(ア・・ナタ・・・ニ・・チカ・・・・ラヲ・・・・)
奇跡の会心の一撃により命からがら鎮守府内に逃げ延びた山田と青葉は緊張感が薄れたと同時に極度の精神的疲労のせいもあったのかお互いの背に寄りかかりながら、力無く座り込んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、た、助かった・・」
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、なんでこんな目に・・・・」
今まで味わったことのない出来事が続き、山田の脳にはアドレナリンが大量に分泌され、ちょっとしたハイテンション状態になりつつあった。しばらく呼吸を整えた後、山田はゆっくり立ち上がり手元のカメラを青葉に差し出す。
「ありがとう、コイツのお陰で助かった」
(タ イ ム パ ラ ド ッ ク ス!!)
「はっ!!」
「うぇっ!!」
ポロッ、ガッ!!
山田の手からカメラが離れ、盛大に転げ落ちた。
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁっ!!何をするんですかぁ!!」
カメラを床に落とされ、青葉はこの世の終わりのような表情でカメラを拾い、山田の胸ぐらを掴む。
「私のすべてを破壊しようとするとか、どこのディケイドですかぁ!!弁償してくださいっ!!」
「えっ?いや・・・・あの、えっ?ご、こめん」
何故青葉が怒っているのかがわからず、曖昧な反応で答えるが、カメラを胸に抱えながら泣く青葉を見て、なんとなく状況を理解し、謝る山田。
「「ご、ごめん」で許されるとでも思ってるんですか!?そんな言葉でチャラに出来るとでも!?私の土下・・私の努力の結果、手にいれたカメラを取り上げた挙げ句、落とすなんて!!どれだけ非常識なんですかっ!!アナタは!!うぅ、本体にひびが・・・・」
山田から手を離し、ひび割れた部分を指でなぞる青葉。
「うーん」
首をかしげ、カメラと青葉をボーッと見る山田。
「司令?あの、大丈夫ですか?」
様子がおかしい山田に青葉は不安そうに声をかける。
「青葉」
「はい?」
「俺って生きてるよな?」
「へ?」
まさかの問い掛けに青葉は驚いた表情をした後、山田の頬を力一杯つねった。
「いででででででででででっ!!わかった!!わかった!
俺は生きてるっ!!わかったから離・・いでで!!」
青葉は指が震える程に指先に力を入れた。真顔で。
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ここは鎮守府の地下一階にある食堂。ここは艦娘達が食事をとる為の場所である。
「だーかーらー!!あの人はねぇ!!ヴァカなのよ、ヴァカ!!本能のままに行動してるだけなのぉ!!ちょっと聞いてるの?明石ぃ!!」
「わかった、わかったって・・・・服を引っ張らないでよ」
食堂のカウンター近くの椅子に隣同士で座る大淀と明石は二人で酒を楽しんでいる。
「あらあら、大淀さんが悪酔いするなんて珍しいわね」
するとカウンターから一人の女性が姿を表した。黒髪のポニーテールが印象的なその女性は割烹着姿をしており、両手でおぼんを持ちながら微笑んでいる。
「鳳翔さん・・すみません、騒がしくしちゃって」
「気にしないで。これ、作ってみたんだけど、よかったら・・・・」
彼女、鳳翔はおぼんの上にある皿を明石の前に静かに置いた。
「わぁ、肉じゃがだぁ!!うれしい!!あーん」
明石はじゃがいも一つを摘まむと口の中に放り投げた。
「おいひぃ、おいひぃれふよ。鳳翔さん!!」
「そう、よかった。でもダメよ、食べるならちゃんとお箸を使って食べないと。」
頬を押さえながら幸せそうに咀嚼する明石に鳳翔は優しく注意する。
「はぁーい」
明石は右手を上げ、元気よく返事をした。
鎮守府での基本的な食事は間宮が作ることになっているが夕食が終わった後は鳳翔が厨房に入る。一時期は間宮と共に食事を作っていたが、とある事情により厨房に立つ時間が限られてしまった。それでも元々料理が趣味の鳳翔は限られた時間の中でも料理を作りたいという思いがあった。ならばと、夕食後から数時間の間だけ、酒や軽い食事を出す居酒屋のような事をしてみたらどうかと間宮から提案を受け、酒と軽い食事が楽しめる、なんちゃって居酒屋を初めるようになり現在に至る。
ドコォォォォォォォォ!!
パリィィィィィィィィ!!
ドタドタドタドタ!!
