妹達といる時も、入浴の時も。ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずぅっーーーーーっと!!貴方の事だけをっ!!」
ギリギリ、ギリギリ!!
金剛の指が山田の肩に強く、深く食い込んでいく。
「いっ!!」
苦痛の顔に歪む山田に念仏の様に言葉を浴びせる金剛。
「なのに貴方は!!ワタシに離れろだなんて酷い事を言った!!ワタシ達は相思相愛のハズ!!ワタシのどこが悪いのっ!?ワタシ、直すからっ!!貴方がワタシだけを見てくれるように。どんな女が好み?ワタシ、テイトクが望むならどんな事だってする。性格も変えるし、仕草も変える、クセも変える、見た目も髪型も何もかも変える!!だからっ!!ねぇっ!!離れろなんて言わないでっ!!」
「・・・・・・」
ただ、流れに任せるしかなかった。まさかこんな展開になるなんて山田はこれっぽっちも思ってはいなかった。しかし彼は思った。このヤンデレに対話なんで成り立つ訳はない。早くこの場から離れなければ、俺にも、彼女にも未来は無い。と。
「ふっ、ふふふ」
「・・?」
「あっはっはっはっはっ!!あーっはっはっはっはっはっ!!」
気でも触れたか山田は金剛の倍の声を出して笑いだした。突然の事に金剛も思わず、呆気に取られる。
その時、
「そぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!」
山田は砂浜の砂を拳、いっぱいに掴んで金剛の目にに向けて投げた。(よい子は真似しないでね。)
「うっ、うぅ!!」
まさかの目潰しを受けた金剛は目を押さえながら転げ回る。それを見ながらゆっくりと砂を払いながら立ち上がった山田は、勝ち誇った顔で言った。
「どうだぁ!!砂の目潰しはっ!!俺に最大級のトラウマを植え付けやがって!!会ったばっかで極度のヤンデレとか引くわ!!じゃっ!!」
そう言うと山田はダッシュで鎮守府に向かった。
ダダダダダダ!!
一方、取り残された金剛は。
「へっ、へへへへへへへへへへっ!!」
さっきの山田の笑い声とは違う奇声に近い笑い声を出した。そして金剛はゆらりと立ち上がり、山田の走って行った方向に顔を向けた。目を閉じたままで。
「テイトクゥ~、酷いよぉ。目を潰すなんてぇ。本当にヤンチャなんだから・・・・ふへっ」
そして、一歩、一歩と山田の走って行った方向に進んで行く。
「鬼ごっこネ?いいネ・・遊んであげるヨ」
ザッ、ザッ、。
「ワタシが鬼・・へっへへへ。」
ザッ、ザッ、ザッ。
「捕まえる、テイトクを・・」
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。
「捕マえたラ、ワたシノもの・・」
スン、スンスン。
歪む。
口が。
顔が。
目が。
「ひはははははははははなはははっ!!」
ダダダダダダ!!
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そして冒頭に戻る。
目を閉じたままこちらに走ってくる金剛に恐怖どころか死を感じた山田は走った。生きる為に。途中から日本語すら話せなくなった彼女(バーサーカー)には最早、話し合いも通じないだろうて。すると天高くから何かが聞こえる。
「まさか、神様か!?」
気が動転している山田はもう、藁にもすがりたい思いで耳をすました。幻聴かもしれない。でも、もしかしたらこの状況を打破できる神様の啓示かも。そう思いながら山田は走り続けた。そして天の声(仮)はこういった。
良かったじゃん山田、艦娘に好かれてて(白い目)
あぁ、ホモォにも好かれてるか。
恐らく人生初のモテ期だゾ。喜べ山田!!
やったね山田ちゃん、家族が増えるよ(笑顔)
「うれしくねぇよぉぉぉぉぉぉ!!助けてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
次回
「42、愛ゆえに」
お楽しみに(変更するかもしれません。)