もこっち以外の視点で描くわたモテSS   作:umadura

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智子はバカなことばっかり言うし、いつもの日常

 

 

 

 

 私の友達は、時々変な事を言う。

 

「ラノベとか少年誌のラブコメってさ、大体同い年の幼なじみがいるじゃん」

 

 そういう時は、なんとなく一言目でわかる。

 あ、またバカな事言うなって。

 多分いつもより言葉がスラスラ出てくるからだと思う。

 

「でもいないよね。現実に異性の幼なじみとか。普通、子供の頃から遊んでる異性の子って、小学生になったら絶対周囲から冷やかされるよね。そしたら疎遠になるのが当たり前だし、高校生になる頃にはもう目も合わせないくらい他人になるのが常識だと思うんだ」

 

 やっぱり。

 こういう時の智子は楽しそうに見える。

 

「それにさ、幼なじみって定義が曖昧じゃない? いつからなのかハッキリしないっていうか、たまに中学からの付き合いでも幼なじみって言う時あるよね。10代で出会っといて幼ない頃からの馴染みとか言われてもな……そこまでして幼なじみを押す意味がわからないんだけど。大体、幼なじみって負け確定ヒロインなんだよ。昔は違ったらしいけど、今は幼なじみ=負け犬だろ? どう頑張っても最終的には主人公と結ばれないし、最悪他の男を充てがわれるパターンもあるからね。少女マンガもそういうの多いよね。幼なじみの男が最終的に別の女とくっつくパターン。特に余り者同士とか誰得なの?って思うんだけど、未だになくならないのあれ何? 各出版社のトップに幼なじみ信者でもいるの? タッチ世代に支配されてるの?」

 

 笑ってはいないけど、活き活きしてるっていうか、なんとなくそんな感じがする。

 昔はあんなにオドオドしてたのに……今もそんなに親しくない人の前だと変わってないけど。

 

「えー? 別に良くない? そういうの結構リアルじゃん」

 

 根元さんに対しても、ちょっと前まではそうだった気がする。

 今も少し距離があるっぽく見えるけど――――

 

「いや、良くねーよ。幼なじみってファンタジーにリアル路線ぶっ込まれてもモヤモヤするだけだし。そもそも負け確のヒロインって時点で邪魔じゃね? だったら普通に可能性のあるヒロインだけで構成した方がまだ面白いじゃん。逆に『実はこの中の誰かが幼なじみです』ってヒロインだけで固めるのはアリだけど」

 

「あー、あれか。クロってあれ読んでるの? それかアニメ観た?」

 

「観てないけど。そもそもラブコメって時点でよっぽどじゃないと観ないし」

 

「だよねー。クロがラブコメ観てキュンキュンしてるトコとか全然想像出来ないし。っていうかクロってそういう感情あるの? アニメじゃなくてもいいけど、キュンキュンする瞬間ってあったりする?」

 

「……ねーよ」

 

「それってある時の間じゃん。何隠してるの? わー秘密主義ー」

 

「……」

 

 たまに、私には全然わからない会話を二人でしてる時があって、そういう時は逆に私の方が距離を感じる。

 今も、内容自体はわかるけど、話に入っていけるような知識はないかな……

 

 でも、智子が今ムッとしたのはわかる。

 そして根元さんがわざとそう仕向けたのも、わかる。

 その理由は全然わからないけど。

 

「つーか、なんでそんなに幼なじみ擁護するんだよ。好きなキャラが幼なじみ属性とか、そういう理由? スペンサーとか好きなの?」

 

「いや違うけど……そこで呼ぶ? っていうか、クロって日常アニメ嫌いな癖に一通り知ってるよね」

 

「まあ、それなりに話題になってるのは一応チェックするしな……特にラノベ原作のは」

 

「あ、やっぱりそうなんだ」

 

 でもこの二人が本気で言い合いになるのは見た事ない。

 大抵、智子が言い返して、根元さんがイラってして終わりだけど……今日はいつもより甘噛みだった。

 

「でも、幼なじみってそこまでファンタジーかな? それだったら女の子の生徒会長がヒロインって方がよっぽどファンタジーじゃない? 生徒会ものだったらともかく、一般の生徒と生徒会長じゃそうそう接点ってないよね。生徒会長なのに頻繁に特定の部室に足運んだりするじゃん。あれって強引だと思うんだけど」

 

「いや、普通にあり得るし」

 

「え?」

 

「生徒会長が一般の生徒と何回も遭遇して面倒見るとか、普通にあるけど? 生徒会長って人格者がなるものだし、ラブコメの主人公って友達少ない事が多いから、問題起こしたり怪我したりした時には率先して駆けつけてくれるんだよ」

 

 あ、そうでもなかった。

 生徒会長って言葉が出て来てから急にエンジンかかった。

 

「そっかなー……うーん、だったら委員長は? 委員長がヒロインってパターンも結構テンプレだけど――――」

 