「こんな時間に随分元気な事・・・・」
酔っ払いの大淀の前にも皿を置いた途端、大きな音がなり、鳳翔はふと天井を見上げた。
「あぁ、大丈夫ですよ、鳳翔さん。提督がまた何かやってるんですよ、ほっときましょう」
いつもの事だと音におかまいなしに鳳翔から貰った箸で肉じゃがを食べる明石。
「ふふっ」
ガタッ!!
「提督!?」
明石の提督という言葉に反応した大淀は勢いよく立ち上がると鳳翔の方を向いて言った。
「縛るなら私を縛ってくださいっ!!」
大淀の叫びに明石、鳳翔、その他のこの場に数人いる艦娘達が一斉に彼女を見た。全員がうわぁとした顔をする中、鳳翔だけは違った。
(彼女をここまで骨抜きにするとは・・・・私も一度、お話をしてみたくなったわ。山田孝夫さん・・・・・・)
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「とりあえず大淀達の所に行って助けてもらおう」
「そうですね、この時間ならおそらく食堂にいるはずです」
「食堂?という事は地下か。」
あれからお互いの顔をつねりあった二人は赤く腫れた顔で食堂に向かう事にした。地下に降りる階段は今いる位置からそんなに遠くはなかった。
「よし、すぐに地下へ・・・・」
「提督、あれ・・・・」
青葉は人差し指を突きだし、震えながら何かを指差した。山田はチラリと指差された方向を見る。そこには先ほどとは別人のような金剛がいた。バーサーカーのオーラも無く、血走っていた目も無くなり、見た感じ普通の女性に戻っている。そしてニコニコと手を振りながらこちらに近づいてくる。
「テイトクーー!!もう大丈夫ネ!!さっきはゴメンナサイ!!」
その様子を見た青葉は微かに震えながら山田に言った。
「司令、アレは・・・・アレは何ですかっ!?」
「・・・・・・やっべぇぞ」
コロ○キのナ○ルのような声をだした山田が見たものは・・・・
右腕にチェーンソーを持ちながら、口角を極限まで上げた金剛だった。
「奴めっ!!ただのバーサーカーから理性を持つバーサーカーへとジョブチェンジしやがった・・」
「大丈夫よ?テイトクゥ。大丈夫、ダイジョウブ、だいじょうぶ、だぁいじょうぶぅ」
「ありゃダメだ!!青葉走れっ!!」
山田は青葉の腕を強引に掴み、地下へと行ける階段に一直線に向かおうとする。
ヒュウォォォォ!!ダンッ!!
山田の行動の行動を先読みしたのか凄まじい跳躍力で金剛は山田達の前に立ち塞がった。
「どこにいくんですか?テイトクのお部屋はそこではないでしょ?」
金剛はチェーンソーのスイッチをつけ、青葉に向けた。
ブォブォブォブォ!!ブォン!!ブォン!!ブォン!!
「ひいっ!!」
「そして、その隣の生き物はアナタにはいらない・・・・」
ブォーンッ!!
「死ねぇぇぇぇぇ!!・・・・」
金剛は青葉に向かってチェーンソーを突き刺そうと真っ直ぐに突っ込んで来る。
「青葉っ!!」
青葉の腕を離し、山田は咄嗟に青葉の前に移動し両手を広げて彼女を守る姿勢になった。山田は何故自分がこんな行動をとったのかわからなかった。
死ぬかもしれん。だがこいつが殺されるよりはマシだ。
その感情だけが山田を動かした。
「司令っ!!ダメですっ!!」
チェーンソーの歯が山田に向けて近づいてゆく。
「くそぅ!!」
もうダメだと山田は目を閉じた。
ーーーーーーーーーーーーー。
「・・・・あれ?」
暫くして痛みが無いことが不思議に思った山田はゆっくりと目を開く。
すると金剛のチェーンソーが山田の体に突き刺ささるか刺さらないかの所で止まっていた。山田は暫くチェーンソーを眺め、ゆっくりと金剛の顔を見た。
「うえっ!!」
化け物のように顔を変えた金剛に山田は驚き、思わず声が出た。が彼女はまったく反応がない、というか動かない。まるで時間でも止まってしまったかのように。
「なっ、なんだ?おい青葉・・・・」
ふと後ろの青葉を見たが、青葉も同じように止まっていた。そーっと頬に触れてみるが普通に柔らかい。他にも試してみようと青葉の鼻に人差し指と中指を突っ込もうとした。
「あいてっ!!」
すると山田の頭に何かが落ちてきた。
カラカラカラカラ。
頭に当たった物体が床に落ちる。
「どこから落ちてきたんだ?」