「ごめん、委員長は1mmも興味ない」

 

「そ、そうなんだ」

 

 なんか急に冷えた。

 

「それじゃ年下ヒロインは? 少女マンガだと年下の異性って結構レアだけど、男の子向けだと絶対いるよね。こっちも負け確じゃない?」

 

「あー……でも妹モノもあるしなー」

 

「あっ、それ! それこそ究極のファンタジーじゃん。幼なじみより絶対そっちだって。肉親と恋愛とかあり得ないし。実妹とか意味不明じゃない?」

 

「全然あるけど」

 

 またエンジンかかった。

 今日の智子は冷えたり暖まったり忙しい。

 

「……え? いや、ないでしょ……実の兄妹だよ? 幼なじみ以上に子供の頃から毎日顔合わせてるし、それ以前に生理的に……」

 

「肉親は他人の幼なじみと違って冷やかされないだろ? それに、どこの国かは忘れたけど、近親相姦で裁判沙汰になってる事件って年間数件しかなくて、割と普通の事って感じになりつつあるらしいよ」

 

 なんでそんなに詳しいんだろ……

 根元さん、ちょっと引いてる。

 

「……えっと、妹はともかくさ、2番手や3番手の年下ヒロインって大抵弱いよね」

 

「あー……年上ヒロインばっか言われるけど、年下もそうかも。しかも連載続くと段々扱いが悪くなるとかよくあるし」

 

「あるある。学年が違うからイベントに顔出せないとか」

 

「特に修学旅行とか、ムリヤリ出番作ろうとして構成がグダグダになるとか、よくあるよね」

 

 近親相姦の話題から10秒で普通の話になった……

 

「つーか、女が男主人公のラブコメ観て楽しいか? 日常アニメが好きなのは……好みはともかく理屈はわからなくもないけど、ラブコメは本気でわからないんだけど。少女マンガだけ読んでれば良くね?」

 

「クロ、わかってないなー。男の子視点のラブコメと女の子視点のラブコメ、どっちにも違った良さがあるのに」

 

「それ言うんだったら、男作者の男向けラブコメと女向けラブコメ、女作者の男向け女向けの4パターンだけどな」

 

「まっ、まあ……そうだけど。確かに全部違うけど。っていうかクロ、やっぱりラブコメ好きなんじゃない?」

 

「いや全然好きじゃないけど」

 

 ふと、智子と目が合う。

 なんか『うわ、しまった』って顔された。

 

「あっ……えっと、ゆりちゃんはラブコメとか……観ないし読まないよね」

 

「観ないし読まない」

 

 多分、私を会話に入れてなかったのを気にしたんだと思う。

 最近、智子はそういう気遣いをしようとしてる。

 でもそれが露骨にわかるこっちの身にもなって欲しい。

 

「じゃあさ、異性じゃなくて同性で『幼なじみ』『年上の生徒会長』『委員長』『後輩』の誰と一番仲良くなれそう?」

 

 多分、私が入りやすい会話にしたのかな。

 根元さんはそういうの自然にするの得意そうだし。

 

 私は……するのもされるのも苦手。

 だから、最近の智子のそういうところはちょっと嫌。

 

「んー……まあ委員長以外なら大丈夫かな」

 

「クロ、委員長に何か恨みでもあるの?」

 

「いや、あいつら無駄に選民意識あるんだよ。実質ただの雑用係なのに、なんか委員長なのを免罪符に『なんでまだやってないの? 早くしてよ』みたいに上から来るし」

 

 すごいわかる。

 

「ゆりちゃんもそうでしょ?」

 

「……」

 

 多分、こういうとこだと思う。

 波長が合うのかな。

 智子は多分、私の事をわかろうとしてる訳じゃないのに、わかってる。

 

 だから変に気を遣わないで欲しいんだけど……

 でもいきなり『お前』呼ばわりされるのは釈然としない。

 ……もしかして、呼び捨てじゃないのはあの時の事、気にしてるからなのかな。

 

「二人とも捻くれてるよねー。私は全然そういうの気にならないけど」

 

「いや、気になるかならないかで語ってる時点でお前も同類だろ」

 

「え? そんな事……」

 

 根元さんは痛い所を突かれると露骨に顔に出る。

 だからどうって訳じゃないけど。

 

「ま、まあ、私は委員長は大丈夫かな。年上の生徒会長は……やっぱりちょっと遠い存在って感じする。幼なじみはそもそも仲良くしてるから幼なじみだよね」

 

「……なんか無難だな。キャラ立ってないけど大丈夫? それで声優やっていけるの? 今の時代、声優なのに声優ディスる謎アピールするくらいじゃないと生き残れなくね?」

 

「それ死亡フラグでしょ……」

 

 私は根元さんとは何もかも合わない。

 考え方も波長も。

 

「あ、でも後輩はないかな」

 

 でも、これはわかる。

 

「私も後輩は無理」

 

「え? なんで? 後輩って別に毛嫌いする要素ないと思うけど……」

 

 智子は逆に、わからないって顔。

 多分弟がいるから、年下と接するのに慣れてるんだと思う。

 その割に、面倒見が良いっていうより面倒見られが良いって感じだけど……

 

「えー、でもなんか余計な事言ってかき回すみたいなイメージだし、ちょっとメンドいかなーって」

 

「媚びてくる感じが苦手。何話していいかわからない」

 

 智子の弟はそういう感じ全然なかったけど、それでも話す事ないからやっぱり苦手。

 一学年違うだけでも、違う世界の人って気がするから。

 

「田村さん、幼なじみはどう?」

 

「……普通」

 

「そうなんだ。まこちゃんとは幼なじみっぽい関係って印象だったけど。お互いの事よく知ってるっていうか」

 

「全部知ってる訳じゃないから」

 

 勿論、知ってる事の方が多い……と思う。

 でも、そう思ってると知らない一面を知った時に、ちょっとモヤッとする。

 まこの方は多分、そうは思わない。 

 

 そういう感覚を、どう言っていいかわからない。

 

「智子は、成瀬さんと……どんな感じ?」

 

「え? あー……中二からだから、私も全部は知らないかな。高校入ってからのゆうちゃんは断片的にしか知らないし、凄く変わった所もあるし」

 

「そういうのが見えた時、どう思った?」

 

「メスのに――――ん、いや違くて……なんか畏縮したね」

 

 そうなんだ。

 ちょっとホッとした。

 

「あとやっぱり、昔の話とかはするけど、今の交友関係とかはあんまり話さないかな。趣味も同じだったけど、そういう話もしなくなったし……でも、今の距離感も嫌いじゃないけどね」

 

 ……なんかカッコつけてる。

 智子って、たまにそういうのしたくなるよね。

 厨二病……だっけ。よくわからないけど。

 

「ふーん」

 

 根元さんもそれをわかってるけど、たまに指摘しないでスルーしてる時がある。

 気遣ってるのか、共感してるのか……どっちでもいいけど。

 

「でもさー、私たちも結構付き合い長いよね? 田村さんとはまだ喋るようになってそんな経ってないけど。幼なじみって訳じゃないけど、今のこの時期って、将来どんな位置付けになるんだろ」

 

「……」

 

「……」

 

「……え? 私そんな変な質問した?」

 

「いや、質問っていうか、その質問で言わせようとしてる答えが恥ずかしいっていうか」

 

「……!」

 

 顔真っ赤。

 やっぱり最後はこうなった。

 

「あーあ、やっぱり青春アニメっぽくはいかないか。このメンバーじゃ」

 

「お前最近、そういうイタいとこ隠さなくなったよな」

 

「だってもうクロには言ってるし。ありのままの私を見て欲しい、とかじゃないけど」

 

 とかじゃない、って言ってるけど、きっとそうなんだと思う。

 やっぱり根元さんとはそういうところ、合わない。

 

 ありのままの自分なんて見せてどうなるんだろう。

 智子は……多分私と同じ。

 ちょっと違うかもしれないけど。

 

「あー、かったりー」

 

 まだ昼休み終わりのチャイムが鳴ってないのに吉田さん戻って来た。 

 珍しい。

 

 吉田さんは隠すタイプじゃないよね。

 でも根元さんの言う『見て欲しい』とは全然違うと思う。

 

 だったら、まこはどうなんだろう。

 

「そろそろ昼休み終わるから、また放課後、ね?」

 

「えー、もっと話そうよまこっちー。っていうか聞いてよー」

 

 私はまこの事を全部知ってる訳じゃないから、少なくとも私に全部見せてる訳じゃない。

 私に黙って勝手にメルアド教えてたの知ったのも最近だし。

 だったら……

 

「まこ」

 

「何?」

 

「高校卒業したら、今のこの時期ってどんな位置付けになると思う?」

 

 すごく驚いた顔された。

 

「今、智子達とそういう話してたから」

 

「あ……ああ、そうなんだ。ビックリした。えっと、今のこの時期……」

 

 まこは困った顔をして笑う事が多い。

 その時は大抵、困ってる比率の方が高い。

 でも、それは絶対口には出さない。

 

 まこと私は色々と違う。

 そこは智子とは違うとこ。

 

 でも、一緒のところもある。

 

「……大切な思い出、かな?」

 

 

 私の友達は、時々変な事を言う。

 

 

「あっ、高校でお別れって意味じゃなくてね? それからも付き合いは続いていくけど、高校生の時の事は特別っていうか……この時だけの、みたいな……」

 

「まこ」

 

「な、何?」

 

「リアルの質問にファンタジー路線で答えられても困る」

 

「ゆり!?」

 

 

 ――――そして、私もそうなのかなって、最近ちょっとだけ思う。

 

 

 

 

 

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