山田は頭をさすりながら天井を見上げる。しかしそこには何もなかった。一面中真っ白な天井しかなく、何かが落ちるという事はありえなかった。とりあけず何が落ちてきたのかを確認する為、その物体を拾い、確かめてみる。それは手のひら程のサイズでボタンが5つあるリモコンだった。赤い線で書かれた○、水色の線で書かれた×、ピンク色の線で書かれた□、緑色の線で書かれた△、そしてスタートと書かれたボタンがある。
「まるでプレ○テのリモコンだな・・・・」
(((((△)))))
すると突然、山田の頭に三角のマークが浮かんだ。電気が走るような感覚が山田の頭の中に鳴り響く。ボタンを押せと言うかのように。が、とりあえずはチェーンソーから青葉を遠ざける言葉が先決だと山田は判断した。青葉の体をずらそうと青葉に触れた瞬間。
「・・・・メ○ブ○ァァァァァァァ!!」
止まっていたはずの金剛が動きだし、青葉に突っ込んでいく。
「司令ー!!ってあれぇ?なんでぇぇぇぇぇっ!?」
目の前に立って壁になってくれた山田が消え、金剛と鉢合わせの状態になった青葉は悲鳴(?)を上げた。現在、山田は青葉の左側に立っており、金剛のチェーンソーにはかすりもしない位置にいる。
しまったと山田は思った。止まっている時間がいつまでなのかがわかればもう少しやりようはあっただろうが、悔やんでいる時間はない。そんな山田の頭に再びマークが浮かんだ。
(((((△)))))
(もうどうにでもなれっ!!)
絶望的なこの状況を打開するにはもうこれしかないと。山田は△のボタンを押した。
カチ。
「うおっ!!」
すると山田の体が突然動きだし、金剛の右手に鋭い蹴りを喰らわせた。
「ぎっ!!」
あまりの痛さに金剛はチェーンソーを離し、床にうずくまった。持ち主を失ったチェーンソーは空中に舞った後に地面に勢いよく突き刺さった。
ブォブォブォ、ブォ、ブォ、・・・・・・。
「青葉、大丈夫か?」
「はぁ・・・・」
青葉は顔を赤くしながら山田を見つめる。
「おい!!」
「えっ?あ・・はい!!大丈夫です。それよりも司令、今の動きは・・・・?」
「ノリだ」
「ノリってそんな・・」
「んなもんどうでもいいわ。遠回りになるけどあっちの階段を使って二階にいくぞ」
山田は金剛がいる逆側の階段を指差した。
この鎮守府には入り口から見て、南側と北側にそれぞれ階段がある。地下への階段は現在、金剛に近い南側の階段の一ヶ所しかない。その為、北側の階段を一旦上がり、反対側の階段に向かい、下りていけば地下に行けるのではないかと山田は考えた。その事を青葉もわかったのか力強く何度も頷いた。
「先に行けっ!!」
青葉は北の階段に走っていった。それに対し、山田は金剛が立ち上がるのを待っていた。何故そんな事をするのか、それは山田自身、試したい事があったからだ。
「あ、あはは。やっとワタシと一つになる・・・・時が・・・・」
「・・・・・・・・」
「きたネェェェェェェ!!」
艦娘ならではの力をフルに使い、人間の目ではとても追えない程のスピードで金剛は山田に襲いかかる。なのに山田は逃げる素振り一つしない。むしろニヤリと笑いながら金剛を見続けている。金剛の手が山田に届こうとする瞬間、山田の頭にマークが浮かぶ。
(((((□)))))
カチッ。
山田は右手に握られたリモコンの□のボタンを押した。
すると金剛の動きを上回る速さで腰を落とし、接触を回避。その刹那、再び山田の頭にマークが浮かんだ。
(((((○)))))
カチッ。
山田は下から金剛の顎におもいっきりアッパーを炸裂させた。
ドゴォ!!
「ーーーーーーーー!!」
不意をつかれた金剛は息を荒げながら、後ずさる。彼女の目は元の血走った目に戻っていた。
「ギャァァァァァァァ!!」
ただのバーサーカーに戻った金剛は咆哮を上げ、敵意を山田に向けてきた。自分に攻撃を加える敵として認識したのだ。いわゆる暴走状態という奴である。
「今のでよくわかった。」
山田は地面に突き刺さったチェーンソーを引き抜き、金剛を見つめる。
「俺がこれからどうすればいいか。何をすべきか・・・・」
「オォォォォォォォォォォ!!」
「ここで終わりにしようぜ、タ○ラント」
金剛と山田の戦いが今、始まる。
「かかってこいやぁぁぁぁぁぁ!!」
「アァァァァァァァァァァァァッ!!」
《New》
山田はQTE(クイックタイムイベント)が使えるようになった。